裁判編

本裁判の詳細ではなく、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に関する様々な問題をお知りになりたい方は、ぜひ本編をお読みください

ISSUE.1
無断掘削
他人地占拠

目次

本件記事においては、村田養豚場が他人所有地を無断で掘削しているという内容が記載されているが、かかる記載は真実ではない。

本件記事によれば、航空写真に土地境界線等を加筆した図を用いた上で、村田養豚場は、奈良市東鳴川町502番(甲3の1、以下、「東鳴川町502」という。)、木津川市加茂町西小長尾2番(甲3の2、以下、「長尾2」という。)及び木津川市加茂町西小長尾谷1-乙(甲3の3、以下、「長尾谷1ー乙」という。)を所有者に無断で不法に掘削し、占拠していると記載されている。

しかし、東鳴川町502 については、先代の所有者である亡〈東鳴川Cの父〉(以下、「亡〈東鳴川Cの父〉」という。)から、村田養豚場(村田畜産/村田商店)代表〈村田商店代表乙〉の父である〈村田商店代表乙の父〉(以下、 「訴外〈村田商店代表乙の父〉」という。)が賃借しており(甲4、以下、「本件賃貸借契約 」という。)、その契約において、畜産業を営むために土地を掘削することも使用方法として認められていた。

東鳴川町502の所有者が、相続により現在の所有者である〈東鳴川C〉(以下、「訴外〈東鳴川C〉」という。)となった後、本件賃貸借契約をめぐって訴訟となっていることは事実であるが(御庁平成21年(ワ)第1125号損害賠償請求本訴事件、平成22年(ワ)第390号損害賠償請求反訴事件)、この訴訟の判決の中でも、本件賃貸借契約においては、東鳴川町502の掘削をすることも契約内容として含まれていたとの判示がされ、訴外〈東鳴川C〉の請求が棄却されている(甲5)。

同訴訟は、訴外〈東鳴川C〉により控訴されているが、控訴審(平成23年(ネ)第3211号)においても、原審と同様の判断がされている(甲6)。つまり、村田養豚場が東鳴川町502を掘削しているのは、所有者との賃貸借契約に基づく権原によるものであって、不法であると論難される理由はない。

また、当会代表は、本件記事の中で、「2009年には、村田氏と東鳴川のCさんとの山林賃貸借契約はどのような解釈によっても解消しています。」と述べるが、前記訴訟において、本件賃貸借契約が解除されたということはなく、その後、本件賃貸借契約が解消された事実は存在していない。

なお、前記訴訟において被告であった訴外〈村田商店代表乙の父〉は、反訴として、訴外〈東鳴川C〉に対し、債務不履行に基づく本件賃貸借契約の解除及び損害賠償請求を行っているが、これは、訴外〈東鳴川C〉が、前記訴訟を提起したということ自体が、本件賃貸借契約における、賃借人に土地を使用収益させる義務を履行する意思がないことを明らかにしたとして提起したものである。本件賃貸借契約の内容として、土地の掘削をすることが含まれているとの判示がされた以上、訴外〈村田商店代表乙の父〉には契約解除をする必要性はない。実際に、前記訴訟後、訴外〈村田商店代表乙の父〉及び訴外〈東鳴川C〉の双方から、本件賃貸借契約の解消の申出がされたことはない。

続いて、長尾2及び長尾谷1ー乙についても、村田養豚場が不法に掘削し、また、廃棄物を不法に投棄している等の記事が掲載されているが、これも真実ではない。

  1. まず、東鳴川町502と長尾2との境界(=府県境界、以下、「本境界」という。)について、平成30年8月10日及び同年11月8日に、木津川市作成の土地境界画定図の修正がされており、その内容は、木津川市管理里道の南端部分が削除され、本境界が未確定ゆえ削除されたというものである(甲7の1乃至4)。

    つまり、東鳴川町502及び長尾2の境界については、現状未確定の状態となっており、東鳴川町502についての使用権原を有する村田養豚場が、長尾2について、他人所有地を不法に掘削していると非難される根拠が存在していない。そうであるにも関わらず、本件記事においては、あたかも村田養豚場が他人所有地を不法で掘削、占拠しているということが確定的に記載されているのであり、真実とは到底いえない。

    なお、当会代表は、木津川市より、前記公図修正の後、公図が修正された旨の周知をされ、「弥勒の道プロジェクト」ホームページ上への掲載について配慮されたいとの指示を受けている(甲8)にもかかわらず、本件記事において、修正前の公図に基づく境界線を掲載し続けている。

  2. また、村田養豚場が、産業廃棄物を赤田川北の荒れ地に不法に投棄しているのではないかという疑いがあるというような記事も掲載されている。この件について、当会代表は奈良市への問合せの結果及び村田商店代表者村田昌香へ長尾2の所有者が問い合わせた結果も掲載している。

    奈良市への問合せ結果については、村田養豚場が廃棄物を違法に処理 していたという事実は確認できなかったとの回答を得ており、その事実自体は記載があるものの、「奈良市からは最後までまともな返答を得られませんでした」などとまとめ、村田養豚場が、廃棄物を違法に処理していることが間違いないことであるかのように記載している。

    さらに、村田商店代表者〈村田商店代表乙〉に対する問合せの結果についても、「コンクリート片などを埋めたと聞かされた」と記載するばかりで、村田商店代表者〈村田商店代表乙〉が、説明をした内容を正確に記載していない。このとき、村田商店代表者〈村田商店代表乙〉は、再生クラッシャーというものを埋めたが、それは、コンクリート片などを含む再生物であり、不法な廃棄物ではないということを説明しているにもかかわらず、その説明の記載はほとんどされていない。

このように、本件記事の内容は、村田養豚場が違法に廃棄物処理を行っていることは間違いないにもかかわらず、奈良市及び村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、まともに取り合おうとしないという構成になっており、真実を掲載した記事であるとは言い難い。

東鳴川町502の賃貸借契約は継続していたか。

以下のとおり、平成17(2005)年2月以降、東鳴川町502所有者〈東鳴川C〉が本件賃貸借契約の解消を望んでいたことは明らかである。

  • 平成17(2005)年2月以降、〈東鳴川C〉は、東鳴川町502賃貸借契約に基づく〈村田商店代表乙の父〉からの賃料支払いを拒否した(本件境界確定経緯4/甲5-6頁)。
  • 平成20(2008)年7月頃、木津川市からの問い合わせに対し、〈東鳴川C〉は「内容は土地の明け渡しに関して双方の借地契約書の借地期限の違いから調停が行われ、不成立になった。相手の契約書の借地期限の切れる来年2月まで静観をしたい」旨述べた(本件境界確定経緯12/乙6)。
  • 平成21(2009)年12月15日、〈東鳴川C〉が〈村田商店代表乙の父〉に対し損害賠償請求の訴えを提起(本件境界確定経緯14/甲5-6頁)。

よって、〈村田商店代表乙の父〉が平成22(2010)年4月14日付け内容証明郵便で、〈東鳴川C〉に対し、東鳴川町502賃貸借契約の解除を通知したことにより(本件境界確定経緯15/甲5-6頁)、〈東鳴川C〉が本件賃貸借契約が完全に解消されたと受け取るのは当然である。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は「前期訴訟後、訴外〈村田商店代表乙の父〉及び訴外〈東鳴川C〉の双方から、本件賃貸借契約の解消の申出がされたことはない」とするが、すでに解消されている契約について、重ねて解消の申出を行う必要はない。事態はむしろ逆であって、いずれかから再契約の申出があり、双方が再契約に合意しない限り、本件賃貸契約が解消されたという事実は覆らない。

当会代表は、平成27(2015)年10月頃に、長尾2所有者の一人、〈加茂町B〉の紹介で、〈加茂町B〉とともに〈東鳴川C〉と面会し、東鳴川町502に関する事情を詳しく聞き取っているが、〈東鳴川C〉はその際はっきりと「賃貸契約はどのような解釈によっても完全に解消した」と述べている。この言葉遣いからは、〈東鳴川C〉が本件賃貸借契約の解消のため、様々な苦労(上記ア〜ウ)を強いられてきたことがうかがえる。

また当会代表は、平成31(2019)年3月2日、村田養豚場(村田畜産/村田商店)代理人より本件御通知書(乙1)が到達したことを受け、〈東鳴川C〉に電話をして賃貸契約の有無について改めて確認している。この時にも〈東鳴川C〉は次のように述べている。

  • 村田さんに今は東鳴川502の使用権はない。
  • 裁判では山林掘削時には村田さんの使用権があったということになった。
  • でも今現在は賃貸契約などはない。
  • 小屋やゴミは片付けてもらわないと困る。

なお、村田養豚場(村田畜産/村田商店)代理人が当会代表に送付した本件御通知書には、本件賃貸借契約が継続していることが書かれていない(乙1)。村田養豚場(村田畜産/村田商店)が主張するとおり、本件賃貸借契約が途切れなく継続していたのであれば、そのことが本件御通知書で指摘されなかったことは不自然である。

したがって、本件賃貸借契約が、東鳴川町502掘削をめぐる訴訟が提起されたことにより解消されたことは事実である。よって、本件賃貸借契約が継続していることを前提とした村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は、すべて根拠がない。

市有土地境界確定図から削除された境界線は誤りだったか。

1)東鳴川町502及び長尾2の境界線が削除された理由は、未確定ゆえではない。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は「本境界が未確定ゆえ削除された」とするが、実際にはそのような理由で削除されたのではない。平成30(2018)年8月10日施行の木津川市の回議書「法定外道路(加茂町西小長尾・長尾谷地内)の市有地境界確定図の修正について」(甲7の1)には、誤りの内容として次のように書かれている。

  • 境界線が、奈良市域まで入っている。
  • 本件確定に関係のない民々界が記載されている。
  • 方位の記載がない。

またこれより前に、木津川市管理課が奈良市を訪れて、本件市有土地境界確定図の修正について協議しているが、その報告書では同じ理由がもう少しわかりやすい表現で書かれている(乙25)。

  • 長尾2と東鳴川町502の民々界が記載されていること(ヒゲ線だけで足りるのに)。
  • 奈良市側と思われる箇所にまで里道を作ったこと(奈良市・奈良市地元の了解を得ずに)。

すなわち、本件市有土地境界確定図修正は、木津川市による奈良市側への越境確定が問題視されたために行われたものである。越境の可能性がある境界線については、奈良市等と連携して再確定手続きを進める上で必要とされたことから、木津川市で確定した境界線が一旦未確定とされた。つまり、それらの境界線は「未確定ゆえ削除された」のではない。

なお、平成30(2018)年11月28日施行の木津川市の回議書「法定外道路(加茂町西小長尾・長尾谷地内)の市有地境界確定図の修正について」(甲7の2)には、今後の方針として「上記の修正により推定線としたため、改めて確定線とするため、当該市有里道敷に市有水路敷(準用河川赤田川)も含め、既確定を考慮して、本市が申請人となって府県境確定を奈良県・奈良市に申請する」とあり、木津川市が修正前の既確定を尊重して、削除した境界線を奈良市とともに再確定する方針であることがわかる。本件境界確定経緯から、これは当然のことと言える。

したがって、平成30(2018)年8月10日及び平成30(2018)年11月28日に本件市有土地境界確定図修正があったからと言って、それ以前に遡って土地境界が未確定であったとみなすことはできない。

2)本件市有土地境界確定図修正手続きは違法であり、修正後の境界確定図は無効である。

平成30(2018)年8月10日施行の木津川市の回議書「法定外道路(加茂町西小長尾・長尾谷地内)の市有地境界確定図の修正について」(甲7の1)には資料として、修正前の本件市有土地境界確定図に係る隣接所有者の同意書が付属している。これを見ると、修正前の確定図では隣接所有者全員が同意書に署名捺印し、同意書と本件市有土地境界確定図の写しの両方にまたがって割印が押されている(乙27)。

なお「木津川市所管法定内公共用財産、法定外公共用財産及び市有地境界確定事務取扱要領」(以下、「要領」という。)には、修正あるいは訂正に関する規定が存在しないため、一度確定した市有地境界確定図の修正を行うためには、要領第15条に定められた再確定の規定に従わなければならない。この場合、境界確定の手続きを再度はじめからやり直すことになるので、当然のことながら、要領第10条に定める隣接所有者の同意書についても再度提出される必要がある(乙76)。

ところが、平成30(2018)年8月10日の修正及び平成30(2018)年11月28日の修正では、いずれも修正前の本件市有土地境界確定図と同様の同意書が提出されていない(乙27乙28)。

木津川市は、本件確定図修正前の平成30(2018)年6月末から7月中旬にかけ、木津川市管理課が隣接所有者を戸別訪問しているが、このとき口頭で本件市有土地境界確定図を修正する大まかな方針を隣接所有者に伝え、その方針に対し隣接所有者から口頭で了承を得たことをもって、隣接所有者の了解を得たとしている(乙27)。しかし隣接所有者は事前に口頭で了承を求められたのみで、修正後の本件市有土地境界確定図を見せられてもおらず、それどころか本件確定図が修正されたことすら、隣接所有者には通知されていない。このような手続きは明らかに要領を逸脱している。

さて当会代表は確かに、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が指摘するように、本件市有土地境界確定図修正の後、木津川市からメールで本件市有土地境界確定図が修正された旨を周知され、「弥勒の道プロジェクト」ホームページ上の掲載について配慮をお願いされている(甲8)。ただし、メールの内容は「指示」と呼べるようなものではなく、「配慮」についても具体的に何をどうするべきか不明で、またなぜそのような修正がなされたかについても具体的な説明がなかった。当然当会代表は本件境界確定経緯を知っているので、このような修正はあり得ないと感じ、平成31(2019)年2月、木津川市に対し本件市有土地境界確定に関する行政文書の開示を請求した(乙29)。その中においても当会代表は、同意書が提出されていないこと及び隣接所有者に修正を通知していないことは違法である旨指摘しているが、この指摘に対して、木津川市は、理由説明書及び補充理由説明書において次のように答えている(乙30)。

  • 同意書が提出されていないことについて。
    ➡規定がない以上、本市の裁量の範囲内と考える(同意書が提出されていないことは認めている)。
  • 修正が通知されていないことについて。
    ➡隣接所有者に説明を行った際に、再度、本市により改めて確定手続きを行うことを前提に一旦修正することで了解を得たため、本件修正後に改めて本件修正の完了の報告や通知、修正図を見せたりはしていなかったものである。

一方、木津川市法定外公共物管理条例第17条では、以下のとおり「協議による境界の確定」が定められている(乙77)。

第17条 市長は、法定外公共物の境界が明らかでないためにその管理に支障があるときは、隣接地の所有者に対し、必要な事項を通知して、境界を確定するための協議を求めることができる。
2 前項の規定により協議を求められた隣接地の所有者は、同項の通知に従い、その場所に立ち会って境界の確定につき協議するよう努めなければならない。
3 市長及び隣接地の所有者は、第1項の協議が整ったときは、書面により、確定された境界を明らかにするものとする。

木津川市法定外公共物管理条例

本条文が木津川市に与えている権限は「(隣接所有者に)協議を求めること」であって「(木津川市が)自ら確定すること」あるいは「(木津川市が)自ら修正すること」ではない。したがって木津川市が、隣接所有者と協議を持つことなく、隣接所有者による同意書も得ずに、本件市有土地境界確定図を修正したことは、木津川市法定外公共物管理条例及び要領に照らして、明らかに違法である。しかも令和元(2019)年8月現在、未だ隣接所有者に修正が通知されていないことは理解に苦しむ。木津川市は直ちに違法な修正を撤回するべきと考える。

いずれにせよ、木津川市は本件市有土地境界確定図の修正について「本市により改めて確定手続きを行うことを前提に一旦修正する」ものとしており、木津川市としては、この修正は手続き上必要とされた仮のものという認識であることがうかがえる。

3)本件市有土地境界確定図修正は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による排水設備改修の交換条件とされていた。

平成30(2018)年8月10日施行の木津川市の回議書「法定外道路(加茂町西小長尾・長尾谷地内)の市有地境界確定図の修正について」(乙27)別紙「本件修正に至る経緯」を見ると、本件市有土地境界確定図修正は、隣接所有者ではない第三者からの抗議あるいは指摘が発端となっていることがわかる。結論から言えば、この第三者は村田養豚場(村田畜産/村田商店)である。

本件市有土地境界確定図の修正を要望していたのが村田養豚場(村田畜産/村田商店)であることは、平成19(2007)年の確定時からこれに疑義を述べていたのが村田養豚場(村田畜産/村田商店)の他に存在しないことに加え、木津川市が当会代表に送った本件市有土地境界確定図修正を周知するメールを、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が知っていた事実からも明らかである。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は当会代表に送った本件御通知書において、前述のメールが「村田養豚場から赤田川と周辺環境を守る有志の会」宛に送られたものと思い込んでいる(乙1)。これはそのようなメールを送るよう木津川市に要求した当人以外にあり得ない思い込みと言える。なぜなら、もし村田養豚場(村田畜産/村田商店)が情報公開請求などで事後的に前述のメールを知ったのであれば、宛先を正しく認識できたはずだからである。すなわち、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は平成30(2017)年11月28日の修正前から、本件市有土地境界確定図が修正されることを知っていたということになる。一方で本件市有土地境界確定図の修正は隣接所有者にも通知されておらず、当会代表も前述のメールがなければ修正を知り得なかった。よって、木津川市にこのようなメールを要求できたのは修正の発端となった苦情申立者以外にあり得ないと結論できる。

前述の「本件修正に至る経緯(乙27)」によると、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は平成28(2016)年にも本件市有土地境界確定図の修正を求めているが、この時の木津川市は修正には取り掛かっていない。「本件修正に至る経緯(乙27)」の記述からは、修正に必要な奈良市の協力が十分には得られなかったことがその理由とうかがえる。

ところが、平成30(2018)年3月に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が数度に渡って文書による指摘を木津川市に送付して以降、木津川市は、それ以前と同様、奈良市の協力が得られる目処が立っていない(乙26)にも拘わらず、修正へと見切り発車してしまうのである。

平成30(2018)年11月28日施行の木津川市の回議書「法定外道路(加茂町西小長尾・長尾谷地内)の市有地境界確定図の修正について」(甲7の2)には、平成30(2018)年8月21日に奈良市から送られてきたファックス文書が添付されている(乙28)。このファックス文書は、8月10日の修正に関し、奈良市に対しても、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が追加の修正を主張してきたことを木津川市に伝えるもので、「(村田養豚場(村田畜産/村田商店))が奈良市に言って来られ、木津川市に言うようにとのことでしたので、お伝えします」との口ぶりから、このファックスが奈良市の意向というよりも、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の意向によって送られたものとわかる。このファックス文書では、奈良市に連絡してきた人物が誰であるかが不開示となっているが、この時点で本件市有土地境界確定図の修正を知り得たのは、最初の苦情申立者以外にないので、この人物は村田養豚場(村田畜産/村田商店)である。

平成30年11月20日起案の回議書「法定外道路(加茂町西小長尾・長尾谷地内)の市有地境界確定図の再修正について」-05

結局木津川市は、8月21日のファックスにある修正要求を反映させる形で、平成30(2018)年11月28日に本件市有土地境界確定図を修正し、同日、当会代表にこれを周知するメールを送った。

本件境界確定経緯を考えると、この修正は極めて不可解だと言わなければならない。木津川市は、京都府警の捜査に協力する形で、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の違法行為を是正させるために確定した境界線(本件境界確定経緯参照)を、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の求めに応じて、あろうことかただ削除し、しかもそれを山林掘削の被害者が含まれる隣接所有者には通知せず、「一旦修正」としながらも削除した境界線を未だ再確定していない。

実はこの木津川市の異様な動きは、赤田川水質汚濁問題と連動している。赤田川水質汚濁問題について詳しくは後述するが、村田商店の経営する村田養豚場の北を流れる木津川の支流、赤田川では、平成28(2016)年12月以降、木津川市の水質調査でたびたび異常な水質汚濁が検知されていた。

これを受け、木津川市は平成29(2017)年5月30日に赤田川を遡る現地調査を行い、その後も詳細な分析を続けている(乙10)。また下流では農業への影響が心配されたため、平成29年夏ごろ、農協や下流地域から、赤田川の水質改善を求める要望書が、木津川市長に直接手渡された(乙11乙12)。

こうした下流域農家の懸念を背景に、木津川市長の問題解決への意気込みは強く、平成29(2017)年11月、木津川市長は奈良県知事と奈良市長を相次いで訪問し、赤田川水質汚濁状況調査報告書と要請書(乙17の1乙18の1)を両者に自ら手渡している。

この間木津川市は、月1回以上の水質調査を継続するとともに、機会を捉えては奈良県などに水質改善への協力を要請しているが、平成30(2018)年2月16日、ようやく奈良県から「養豚場は[不開示]の費用をかけて排水処理施設の改修を行う意向を示している」という情報が、木津川市にもたらされた(乙21)。

