本編

FACT.3
奈良県畜産課
ぐるみの公道占拠

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、日常的に公道を作業場としており、公道上でフォークリフトやミニローダーを用いて餌を混ぜ合わせる作業などを日中頻繁に行っています。それだけでなく、公道を衛生管理区域に設定し、「防疫」を理由に、事実上の公道占拠を行政に追認させることを、繰り返し試みています。しかも奈良県畜産課は、そうした村田養豚場(村田畜産/村田商店)の要求をことさらに擁護し、嘘の説明を繰り返してまで、木津川市と京都府警木津警察署に、「防疫」という「公益」のため市道を封鎖することを認めるよう求め、嘘が判明した後になっても、頑なにその主張を変えようとしません。

FACT.3 目次

作業場として事実上村田養豚場(村田畜産/村田商店)に占拠されている木津川市道

下写真は、2017年(平成29年)以降の、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道「加2092号線」の様子です。公道が村田養豚場(村田畜産/村田商店)の作業場として日常的に使われていることがわかります。実際にはこれ以前からこの市道は下写真同様の状況となっていました。2006年(平成18年)ごろに市道西側の土地が村田養豚場(村田畜産/村田商店)の所有となり、2008年(平成20年)ごろまでに市道西側に豚舎や餌置き場が新築されましたが、新たに作られた豚舎や餌置き場は出入口が直接市道に接しており、市道西側に養豚場が拡張して以降、村田養豚場では、公道上で餌を混ぜ合わせる作業を行うことが最も作業効率が良い建物の配置となっているためです。

村田養豚場による市道上での作業は通行を著しく妨げている-01

村田養豚場による市道上での作業は通行を著しく妨げている-02

村田養豚場による市道上での作業は通行を著しく妨げている-03

2020年末から2021年の村田養豚場の状況-03

2020年末から2021年の村田養豚場の状況-06

また上写真のとおり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が公道上で行っている作業は、積荷の荷下ろしといったものだけではありません。村田養豚場の敷地の間にある市道では、フォークリフトやミニローダーなど重機を使用した餌の混ぜ合わせが、日中頻繁に行われており、時にはショベルカーを用いてコンクリートの材料を水と混ぜ合わせる作業まで行われています。こうした作業は明らかに市道の通行に危険を及ぼしており、「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする」道路交通法の趣旨(第1条)からすると、こうした作業が、道路交通法第77条第1項の一で、所轄警察署長の許可を受けなければならないと定められている「工事若しくは作業」に該当しないとは到底考えられません。

上写真は2014年に撮影されましたが、現在も公道上で作業が行われていることや、公道を犬が徘徊していることには変化がありません。

改称された奈良交通「浄瑠璃寺南口」バス停

まず下地図をご覧下さい。村田養豚場からまっすぐ南に伸びる道を行くと、県道33号にぶつかることがわかります(大きな地図を表示)。

県道33号に出てすぐのところに、2013年(平成25年)3月まで「浄瑠璃寺南口」というバス停がありました。かつては浄瑠璃寺観光の奈良側の玄関口として多くの人が利用したバス停です。京都側にバス道路が整備される前はこのバス停から徒歩で浄瑠璃寺へ向かうのが定番でした。また、このバス停は当尾の人が奈良に出るのにも長らく利用されていました。

そんな、当尾の人にとっても愛着のある「浄瑠璃寺南口」バス停は、2013年(平成25年)3月、当尾側の誰も知らないうちに「中ノ川東」に改称されてしまいました。そこで2015年(平成27年)1月に奈良交通に改称理由を問い合わせたところ、この改称は奈良市交通政策課と奈良市観光振興課からの要望によるものだったとわかりました。

奈良交通にホームページの問い合わせフォームを通じ名称変更の理由について問い合わせた返答

タイトル
お問合せの件
日時
2015年1月26日(月) 午後4時36分
発信者
奈良交通(株) お客様サービスセンター

****** 様

 この度は、ご照会いただき、ありがとうございます。

 さて、お問い合わせの件ですが、以前は浄瑠璃寺に行くことが出来ましたが、現在は養豚場があり行くことは出来ません。

 バス停名変更前は、観光客が多数降車されて、迷うようなバス停名の変更の依頼を奈良市より受けました。

 当社と致しましても、以前より浄瑠璃寺へは浄瑠璃寺行きのバスを案内しておりましたので変更させて頂きました。

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奈良交通株式会社
乗合事業部
お客様サービスセンター
主任 東田行三
奈良市大宮町1丁目1番25号
℡ 0742-20-3100

奈良交通からの回答

タイトル
Re: お問合せの件
日時
2015年2月3日(火) 午後5時34分
発信者
奈良交通(株) お客様サービスセンター

****** 様

 返信が遅くなり申し訳ございません。

 お尋ねの件ですが、奈良市交通政策課・奈良市観光振興課よりの要望でございました。

 以上、よろしく取り計らい願います。

-----------------

奈良交通株式会社
乗合事業部
お客様サービスセンター

       主任    東田行三
奈良市大宮町1丁目1番25号
℡ 0742-20-3100

その経