ところが、平成30(2018)年3月5日、奈良県から木津川市に、一転して以下のような報告がなされる(乙22)。

  • 村田養豚場の意向が変わり、排水対策の実施自体がどうなるかわからない状況になった。
  • (養豚場が)過去から主張されている、木津川市の市道管理、水路管理、境界確定等の改善を改めて求められ、これらが整理されなければ、予定されていた排水対策は取りやめるという意向であった。
  • 本件について、関係行政機関(木津川市、京都府、奈良市)と話し合う場を求められ、これに奈良県も同席してほしいという意向であった。

イにある「境界確定」とは、本件市有土地境界確定図のことである。この連絡のすぐ後、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は木津川市の複数の部局に質問状を送っている(乙27別紙)。

また平成30(2018)年3月23日に開かれた木津川市と奈良県畜産課との協議でも、奈良県畜産課が次のように発言している(乙23)。

養豚場は、基本的には、引き続き排水処理について改善措置を図る意向と思うが、法令違反の事実がない中、木津川市の対応によって、今後の方向を考えるといった話も聞いている。

このころ以降、本件市有土地境界確定図の修正は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に村田養豚場の排水設備を改修させるための交換条件となったとみられる。村田養豚場(村田畜産/村田商店)と木津川市のやり取りは不開示となっており、どのような交渉がなされたか不明であるが、下流域からの強い水質改善要求にさらされていた木津川市が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の示した交換条件(上記イ)を実質的に受け入れたのだとしても不思議はない。実際木津川市は平成30(2018)年の4月から9月にかけ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の要求にある水路工事も行なっている。

以上のように、赤田川の水質改善を焦る木津川市が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の示した交換条件を満たすため、本件市有土地境界確定図の修正を急いだのだと考えると、木津川市が、隣接所有者との協議を省略し、要領に定められた同意書を提出せず、隣接所有者に修正図を通知してもいないことの理由が推測できる。

奈良市の協力が得られない現状では、境界線を削除した場合、それらをいつどのように再確定するのか、全く見通しが立たないことになるが、この状態で、隣接所有者が境界線の削除に同意することは、本件境界確定経緯からみて、まずあり得ない。それゆえ木津川市は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に排水設備を改修させるための交換条件を満たすべく、本件市有土地境界確定図の修正を、隣接所有者から隠す必要に迫られたのであろう。

以上見てきたように、本件市有土地境界確定図の修正は、木津川市の自発的な修正というよりも、赤田川水質汚濁問題をも利用した、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の強い働きかけによるものと言える。

4)村田養豚場(村田畜産/村田商店)には原確定を尊重する道義的責任がある。

上記3)で検討したとおり、木津川市に本件市有土地境界確定図の修正を求めたのは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)である。また、8月21日の奈良市からファックスによれば、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は確定点番号を細かく指定して追加の修正を求めている。これらの事実から、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、本件市有土地境界確定図の原確定について、その詳細を熟知していることは明らかである。

本件市有土地境界確定図が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の違法行為をやめさせるために確定されたという経緯を鑑みれば(本件境界確定経緯参照)、村田養豚場(村田畜産/村田商店)には、当時の隣接所有者が同意した、原確定の境界線を尊重する道義的責任があると言わなければならない。

またどのような事情があれ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が山林を掘削したことによって、それまで土地所有者間で土地境界として了解されていた地形上の目印が失われたことは事実である。したがって、土地所有者間で、失われた地形上の目印に替えて、新たな地形上の目印を頼りに、それまでと異なる土地境界線が同意されたとしても、地形を失わせた原因者たる村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、そのことにことさら疑義を申し立てることは、道義にもとる行為である。少なくともそれは、「奈良を代表する」にふさわしい振る舞いとは言えないであろう。

以上のとおり、本件市有土地境界確定図から削除された境界線がはじめから誤りであったとする村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は不当である。よって、本件市有土地境界確定図から東鳴川町502と長尾2の境界線が削除されたことをもって、過去に遡って当該境界線が未確定であるとし、ゆえに明確な境界侵害はなかったとする村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は、すべて根拠がない。なお本件境界確定経緯からみて、そもそも村田養豚場(村田畜産/村田商店)には原確定の境界線を尊重する道義的責任がある。

現状1 つづく汚泥・生ゴミ等の投棄

本件記事公開後も、東鳴川町502には、様々なものが捨てられたり置かれたりしていた。中でも、豚舎から出たと見られる汚泥を、冬から春にかけ頻繁に投棄していたことは、東鳴川町502が赤田川に隣接することから赤田川の水質への影響が心配される(乙31)。

東鳴川町502には、汚泥が積み重なっているため、常に真っ黒な水が溜まった水たまりができており、気温が上がると、水たまりにも拘わらず、たくさんの泡が浮いている。こうした汚泥から染み出した汚水が、赤田川へ流れ込んでいることは確実と思われる。

2018年1月12日撮影

冬期は生ゴミの投棄も多く、東鳴川町502には多くのカラスが常に群がっている(乙31)。下写真のオレンジ色のものは、ニンジンの切れ端と思われる。

2017年2月16日撮影

ところで平成30(2018)年、平成31年(令和元年)ともに、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は春頃になると、投棄した汚泥を畑の畝のように整形する作業を行っている(乙31)。

2019年6月24日撮影

これは汚泥の投棄について「畑作のために土壌を改良している」と説明できるよう形を整えているものと考えられる。ただし、この場所に畑作の実態はない。確かに、片隅に家庭菜園程度に作物が植えられてはいるが、ほとんど管理されておらず、雑草に覆われている。

2019年8月26日撮影

そのほかの場所は、畑の畝のようになっているとは言ってもゴミ混じりで、とても作物の育成に適した土には見えない。実際、赤田川北の小屋の横にあった汚泥にはほとんど雑草が生えなかった(乙31)。

2019年9月10日撮影

当会代表は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)のこうした行為を、不法投棄や家畜排せつ物法違反に該当するのではないかと考えていたが、東鳴川町502所有者〈東鳴川C〉は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)との一連の裁判で心身ともに疲弊しきっている様子が見られ、〈東鳴川C〉に村田養豚場(村田畜産/村田商店)による違法疑いのある行為を知らせたとしても、適切な対応を避けてしまうおそれがあった。その場合、将来なんらかの事故や災害があったときに、〈東鳴川C〉が違法疑いのある行為を知っていて放置したのは容認していたからだと判断される危険があると考え、〈東鳴川C〉にこうした現状を知らせることはあえて控えた上で、当会代表としては、事故や災害等で汚泥が流れ出した場合に備え、その原因者を特定できるよう証拠の保全に務めていたものである。

現状2 所有権の移転

以上、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の訴状および本件提訴前の状況を前提として、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による請求の原因を検討してきた。しかしながら、本件訴状の到達を受けて、令和元年8月9日、当会代表が東鳴川町502所有者 〈東鳴川C〉に、改めて賃貸借契約の有無等について確認したところ、以下のような回答があった。

  • 東鳴川町502土地は8月の末に村田さんに売却することになっている。
  • 村田さんがまた借りるということにしても永久に借りることになるから、どうせなら売ってほしいというので、そこまで売ってほしいならということになった。
  • 夏までに、奈良側の隣接所有者とは境界を確定した。
  • 村田さんが言うには、今までも使ってきたのは事実だから、今まで賃借していたことにして、その分の賃料を払いたいとのことで、今までの賃料数年分と、今年の分は半年分を、8月初め頃に払ってもらった。
  • 京都側の境界は村田さんが木津川市と相談しているというので、知らない。
  • 京都側のことはよくわからないが、村田さんは木津川市とは市道の買い取りについても相談していると言っていた。
  • 木津川市加茂町西小長尾2土地所有者の〈加茂町B〉さんが何か言ってきても、村田さんが対応するということになっている。

上記は電話でのやり取りであった上、〈東鳴川C〉は「あの土地と自分はもう関係がない」として、当会代表の問い合わせに対しあまり協力的ではなかった。そのため詳細は不明であるが、令和元年9月現在、すでに東鳴川町502の所有権は村田養豚場関係者に移っている。

村田養豚場の敷地範囲

したがって、訴状における村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張とは関係なく、東鳴川町502所有者の許可なく村田養豚場(村田畜産/村田商店)が同土地に設置したり投棄したりしていた物について、現在ではその違法性を疑う根拠が失われている。東鳴川町502所有者と村田養豚場(村田畜産/村田商店)の間で東鳴川町502の売買契約が成立したうえ、過去に遡って本件賃貸借契約が継続していたとみなすことに双方が合意したことにより、過去における村田養豚場(村田畜産/村田商店)の行為が、〈東鳴川C〉にすべて認容されたと解すことができるためである。ただし、本件賃貸借契約が継続していたとみなす合意は、令和元年8月初めに成立したのであるから、本件賃貸借契約が過去から途切れずに継続していたことを前提とする村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は不当である。

よって、上記現状1で報告した東鳴川町502における汚泥投棄についても、現在では、土地所有者の許可なしに投棄したとして、その違法性を問うことはできない。今後同様のことが繰り返された場合は、家畜排せつ物法に基づき、奈良県によって適切な指導がなされているかどうかが問われることになると思われる。

以上のとおり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張には根拠がない。それだけでなく、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が東鳴川町502を取得したことで、今後村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、現在および将来の行為に対しても、訴状同様の主張を行うことが強く危惧される。すなわち境界が未確定であるから不動産侵奪に当たらないと主張して、修正前の本件市有土地境界確定図にある東鳴川町502と長尾2の境界を無視し、長尾2や公道上に物や建築物を設置したり、あるいは検察官に指導されて中断した山林掘削を再開するような事態が今後起こりかねない。

なお現在でも、修正前の本件市有土地境界確定図において長尾2とされている場所には、村田養豚場のトラックやコンテナが置かれており、橋のそばにある犬の檻についても、長尾2の上に置かれている可能性が高い(乙32)。

境界線を重ねた航空写真

また木津川市は、今後、奈良市と連携して、一旦削除した境界線の再確定を進めると考えられるが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が本件訴訟の論拠を保つために再確定協議を拒んだり、あるいは原確定に沿った再確定を拒絶し、長尾2を大きくえぐる形で新たな境界線を提案するおそれもある。

しかし先に検討したように、村田養豚場(村田畜産/村田商店)には本件市有土地境界確定図の原確定を尊重する道義的責任がある。村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、原確定を踏襲した境界線の再確定に快く協力するべきと考える。また、原確定は、京都府警の捜査に協力する形で、京都府警に対して、当時の土地所有者がそれぞれの土地の土地境界を示したものであることを、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は改めて思い起こすべきである。これまでに検討したように、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が原確定の境界線を熟知しているのは明らかであるから、仮に村田養豚場(村田畜産/村田商店)が次また無断で他人地を掘削するなどした場合に、検察官が村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し二度目の温情を示すとは限らないということを、あらかじめ指摘しておきたい。

1 争点とすべき本件記事内容

本件記事において、重大なる虚偽事実の摘示は、次の部分である(下線は、本書面にて、重要部分に付けたもの。)

  1. 「・・・村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、2003年頃他人の山林を侵奪し、・・・、不法掘削した他人地・・・を・・・占拠し続けています」(1頁本文3行目〜6行目)。
  2. 「これら村田養豚場(村田畜産/村田商店)による不法行為や迷惑行為・・・」 (1頁本文8行目〜9行目)。
  3. 山林侵奪 他人地占拠」(2頁表題)
  4. 「2003年頃他人の山林を掘削・侵奪し、その後も不法掘削した他人地を実質的に占拠し続けています・・・」(2頁本文1行目〜3行目)
  5. 「・・・村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、赤田川北側の他人の山林を無断で削る事件を起こしました。村田養豚場の敷地は上図のようになっており、削られた山林はすべて他人の土地です。」(3頁本文2行目〜4行目)
  6. 「東鳴川のCさんの先代が、村田氏の先代にこの山林を賃貸していました。・・・借りている山林を突如削り始めたのです。この件は裁判になっています」(3頁本文5行目〜8行目)
  7. 「2009年には、村田氏と東鳴川のCさんとの山林賃貸契約はどのような解釈によっても解消しています」(9頁本文5行目〜6行目)
  8. 「京都府木津川市側のAさんBさんは完全に巻き添えで山林を破壊され・・」 (3頁本文9行目)
  9. 「2005年AさんB さんらは村田養豚場(村田畜産/村田商店)を刑事告訴しました・・」(3頁本文10行目)
  10. 「村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、削りとった他人地で野焼きを繰り返し、農場主が現行犯逮捕されています」(4頁本文2行目〜3行目)
  11. 「しかし、山林を削り取られたAさんBさんらによる刑事告訴はなぜか起訴猶予に終わりました」(4頁本文3行目〜4行目)

以上、ア乃至サで当会代表が記事に記載していることを纏めれば、次の通りとなる。

== (i)村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、借地(奈良市東鳴川町502番、当時の所有者〈東鳴川Cの亡父〉、以下、「東鳴川町502」という)を土地所有者に無断で掘削、侵奪し、裁判にまでなった。(i)また、土地所有者との借地契約は解消されているので、 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、東鳴川町502を不法占拠している。(iii)そして、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、東鳴川町502の北隣地である土地(京都府木津川市加茂町西小長尾2番、同1-乙、当時の所有者は〈加茂町B〉ら、以下、「長尾2」「長尾1ー乙」という。)までをも掘削し、〈加茂町B〉らは刑事告訴したが、なぜか起訴猶予になった。

そして、それらの村田養豚場(村田畜産/村田商店)の山林侵奪行為は、「不法行為」(民法709条)に該当する ==

2 東鳴川町502の不法掘削について

しかしながら、まず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、東鳴川町502について、借地契約締結後の平成14年から東鳴川町502を掘削したものであるが、当時の所有者で賃貸人であった〈東鳴川Cの亡父〉義治(以下「〈東鳴川Cの亡父〉」という、記事中ではCさんの先代)に無断で掘削したものではない。この点は、民事裁判で確定している。

すなわち、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が訴状5頁(2)で既述し、当会代表も事実経過として被告第1準備書面13頁 14)で適示しているように、当時の東鳴川町502を〈東鳴川Cの亡父〉から相続した所有〈東鳴川C〉(以下「〈東鳴川C〉」という、記事中のCさん)は、東鳴川町502を掘削した〈村田商店代表乙の父〉(村田養豚場(村田畜産/村田商店)代表者〈村田商店代表乙〉の父)に対して、質貸借契約における借地人の用法違反等を理由として損害賠償請求訴訟を提起した(御庁平成21年(ワ)第1125号損害賠償請求本訴事件、以下「本件訴訟」という)。

しかし、平成23年9月30日、判決が下され、東鳴川町502を掘削することは借地契約の内容として含まれていると判示され、〈東鳴川C〉の請求は乗却された(甲5)。そして、同訴訟は、〈東鳴川C〉により控訴されたが、平成24年3月21日、控訴審(平成23年(ネ)第3211号)においても、原判決は維持され(甲6)、〈東鳴川C〉は上告しなかったので、遅くとも、平成24年4月中には判決が確定した。

よって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、東鳴川町502を不法掘削した事実の存しないことは、本件訴訟の裁判確定によって明白である。本件訴訟の裁判確定は平成24年4月であるから、平成28年6月頃に掲載された本件配事は、明らかに虚偽なる事実の適示である。

すなわち、上記ア「・・・村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、2003年頃 他人の山林を侵害し、・・・、不法掘削した他人地・・・を・・・占拠し続けてい ます」、上記エ「2003年頃他人の山林を掘削・侵奪」、オ「他人の山林を無断で削る事件を起こしました。」は明らかな虚偽の事実の適示である。

また、カの「借りている山林を突如削り始めたのです。この件は裁判になっています」という記事も、不法掘削でないことが確定した裁判であるのに、裁判となった事実だけを適示し、あたかも不法掘削が裁判で認められたかのように表示するものであって、虚偽の事実の適示というべきである。

3 東鳴川町502の不法占有

次に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、東鳴川町502を侵奪(不法占有)している事実もない。その理由は以下の通りである。

(1)占有権限

訴状で既述の通り、前記、不法掘削による借地契約の用法違反を根拠になされた損害賠償請求訴訟(御庁平成21年(ワ)第1125号損害賠償請求本訴事件)に対して、被告であった〈村田商店代表乙の父〉は、反訴として、〈東鳴川C〉に対し、債務不履行に基づく本件借地契約の解除及び損害賠償請求を行っている(以上、本訴、反訴をあわせて、「本件訴訟」という)。これは、〈東鳴川C〉が、前記訴訟を提起したということ自体が、本件借地契約における、賃借人に土地を使用収益させる義務を履行する意思がないことを明らかにしたとして提起したものである。

しかし、この反訴事件は、原審では、〈村田商店代表乙の父〉の主張が認められ、〈東鳴川C〉に5031万2652円の損害賠償支払義務が命じられた(甲5) ものの、控訴審では覆されて、〈村田商店代表乙の父〉の請求は棄却された(甲6)。控訴審においては、本件訴訟紛争によって、〈村田商店代表乙の父〉の東鳴川502の使用収益が法的に困難になったとまでは評価できないとし(甲6、8頁)、〈東鳴川C〉の債務不履行責任は認められないとしたのである(甲6、9頁)。

従って、反訴請求でなされた、〈村田商店代表乙の父〉の本件借地契約の解除は、解除原因がないので、無効である。そして、実際的にも、本訴において、契約の内容として、土地の掘削をすることが含まれているとの判示がなされた以上、〈村田商店代表乙の父〉には契約解除をする必要性もなくなったのである。

よって、本件訴訟の確定によって、東鳴川町502の借地契約は解除されることがなく、賃貸借契約が継続していることが明らかにされたのである。

そして、本件訴訟確定後も、借地契約当事者のいずれからも、借地契約解除の申出がなされたことは一度もない。

従って、後述の東鳴川502の売買契約による、令和元年8月27日の、村田養豚場(村田畜産/村田商店)代表者〈村田商店代表乙〉による東鳴川町502の所有権取得に至るまで、本件借地契約は継続していたのである。

よって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)には、東鳴川町502に対する法的な占有権限があったのであるから、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が東鳴川町502を侵奪(不法占有)したという事実はない。

(3)村田養豚場(村田畜産/村田商店)と〈東鳴川C〉の実質的な関係

また、本件訴訟確定後の村田養豚場(村田畜産/村田商店)と〈東鳴川C〉との実質的な関係からみても、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の不法占拠(侵奪)の事実が無いことが明らかである。

すなわち、本件訴訟は、その判決確定によって、結局、本訴・反訴ともに認められず、笑質的にゼロ和解に等しい結果に終わった。そのため、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、当時の訴訟代理人弁護士からは、その委任契約の終了時に、今後〈東鳴川C〉との契約関係をどうするかについては、〈東鳴川C〉と直接話し合って決めるようにと指導された。

そこで、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、本件訴訟確定後、東鳴川町502をこのまま賃貸し続けるのか、あるいは、〈東鳴川C〉が望むならば売買するのか、〈東鳴川C〉に打診した。

これに対して、当初、〈東鳴川C〉は、本件訴訟の控訴審費用の借入及び〈東鳴川C〉居宅の外壁の修理工事費用の支払いのため、東鳴川町502に建設会社の担保が付けられたので(甲3の1)、売却ができないから暫く待ってほしいということであった。

その後、平成25年10月25日には、上記担保は抹消された(甲3の1)。

しかし、それでも、その後、〈東鳴川C〉は、再三の村田養豚場(村田畜産/村田商店)の申し入れに対しても、「考えておく」と言いながら、なかなか結論を出してくれなかった。

そして、平成28年ころ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)代表者〈村田商店代表乙〉が申し入れた際、〈東鳴川C〉は「・・・ 実は・・・」と、〈村田商店代表乙〉に、次のような話を打ち明けた。

それは「・・実は、東鳴川町502については、共産党議員や〈加茂町B〉氏(後述の長尾2の所有者の一人)から、村田には東鳴川502を貸したり売ったりしないように責められ、「売らない、貸さない」約束の一筆を取られている。それで、売るのも、賃料取るのも隣躇しているんや」という、尋常でない打ち明け話であった。

この「弱常でない打ち明け話」は、本件の実態を如実に表していると言わねばならない。すなわち、私権侵害が先にあるのではなく、環境団体の活動によって、私権が利用されている図式である。

そして、〈東鳴川C〉は、〈村田商店代表乙〉に対して、「・・・そんな事情があるので、とりあえず、ねえちゃん、勝手に使っており・・」と言った。

実際、本件訴訟確定後、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、東鳴川町502を使用することについて、〈東鳴川C〉から不法占拠であるとの抗議を受けたことは一度たりともない。

そして、〈東鳴川C〉は、平成31年5月頃になり、漸く、東鳴川町502の処分について前向きに取り組むようになった。その理由は、一つとして、当会代表からの東鳴川町502に関する問い合わせによって、もう煩わされたくない、東鳴川町502には関わりたくない、という気持ちが強くなったことにあるようであった。そして、もう一つは、〈東鳴川C〉が〈東鳴川C〉の弁護士に相談すると、上記「売らない、貸さない」といった書面には効力がないと言ってもらえたこと、にあるようであった。

そして、上記の通り、令和元年8月27日、東鳴川町502の売買契約が成立し、東鳴川町502は〈村田商店代表乙〉の所有となった(甲11)。

そして、売買協議の中で、賃料も一部払われた(甲12の1乃至3)。

(4)小括

以上の通り、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、東鳴川町502を不法占拠(侵奪)した事実の存しないことは、上記訴訟の経緯と確定判決、そして、その後の村田養豚場(村田畜産/村田商店)と地主〈東鳴川C〉の実質的関係から、明らかである。

従って、東鳴川町502 の不法占拠(侵奪)に関する本件記事は、明らかに虚偽なる 事実の摘示である。

すなわち、上記ウ「山林侵奪 他人地占拠」(2頁表題)上記キ「2009年には、村田氏と東鳴川のCさんとの山林賃貸契約はどのような解釈によっても解消しています」は明らかな嘘偽の事実の適示である。

4 長尾2、本件士地3の不法掘削について

上記の通り、〈村田商店代表乙の父〉は、平成14年から東鳴川町502を〈東鳴川Cの亡父〉との借地契約に基づき掘削していたところ、平成16年夏ごろ、〈加茂町B〉ら(以下「〈加茂町B〉ら」という) から、東鳴川町502の境界を越境して掘削工事を行っていると苦情を受けた。そして、〈加茂町B〉らは、平成19年夏ごろまでに、〈村田商店代表乙の父〉を不動産侵奪、廃棄物処理法違反の容疑で告訴した。そして、〈村田商店代表乙の父〉は、平成19年末頃まで工事を続けたが、その後、検察官の指導を受けて、掘削工事を中止した(以上、甲5、5頁〜6頁)。

当会代表は、この平成16年夏ごろから平成19年末ころまでの掘削工事について、東鳴川町502を越境して、長尾2、長尾1ー乙まで不法掘削したと主張しているものである。

しかし、以下の理由から、そのような不法掘削の事実は存しない。

(1)〈東鳴川Cの亡父〉の指示

〈東鳴川Cの亡父〉は、本件借地契約時の平成14年1月上旬、〈東鳴川C〉を同行の上、〈村田商店代表乙の父〉に対して、東鳴川町502の境界を説明した(甲5、5頁(4))。そして、〈村田商店代表乙の父〉は、平成14年1月10日、〈業者A〉に対し、〈東鳴川Cの亡父〉の説明した上地の範囲を指示した上、同〈業者A〉との間で、東鳴川町502の山林伐採及び土砂撤去工事請負契約を締結し、同〈業者A〉は、上記指示された範囲内で工事を行った(甲5、5頁(5))。

ところで、その際、東鳴川町502と長尾2,長尾1ー乙は、いずれも山林であり、かつ、地主もほとんど出入りすることがないような放置された山林であったので、明確な境界標等は一切なかった。しかし、〈東鳴川Cの亡父〉は、歩いて、〈村田商店代表乙の父〉に境界を示してくれたところ、その示されたところを境に、樹木の塊りや成育状況など、林相に差異が見られた。そのため、〈村田商店代表乙の父〉は、その〈東鳴川C〉の境界の指示に従い、その範囲までが借地の範囲と認識して、以降の掘削工事を行ってきたのである。

よって、〈村田商店代表乙の父〉の掘削行為は、〈東鳴川Cの亡父〉の境界指示に基づく行為であるから、不法掘削ではない。万が一、〈東鳴川Cの亡父〉の指示に境界越境があったとすれば、掘削工事の責任は、〈東鳴川Cの亡父〉にあるのであって、〈村田商店代表乙の父〉に責任はなく、〈村田商店代表乙の父〉に不法行為責任は成立しない。

(2)刑事告訴の帰趨

上記の通り、〈加茂町B〉らは、平成19年夏ごろまでに、〈村田商店代表乙の父〉を不動産侵奪、廃棄物処理法違反の容疑で告訴した。しかし、平成20年2月29日、この告訴事件は不起訴となった。それは、当会代表が本件記事で適示しているように「起訴猶予」でなく、あくまでも「不起訴」処分である。

そして、この不起訴処分にあたって、〈村田商店代表乙の父〉は、上記の通り、検察官から掘削工事を中止する指導を受けたが、既に掘削済みの山林部分についての原状回復の指導は受けていない。

従って、〈加茂町B〉らの刑事告訴の結果、少なくとも既に堀削済みの山林部分についての不動産侵奪は認められなかったものである。

(3)その後の〈加茂町B〉らの法的主張がないことについて

そして、平成20年2月29日、〈村田商店代表乙の父〉の不起訴処分の後、〈加茂町B〉らは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対して、〈村田商店代表乙の父〉の不法掘削を民事上問資する法的手段は何ら取っていない。民事訴訟を提起していないのはもとより、内容証明郵便通知等による法的請求すら行っていない。

当時、〈東鳴川C〉は、民事裁判を提起し、〈村田商店代表乙の父〉の不法掘削を主張し損害賠償請求していたにもかかわらず、〈加茂町B〉らは、〈東鳴川C〉と歩調を合わせる形で、不法掘削による損害賠償請求を行うことをしなかったのである。

その理由は明白である。それは、〈加茂町B〉らが、〈村田商店代表乙の父〉の不動産侵奪を証明する証拠(すなわち、東鳴川町502と長尾2,長尾1ー乙間の境界を客観的に示し、〈村田商店代表乙の父〉の行為が長尾2,長尾1ー乙に及んでいる事実を客観的に示す証拠)が無かったからに他ならない。

そして、〈加茂町B〉らの、〈村田商店代表乙の父〉に対する、不法行為による損害賠償請求権は、本件記事が掲載される平成28年6月ころには、とっくに時効消滅してしまったのである。

(4) 木津川市作成の市有土地境界確定図について

当会代表は、以上の諸事実が存するにもかかわらず、木津川市作成の「市有土地境界確定図」(甲7の3)に基づき、東鳴川町502と長尾2との境界を本件記事中に 掲載し、それをもって、長尾2の侵奪を主張している。

しかし、上記境界確定図は、平成30年8月10日及び同年11月28日に、修正されている。その結果が甲7号証の4の「市有土地境界確定図」である(以下「修正図」という、また、甲7の3の図面は「旧図」という)。

従って、「旧図」に基づき、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の不動産侵奪の根拠とするのは明らかな誤りである。訴状で既述の通り、当会代表は、木津川市より、「旧図」の本件記事への掲載について配慮するように指示を受けている(甲8)。

また、山林の境界確定は難しく、ここで、その詳細に立ち入ることはしないが、境界は当事者の主観ではなく客観的資料に基づき確定されるものであり、私人に処分権はない。そして、境界確定訴訟において参考にされる「古図」(東鳴川町の前身である東里村で保管されてきた古図、甲13)においては、東鳴川町502 (甲11で「〈東鳴川Cの亡父〉」との記載ある左上の土地)とその北側の長尾2との境界は、長尾2側に曲線で膨らんでいるが、それは、「旧図」で記された一直線の境界と明らかに異なる。

古図

このことからだけでも、「旧図」が参照にされるべきでないことは明らかである。

(5) 小括

以上の通り、長尾2、長尾1ー乙の不法掘削については、〈東鳴川Cの亡父〉の境界指示による掘削工事であったこと、〈加茂町B〉らの刑事告訴の帰趨及び〈加茂町B〉らの民事的請求がないまま、損害賠償請求権は時効消滅していること、そして、当会代表の論拠とする木津川市作成の「旧図」は修正されて根拠にならないことから、本件記事は、虚偽の事実摘示であることに間違いない。

すなわち、ウ「山林優輝 他人地占拠」(2頁表題)、「京都府木津川市側のA さんBさんは完全に巻き添えで山林を破壊され・・」(3頁本文7行目〜8行目) は、明らかに虚偽事実の適示である。

また、ケ「AさんB さんらは村田養豚場(村田畜産/村田商店)を刑事告訴しました・・」(3頁本文9行目) サ「しかし、山林を削り取られたAさんBさんらに よる刑事告訴はなぜか起訴猶予に終わりました」(4頁本文3行目〜4行目)は、 起訴猶予でなく不起訴処分であるから、虚偽の事実であって、かつ、「刑事告訴の 記載」自体も、それが「なぜか・・・終わった」という記載と合わせて、全体として、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の犯罪の成立をにおわせるような記載となっており、虚偽の事実記載と言わねばならない。

また、コ「村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、削りとった他人地で野焼きを繰り返し、農場主が現行犯逮捕されています」(4頁本文2行目〜3行目)との記載は、〈村田商店代表乙の父〉は、かつて、野焼きの廃棄物処理法で逮捕されたことはあるが、他人地を削り取った行為(不動産侵奪)で現行犯逮捕されたことはない。同記載は、まるで、不動産侵奪の刑事責任が問賛されたかのような記載になっており、虚偽事実である。

5 まとめ

以上の通り、本件記事のうち、山林侵奪、他人地占有(FACT.1)に関する 記事については、「東鳴川町502の不法掘削」「東鳴川町502の不法占有」「長尾2、長尾1ー乙の不法掘削」が含まれるところ、それらは、いずれも虚偽の事実である。

そして、山林侵奪、他人地占有(FACT, 1)は、記事の第一番目の記事であり、他の記事と比較しても、違法性や犯罪性のインパクトの強い記事になっている。 山林侵奪、他人地占有(FACT.1)の記事は、本件記事冒頭のイ.「これら村田養豚場(村田畜産/村田商店)による不法行為や迷惑行為・・・」に該当しないのに、民事上の不法行為が成立していると断じ、更には、犯罪性をもにおわせる記事になっており、その名誉棄損性は甚だしい。

加えて、山林侵奪、他人地占有(FACT, 1)は、記事の第一番目に存することで、FACT.2以下の不法行為性、犯罪性を印象付ける記事になっいるものである。従って、本件記事全体の名誉棄損性を強めるものとして許しがたい。

1 東鳴川町502の不法掘削について

そもそも本件記事に、東鳴川町502の掘削のみを取り出して、「無断で掘削、侵奪」したと記述している箇所はない(甲2)。

また村田養豚場(村田畜産/村田商店)による山林掘削工事は、東鳴川町502とそれ以外を区別して行われたものではなく、かつ、後述するように、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による山林掘削工事全体の中に「無断で掘削、侵奪」した他人地が含まれることは明らかである。したがって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による掘削工事全体を指して、他人の山林を無断で不法に掘削、侵奪した工事であったと指摘することは、虚偽事実の摘示ではない。

加えて、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が指摘する民事裁判で確定したのは、東鳴川町502の掘削が「賃貸借契約」(村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、訴状においては「本件賃貸借契約 」としているので、以下、本書面では、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の訴訟における表現である「本件賃貸借契約」とする)に含まれることであり、〈村田商店代表乙の父〉が無断で掘削したかどうかについて、裁判所は明確な判断を下していない。

裁判で確定した通り、本件賃貸借契約内に掘削が含まれていたとしても、例えば、図面を示して山林掘削予定の範囲を説明し、山土の処分方法についても打ち合わせするなどして、〈村田商店代表乙の父〉が〈東鳴川C〉から事前に十分な確認を得ていれば、そもそも訴訟が提起されるような事態にはならなかったはずである。一般に、借りている土地の形状を大きく変える工事を行う場合、借主が図面を示すなどして貸主と入念に打ち合わせをすることが、強く期待されると考えられる。したがって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の指摘する民事裁判の結果をふまえても、貸主の確認を十分に受けなかったという意味で、「〈村田商店代表乙の父〉が、〈東鳴川C〉に無断で山林を掘削した」と指摘することは、依然として虚偽とは言えない。

以上のことから、村田養豚場(村田畜産/村田商店)第1準備書面、第2、1、「ア」「エ」「オ」を虚偽事実の摘示とする村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は、全く当を得ないものである。

なお「カ」の記述は、〈村田商店代表乙の父〉による山林掘削が、〈東鳴川C〉にとって不本意な工事であったことを示すため、村田養豚場(村田畜産/村田商店)も認めているように、事実のみを摘示したものである。

当会代表は、平成27(2015)年10月22日、長尾2所有者の一人、〈加茂町B〉の紹介で、〈加茂町B〉とともに、長尾2所有者の〈東鳴川C〉宅を訪れ、詳細な聞き取りを行った。本件記事の当該箇所は、この時の聞き取りを元に書かれている。そのため表現が、御庁平成21年(ワ)第1125号損害賠償請求事件における、「裁判所の判断」(甲5)と異なるところはあるが、本件記事では、〈村田商店代表乙の父〉が東鳴川町502を土地所有者から賃借していたこと、及び、〈村田商店代表乙の父〉が「どのように使ってもいいという約束で先代から借りた」と主張していたことにも触れている。

2 東鳴川町502の不法占有について

(1)〈東鳴川C〉は、当会代表に対し、本件賃貸借契約が継続しているという認識を示さなかった。

ア 〈東鳴川C〉に対する聞き取り

 前述の通り、当会代表は、平成27(2015)年10月22日に、〈加茂町B〉とともに、〈東鳴川C〉の自宅を訪れているが、その際当会代表が〈東鳴川C〉から聞いた話はおよそ以下の通りである。

  • 〈村田商店代表乙の父〉の先代〈村田商店代表乙の祖父〉が存命のうちはなごやかな関係だった。

  • 東鳴川町では、特に二人、先代〈村田商店代表乙の祖父〉と仲よくしていた人がいた。

  • ところが仲よくしていた三人が全員亡くなってから、〈村田商店代表乙の父〉が暴れ出した。

  • 最後に亡くなったのは、〈東鳴川Cの亡父〉。

  • 〈村田商店代表乙の父〉に東鳴川町502を掘削されたことで裁判を起こしたが、逆に工事代を請求され、最初の弁護士が頼りなかったため一審で負けた。それで弁護士を替えて控訴し、最終的にチャラにはなったものの、不本意な結果に終わった。

  • そのあと村田養豚場に東鳴川町502で勝手をさせないため、大きな建設会社の抵当権がつけば手を出せないだろうということで、パートタイムの勤め先でもある〈建設会社N〉に、東鳴川町502に抵当権をつけてもらった。

  • 今は村田さんに東鳴川町502を貸していない。平成21(2009)年には、東鳴川町502の賃貸借契約はどのような解釈によっても解消している。(この発言は非常に自信に満ちた態度で語られた。)

  • 駐車するぐらいは黙認しているが、東鳴川町502に置いてあるものは撤去してほしいと思っている。

以上の通り、本件記事は、東鳴川町502所有者である〈東鳴川C〉が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に東鳴川町502を賃貸していないことを、当会代表が〈東鳴川C〉に直接確認した上で書かれたものである。したがって、当会代表には、摘示事実が真実であると信ずるについて相当の理由があった。

また、平成31(2019)年3月に、当会代表が〈東鳴川C〉から電話で聞き取った際にも、〈東鳴川C〉は、上記と同様に賃貸借契約はない旨、改めて明言している。

イ 〈東鳴川C〉が、平成21(2009)年に本件賃貸借契約が解消しているとする根拠

御庁本訴・平成21年(ワ)第1125号 損害賠償請求事件、反訴・平成22年(ワ)第390号損害賠償請求事件(以下、「東鳴川町502裁判原審」という。)の判決「3 反訴請求について、(1) 請求の原因、ウ」に、「当会代表(〈村田商店代表乙の父〉)は,平成22年4月14日付け内容証明郵便で,村田養豚場(村田畜産/村田商店)(〈東鳴川C〉)の債務不履行により,本件契約を解除することを通知し,同郵便は村田養豚場(村田畜産/村田商店)(〈東鳴川C〉)に翌15日に配達された。」とある(甲5ー6頁)。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、東鳴川町502裁判の結果によって、本件賃貸借契約を解除するとの上記通知は効力を失ったとするが、アの通り、〈東鳴川C〉が当会代表に対してそのような認識を示したことはない。

さて、〈東鳴川C〉が、東鳴川町502裁判の結果に拘わらず、本件賃貸借契約の解除が有効のままであると認識していたとすると、少なくともこの〈東鳴川C〉の立場からは、以下の通り、平成21(2009)年に本件賃貸借契約が解消していたと考えることが可能である。

  1. 東鳴川町502裁判原審・控訴審の判決によれば、確かに村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、平成17(2005)年2月28日から平成22(2010)年2月16日までの間、毎年3月から1年分の賃料の供託を続けている(甲5甲6)。しかし、〈東鳴川C〉は、当会代表の聞き取りに対し、村田養豚場(村田畜産/村田商店)から賃料は受け取っていないと語っていた上、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は〈東鳴川C〉が供託金を受領したとは主張しておらず、また村田養豚場(村田畜産/村田商店)からは〈東鳴川C〉が供託金を受領した証拠も提出されていない。

    そのため村田養豚場(村田畜産/村田商店)が供託した賃料が最終的にどのように処理されたか不明であるが、〈東鳴川C〉が本件賃貸借契約が解除されたままであると認識しており、かつ、言葉通り賃料を受け取っていなかったとすると、〈東鳴川C〉が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が積み立てた供託金については、その後村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身が取り戻したはずだと考えることは、大いにあり得る。

    なお、村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身が供託金を取り戻していた場合、民法496条1項ただし書の規定により、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は供託をしなかったものとみなされるので、平成17(2005)年2月以降、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、〈東鳴川C〉に、賃料を支払っていなかったことになる。

  2. 当会代表第1準備書面「第2、4 東鳴川町502・2・3に係る木津川市市有土地境界確定図が確定されるまでの経緯」で示した通り、木津川市は、平成19(2007)年の3町合併当初から、木津川市道敷に村田養豚場(村田畜産/村田商店)が違法に建築した小屋の撤去に取り組んできたが、その取り組みの中で、平成20(2008)年8月ごろに、木津川市管理課が作成した「(村田)養豚場一件、経過概略」(乙81ー2頁)によれば、当時、〈東鳴川C〉と〈村田商店代表乙の父〉の間で、本件賃貸借契約をめぐって主張の違いがあり、このころ〈村田商店代表乙の父〉は、何らかの根拠に基づき、平成21(2009)年2月まで本件賃貸借契約が継続すると主張していた。

すなわち、本件賃貸借契約の解除が有効であり、供託金は村田養豚場(村田畜産/村田商店)が取り戻したという認識を前提とすれば、本件賃貸借契約に基づく、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による賃料の支払いは、平成16(2004)年2月が最後であったとみなされる(ア)ところ、一方で〈村田商店代表乙の父〉が、平成20(2008)年8月ごろに、平成21(2009)年2月まで本件賃貸借契約が継続すると主張していた(イ)ことを考慮すると、本件賃貸借契約は、遅くとも平成21(2009)年には解消した、と言うことができる。

したがって、平成27(2015)年10月22日に 、〈東鳴川C〉が当会代表に対し、時期を明確に「平成21(2009)年」とした上で、本件賃貸借契約は解消したと明言したことには、上記のような根拠が意識されていたと考えられ、信憑性がある。

(2)本件賃貸借契約が継続していた実態はない。

ア 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、東鳴川町502において、畜産業(牛の放牧)を営んでいない

本件賃貸借契約は、東鳴川町502において畜産業(牛の放牧)を行うことを目的として締結されたものである(甲5ー5頁、甲6ー7頁)ところ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、東鳴川町502裁判終結の後、東鳴川町502において、計画されていた畜産業(牛の放牧)を、全く実行していない。

イ 「尋常でない打ち明け話」は事実と異なる。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、〈東鳴川C〉から「実は、東鳴川町502については、共産党議員や〈加茂町B〉氏(後述の長尾2の所有者の一人)から、村田には本件土地を貸したり売ったりしないよう責められ、「売らない、貸さない」約束の一筆を取られている」(村田養豚場(村田畜産/村田商店)第1準備書面9頁)という「尋常でない打ち明け話」を聞いたとするが、この「尋常でない打ち明け話」の内容は、事実と異なる。

〈東鳴川C〉が、平成18(2006)年11月3日に、土地不譲渡確約書を交わしたのは事実であるが、その相手は、東鳴川町502に隣接する東鳴川町501の共同所有者らである(乙80の1)。なお後述するように、東鳴川町502に隣接する東鳴川町501の共同所有者らもまた、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による山林掘削の被害者である。

平成18年11月3日-土地不譲渡確約書(東鳴川町501・502)

同様の土地不譲渡確約書は、同じ頃、長尾2共同所有者の間でも交わされた(乙80の2)。その後、奈良市東鳴川町と木津川市加茂町西小両地域の関係者の間で、それぞれの土地不譲渡確約書が交換されている。

つまりこの土地不譲渡確約書は、〈東鳴川C〉と、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による山林掘削の被害を受けた隣接地所有者らが、所有地を誰にも譲渡しないと互いに確約することで、自らの所有地及びその隣接地が村田養豚場(村田畜産/村田商店)の手に渡ることを阻止し、そのことにより、将来にわたって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)から再び土地境界の侵害を受けないことの保証としようとしたものである。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は「尋常でない打ち明け話」とするが、これは全く驚くような話ではない。すでに死亡した人物による指示だと一方的に主張して、隣接所有者の抗議も聞かず、検察官に止められるまで山林を掘削し続けるような、まさに尋常でない状況が再発することのないよう、〈東鳴川C〉と山林掘削被害者らが、自衛のために約束を交わしただけのことである。

したがって、〈東鳴川C〉が、本当に村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「尋常でない打ち明け話」をしたかについては疑念があるが、仮にこれが、実際に村田養豚場(村田畜産/村田商店)に語られたものだとしても、それほど不思議はない。

〈東鳴川C〉が居住する奈良市東鳴川町は極めて小さな山村である。その中にあって、自分の土地を賃借していた借主が、隣人の山林を掘削してしまったとあれば、〈東鳴川C〉が、村落の中で非常に肩身の狭い思いをさせられていたことは、想像に難くない。

さて、もし〈東鳴川C〉が、同じ村落の中にいる隣人と、土地不譲渡確約書を交わしたのだと、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に正直に明かした場合、今度は村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、その隣人のところへ話をしに行く可能性がある。そうすると、ますます隣人に迷惑をかけることとなりかねないので、〈東鳴川C〉が、さほど交流のない京都側の関係者の名前を出して、東鳴川町502の賃貸や売却を断ることには、一定の動機が見出せる。

また、自らの意思として、東鳴川町502の賃貸や売却を断ることは、〈東鳴川C〉にとって、困難を伴うことであったと考えられる。当会代表は、平成27(2015)年秋頃、長尾2所有者の一人である〈加茂町B〉のほか、奈良市東鳴川町の観音講に集う地元住民(氏名不詳)からも、〈東鳴川C〉が、一連の東鳴川町502裁判で心身ともに疲弊し、経済的にも追い詰められて、一時はノイローゼのようになっていたと聞いた。〈東鳴川C〉にとって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)と再び鋭く対立し、その結果、何らかの裁判に巻き込まれることは悪夢以外の何物でもなかったと思われる。

そこで、〈東鳴川C〉としては、東鳴川町502の賃貸や売却を断るにしても、村田養豚場(村田畜産/村田商店)を刺激しすぎないよう工夫する必要があったと考えられる。村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、当初、〈東鳴川C〉から、東鳴川町502に抵当権がついたので、しばらく待ってほしいと言われたことを指摘するが、前述の通り、〈東鳴川C〉は当会代表の聞き取りに対しては、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に勝手をさせないため、〈建設会社N〉に抵当権をつけてもらったと述べている。すなわち、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の指摘は、東鳴川町502への抵当権設定が、〈東鳴川C〉の期待通りに、効果を上げていたことを示すものと解する余地もある。

以上の通り、村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「尋常でない打ち明け話」は事実と異なっており、〈東鳴川C〉の村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対する態度が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が指摘するほど好意的であったかどうかについても、大いに疑問がある。少なくとも、「村田養豚場(村田畜産/村田商店)と〈東鳴川C〉の実質的関係」に、本件賃貸借契約が継続していたことを示唆するような実態があったとは考えがたい。

ウ 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は令和元(2019)年5月ごろ、〈東鳴川C〉に好条件を示した

前述の通り、東鳴川町502隣接地所有者は、平成18(2006)年11月に土地不譲渡確約書を交わしていたので、令和元(2019)年8月27日に、〈東鳴川C〉が、東鳴川町502を村田養豚場(村田畜産/村田商店)に売却したことは、土地不譲渡確約書に反することであるから、売却の情報を受け、長尾2所有者の一人である〈加茂町B〉が、〈東鳴川C〉に事情を聞きに行ったことは当然のことと言える。

令和元(2019)年11月ごろ、当会代表が、〈東鳴川C〉に面会した〈加茂町B〉から聞き取ったところによると、〈東鳴川C〉は、東鳴川町502の売買に関して、村田養豚場(村田畜産/村田商店)から、それまでとは異なる好条件を提示されたと話していたという。さらに、当初は10年の分割払いという話だったが、それでは10年先まで本当に支払われるかわからないため、一括払いを要求したところ、すでに全額振り込まれているとのことであった。〈東鳴川C〉は、具体的な金額については、〈加茂町B〉に語らなかった。しかし、東鳴川町502裁判などに費やした額程度は最低限取り返せたとして、それなりに満足している様子ではあったという。

また、東鳴川町502売却にあたり、土地不譲渡確約書を交わした、東鳴川町502に隣接する東鳴川町501共同所有者らから、東鳴川町502と東鳴川町501の土地境界を法的に確定しない限り、売却は認めないと強く言われたが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が土地境界確定の費用を全額負担することになったので、令和元(2019)年夏ごろまでに関係者が立ち会って土地境界が確定され、売却が可能になったとのことである。その一方、長尾2の共同所有者らには、事前に売却の話は伝えられなかった。

確かに当会代表は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)代理人より本件御通知書(乙1)が到達したことを受け、平成31(2019)年3月2日に、〈東鳴川C〉に電話をして東鳴川町502に係る賃貸借契約の有無等について改めて確認している。このときも〈東鳴川C〉は、今は村田養豚場(村田畜産/村田商店)に東鳴川町502の使用権がないことや、賃貸借契約はないこと、小屋やゴミは片付けてもらわないと困ることなど、それまで同様の回答をしているが、この当会代表による問い合わせがあったことによって、〈東鳴川C〉が、何らかの紛争に巻き込まれる危険を感じた可能性はある。

しかしながら、令和元(2019)年5月ごろから、〈東鳴川C〉が東鳴川町502の売却に前向きとなったとすれば、それはむしろ、〈東鳴川C〉の事情というよりも、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の事情を反映したものであろう。このころ村田養豚場(村田畜産/村田商店)には、それまでと異なる好条件を〈東鳴川C〉に示してでも、東鳴川町502を取得しなければならない、何らかの事情ができたものと考えられる。

エ 村田養豚場(村田畜産/村田商店)が賃料の供託を再開した証拠は提出されていない。

東鳴川町502裁判確定後、〈東鳴川C〉が、本件賃貸借契約が継続していないという認識(前述当会代表による〈東鳴川C〉に対する聞き取り)の下、村田養豚場(村田畜産/村田商店)から賃料を受け取ることを拒否していたにも拘わらず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)はこれに対抗して賃料の供託を再開したとは主張していない。また賃料の供託を再開した証拠も提出されていない。

オ 令和元(2019)年8月8日付けの領収書(甲12の1乃至3)は、本件賃貸借契約の継続を示すものではない。

求釈明により提出された令和元(2019)年8月8日付けの領収書には、賃料の対象となる賃借期間について、それぞれ、「2017年1月〜12月」(甲12の1)、「2018年1月〜12月」(甲12の2)、「2019年1月〜6月」(甲12の3)、としている。

領収証

しかし、本件賃貸借契約は、3月1日から翌年の2月末日までの先払いとされている(甲4)。〈東鳴川C〉は、令和元(2019)年8月末に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に東鳴川町502を売却する予定となっていたのであるから、令和元(2019)年分を、本件賃貸借契約の通り 、半年分として「2019年3月〜8月」とした方が、賃貸借期間と売却時期とが連続し、都合がよい。

ところが、前述の通り、実際の領収書ではそうなっておらず、本件賃貸借契約に規定された賃貸借期間を無視して、年末ごとに支払いを区切っている。すなわち、賃貸借期間が別のものに変わっている以上、令和元(2019)年8月に、過去に遡った賃料の支払いが一部なされたとしても、そのこと自体が直ちに本件賃貸借契約の連続性を示すとは言えない。

したがって、 令和元(2019)年8月8日付けの領収書(甲12の1乃至3)を、本件賃貸借契約が継続していたことの証拠とみなすことはできず、これらはむしろ本件賃貸借契約が断絶していたことの証拠であるとさえ言える。

(3)小括

以上の通り、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は本件賃貸借契約が途切れなく継続していたとするが、〈東鳴川C〉は当会代表に対し、本件賃貸借契約は解消したと明言していた。

また、村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「尋常でない打ち明け話」の内容は事実と異なっており、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張する、村田養豚場(村田畜産/村田商店)と当時の東鳴川町502所有者〈東鳴川C〉の実質的関係の実態には疑念がある。

加えて、東鳴川町502裁判ののち、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は賃料の供託を再開しておらず、一時期供託していた賃料についても、〈東鳴川C〉が受領した証拠は提出されていない。さらに、令和元(2019)年8月8日に、事後的に支払われた賃料については、賃料の対象期間が、本件賃貸借契約と整合しない。また、本件記事が公開された平成28(2016)年6月を含む期間について、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が〈東鳴川C〉に賃料を支払った証拠は提出されていない。

さらに、東鳴川町502において、本件賃貸借契約の目的である畜産業(牛の放牧)が行われることはなかった。

したがって、本件賃貸借契約が継続していた実態はなく、村田養豚場(村田畜産/村田商店)第1準備書面、第2、1、「ウ」「キ」は虚偽ではない。少なくとも、当会代表には、摘示事実が真実であると信ずるについて相当の理由があった。

3 長尾2、長尾谷1ー乙の不法掘削について

(1)不法行為と不法行為責任の有無

ア 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、〈加茂町B〉らの刑事告訴が不起訴処分に終わったこと、及び、〈加茂町B〉らがその後民事訴訟を提起しなかったことを指摘して、〈村田商店代表乙の父〉による不法掘削はなかったと主張するが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の指摘するこれらの事実は、〈村田商店代表乙の父〉の不法行為責任が、結果的に問われなかったことのみを示すものであって、そのことは必ずしも、〈村田商店代表乙の父〉による不法掘削がなかったことを担保しない。

イ また、後述するように、〈村田商店代表乙の父〉による不法掘削があったことは明らかであるので、〈村田商店代表乙の父〉の不法行為責任の軽重に、当然議論の余地はあるとしても、東鳴川町502裁判において裁判所に事実として認められているように、〈村田商店代表乙の父〉が、〈加茂町B〉らから複数回にわたって抗議を受けていた(甲5甲6)ことを鑑みれば、〈村田商店代表乙の父〉に不法行為責任が全くなかったとは、到底考えられない。

ウ 加えて、〈加茂町B〉らは、刑事告訴の告訴状において、平成16(2004)年4月28日に、〈加茂町B〉らが現地で〈村田商店代表乙の父〉に抗議した際、〈村田商店代表乙の父〉が口頭では工事の中止を了解したことや、平成17(2005)年2月25日に、〈村田商店代表乙の父〉の代理人が、やはり掘削の中止と堆積物の撤去で合意していたことを指摘している(乙82)。告訴状記載の事実があったとすれば、〈村田商店代表乙の父〉に、故意あるいは過失が全くなかったとは到底考えられない。

エ なお、本件記事に、〈村田商店代表乙の父〉の「不法行為責任」について触れた箇所はない。

(2)〈加茂町B〉らによる民事訴訟がなかったことについて

以下は〈加茂町B〉からの聞き取りを当会代表がまとめたものである。内容については、本書面提出前に〈加茂町B〉の確認を受けた。

ア 当時、すでに〈加茂町B〉らは全員高齢であり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し訴訟を提起することは、体力的にも資金的にも、大きな負担であった。実際、〈加茂町B〉の亡夫、〈加茂町Bの亡夫〉は、山林掘削対応による心労もあって、刑事告訴をした頃、脳梗塞で倒れ、それから10年と経たないうちに死亡している。

また刑事告訴に続いて民事訴訟を提起したとしても、山が元に戻されるとは限らず、負担に耐えるだけの成果があるかどうかは、〈加茂町B〉らにとって予測不能であった。

イ しかし一方で、〈加茂町B〉らは、刑事告訴に先立ち、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、東鳴川町502及びその隣接地を取得することのないよう、〈加茂町B〉らの他、東鳴川町502隣接所有者の間で、土地を第三者に譲渡しないことを確約する確約書を取り交わしている(乙80)。〈加茂町B〉によれば、確約書には明記されていないが、土地を賃貸しないことも、当事者間で合意されていたとのことである。

ウ さらに、刑事告訴を受けた京都府警の捜査に協力する形で、平成19(2007)年11月20日、木津川市が市有土地境界確定図を確定し、その際、〈加茂町B〉らと〈東鳴川C〉の同意を得て、木津川市は、府県境の明示を兼ね、東鳴川町502と長尾2の境界線についても確定した。

そしてその後、〈加茂町B〉らによる刑事告訴は不起訴処分に終わったものの、検察官の指導によって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による掘削工事は止まった。

エ これらによって、〈加茂町B〉らは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、東鳴川町502及びその隣接地を、再び掘削することはできなくなったと考え、その点では安心できたので、高齢の身には負担の大きな、民事訴訟という解決を選ばなかったのである。

すなわち、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が東鳴川町502を取得あるいは再び賃借することは、土地不譲渡確約書により防がれると考えられ、たとえ村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、東鳴川町502を越えて、長尾2の掘削を再開したとしても、今度は、木津川市の市有土地境界確定図という信頼性の高い根拠に基づき、刑事告訴など法的措置が可能となるであろう。この二重の防御をもって、〈加茂町B〉らは村田養豚場(村田畜産/村田商店)による掘削の拡大を、将来にわたって阻止できると確信し、ひとまず安心したのである。

オ また、〈加茂町B〉は当会代表の聞き取りに対し、これまでに複数回、口頭で、村田養豚場(村田畜産/村田商店)代表〈村田商店代表乙〉に、越境しているものを撤去し山を元に戻すよう要求してきたと述べている。すなわち〈加茂町B〉らは、被害の拡大を防いだ上で、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の代替わりによって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の態度が変わることに期待し、機会を捉えては、口頭で村田養豚場(村田畜産/村田商店)を説得する方法を選んだということである。

カ そのため、令和元(2019)年8月末に村田養豚場(村田畜産/村田商店)が東鳴川町502を取得したことは、〈加茂町B〉らにとって想定外であり、この事態は二重の防御の一角が崩れたことを意味した。

そしてそれを実証するかのように、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、令和元(2019)年10月7日付けで、豚コレラ対策として、イノシシ侵入防止のための防護柵を、長尾2に越境する形で、東鳴川町502の周囲に設置する旨、〈加茂町B〉ら長尾2共同所有者全員に通知している(乙84の1)。

この防護柵設置通知書(以下、「本件防護柵設置通知書」という。)の中で村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、防護柵位置が長尾2に越境する形となっていることについて、東鳴川町502と長尾2の土地境界が未確定であるという、本訴訟と同様の主張をした上で、公図などを参考に防護柵の位置を決めたと説明している。しかし一方で村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、防護柵の位置が土地境界であるとも府県境であるとも考えていないとしている。

これを受け、長尾2共同所有者らは、令和元(2019)年10月20日、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し、長尾2に越境して防護柵を設置しないよう求める内容証明郵便(以下、「本件防護柵返答」という。)を送付した(乙84の2)。

なお本件防護柵返答によれば、長尾2共同所有者らが求めていたのは、長尾2に越境して置かれているものの撤去と、長尾2に越境して防護柵を設置しないことであり、長尾2共同所有者らは、防護柵の設置そのものには、反対していなかった。村田養豚場(村田畜産/村田商店)が防護柵を設置する場合は、東鳴川町502前所有者である〈東鳴川C〉と長尾2共同所有者が合意した土地境界、すなわち平成19(2007)年11月20日確定の市有土地境界確定図(村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「旧図」。以下、「本件原確定」という。)にある土地境界を越えないよう、求めただけである。

ところが村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、令和元(2019)年11月28日に、京都府畜産課と木津川市農政課にファックスを送り、長尾2共同所有者らが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による防護柵設置そのものを了承していないかのように訴え、「対応」を依頼している(乙84の3)。

このファックスには、長尾2共同所有者らが村田養豚場(村田畜産/村田商店)に送った内容証明郵便が添付されているが、一枚目のみの添付となっており、長尾2共同所有者らが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による防護柵設置そのものには反対していないことがわかる二枚目が省略されている。村田養豚場(村田畜産/村田商店)による、こうした行政への働きかけには、長尾2に対する、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の強い執着が表れていると考えられる。

そして令和2(2020)年1月10日ごろ、長尾2共同所有者らが認めていないにも拘わらず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、村田養豚場を囲う防護柵を、長尾2に越境する位置に設置した(乙84の4)。

長尾2に越境して設置された防護柵

当然のことながら、長尾2共同所有者らは、これに対し、越境して設置された防護柵の撤去を改めて要求している(乙84の5)。

キ 以上のとおり、長尾2共同所有者らは、本件原確定にある府県境が、〈東鳴川C〉と合意した土地境界であると認識しており、これまで法的手段に訴えなかったのは、土地不譲渡確約書と本件原確定によって、長尾2を村田養豚場(村田畜産/村田商店)から守りつつ、代替わりに期待して、越境物を撤去し土地境界を守るよう、いずれは村田養豚場(村田畜産/村田商店)を説得できるであろうと考えていたためである。

しかし、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が東鳴川町502を取得した後の、令和元(2019)年10月20日には、長尾2共同所有者らは 、内容証明郵便で、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し、越境して柵をしないことに加え、越境して置かれているものを撤去するよう求めており(乙84の2)、防護柵が設置されたのちにも、長尾2共同所有者らは 、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し同様の要求を行なっている(乙84の5)。

ク ところで、この防護柵設置に合わせ、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道に、木津川市道を封鎖する形で、門扉が三箇所も設置されたが、木津川市と京都府警は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し、これら門扉設置に係る道路使用許可および道路占用許可を出している。

この道路占用(使用)許可は、その法的根拠が希薄である上、村田養豚場が、敷地に挟まれた市道と敷地の間に柵をせず、両者を何によっても区分していない現状を放置しながら、木津川市及び京都府警が、市道に三箇所もの門扉設置を認めることは、市民の通行権との兼ね合いにおいて、著しくバランスを欠いていると言わなければならない。当会代表としては、木津川市と京都府警の判断には重大な問題があると考えるが、本書面ではこれ以上立ち入らない。

(3)不法掘削はあった。

ア 確かに、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の指摘するとおり、東鳴川町502と長尾2の土地境界(以下、「本件境界」という。)は、明確ではなかったと思われる。しかし、本件境界が確定されていないとしても、本件境界が取りうる線は、隣接する府県境確定点や地形、公図、あるいは「古図」から、ある程度絞りこむことができる。そこで、〈村田商店代表乙の父〉による掘削域が、東鳴川町502内に収まるものではなかったことを、以下の資料から検討する。なお、以下の資料は全て、本件記事が公開された平成28(2016)年6月より前に、当会代表が入手していたものである。

(ア) 地内平面図 里道(京都府相楽郡木津町・京都府相楽郡加茂町・奈良県奈良市中ノ川町・奈良県奈良市東鳴川町)(以下、「本件地内平面図」という。)(乙85

地内平面図 里道(京都府相楽郡木津町・京都府相楽郡加茂町・奈良県奈良市中ノ川町・奈良県奈良市東鳴川町)

昭和58(1983)年に、木津町、加茂町、奈良市共同で作成された地内平面図である。乙85は、当会代表が「弥勒の道プロジェクト」の活動として、古い道を調べるために、平成26(2014)年12月ごろ、奈良市土木管理課において入手した写しである。白黒コピーのため分かりにくいが、白丸を実線で結んだものが朱線明示線となっており、確定した里道境界と府県境界が、原本では朱線で明示されている。

(イ) 木津川市の平成19(2007)年11月13日付け回議書「市有土地の境界確定について(木津川市加茂町西小長尾2、長尾谷1ー乙)(以下、「本件原確定回議書」という。)(乙83

木津川市が本件原確定にあたって参照した、奈良市側を含む公図や地籍図が添付されている。その中には、本件地内平面図とほぼ同じ図面が含まれる(乙83ー30枚目)が、これは国有水路境界確定図として作成されたもので、本件地内平面図と同時に作成されたものとみられる。この図面にも、確定した府県境が書き込まれており、木津川市は本件原確定にあたって、この赤田川南岸の確定済み府県境を参考にしたと思われる。

また、当会代表は、平成27(2015)年9月9日、長尾谷1ー乙所有者である〈加茂町A〉に聞き取りを行い、〈加茂町A〉家保管の長尾谷の公図複製図(乙87)を閲覧しているが、〈加茂町A〉家の公図複製図は本件原確定回議書に添付された「木津川市加茂町長尾谷」の公図(乙83ー8枚目)とほぼ同じものである。

〈加茂町A〉家の公図複製図

ただし、〈加茂町A〉家の公図複製図では、戦前に付け替えた道が鉛筆書きで書き込まれていた一方、木津川市の公図にある道は古い道筋のままであった。そこで後述する公図と航空写真の合成にあたっては、〈加茂町A〉家保管の公図複製図にある、曲がりくねった新しい道の存在を考慮した。

(ウ) 本件防護柵設置通知書(乙84の1

村田養豚場(村田畜産/村田商店)が特に重要だと考えているとみられる公図が添付されている。

(エ) 「古図」(甲13

村田養豚場(村田畜産/村田商店)が特に重要だと考えている地図と思われる。なお、この「古図」には原図が存在する。明治22(1889)年10月12日作成の、「添上郡鳴川村実測全図」がそれである。当会代表は、平成27(2015)年1月20日、古い道を調べるため、奈良市東部出張所を訪れ、添上郡鳴川村実測全図を含め、旧東里村各村の実測全図の複製図をいくつか閲覧の上、許可を得て撮影している(乙86ー1)。

添上郡鳴川村実測全図

なお、添上郡鳴川村実測全図の「古図」に該当する範囲を拡大すると、村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「古図」が、添上郡鳴川村実測全図を白黒で写し取ったものであることがわかる(乙86ー2)。

添上郡鳴川村実測全図(養豚場付近拡大)

ところで、少なくとも東鳴川町では、全戸に添上郡鳴川村実測全図の白黒の写しが配布されているものと思われる。当会代表が、平成27(2015)年秋頃、東鳴川町の民家を訪れ、地域の歴史などについて話を聞いた際、添上郡鳴川村実測全図の写真を見せたところ、家主にそれと同じものが家にあると言われ、白黒の写しを見せられているからである。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「古図」は、その白黒の写しの一部をコピーして、土地の所有者を書き込んだものと考えられる。村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「古図」には、〈東鳴川C〉の亡父〈東鳴川Cの亡父〉の名前が見えることから、「古図」とは言いながら、土地の所有者が書き込まれた時期は、そう古いことではない。

また、村田養豚場の敷地に当たる土地にも、元の所有者名が書かれているところを見ると、村田養豚場が現在地に移転してきた際、周辺の土地の所有者がわかるよう、地域住民から渡されたものとも考えられる。

そうすると、〈村田商店代表乙の父〉は、山林掘削時にはすでにこの「古図」を所持していたということになる。つまり、山林掘削時、〈村田商店代表乙の父〉は、すでに亡くなっていた〈東鳴川Cの亡父〉の指示以外にも、「古図」という、土地境界を判断する上で重要な資料を持ち合わせていた可能性もある。

(オ) 航空写真

国土地理院やウェブ上の地図サービスから入手できる航空写真により、東鳴川町502周辺の状況を確認することができる。今回現在の航空写真として、平成30(2018)年ごろの航空写真を用いたが、本件記事が公開された平成28(2016)年6月には、最新の航空写真として、平成28(2016)年ごろの航空写真が、ウェブ上の地図サービスから閲覧可能であった。

イ 上記資料から、本件境界が取りうる線は、下記条件を満たす必要があるとわかる。

(ア)【本件境界条件1】本件境界南西端点は、赤田川南岸の府県境確定点近傍にある。

本件原確定回議書に添付された「木津川市加茂町長尾谷」の公図(乙83ー8枚目)及び「奈良市東鳴川町地籍図」(乙83ー31枚目)に加え、「古図」(甲13乙86ー2)を見ると、本件境界の南で赤田川を渡る府県境の線が、赤田川沿いに遡ったり下ったりせず、赤田川を滑らかに横切っていることがわかる。

これらの図面は、厳密な測量に基づいていないため信頼性は低いが、複数の図面で境界線が滑らかに赤田川を横切っていることは、図面が実際を反映している証左と考えられる。 したがって、本件境界南西端点が、赤田川南岸の府県境確定点近傍にあることは明らかである。

(イ)【本件境界条件2 】本件境界北東端点は掘削域北東に現存する稜線か、その南西方向延長線上にある。

本件原確定回議書に添付された「奈良市東鳴川町第六号」の公図(乙83ー10枚目)及び「古図」(甲13乙86ー2)を見ると、北東から南西へ、赤田川へ向かってほぼ直線的に伸びる府県境の線が、東鳴川町501と東鳴川町502の境界で、やや西へ折れ曲がることがわかる。

上述のほぼ直線的な府県境の線は、長尾2と東鳴川町501の境界でもあり、比較的明瞭な稜線となっている。つまり、本件境界北東端点は、この掘削されずに現存する稜線上、あるいは、その南西方向延長線上の掘削域になければならない。

(ウ)【本件境界条件3】 本件境界北東端点は、赤田川南岸府県境確定点から東北東方向に直線距離で109.3m以内になければならない。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「古図」の原図である添上郡鳴川村実測全図は、「実測」というだけあって、村界に関しては、時計回りに、方角と距離の実測値が記載されている(乙86ー2ー左上180度回転拡大図)。例えば、赤田川南岸から北東へ伸びる村界に、黒字で「六十度廿分」とあるのは北を0度とした方角を表し、赤字で「十二間二分」とあるのが距離である。

この実測値によれば、赤田川南岸府県境確定点から、60度20分で22.18m、79度50分で18.73m、79度50分で44.18m、78度40分で24.18m進んだところに、本件境界北東端点がある。すなわち添上郡鳴川村実測全図に従えば、赤田川南岸府県境確定点から本件境界北東端点までは、一度緩やかに折れ曲りつつ、ほぼ直線的に東北東へ、合計109.3m(60.1間)である。

ただし、添上郡鳴川村実測全図にある方角の実測値は偏角を補正していないと見られ、方角が数度ずれている。そこで、実測値の再現にあたっては、明治22(1889)年の近畿地方の推定偏角である西偏4.4度(日本考古地磁気データベース/日本周辺での推定地磁気方位<http://mag.center.ous.ac.jp/reduction/cal.cgi>による)で方角を補正した。

ところで村田養豚場(村田畜産/村田商店)も指摘する通り、「古図」上の本件境界は、ほぼ直線に近いものの、一度緩やかに折れ曲がっており、なだらかな弧を描いているように見える。したがって、 本件境界北東端点は、赤田川南岸府県境確定点から、東北東方向へ、少なくとも直線距離で109.3m以内になければならないと言える。

ウ 次に航空写真を用いて、上記条件を満たす本件境界線が、どこにあるかを検討する。

(ア) まず、赤田川南岸の府県境は、本件地内平面図(乙85)及び本件地内平面図と同時に作成された国有水路境界確定図によって確定している(乙83ー30枚目)。

昭和58年国有水路境界確定図

そこで、昭和21(1946)年10月2日に米軍が撮影した航空写真(国土地理院:コース番号M275−A−8)に、本件地内平面図を重ね合わせたものが、乙88ー1である。乙88ー1 を見ると、耕作地の区画や道筋が、航空写真と本件地内平面図とで、よく一致している。赤丸で強調した地点が赤田川南岸府県境確定点であり、赤い線は府県境確定線である。

米軍が撮影した航空写真(国土地理院:コース番号M275−A−8)に、本件地内平面図を重ね合わせた合成図

赤田川の北側では、山の稜線が府県境となっているが、この航空写真では、東から当たった日光により、山の西側に影ができており、植生の違いもあって、稜線と思われる場所に影ができている。白い点線は、稜線と思われる場所である。

(イ) ただし、この航空写真は、撮影範囲の端で歪みが生じているので、昭和50(1975)年3月14日撮影の航空写真(地理院地図シームレス衛星写真用に歪みが補正されたもの)を用いて、稜線の白い点線を多少調整した(乙88ー2)。昭和50(1975)年ごろ、この付近では樹木が広く伐採されたとみられ、乙88ー2の右上には、伐採されなかった樹木がところどころに残されているが、伐採域との境は土地境界でもあると考えられるため、府県境の稜線がわかりやすくなっている。

昭和50(1975)年3月14日撮影の航空写真(地理院地図シームレス衛星写真用に歪みが補正されたもの)に、本件地内平面図を重ね合わせた合成図

(ウ) このようにして、赤田川北側の稜線の位置が、おおよそわかったので、これを現在の航空写真(Yahoo!地図の平成30(2018)年ごろの航空写真)と重ね、さらに本件境界条件1乃至3等を図示したものが、乙88ー3である。

現在の航空写真(Yahoo!地図の平成30(2018)年ごろの航空写真)と重ね、さらに本件境界条件1乃至3等を図示した合成図

加えて、乙88ー3には、〈村田商店代表乙の父〉による掘削(埋立)域の外縁を紫の線で示した。これを見ると、〈村田商店代表乙の父〉による掘削域が東鳴川町502内に収まっていないことは、下記の通り、明らかである。

  1. ① 掘削域外縁は、赤田川南岸府県境確定点から70mほど下流(北西)で赤田川に達しており、本件境界条件1「本件境界南西端点は、赤田川南岸の府県境確定点近傍にある」を満たしていない。したがって、掘削域内に長尾2及び木津川市道及び長尾谷1ー乙が含まれることは確実である。

  2. ② 掘削域北東端は、本件境界条件2「 本件境界北東端点は掘削域北東に現存する稜線か、その南西方向延長線上にある」を満たすが、赤田川南岸府県境確定点から、掘削域北東端までは、およそ130mであり、これは、本件境界条件3「本件境界北東端点は、赤田川南岸府県境確定点から東北東方向に直線距離で109.3m以内になければならない」を満たしていない。すなわち、〈村田商店代表乙の父〉は、東鳴川町502の北東端を20mほど越境して掘削を進めた可能性が高い。

(エ) 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は不法掘削はなかったと主張するが、これは、本件境界が掘削域の外縁もしくはその外側にあると主張していることと同義である。しかし、以上のとおり、本件境界が掘削域の外縁もしくはその外側にあることはあり得ない。

このことは、乙88ー3に公図や古図を合成することで、よりわかりやすくなる。

公図合成図

まず、乙88ー4は、本件原確定回議書に添付された「木津川市加茂町長尾谷」の公図(乙83ー8枚目・黄色)及び「木津川市加茂町長尾」の公図(乙83ー9枚目・緑色)及び「奈良市東鳴川町第六号」の公図(乙83ー10枚目・水色)及び「奈良市東鳴川町第三号」の公図(乙83ー11枚目・青紫色)を、縮尺と角度を航空写真に合わせ、乙88ー3に合成したものである。

これらの公図は、厳密な測量に基づいておらず、方位の表示も全く不正確であるが、それでも縮尺や角度を航空写真に合わせて調整すると、ある程度は実際の地形や道筋などに一致する。

中でも、木津川市側の長尾谷及び長尾の公図を、赤田川の川筋と木津川市の里道に合わせて配置すると、本件境界にあたる公図上の府県境が、白い点線で表した稜線推定線にほぼ一致することや、奈良市東鳴川町第三号の公図を、赤田川の川筋に合わせて配置すると、公図上の本件境界北東端点が、赤田川南岸府県境確定点から109.3mのあたりにくることなどは、非常に興味深い。

すなわち、これほど不正確に見える公図であっても、道や川に対する府県境の角度や、距離の比率などには、一定程度信頼がおけるものと考えられる。

したがって少なくとも、本件境界が、〈村田商店代表乙の父〉による掘削域外縁もしくはその外側に位置し得ないことは、乙88ー4からも明らかである。

(オ) 次に、乙88ー5は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「古図」(甲13・水色)及び村田養豚場(村田畜産/村田商店)が本件防護柵通知書に添付した「木津川市加茂町長尾2」の公図(乙84ー1ー3枚目・黄色、同4枚目・緑色)を、乙88ー3に重ね合わせたものである。

古図合成図

村田養豚場(村田畜産/村田商店)が信頼性が高いと考えるだけあって、「古図」は、航空写真や本件地内平面図と、驚くほどの一致を見せている。赤田川の川筋、白い点線で表した稜線推定線、赤線で表した本件地内平面図の府県境、これらはほぼ完全に「古図」と一致している。したがって、「古図」の精度はそれなりに高いと考えられる。

仮に、乙88ー5に重ね合わせた「古図」が、実際の本件境界を正しく反映しているとすると、〈村田商店代表乙の父〉が、長尾2、木津川市道、長尾谷1ー乙に加え、奈良市東鳴川町501を、不法掘削したことは一目瞭然である。さらには、掘削域の半分以上を不法掘削が占めていたということにもなるであろう。

さて、村田養豚場(村田畜産/村田商店)第1準備書面によれば、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は「古図」に信頼を置いているようであるから、乙88ー5により、少なくとも、〈村田商店代表乙の父〉の山林掘削工事に、不法掘削が含まれていたということについては、村田養豚場(村田畜産/村田商店)も同意できるものと考える。

エ なお、当会代表は平成28(2016)年6月の時点では、合成図を作成するなどして、上記同様の詳細な検討は行ってはいない。しかし、〈村田商店代表乙の父〉が不法掘削を行ったことは、当会代表が平成28(2016)年6月より前に入手していた、添上郡鳴川村実測全図や関連公図、本件地内平面図などと、国土地理院が公開している年代ごとの航空写真を見比べれば、誰の目にも明らかである。

オ また、当会代表第1準備書面、第2、6、(2)、3)で検討したように、平成30(2018)年8月及び11月に行われた、木津川市による本件原確定の修正は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の求めに応じたものであるが、もし村田養豚場(村田畜産/村田商店)が不法掘削がなかったと信じているのであれば、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、本件原確定にある確定点108及び202についても削除を求め、掘削面の外縁もしくはその外側までが、奈良市東鳴川町502であるのだから、そもそも木津川市の市有土地境界確定図に奈良市域に関する記載があること自体がおかしいと、主張しなければならない。ところが、平成30(2018)年ごろの村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、そのような要求をしていない(甲7の4乙28)ので、少なくともこの頃以降の村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、確定点108及び202よりも東側に、東鳴川町502と長尾2の境界があることについては認めている、ということになる。

平成30年11月28日修正の市有土地境界確定図

そうすると、確定点108及び202は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が掘削あるいは埋め立てた範囲に含まれ、かつ、公図によれば、確定点108及び202が明示する木津川市道の東側には長尾2が一定の幅を持って存在し、当該指市道と赤田川の間には長尾谷1ー乙が存在しているので、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が木津川市に確定点108及び202の削除を求めなかったことは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が少なくとも現在は、不法掘削の存在を認めている、ということを意味する。

(4)本件原確定は、本件境界に関する、長尾2共同所有者らと東鳴川町502前所有者〈東鳴川C〉との合意を表す。

ア 平成28(2016)年6月時点においては、本件原確定は修正されていないので、本件原確定にある本件境界(以下、「本件原確定境界」と言う。)を根拠に、平成19(2007)年11月20日以降、長尾2に村田養豚場(村田畜産/村田商店)が様々なものを設置していることについて、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が長尾2を不法占用していると指摘することは、仮に村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張が正しいとしても、全く虚偽ではない。

イ したがって、ここで争われているのは、本件原確定(「旧図」)が修正された平成30(2018)年11月に、本件原確定境界が無効となったか否かである。

ウ さて村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、平成30(2018)年8月及び11月に、本件原確定(「旧図」)が修正されたことをしきりに強調するが、この修正により、過去に遡って、本件原確定境界が完全に無効化すると主張しているのは、実のところ村田養豚場(村田畜産/村田商店)だけである。

当会代表第1準備書面、第2、6、(2)で検討したように、木津川市はそのような見解を示していない。また当会代表が本件原確定の修正そのものに、不信感を持った理由については、当会代表第1準備書面、第2、6、(2)で詳しく述べた。

ところで、当会代表が求釈明で求めた、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による木津川市に対する質問書と木津川市からの回答書が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)から提出されたならば、村田養豚場(村田畜産/村田商店)がなぜ、本件原確定修正により、本件原確定境界がはじめから無効となるとの見解を持つに至ったかが、明らかとなるであろう。村田養豚場(村田畜産/村田商店)の質問書には、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が本件境界をはじめから無効だと考えた理由が、詳しく書かれていると見られ、また木津川市が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)にそのような解釈を確信させ得る返答をしたどうかについても、確認できるからである。

エ 一方、言うまでもなく、長尾2共同所有者らは、本件原確定が修正されたことにより、本件原確定境界が無効化したとは考えていない。

そもそも、本件原確定は、長尾2共同所有者らと、東鳴川町502の前所有者である〈東鳴川C〉との間で成立した、本件境界に関する合意を表すものでもある。

つまり、木津川市が本件原確定をどのように修正しようとも、長尾2共同所有者らと東鳴川町502前所有者である〈東鳴川C〉が、平成19年に、本件原確定境界を、本件境界とすることで合意した事実が消えることはない。

したがって、少なくとも、長尾2共同所有者らと東鳴川町502前所有者である〈東鳴川C〉が合意した土地境界として、本件原確定境界は現在でも有効である。

オ なお、本件原確定は、京都府警の捜査に協力する形で作成され、本件原確定に係る現地立会いと同時に行われた、京都府警による境界確認には、東鳴川町502前所有者である〈東鳴川C〉、長尾2共同所有者ら、長尾谷1ー乙所有者のほか、木津川市職員及び奈良市職員も立ち会っている。本件原確定境界は、京都府警が捜査の一環として関わった上で、木津川市及び隣接所有者の確認を経て確定したものである(乙6ー4頁)。

平成19年の現地立会い風景

さらに本件原確定回議書によれば、木津川市は、奈良市側を含め関連する公図や地籍図を蒐集しており(乙83)、木津川市が、それらとの整合性を検討した上で、本件原確定境界を確定したことがうかがえる。

しかも、本件原確定境界は、正確な測量に基づいており、市有土地境界確定に準じる信頼性を有する。

カ また本件原確定境界は、赤田川南岸府県境確定点と、掘削域の最も高い場所を結ぶ直線となっており、これは本件境界条件1「本件境界南西端点は、赤田川南岸の府県境確定点近傍にある」及び本件境界条件2「本件境界北東端点は掘削域北東に現存する稜線か、その南西方向延長線上にある」を概ね満たしている。本件境界条件3「本件境界北東端点は、赤田川南岸府県境確定点から東北東方向に直線距離で109.3m以内になければならない」は満たさないが、本件境界北東端点の元の地形は掘削されて消失しており、現地に地形上の目印が残っていない以上、やむを得ないと言える。

ちなみに、乙88ー3乙88ー4乙88ー5の、赤田川北側にある赤い直線が、本件原確定境界である。乙88ー4及び乙88ー5を見ると、本件原確定境界が、白い点線で表した稜線推定線や「古図」の本件境界にも近く、全く的外れではないことがよくわかる。少なくとも、掘削域の外縁(紫色の太線)もしくはその外側に本件境界があるとする村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張よりは、比べるまでもなく、山林掘削前の元の境界に近いと言える。

キ ところで村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)第1準備書面において、「境界は当事者の主観ではなく客観的資料に基づき確定されるもの」だと指摘しているが、以上の通り、本件原確定境界は、客観的資料に基づき確定されたものである。

一方、本件境界が掘削域外縁もしくはその外側にあるとする村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は、死亡した〈東鳴川C〉の亡父の指示のみが、その根拠となっている。村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張が真実であれば、〈村田商店代表乙の父〉は、今でも、掘削域外縁付近にあるはずの、樹木の塊や林相の差異を、具体的に指し示すことができるということになるが、いずれにせよ〈東鳴川Cの亡父〉が死亡している以上、「死人の口」を客観的に検証することなど不可能である。本件原確定境界と村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張のどちらが、「当事者の主観」であるかは論を俟たない。

(5)村田養豚場(村田畜産/村田商店)の本件境界に関する主張は一貫していない。

ア 村田養豚場(村田畜産/村田商店)第1準備書面及び本件防護柵設置通知書における、本件境界に関する村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は、以下の通り一貫していない。

  1. ① 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、本件境界が掘削域外縁もしくはその外側にあると主張している。(村田養豚場(村田畜産/村田商店)第1準備書面、第2、4、(1)乃至(3))

  2. ② 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、本件境界は「古図」と矛盾するべきではないと主張している。(村田養豚場(村田畜産/村田商店)第1準備書面、第2、4、(4))

  3. ③ 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、木津川市加茂町西小長尾2の公図を参考に、防護柵の位置を決めたとするが、防護柵の位置は、本件境界とも府県境とも考えていないと主張している。(乙84ー1

イ (2)で検討したように、①は②によって否定されるから、①と②が両立することはできない。③は、②に則りながら、公図を参考にした防護柵の位置は、本件境界とは考えないと主張している。しかも、③の防護柵の位置は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が参考にしたと言う公図あるいは「古図」における本件境界の、直線に近い緩やかなカーブと比べ、カーブの膨らみが大き過ぎ、明らかに境界線の進む方角が北に偏っており(乙88ー5)、②とも矛盾する。

ウ 本来、もし村田養豚場(村田畜産/村田商店)が本件原確定境界を否定したいのであれば、本件原確定境界を上回る根拠と信頼性に基づき、別の境界線を具体的に提示するべきところ、以上の通り、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の本件境界に関するいくつかの主張は互いに矛盾しており、ただ本件境界に関する本家土地1前所有者と長尾2共同所有者の間で成立した合意をなかったことにしたいという執念だけはうかがえるものの、何ら具体的境界線の提案を伴わないため、信用するに値しない。

(6)小括

以上のとおり、〈村田商店代表乙の父〉の不法行為責任が結果的に問われなかった一方で、長尾2及び長尾谷1ー乙及び木津川市道及び東鳴川町501に対する不法掘削は確かに存在した。

したがって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)第1準備書面、第2、1、「ウ」「ク」は虚偽ではない。

同「サ」については、平成20(2008)年3月13日の木津川市平成20年第1回定例会において、当時の市議が、関係者が京都地方検察庁に問い合わせたところ、起訴猶予としての不起訴である旨、回答を得たと報告していることに基づく(乙6ー10頁)。

同「ケ」「コ」は本件記事では一続きの文章である。本件記事の文章では、野焼きでは現行犯逮捕された(ケ)が、山を削り取られたことに関する刑事告訴は起訴猶予に終わった(コ)と言う文脈となっている。

つまり「コ」の「しかし」は、直前の、「削り取った他人地で野焼きを繰り返し、農場主が現行犯逮捕されています」を受けるものである。村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、これを切り離し、さらに文章の順番を逆にして取り上げているが、このことは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の指摘するようには、これらの文章を解釈できないことを、村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身自覚しているためと考えられる。

すなわち、「現行犯」逮捕されるのであるから、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が繰り返していた「野焼き」がその理由であることは、通常の読解力があれば読み取れるはずである。しかも、「しかし」で始まる続く文章に、「山林を削り取られたAさんBさんらによる刑事告訴はなぜか起訴猶予に終わりました」とあるので、現行犯逮捕の理由が、他人地を削り取ったことでないことは、いっそう明らかである。

なお、木津川市の平成20年第3回定例会において、木津川市建設部長が「問題解決の端緒になると期待しておりました関係土地所有者からの不動産を侵奪されたことに伴う告発状については、不起訴処分という結果になりました」と述べている(乙6ー15頁)。

当会代表第1準備書面、第2、「4 東鳴川町502・2・3に係る木津川市市有土地境界確定図が確定されるまでの経緯」で確認したとおり、当時、木津川市は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が木津川市道上に違法に設置した小屋を撤去させるため、数年がかりで、様々な働きかけを行っていた。このころ関係者の間で、刑事告訴が当然起訴に至るであろうと期待されていたことは、木津川市建設部長が「期待をしていた」と述べていることにも表れている。

したがって、当会代表が「なぜか」と表現をしたことは、全く突飛な発想ではない。

まとめ

以上のとおり、本件記事のうち、山林侵奪、他人地占拠(FACT.1)に関する記事については、そもそも東鳴川町502のみを取り上げて不法掘削だったとする記述はなく、「東鳴川町502の不法占有」「長尾2、長尾谷1ー乙の不法掘削」については、真実を摘示するものである。少なくとも、当会代表には、摘示事実が真実であると信ずるについて相当の理由があった。

1 本件土地1の不法掘削について

(1)真実性
ア 不法掘削の要件
  1. (ⅰ)掘削権限のないこと
  2. (ⅱ)故意過失
イ 本件掘削行為へのあてはめ

(ⅰ)につき、本件掘削行為が借地契約の内容として含まれ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が掘削権限を有していたことを判示した裁判が確定している。よって、(ⅱ)を検討する までもなく、本件掘削行為は不法掘削ではない。

ウ 小括

よって、本件土地1の不法掘削に関する記事は「真実」でない。

(2)相当性

上記裁判が確定したのは平成24年4月である。従って、本件記事が掲載された平成28年6月時点において、既に、上記裁判は確定していた。また、当会代表が、 〈東鳴川C〉から聞き取ったとする平成27年10月22日時点においても、既に、上記裁判は確定していた。

そして、当会代表は、〈東鳴川C〉から聞いて、上記裁判がなされたことを知っていたので あるから、上記裁判の確定判決の内容も知っていたか、少なくとも、調査して知るべきであった。

よって、当会代表には、適示事実が真実であると信ずるについて、相当の理由はない。

2 本件土地1の不法占有について

(1)真実性
ア 不法占有の要件
  1. (ⅰ)占有権限のないこと
  2. (ⅱ)故意過失
イ 本件占有行為へのあてはめ

(ⅰ)につき、占有権限として、借地契約が存在していた。すなわち、上記裁判の反訴事件において、賃貸人の債務不履行を原因とする、村田養豚場(村田畜産/村田商店)からの借地契約の解除は、認容されなかった。そして、その後、借地契約当事者のどちらも、相手方に対して、契約解除の意思表示をしなかった。ましてや、本件土地1について、賃貸人から村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対して、土地明渡請求がなされたことは訴訟内外を通じて一度もなかった。

加えて、村田養豚場(村田畜産/村田商店)から一部賃料の供託行為がなされていたし、また、令和元年8月8日、借地契約当事者間で一部賃料の授受も行われた。

賃貸人の事情によって、全期間の賃料の授受がなされていなかったからといって、借地契約の存在を否定することはできず、却って、質料の一部でも授受がなされたことは、質貸借契約の存在を認定するに足る。

よって、(ⅱ)を検討するまでもなく、本件占有行為は不法占有ではない。

ウ 小括

よって、本件土地1の不法占有に関する記事は「真実」でない。

(2)相当性

当会代表は、〈東鳴川C〉(賃貸人)が、当会代表に対し、平成27年10月22日に、「本件土地1の賃貸借契約はどのような解釈によっても解消している、この発言は非常に自信に満ちた態度で語られた。」などと主張している(被告書面15頁)。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、当会代表のこの主張事実を否認する。また、仮に、〈東鳴川C〉から、そのような話があったとしても、それは契約の一方当事者の話に過ぎないので、当会代表は、それを鵜呑みにしてはならない。もし、当会代表が、〈東鳴川C〉の「賃貸借契約はどのような解釈によっても解消している」と言う根拠を聞いたとすれば、結局のところ、〈東鳴川C〉が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対して、契約の解約及び本件土地1の明渡請求をしていないことが明らかになったはずである。

従って、当会代表の誤信には過失がある。

よって、当会代表には、適示事実が真実であると信ずるについて相当の理由はない。

3 本件土地2、本件土地3(以下「本件土地2等」という)の不法掘削について

(1) 真実性
ア 不法掘削の要件
  1. (ⅰ)「本件土地2等」の境界の越境行為
  2. (ⅱ)故意過失
イ 本件掘削行為へのあてはめ
(ⅰ)境界の越境行為
a 現時点において、境界未確定である。

木津川市作成の「市有土地境界図」は(甲7の3)から(甲7の4)に変更されている。従って、(甲7の3)は、境界確定の根拠にはならない。

また、当会代表は、(甲7の3)は、「本件土地2共同所有者らと、本件土地1の前所有者である〈東鳴川C〉との間で成立した、本件境界に関する合意を表す」とか 「(甲7の4)によって、合意は無効化していない」と主張している(被告書面37頁)が、その主張は否認し争う。

また、仮に(甲7の3)の元になる、何らかの合意があったとしても、それは、当事者間において。客観的資料に基づいた熟慮の上での合意ではなかった。

そもそも、境界は、当事者の合意で勝手に定められるものではない。

従って、(甲7の3)の「市有土地境界図」あるいは、当会代表が、その元になった当事者の何らかの合意を主張するとしても、それによって、本件境界は確定していない。

本件境界確定は、あくまでも、今後、本件土地2の共同所有者と本件士地1の現所有者である村田養豚場(村田畜産/村田商店)との間の境界確定訴訟において、確定されるべきものである。そして、境界確定訴訟の当事者適格は、本件土地2の共同所有者と村田養豚場(村田畜産/村田商店)以外の者にはなく、当会代表には、本件境界を語る資格がない。

b 航空写真・公図・古図

当会代表は、航空写真・公図・古図を煎ね合わせるなどして、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の境界越境行為が明らかであるなどと主張する(被告書面 35頁)。

しかし、不正確な公図や古図を重ね合わせただけで、境界が確定するわけでは毛頭ない。当会代表は、「村田養豚場(村田畜産/村田商店)は古図に信頼を宣いているようである」(被告書面35頁)などと主張するが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、別に全般的に古図に信頼を置いている わけではない。村田養豚場(村田畜産/村田商店)が古図を取り上げたのは、(甲7の3)の「市有土地境界図」の一直線の境界が山林境界として余りに不自然であたっため、その境界主張を弾劾するために示した証拠に過ぎない。

そもそも、山林は、土地に高低差がある等のため、公図や古図などの土地の広さの表示については信用できず、それらを重ねても、証拠価値はない。

他方、山林境界において、その占有、管理状況は、山林の重要な資料になるところ、当会代表の作成した重ね図は、現実の占有状況と全く異なる。

たとえば、乙88の5において、「636」と表示されている土地の西端(左端)に撮形されている建物は、本来、「637」土地上の建物である。「637」と表示されている土地の中央に位置している建物は、本来、「639」土地上の建物である。「639」と表示されている土地の土地の西端と「631−2」と表示されている土地の東端にかかって撮影されている建物は、本来、「631−1」土地上に存する建物である。

このように、当会代表の作成した重ね図と現実の占有状況には、明らかに齟齬が生じているが、その理由は、上記公図、古図の土地の広さの表示の不正確性に加えて、当会代表の重ね方の角度にも問題があるからである。

ただし、本件において、これ以上、山林の境界問題に深入りする必要はない。重要なのは、山林境界を確定するためには、多岐に渡る要素を考察する必要があるが、結局のところ、山林境界は境界確定訴訟で決せられるしかないといううことである。そして、それは、境界確定訴訟の当事者適格ある者が論争すべきものである。

c 小括

以上のとおり、本件境界については、いまだ、境界が確定していない。その事実だけが、真実である。

よって、当会代表は、境界の越境行為の真実性を証明できない。

(ⅱ)故意・過失
a 〈東鳴川Cの亡父〉の指示

確定判決の理由中(甲5)で述べられている通り、平成14年1月上旬、本件掘削行為は、賃貸人〈東鳴川Cの亡父〉の境界の指示に従って、行なわれたものである(5頁(4))。

たしかに、平成19年夏ごろまでに、〈村田商店代表乙の父〉は、〈加茂町B亡夫〉らから、境界を侵奪していると抗議を受けたが(6頁 (12))、〈村田商店代表乙の父〉は、その抗議に対して、「民事調停の申立てを行い、正当な権利者として行動をとっている」(7頁13行目~)。

従って、〈村田商店代表乙の父〉は、〈東鳴川Cの亡父〉の境界の指示を信じて、「本件土地2等」を掘削したと評価できる。そして、〈東鳴川Cの亡父〉の境界の指示は、樹木の塊や成育状況などの林相の差異に基づく指示であったので、〈村田商店代表乙の父〉は、それを信頼したのである。

従って、〈村田商店代表乙の父〉の掘削行為は、仮に客観的に、境界を越境していたとしも、無過失である。

b 当会代表の境界根拠

また、当会代表は、(甲7の3)の「市有土地境界図」あるいは、その元になった当事者の何らかの合意を、境界の根拠として主張するが、そのようなものは、〈村田商店代表乙の父〉の掘削当時は存在せず、後から作られたものであって、〈村田商店代表乙の父〉は、掘削当時、それを知る由もない。

また、当会代表は、航空写真、公図、古図を重ね合わせるなどして、正しい境界を主張しようとしているが、当時賃借人であった〈村田商店代表乙の父〉が、所有者である〈東鳴川Cの亡父〉の指示する境界を信じ、あえて、航空写真や公図や古図を確認しなかったとして、責められることはない。

よって、この意味においても、〈村田商店代表乙の父〉に過失はない。

c 小括

以上から、いかなる意味においても、掘削行為の故意過失はない。

よって、境界の越境行為の真実性如何に関わらず、不法掘削の記事は真実ではない。

(2)相当性

当会代表は、本件記事掲載時、次の事実を知っているか、当然、知るべきであった。

  1. (i)不動産侵奪罪の告訴に対して不起訴になって、刑事事件として問責されなかった事実

  2. (ⅱ)本件土地2共同所有者らの損害賠償請求権は、平成19年夏ごろから3年経過した平成22年には時効消滅しているため、本件土地2共同所有者らの民事上の権利が喪失しており、記事掲載の平成28年6月時点では、それから5年以上が経過している事実

  3. (ⅲ)掘削行為当時には、(甲7の3)の「市有土地境界図」は作成されていないし、その元になった当事者の何らかの合意のほか、いかなる境界合意も境界確定もなされていなかった事実

よって、当会代表には、適示事実が真実であると信ずるについて相当の理由はない。

1 「第1 被告第2準備書面「第3 山林侵奪、他人占拠(FACT.1) について」に対する反論」に対する反論

(1) 「1 東鳴川町502の不法掘削について」について

被告第2準備書面13〜14頁ですでに述べたとおり、本件記事に、東鳴川町502の掘削のみを取り出して、「不法掘削」だと記述している箇所はない。したがって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は、「(1)真実性」「(2)相当性」のいずれも、全く当を得ないものである。

また、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による山林掘削工事は、東鳴川町502とそれ以外とを区別したものではなく、かつ、被告第2準備書面27〜36頁で検討したとおり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による山林掘削工事が、長尾2及び長尾谷1ー乙に越境していたことは明らかであるから、当会代表が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による山林掘削工事の全体について、不法掘削であったと論評することは、言うまでもなく表現の自由の範疇に属する。

なお、法的な見解の表明は、判決等により裁判所が判断を示すことができる事項に係るものであっても、意見ないし論評の表明に当たる(平成16年07月15日 最高裁第一小法廷判決 平成15年(受)第1793号、1794号 謝罪広告等請求事件)。

(2) 「2 東鳴川町502の不法占有について」について

ア 「(1)真実性」について

確かに、東鳴川町502の掘削をめぐる裁判の控訴審(以下、「東鳴川町502控訴審」という。)で、裁判所は「控訴人(〈東鳴川C〉)による本訴提起は、本件契約に基づく賃貸人の義務に違反するものではないというべきである」との判断を示している(甲6ー9頁ー(7)。かっこ内は当会代表による補足)。

しかし裁判所は、それによって、本件賃貸借契約の解除が無効となるかどうかについては、何の判断も示していない。

一方で裁判所は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)(東鳴川町502控訴審被控訴人)が、「本件土地において畜産業を営むことを断念した」と認定している(甲6ー9頁ー(6))。なお、畜産業を営むことは、本件賃貸借契約において、賃借の目的と定められていた。よって、これを村田養豚場(村田畜産/村田商店)が断念したということは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が賃貸借契約を継続する必要がなくなったことを意味する(甲6ー7頁ーア)。

ところで、当時東鳴川町502の所有者であった〈東鳴川C〉は、平成17(2005)年以降、村田養豚場(村田畜産/村田商店)から賃料を受け取ることを拒否しているので(甲6ー7頁ーエ)、〈東鳴川C〉が、本件賃貸借契約の更新を望んでいなかったことは明らかである。したがって、〈東鳴川C〉には、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による契約解除の意思表明を拒絶する理由がないから、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による本件賃貸借契約の解除は、内容証明郵便が〈東鳴川C〉に到達した平成22(2010)年4月15日に、その効力が発生したと解することができる。

以上のとおり、 東鳴川町502控訴審において、裁判所は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による本件賃貸借契約の解除が無効となったとの判断を示していないが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が契約解除撤回の意思表示をした証拠及び〈東鳴川C〉が撤回に同意した証拠は、これまでのところ提出されていない。また本件賃貸借契約が継続していた実態がないことは、被告第2準備書面17〜22頁ですでに述べた。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、原告第3準備書面において、「賃貸人から村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対して、土地明渡請求がなされたことは訴訟内外を通じて一度もなかった」と主張するが、この件に限らず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)には、法的手段を用いた要求でなければ、一切聞く耳を持たず無視しても構わないとする態度がまま見られる。

一般に、法的手段に訴えることは、個人にとって、経済的にも精神的にも負担が極めて大きい。まして連続して裁判等を遂行することは、ほとんどの個人にとり、重すぎる負担と言える。その点で村田養豚場(村田畜産/村田商店)は資金力のある法人であり、裁判等法的手段を遂行する経済的資源あるいは人的資源を、個人である〈東鳴川C〉より豊富に持つことは疑いようがない。このように社会的にみて比較強者である側が、比較弱者に対し、何か要求があるのであれば、その都度法的手段を用いるべきとの立場をとることは、多くの場合、恫喝的に要求を拒絶するのと同じ効果を持ち、望ましいこととは言えない。このような態度は、「奈良を代表するブランド豚」を生産する農場に、全くふさわしいものではない。

また村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、原告第3準備書面において、「令和元(2019)年8月8日、借地契約当事者間で一部賃料の授受も行われた」と強調している。しかし、 令和元(2019)年8月8日は、本訴訟が提起されたあとであるばかりか、村田養豚場(村田畜産/村田商店)と〈東鳴川C〉の間で売買交渉が成立し、東鳴川町502が村田養豚場(村田畜産/村田商店)に売却されることが決まった後でもある。

すでに被告第1準備書面29〜30頁で述べたとおり、当会代表は、令和元(2019)年8月9日、〈東鳴川C〉に電話をかけ、改めて賃貸借契約の有無等について確認しているが、その際〈東鳴川C〉は、東鳴川町502の売却が決まったことを明かして、次のように答えた。

  • (ア)「村田さんがまた借りるということにしても永久に借りることになるから、どうせなら売ってほしいというので、そこまで売ってほしいならということになった。」

  • (イ)「村田さんが言うには、今までも使ってきたのは事実だから、今まで賃借していたことにして、その分の賃料を払いたいとのことで、今までの賃料数年分と、今年の分は半年分を、8月初め頃に払ってもらった。」

また、長尾2共同所有者の一人である〈加茂町B〉と、本件原確定の再確定に影響することが懸念されたため、〈加茂町B〉から相談を受けていた木津川市議の〈木津川市議P〉が、令和元(2019)年8月中旬ごろ、〈東鳴川C〉の自宅を訪れ、東鳴川町502売却の事情について、詳細を聞き取っている。〈木津川市議P〉によれば、このとき〈東鳴川C〉は次のように語ったとのことである。

  • (ウ)「去年までは村田さんも何も言って来なかったが、今年の2・3月くらいから頻繁に電話がかかって来た。最初は「新しい豚小屋を造るので資材置き場として土地を貸してほしい」という話だった。しかし以前の事があるので、一度貸したら永久に使われかねない。そこで「貸すつもりはない。資材も置くな」と返事をしたところ、しばらくして「買い取りたい」と言ってきた。」

上記、(ア)乃至(ウ)のいずれにおいても、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が〈東鳴川C〉に語ったとされる内容は、本件賃貸借契約が継続していることを前提としていない。

加えて、すでに手放すことが決定している土地について、これまでも使っていたのは事実だからと、土地の購入代金とは別に、数年分の賃料を払いたいと、買主から申し出られた場合(上記(イ))、売主である〈東鳴川C〉にこれを断る理由がないのは当然である。このような、売却交渉成立後に追加で支払われた賃料に、本件賃貸借契約の継続を認定する効力があるとは、到底考えられない。

したがって、本件賃貸借契約が継続していなかったことは真実であり、少なくとも、当会代表が、本件記事において、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が東鳴川町502を不法占拠していると論評したことは、表現の自由の範疇に属する。

イ 「(2)相当性」について

(ア) 〈東鳴川C〉が、平成21(2009)年に本件賃貸借契約が解消しているとした根拠に関しては、被告第2準備書面15〜17頁ですでに述べた。

なお、木津川市の平成20(2008)年第3回定例会においても、木津川市の建設部長が、「奈良市側の所有者(〈東鳴川C〉)から話をそういうことで聞くことにいたしました。内容は土地の明け渡しに関して双方の借地契約書の借地期限の違いから調停が行われ、不成立になったということ、相手(〈村田商店代表乙の父〉)の契約書の借地期限の切れる来年2月まで静観をしたいということで、奈良市の所有者(〈東鳴川C〉)と情報交換をしております」と述べている(乙6ー15頁。括弧内は当会代表による補足)が、このうち「相手の契約書の借地期限の切れる来年2月」は、言うまでもなく平成21(2009)年2月である。すなわち、この答弁の内容は、〈東鳴川C〉が、平成21(2009)年に本件賃貸借契約が解消していると述べたことと整合する。

また、木津川市議会議事録(乙6)は、本件記事公開当初より、本件記事に付属する資料として、インターネット上に公開されており、当然のことながら、当会代表は本件記事公開前に、この議事録についても目を通している。

木津川市議会議事録(乙6)の質問や答弁から読み取れる、上記のような経緯をふまえると、当時、〈東鳴川C〉が本件賃貸借契約の解消を望んでいたことは明らかであって、東鳴川町502控訴審後も、〈東鳴川C〉が本件賃貸借契約を継続したと考える方が、不自然だと言える。

(イ) 加えて当会代表は、〈東鳴川C〉と、東鳴川町502隣接地所有者らが、土地を売らない確約書を交わし、その際、土地を貸さないことについても約束したということ(被告第2準備書面18頁乙80の1及び)を、平成27(2015)年秋ごろには、〈加茂町B〉から聞いていた。

以上のとおり、当会代表には、本件賃貸借契約が継続していなかったことが真実であると信じるについて相当の理由があった。また、当会代表が、本件記事において、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が東鳴川町502を不法占拠していると論評したことは、表現の自由の範疇に属する。

(3) 「3 長尾2、長尾谷1ー乙(以下「長尾2等」という)の不法掘削について」について

ア 「(1)真実性」について
(ア) 「(ⅰ)境界の越境行為」について
a 「a 現時点において、境界未確定である。」という主張について
(a) 本件境界をめぐる動き

① 東鳴川町502の土地境界については、平成18(2006)年10月26日に、東鳴川町502の所有者と、東鳴川町502に隣接する長尾2及び東鳴川町501の所有者らの間で確認された、境界確認書が存在する乙104。以下、「本件境界確認書」という。)。また、本件境界確認書が作成されてすぐ、平成18(2006)年11月3日には、関係者の間で土地不譲渡確約書が交わされた(被告第2準備書面18頁乙80の1及び)。

平成18年10月26日-東鳴川町502土地境界確認書-03

② 本件境界確認書の測量図(乙104)における、東鳴川町502と長尾2の土地境界(以下、「本件境界」という。)の長さは、98.87mである。一方、平成19(2007)年11月20日に確定した市有土地境界確定図(9木管第7ー85号)における本件境界の長さ(201ー308ー309ー300の合計)は117.93mであり(甲7の3)、これは本件境界確認書の測量図(乙104)における本件境界より、20mほど長い。

したがって、 本件境界確認書測量図における本件境界の北端( 乙104測量図 ーK23)は、明らかに、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による掘削域の内側にある。

③ 上記は、以下のような事情によると考えられる。

関係者が本件境界確認書に係る現地立ち合いを行なった平成18(2006)年5月21日時点では、関係者の間で東鳴川町502の北端だと了解されていた場所の周辺が、まだ掘削されずに残っており、その地点を東鳴川町502の北端とすることに、関係者全員が合意した。

ところが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による掘削はその後も続き(甲6ー7頁)、この間に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による掘削域は、さらに北側にも広がった。

その結果、本件境界確認書測量図における本件境界の北端(乙104測量図 ーK23)周辺は、地形が完全に破壊されて、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による掘削域の内側に取り込まれる形となった。

それだけでなく、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による掘削が拡大したことによって、本件境界確認書の測量図にある境界杭は、全て所在が分からなくなり、本件境界確認書の測量図に基づいて、東鳴川町502の土地境界を示すことは、極めて困難な状況となった。

④ そこで、平成19(2007)年に、京都府警の捜査に協力する形で、木津川市が市有土地境界確定図を作成するにあたり、木津川市職員の助言も受けながら、当時東鳴川町502の所有者であった〈東鳴川C〉と、長尾2共同所有者らが協議し、合意したのが、平成19(2007)年11月20日に確定した市有土地境界確定図(9木管第7ー85号。以下、「本件原確定」という。)に、府県境の確定線として書き込まれた本件境界(以下、「本件原確定境界」という。)である。

当時の当事者が本件原確定境界に合意していたことは、本件原確定に対し、隣接所有者全員が同意書を提出していることからも明らかである。

また、平成27(2015)年10月頃、当会代表が、長尾2共同所有者の一人である〈加茂町B〉とともに、東鳴川町502前所有者である〈東鳴川C〉に聞き取りを行なった際、〈東鳴川C〉と〈加茂町B〉の双方ともに、本件原確定境界に争いがあるとは全く主張しておらず、両者が本件原確定境界に合意していることを前提として、本件境界や東鳴川町502に関する事情を語っている。

⑤ ところが、平成30(2018)年3月に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が木津川市に対し数度にわたり送った文書(当会代表による求釈明文書)を発端として、木津川市は本件原確定の修正に着手した(乙27)。

なお、すでに被告第1準備書面19〜20頁で述べたとおり、本件原確定の修正は、本件原確定境界が未確定あるいは誤りだったために行われたのではない。確定里道の一部が奈良市に越境していたことや、手続きの不足があったことを理由に、後に奈良市の同意を得て、本件原確定を尊重する形で、改めて再確定することを前提として、手続き上の必要から木津川市が一旦修正したものである。

その後木津川市は、平成30(2018)年8月10日に、本件原確定を修正したが、奈良市を通じて、村田養豚場(村田畜産/村田商店)からさらなる修正を求められたため、平成30年11月28日にも、本件原確定の再修正を行った。

一方で木津川市は、隣接所有者に対しては、平成30(2018)年6〜7月ごろ、本件原確定修正について口頭で説明し、その説明に対し口頭で了承を得たのみで、木津川市は、修正後の図面はおろか、修正を行った事実すら、隣接所有者に通知していない。そのため、東鳴川町502の前所有者である〈東鳴川C〉は、東鳴川町502売却までに、本件原確定の修正を、木津川市から一切知らされていなかった。当然木津川市は、本件原確定の修正に際し、隣接所有者の誰からも同意書を得ていない。詳細は、被告第1準備書面20〜23頁で述べた。

⑥ 令和元(2019)年8月27日、東鳴川町502は、〈東鳴川C〉から村田養豚場(村田畜産/村田商店)代表〈村田商店代表乙〉に売却された(甲11)。

⑦ 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、令和元(2019)年10月7日付けで、豚コレラ対策として、イノシシ侵入防止のための防護柵を、長尾2に越境する形で、東鳴川町502の周囲に設置する旨、〈加茂町B〉ら長尾2共同所有者全員に通知した(乙84の1)。これに対し、長尾2共同所有者は連名で、令和元(2019)年10月20日、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し、長尾2に越境して防護柵を設置しないよう求める内容証明郵便を送付した(乙84の2)。詳細は、 被告第2準備書面25〜26頁で述べた。

なお、本件境界に争いがあることが明らかとなったのは、これが最初である。

⑧ 令和元(2019)年12月16日に、ようやく再確定部分の復元測量が行われた。この復元測量を受け、木津川市と奈良市は、令和元(2019)年12月23日に、再確定に関する協議を行った。このとき木津川市は、「点番号201が、両地権者で確認した点である」として、本件原確定境界に従い、点番号201を動かさずそのまま再確定する方針を説明しているが、奈良市はそれを了解している(乙105ー2頁)。

⑨ 令和元(2019)年12月27日、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、奈良県畜産課、奈良市土木管理課、京都府山城家畜保健衛生所、木津川市管理課を、一堂に集め、長尾2共同所有者を説得して、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の計画通りに防護柵を設置することを、長尾2共同所有者に認めさせるよう、協力を依頼した。

これに対し奈良県は、「自分の土地で明らかな位置に張るのはどうか」と村田養豚場(村田畜産/村田商店)に提案した。また、木津川市も「平成19(2007)年確定の所に柵を張るのであれば、隣接地権者は異議がないと思う」と指摘し、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の協力依頼に応じることはできないとした(乙106)。

⑩ ところが村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、こうした関連行政機関からの説得を無視し、令和2(2020)年1月6日付けで、長尾2共同所有者に宛てて、長尾2に越境する形で防護柵を設置することを、一方的に通告する文書を送付した。

この文書においても、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、「フェンス柵の設置場所は(中略)民民境界及び府県境界及び里道境界及び赤田川の府県境界ではないと考えております」と述べ、公図等を参考にしながら、境界ではないと考えるところに防護柵を設置するという、不可解な主張をしている。

しかし一方で村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、「今後、赤田川の境界(府県境)・里道確定(府県境)等が、確定され、確定位置よりフェンスの設置位置がずれていた場合、速やかに確定位置にフェンスの設置位置を移動させます」と述べ、フェンスの設置位置が、行政界が再確定されるまでの暫定的なものである旨、釈明した(乙107)。

⑪ そして実際に、令和2(2020)年1月10日ごろ、長尾2共同所有者らの抗議にも拘わらず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、村田養豚場を囲う防護柵を、長尾2に越境する形で強行設置した(乙84の4)。当然、長尾2共同所有者は、これに対し連名で、越境して設置された防護柵の撤去を、改めて要求している(乙84の5)。

このような経緯で設置された防護柵であるにも拘らず、設置にかかった費用の全額が、農畜産業振興機構及び奈良県からの補助金で賄われた(乙84の1-10頁、乙115-1頁)ことには、強い驚きを禁じ得ない。

⑫ 令和2(2020)年3月11日、木津川市は、平成19(2007)年に確定した本件原確定を、木津川市の手続きに瑕疵があったことから、平成30(2018)年に一部修正したことに関し、再度、正式な手続きを踏んでこれを再確定するにあたり、その状況を関係地権者に事前に確認するため、現地立ち会いを行った。

この現地立ち会いにおいて木津川市は、本件原確定の点番号106及び201を移動させることなくそのまま復元し、点番号106及び201が府県境になることを示した。これについては、点番号106及び201が、平成19(2007)年に、東鳴川町502の当時の所有者と、長尾2共同所有者らで確認されたものであることが、その根拠とされた(乙108-2頁)。

⑬ なお、奈良県畜産課長の溝杭は、令和2(2020)年4月14日に開かれた木津川市と奈良県との協議において、長尾2共同所有者の一人である〈加茂町B〉に対し、「事業者(村田養豚場(村田畜産/村田商店))への売却すればと聞いた」ことを明かしている(乙115ー2頁。かっこ内は当会代表による補足)。

令和2年4月14日-村田養豚場の防護柵に係る奈良県との協議に関する報告書-01

令和2年4月14日-村田養豚場の防護柵に係る奈良県との協議に関する報告書-02

当会代表が〈加茂町B〉に聞き取ったところ、令和2(2020)年3月の中頃、溝杭から〈加茂町B〉に電話があり、より正確には、「防護柵のあるところまで土地を売る気はないか」と聞かれたとのことであった。

このことは、少なくとも溝杭個人は、長尾2共同所有者らが主張するとおり、本件原確定境界が正当な土地境界であることを前提に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が設置した防護柵が、長尾2に越境するものであると認識していることを示している。

それにも拘らず、奈良県は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張する防護柵の位置をそのまま認め、防護柵設置に係る補助金まで交付したのであるから、〈加茂町B〉はもとより、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が協力的でないため、本件再確定に困難を抱える結果となった木津川市が、奈良県に不信感を持つのは当然と言える。

(b)本件境界をめぐる動きのまとめ

以上①乃至⑬のとおり、本件境界については、平成18(2006)年に土地境界確定図が作成されたものの、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の掘削により全ての境界杭が失われたため、平成19(2007)年に、当時の東鳴川町502所有者及び長尾2共同所有者らの同意の下、本件原確定に、本件境界が府県境の確定線として書き込まれた。

その後、確かに木津川市は、手続きに問題があったとして、平成30(2018)年に本件原確定を修正しているが、令和2(2020)年の再確定において、木津川市は、本件原確定の府県境をそのまま復元する方針を示した。したがって、本件境界が未確定であるとする村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張には、もはや何の根拠もない。

また村田養豚場(村田畜産/村田商店)は「当事者適格は、長尾2の共同所有者と村田養豚場(村田畜産/村田商店)以外のものになく、当会代表には、本件境界を語る資格がない」と主張するが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が東鳴川町502の所有権を得たのは、本訴訟提起後の令和元(2019)年8月27日であるから、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張に従うならば、村田養豚場(村田畜産/村田商店)には令和元(2019)年8月27日以前には、本件境界を語る資格がなかった、ということになる。

ところで、前述のとおり、本件原確定における本件境界は、京都府警の捜査に協力する形で、木津川市の助言も得ながら、当時の当事者らが協議の末、合意したものである。それにも拘らず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、この合意について、「客観的資料に基づいた熟慮の上のものではなかった」などと、何の根拠も示さずに断じているが、上記村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張に従うなら、当然村田養豚場(村田畜産/村田商店)には、東鳴川町502取得前の事情を、このように語る資格はない。

一方で、確かに現時点では、本件境界に争いが生じている。しかしそれは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が東鳴川町502取得後、東鳴川町502前所有者と長尾2共同所有者らの間で成立していた合意を無視して、本件境界が未確定であると、一方的に主張し始めたことによる。すなわち、本件境界を巡る争いは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が本訴訟提起後に、東鳴川町502を取得したあと、村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身が引き起こしたものである。

しかも本件境界に関する村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は極めて奇妙なもので、村田養豚場(村田畜産/村田商店)はこれまで、どこが境界であるとは一切主張しておらず、ただ境界が未確定であるとのみ主張している。そして、防護柵の位置が土地境界とは考えないと断りながら、長尾2に越境する形で、防護柵の設置を強行した。

一方で、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、令和2(2020)年1月6日付けの文書で、木津川市と奈良市によって府県境が確定すれば、それに従い防護柵を移設する旨、明言している(乙107)。

ところが前述のとおり、すでに木津川市は、本件原確定の府県境をそのまま復元して、再確定を行う方針を示している。もちろん、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が本件再確定に同意しなければ、再確定手続きは滞ることになるから、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が本件再確定に同意していないことをもって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、府県境は確定していないと主張することは、今後も可能であろう。しかしそのような態度が、誠実であるとは到底言いがたい。

また村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、令和2(2020)年3月中ごろ、長尾2に越境して設置した防護柵沿いに、別の場所から運んできた廃材や資材を積み上げている(乙84の4乙109)。これには、長尾2の一部を村田養豚場(村田畜産/村田商店)が占有していることの既成事実化を、よりいっそう強化する意図があるとも考えられ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)のこのようなふるまいは、防護柵の位置が暫定的なものであるとした、村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身の釈明と全く整合しない(乙107)。

当会代表は、令和元(2019)年9月に提出した被告第1準備書面31頁において、「村田養豚場(村田畜産/村田商店)が本件訴訟の論拠を保つために再確定協議を拒んだり、あるいは原確定に沿った再確定を拒絶し、長尾2を大きくえぐる形で新たな境界線を提案する恐れもある」と懸念を述べたが、はたして令和2(2020)年5月現在、事態はほとんどそのとおりに推移していると言える。

以上のとおり、本件境界に関する村田養豚場(村田畜産/村田商店)の態度は、極めて不誠実であると言わなければならない。村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、後づけで、境界確定訴訟によって境界が確定されるべきだなどと主張せず、自らが令和2(2020)年1月6日付けの文書で述べたとおり、すでに木津川市から示されている府県境を受け入れ、越境して設置されている防護柵を、本件原確定境界を越えない位置へ、早急に移設するべきである。

(c)本件境界に一般市民が関心を持ち意見を公然と表明することの正当性

なお、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、当会代表には本件境界を語る資格はないと主張するが、一般市民が本件境界をめぐる争いに関心を持ち、意見を公然と表明することは、以下のことから、依然として正当である。

ⓐ 通行権の確保

本件境界は、市有土地境界確定図と密接に関係しており、本件境界を巡る争いは、市民の通行権に深刻な影響を与え得る。実際、令和2(2020)年1月に村田養豚場(村田畜産/村田商店)が設置を強行した防護柵は、木津川市が再確定を進めている木津川市道を横切っており、防護柵の門扉についても、木津川市道を半ば塞ぐ位置に設置されている(乙109)。

市道と防護柵の位置

そのため、令和2(2020)年5月現在、本件再確定図にある木津川市道を正しく通行することは、誰にもできない。

したがって、一般市民が本件再確定と、本件再確定を左右する本件境界紛争に関心を持つことは、これらが市民の通行権に大きく影響する以上、正当なことである。

ⓑ 境界損壊罪の関与

① 木津川市は、本件再確定にあたり、赤田川(国有水路)上の行政界を明らかにするため、昭和58(1983)年10月に確定した国有水路境界確定図(乙105-10頁。以下「本件水路確定図」という。)に基いて、赤田川南岸の府県境を復元しようとしている。

② しかし、木津川市が、令和元(2019)年12月16日に行った測量では、以下のとおり、赤田川南岸の府県境が、本件水路確定図とは全く異なる位置に、復元された。

本件水路確定図の確定点のうち、線分AーA’のA側の確定点(黒縁の白い円)を「a」、A’側の確定点を「a’」、線分BーB’のB側の確定点を「b」、B’側の確定点を「b’」とすると、 aー bー b’ーa’(aから時計回り)を復元した確定点が、令和元(2019)年12月16日時点の本件再確定図(乙105ー7頁。以下、「本件第1再確定図」という。)にある、2020Hー2019Hー2022ー2021である。

したがって、aー bー b’ーa’と、2020Hー2019Hー2022ー2021とが、完全に一致する形で、本件第1再確定図に本件水路確定図を合成すれば、2020Hー2019Hー2022ー2021がaー bー b’ーa’の、正確な復元であるかどうかを、検証できる。

実際にそのようにして合成した図が乙第110号証である。水色の図面が本件水路確定図で、そのうち、川底の境界線をピンク色の点線で、現在の橋の下に埋もれている古い橋(以下、「旧橋」という。)をピンク色の実線で、強調した。

本件第1再確定図と本件水路確定図の合成図

乙第110号証を見ると、一見して、両図面における旧橋の位置や赤田川の川筋が、明らかに数メートルずれているとわかる。中でも旧橋の位置は、実際には昭和58(1983)年から全く変わっていないため、旧橋の位置が両図面でこれだけずれているということは、2020Hー2019Hー2022ー2021が、誤った位置に復元されたことを示している。

そのため木津川市も現在では、2020Hー2019Hー2022ー2021が、誤った位置に復元されていることを確認しており、本件第1再確定図を修正して、国有水路境界を別の位置に変更している(乙108ー4頁)。

③ しかし、本件第1再確定図によると、2020H点及び2019H点については、現地に「既設金属鋲」があったとされている。しかも2020Hー2019H間の距離は、本件水路確定図のaー b間と全く同じ、12.18mであったという。このような一致は、偶然ではあり得ない。

すなわち、2020H点及び2019H点は、何者かが、本件水路確定図のa点及びb点に偽装する目的で、二点間の距離を正確に12.18mに合わせた上で、新たに設置した金属鋲である可能性が、極めて高い。言うまでもなく、このような行為は境界損壊罪(刑法262条の2)に該当する。

④ ところで、長尾2共同所有者の一人である〈加茂町B〉が、令和2(2020)年2月ごろ、木津川市管理課長の松本敏也に対し、誤った位置に2020Hー2019Hー2022ー2021を復元した理由について問い合わせたところ、松本敏也は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、絶対に位置が変わっていないと主張したので、2020H点及び2019H点を、既設金属鋲の位置にしたと答えた、とのことである。

つまり村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、現地に打たれていた金属鋲が、赤田川南岸の府県境を示す境界標だと信じていたことになる。しかし、昭和58(1983)年に赤田川南岸に設置された境界標が、金属鋲であったとは到底考えられない。

現在赤田川南岸にある石垣は、平成18(2006)年ごろに、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が長尾谷4などを取得して以降、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が積み上げたものであり、本件水路確定図が作成された昭和58(1983)年には、赤田川南岸に石垣はなかった。このことは本件水路確定図を見ても明らかで、本件水路確定図において、赤田川南岸は自然傾斜面となっており、a点及びb点とも、水田の畦道のようなところに位置している。昭和58(1983)年当時、これら確定点周辺の地面は、金属鋲を打ち込むのに適したものでなかったのである。

加えて、仮に金属鋲がa点及びb点に打たれていたのだとしても、その後村田養豚場(村田畜産/村田商店)が赤田川の自然傾斜面に積み上げた石垣の縁に、造成工事を経てなお、それら金属鋲がそのまま残されていたとは到底考えられない。

⑤ ただ、既設金属鋲が昭和58(1983)年の境界標であり得ないことは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)も認識していたと思われる。村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、木津川市に対しては、既設金属鋲の位置は絶対変わっていないと主張していたが、長尾2共同所有者らに対しては、そのような主張をしていないからである。

既設金属鋲の存在をふまえると、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が長尾2に越境する形で設置した防護柵が、2020H点の対岸付近に位置していることに気づく。村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、2020H点を根拠に、防護柵の位置を決めたようにも見えるのである(乙109乙110)。ところが村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、長尾2共同所有者らに、既設金属鋲の存在を明かしていない。これは、金属鋲の真正性について、村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身、確信を持てなかったことの現れとも考えられる。

そこで村田養豚場(村田畜産/村田商店)としては、木津川市と奈良市に既設金属鋲を真正なものと認めさせたのち、2020H点を根拠に防護柵の位置を正当化する必要に迫られたと解する余地もある。

⑥ なお、木津川市が現地確認で示した修正再確定図(以下、「本件第2再確定図」という。)にある、水路境界2023ー2024ー2026ー2025(乙108ー4頁)もまた、下記のとおり、aー bー b’ーa’を正確に復元したものではないと考えられる。

乙第110号証と同様にして、本件第2再確定図に、本件水路確定図を合成した図が、乙第111号証の1である。この図を見ると、旧橋の北西角については、たしかに位置が一致している。このことから、木津川市が、現在の赤田川南岸のうち、旧橋の北西角からa点までの距離と一致する地点を、2023点としたことがわかる。

本件第2再確定図と本件水路確定図の合成図(水路境界を合わせたもの)

しかし乙111の1においても、赤田川の川筋が、旧橋から離れるほど、次第にずれてしまっており、旧橋の北西角を中心として、全体に、本来の位置から数度回転しているように見える。当然ながら旧橋の角度もずれている。これは2023点の位置が、正確ではないためと考えざるを得ない。

また、昭和58(1983)年以降に、赤田川南岸の自然傾斜面が削られ、同時に赤田川北岸が南西にせり出して、川底が南西へ移動したとはおよそ考えられない。

そこで、旧橋の角度を合わせて、本件第2再確定図に、本件水路確定図を合成した図が、乙第111号証の2である。乙第111号証の2では、赤田川の川筋が無理なく一致し、赤田川南岸の府県境が201点ー106点の延長線上に重なっている。このことは、平成19(2007)年の本件原確定において、赤田川南岸府県境と、掘削域の一番高いところを結ぶ線を、東鳴川町502と長尾2の境界にしたとする、〈加茂町B〉の証言とも整合する。

本件第2再確定図と本件水路確定図の合成図(旧橋の角度を合わせたもの)

以上のように、乙第111号証の1乙第111号証の2を見比べると、乙第111号証の2にあるとおり、赤田川南岸の府県境であるa点が、現在は村田養豚場の休憩小屋の下にあるとする方が、より正確な復元であることは疑いようがない。当会代表としては、木津川市は、より正確に、aー bー b’ーa’を復元するべきだと考える。

⑦ いずれにせよ、2020H点の既設金属鋲が偽の境界標であることは確かであり、これら金属鋲が現地に存在したことには、境界損壊罪の関与が強く疑われる。このような、市民の財産たる市道の境界確定が、犯罪行為によって歪められかねない事態に、一般市民が関心を寄せ、意見を述べることは正当である。

b 「b 航空写真・公図・古図」について

(a) 当会代表は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「古図」のみに依拠して、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が境界を越境して山林を掘削したと主張しているわけではない。詳細は、すでに被告第2準備書面27〜36頁で述べた。

また当会代表は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が指摘した地番について、古図に描かれた境界や土地の広さが正確であるとは主張していない。

被告第2準備書面29頁及び31頁で指摘したとおり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)のいう「古図」の原図は、明治22(1889)年10月12日作成の、「添上郡鳴川村実測全図」である。この実測全図では、当時の村界に、測量点間の距離と方角の実測値が記載されている。そのため、古図記載の境界線のうち、村界にあたる境界については、一般的な明治時代の公図と異なり、一定の信頼性があるものと考えられる。そして本件境界は、まさしく村界にあたる。

(b) ただし、古図に描かれた村界線は、正確には実測値に従っていないと思われる。そこで、以下のとおり、実測値の正確性を検証しておきたい。

まず、乙第112号証の1は、平成30(2018)年ごろの航空写真に、昭和58(1983)年の本件地内平面図(乙85)及び本件原確定を重ねたものである。

2018年の航空写真に古図の実測値に基づく村界線を合成した図

黄色の点線は、実測値に基づいた村界線で、点線上の円は測量点を表す。明治時代に、古図がどのように作成されたのかは不明であるものの、おそらく、現地において、測量点間の距離と方角を測ると同時に、測量点間の地形や境界をスケッチし、それらをもとに図面を書き起こしたものと考えられる。なお、乙第112号証の1では、測量点間は直線で表した。

また、赤田川南岸の府県境は明治時代からほとんど変わっていないと考えられるため、本件地内平面図の赤田川南岸の府県境確定点に一致させる形で、村界線を合成した。ところで、現在、赤田川南岸の府県境確定点(a点)が、村田養豚場の休憩小屋の下にある可能性が極めて高いことは、先に述べたとおりである(乙111の2)。

さて、乙第112号証の1を見ると、黄色の点線は、実際の府県境(村界)から時計回りに数度ずれているように見える。これは、被告第2準備書面31頁で述べたとおり、古図記載の方角実測値が偏角を補正していないためと考えられる。ここでいう偏角は、真北と地磁気の北(磁北)との差であるが、日本考古地磁気データベースによれば、 明治22(1889)年当時の、本件境界付近の推定偏角は西偏4.3度である(乙113)から、黄色の点線を反時計回りに4.3度回転させると、偏角を補正できる。なお、被告第2準備書面31頁では、座標入力値に誤りがあったため、「西偏4.4度」としたが、正確には西偏4.3度であったので訂正する。

このようにして補正した村界線が、乙第112号証の1の水色の点線である。補正後の村界線(水色の点線)は、実際の府県境とよく一致している。特に、科学的根拠のある角度で補正するだけで、本件地内平面図の府県境確定線上に、古図の測量点が重なることは、古図の実測値が、一般的な明治時代の公図と比して、高い信頼性を持つことの証左と言える。

(c) また、乙第112号証の2は、昭和50(1975)年の航空写真に、昭和58(1983)年の本件地内平面図(乙85)及び村界線(黄色の点線)・補正村界線(水色の点線)を重ねたものであるが、林相の違いとして判別できる実際の府県境と、補正村界線(水色の点線)とが、ほぼ一致していることがわかる。

1975年の航空写真に古図の実測値に基づく村界線を合成した図

加えて、東鳴川町502及び長尾2及び東鳴川町501の境界が交わる付近に、緑の樹木が固まっていることは、これまでに当会代表が長尾2共同所有者の一人である〈加茂町B〉から聞き取っていた「本件境界には背の高い木があって、それが目印となっていた」との証言とも整合する。

(d) 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は反論において、合成の角度についても疑問視しているが、以上のとおり、科学的根拠のある角度で補正するだけで、古図の実測値に基づく村界線は、実際の府県境や林相の違いにほぼ一致するのである。したがって、古図の実測値には一定の正確性が期待でき、少なくとも、すでに死亡している人物の指示よりは、よほど信頼に足ると言える。

c 「c 小括」について

すでに述べたように、現在、確かに本件境界を巡って紛争が生じているが、この紛争は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が本訴訟提起後に、東鳴川町502を取得し、村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身が引き起こしたものである。

よって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は当を得ておらず、当会代表が、本件記事において、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が長尾2等に越境して山林を掘削した事実に基づき、これを不法掘削であったと論評したことは、表現の自由の範疇に属する。

(イ) 「(ⅱ)故意・過失」について
a 「a 〈東鳴川Cの亡父〉の指示」について

確かに、東鳴川町502裁判一審において、裁判所は、〈村田商店代表乙の父〉が「民事調停の申立てを行い、正当な権利者として行動をとって」いたと認定している(甲5ー7頁)。しかしながらこれは、当該民事調停のあった平成19(2007)年9月時点(甲5ー6頁(12))においても、〈村田商店代表乙の父〉が本件賃貸借契約の借主として行動していたことを認定したもので、民事調停における〈村田商店代表乙の父〉の主張が正当であったことを認めるものではない。

しかもこの民事調停の相手方は〈東鳴川C〉であり、〈東鳴川C〉は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、〈村田商店代表乙の父〉に土地境界を指示したと主張している〈東鳴川Cの亡父〉の、正当な相続人である。

したがって、たとえ〈村田商店代表乙の父〉が、〈東鳴川Cの亡父〉からの指示に基づき掘削をしていたのだとしても、〈東鳴川Cの亡父〉の正当な相続人である〈東鳴川C〉から、東鳴川町502の土地の範囲を越えていると指摘されてなお、〈村田商店代表乙の父〉は、民事調停を申し立ててまで、それを頑として受け入れなかったのであるから、〈村田商店代表乙の父〉が、東鳴川町502の範囲を越えて、山林を掘削したことに全く過失がなかったとは、到底考えられない。

b 「b 当会代表の境界根拠」について

当会代表は、本件原確定を根拠として、〈村田商店代表乙の父〉が東鳴川町502を越えて山林を掘削したとは主張していない。詳細は、すでに被告第2準備書面27〜36頁で述べた。

たしかに本件記事には、参考のため、本件原確定境界及び本件地内平面図に基づく地図が記載されている。しかし、本件原確定境界は、山林掘削前に所有者間で了解されていた土地境界から、大きくかけ離れているわけではない。本件原確定境界は、山林掘削前の、およその土地境界を表す線として、妥当なものである。

このことは、乙第88号証の5及び乙第112号証の1から、明らかである。これら合成図を見ると、本件原確定境界は、掘削域のうち赤田川側では、もともとの土地境界より東鳴川町502側に数メートル入り込んでいる可能性が高いが、山側では逆に、もともとの土地境界より長尾2側に数メートル入り込んでいる可能性が高い。

また、被告第2準備書面33頁(ウ)で指摘したとおり、東鳴川町502のもともとの北端は、掘削面の北端より20mほど内側(南側)にあると考えられるから、本件記事記載の地図は、〈村田商店代表乙の父〉の越境掘削面積を過小評価するものであるとさえ言える。

c 「c 小括」について

以上のとおり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は当を得ないものである。したがって、〈村田商店代表乙の父〉に過失がなかったとは考えられないため、当会代表が、本件記事において、〈村田商店代表乙の父〉が長尾2等に越境して山林を掘削した事実に基づき、これを不法掘削であったと論評したことは、表現の自由の範疇に属する。

イ 「(2)相当性」について

村田養豚場(村田畜産/村田商店)の指摘する(ⅰ)については、本件記事に記載がある(甲2ー4頁)。当会代表が「起訴猶予に終わった」と記載した根拠は、木津川市議会での質問による(乙6ー10頁)。なお、この木津川市議会議事録については、本件記事に付属する資料として、本件記事公開当初より、インターネット上に公開されていた。

(ⅱ)については、民事上の権利が消失しているとしても、そのことは、当会代表が本件掘削に関する論評あるいは意見を表明する自由を、制限し得ない。本件掘削は、村田養豚場周辺の様相が一変するきっかけとなった出来事であり、その後、村田養豚場周辺では、本件記事で指摘しているような、様々な問題が次々と引き起こされた。村田養豚場(村田畜産/村田商店)が「奈良を代表する」と評価されるようなブランドを確立した現在でも、それらの問題の多くは、変わらず継続している。そのため当会代表は、村田養豚場の体質が大きく変化した嚆矢として、本件記事の最初に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による山林掘削問題を記載した。また、長尾2共同所有者らが、民事訴訟を起こさなかった事情については、被告第2準備書面24〜27頁ですでに述べた。

(ⅲ)については、たしかに〈村田商店代表乙の父〉の掘削当初には、本件原確定及びその元となった当事者の合意は存在していない。しかし、〈村田商店代表乙の父〉の掘削は、平成20(2008)年1月まで継続しており、その間に、平成18(2006)年には本件境界確認書が作成され、平成19(2007)年には本件原確定が確定した。また、前述のとおり、当会代表は、本件原確定及びその元となった当事者の合意を根拠に、〈村田商店代表乙の父〉が越境して掘削したと主張しているのではない。

また、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、〈村田商店代表乙の父〉の掘削当時、「いかなる境界合意も境界確定もなされていなかった」とするが、仮にそうだとすれば、〈東鳴川Cの亡父〉が〈村田商店代表乙の父〉に境界を指示することもできなかったはずである。当然、〈村田商店代表乙の父〉の掘削当時にも、境界に関する合意は存在した。

以上のとおり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の指摘はいずれも当を得ていない。よって、当会代表には、摘示事実が真実であると信ずるについて相当の理由があった。また、当会代表が、本件記事において、〈村田商店代表乙の父〉が長尾2等に越境して山林を掘削したことについて、不法掘削であったと論評したことは、表現の自由の範疇に属する。

ア 本件土地1の無断掘削及び不法占拠について

(ア) 当会代表は、本件土地1の無断掘削の事実は摘示していないと主張する。しかし、FACT1(甲2・2頁〜)には、平成15年頃、村田養豚場が他人の山林を無断で削る事件を起こしたとの記載に続き、「このうち東鳴川のCさんの先代が、村田氏の先代にこの山林を賃貸していました。」「両方の先代が(中略)亡くなった後、現在の農場主が(中略)借りている山林を突如削り始めたのです。」との記載があり(甲2・3頁)、その後には、「B、C、Dさんの山林」と表記された山が掘削された様子が図示されているところ(甲2の4頁)、東鳴川町Cさんの山林は本件土地1であることが明記されているのであるから(甲2・2頁)、FACT1において、本件土地1の無断掘削の事実が摘示されているものと認められる。

そして、別件訴訟の第一審判決(甲5)においては、〈村田商店代表乙の父〉が本件賃貸借契約に基づき本件土地1を掘削する権限を有していたものと認定されているのであって(なお、控訴審判決においては、他の争点についての判断により結論が導かれたため、上記の点は判断されていない(甲6)。)、本件全証拠によっても、本件土地1を「村田養豚場の農場主」が無断掘削したとの事実についての真実性及び相当性を認めるに足りる事情は見当たらない。

(イ) また、FACT1には、「2009年には、村田氏と東鳴川のCさんとの山林賃貸契約はどのような解釈によっても解消しています。」(甲2・9頁)とあるなど、平成21年以降の本件土地1の不法占拠の事実が摘示されているところ、当会代表は、平成22年4月に本件賃貸借契約が解除されたことにより、本件土地1についての村田養豚場の占有権原はなくなり、不法占拠となったと主張する。しかし、別件訴訟の控訴審判決(甲6)においては、〈村田商店代表乙の父〉が主張する解除の前提である〈東鳴川C〉の債務不履行の事実が否定されており、同解除の有効性については何ら判断されておらず、他に本件賃貸借契約が終了したことを認めるに足りる事情は見当たらない。当会代表は、平成27年10月に〈東鳴川C〉から契約解消の事実を聞いたと主張する。しかし、裏付けとなる的確な証拠は見当たらないし、仮に〈東鳴川C〉がそのような説明をしたとしても、法的な契約終了原因が明らかでなく、契約終了の事実は認められず、当会代表において、契約の一方当事者の口頭での説明を軽々に信用したからといって、村田養豚場が訴訟による紛争解決後に不法占有を続けていると信じるにつき相当の理由があったとはいえない。当会代表は、本件賃貸借契約の存在が障害となって村田養豚場による撤去がされなかった木津川市道上の構築物が、平成24年5月になって撤去されたとの報告が木津川市にされたことも本件賃貸借契約終了の根拠として主張するが、構築物撤去の理由が本件賃貸借契約終了によってしか説明できないものでないとは認められないし、当会代表が主張するその他の事情を併せて考慮しても、不法占有の事実を信じることを相当とする事情とはいえない。

したがって、村田養豚場が本件土地1を不法占拠したとの事実について、真実性、相当性は認められない。

(ウ) 以上のとおり、FACT1のうち、〈村田商店代表乙の父〉が本件土地1を無断掘削し、不法占拠したことを摘示する部分については、名誉毀損の不法行為が成立する。

イ 本件土地2の無断掘削及び本件土地3の不法占拠について

(ア) 本件境界については、令和3年9月、本件土地2の共有者らが本件土地1の所有者である〈村田商店代表乙〉に対して境界確定訴訟を提起しており(乙144)、同訴訟において法的に確定されるところ、本件全証拠をもってしても、本件境界の位置を正確に認定することはできない。

確かに、本件土地1と本件土地2の所有者らが合意して作成した平成18年10月26日付け境界確認書(乙104)には、本件境界として、当会代表の主張に沿うかのような記載がされているが、これは、同年に〈村田商店代表乙の父〉による山林の掘削について紛争が生じたことに起因して〈東鳴川C〉の主導により作成されたものであって、境界の目印が確認できないままに本件境界の位置を特定したため、正確なものでないことが認められるから(証人〈加茂町B〉2頁)、その記載を信用することはできない。

また、当会代表は、平成19年7月下旬、〈村田商店代表乙の父〉が不動産侵奪罪の被疑事実で刑事告訴された事件の捜査の過程において、木津川市が本件土地1及び本件土地2の各所有者の立会い、同意の下で木津川市所有の里道の位置を確認して作成された同年11月20付けの本件原確定図(市有土地境界確定図)(甲7の3)に表示された本件境界(府県境)の位置は信頼に足りるものであると主張する。しかし、本件原確定図は、木津川市が市有道路の管理のため市有道路の境界を確定する趣旨で作成した図面であり、本件境界(民有地間の境界又は京都府と奈良県の府県境)の確定は目的とされていないし、奈良県及び奈良市の職員の立会いや同意もなく作成されたものであること、作成に当たって関係土地の所有者らが関与しているものの、不起訴処分となっている。

前記のとおり、同人らにおいて本件境界を正確に特定するのは困難であったことからして、同図面に表示された本件境界の位置について正確性が担保されているとはいえない(乙27)。しかも、本件原確定図は、平成30年8月、市道の範囲に誤りがあること(境界線が奈良市域まで入っている。)、市道の範囲の確定に関係のない本件境界が記載されていることなどを指摘されて、本件境界部分については府県境の方向線として一部を残し、その余は抹消する修正が施され(甲7の1)、同年11月にも再修正がされているのであって(甲7の2)、本件原確定図によって本件境界の正確な位置を認定することはできない。

また、本件土地2及び本件土地3の所有者らがした〈村田商店代表乙の父〉を被疑者とする本件土地2の不動産侵奪罪の刑事告訴についても、捜査は行われたものの、当会代表が提出した実測全図(乙86[枝番を含む])についても、当会代表の現地再現結果は、現況の近隣住居の位置と齟齬しており、正確性に疑問を差し挟む余地があるし(乙88の5当会代表本人29〜30頁)、そもそも、本件境界を確定するために収集されるべき資料全体における実測全図の位置付けも不明であって、これによって、本件境界の位置を正確に看取することはできない。

そうすると、本件境界の位置及び〈村田商店代表乙の父〉による本件土地2の掘削の有無は現時点では明らかでないといわざるを得ず、〈村田商店代表乙の父〉の掘削が本件境界を越境し、本件土地2に及ぶものであったことについて真実性は認められない。

また、村田養豚場による本件土地3の不法占拠についても、これを認めるに足りる証拠はなく、真実性は認められない。

(イ) 当会代表が本件土地2の無断掘削及び不法占拠の根拠とする図面等の信頼性には前記のとおり疑義があるところ、当会代表が摘示している事実は、不動産侵奪という犯罪行為にも当たるものであることからすると、相当性の認定は慎重であるべきである。そうすると、当会代表が指摘する図面等に当会代表の主張に沿う部分があるとしても、本件境界の目印が失われた状態で、山林の境界確定についての専門家の知見を踏まえた十分な調査もないまま、〈村田商店代表乙の父〉の掘削行為が本件境界を越えたものと信じたことに相当の理由があると認めることはできない。

また、本件土地3の不法占拠の相当性についてもこれを認めるに足りる証拠がない。

したがって、FACT1のうち、〈村田商店代表乙の父〉が本件境界を越境して本件土地2を掘削してこれを不法占拠し、本件土地3についても不法占拠している旨を摘示する部分については、名誉毀損の不法行為が成立する。

ウ その他の事実について

(ア) 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、FACT1のうち「2006年には、(中略)村田養豚場が、削り取った他人地で野焼きを繰り返し、農場主が現行犯逮捕されています。」との記載(甲2・4頁)について、〈村田商店代表乙の父〉が野焼きの廃棄物処理法違反で逮捕されたことはあるが、他人地の掘削(不動産侵奪)で現行犯逮捕されたことはないのに、上記記載は不動産侵奪の刑事責任が問責されたかのように受け取られる記載であるから、虚偽事実の適示であると主張する。しかし、上記記載に続いて山林掘削についての刑事告訴は起訴猶予で終わったとの記載があり(甲2・4頁)、上記記載は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が主張するような誤解を招来するものではないから、この記載が村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対する名誉毀損の不法行為を構成するとの村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は採用することができない。

(イ) 〈村田商店代表乙の父〉による産業廃棄物の違法投棄の事実については、真実性及び相当性を認めるに足りる証拠はないから、名誉毀損の不法行為の成立が認められる。

(ウ) 刑事告訴された被疑事実の不起訴処分の理由が起訴猶予であることについては、真実性及び相当性を認めるに足りる証拠がない。したがって、〈村田商店代表乙の父〉に対する刑事告訴における被疑事実について不起訴処分となった理由が起訴猶予であると摘示する部分については、名誉棄損の不法行為が成立する。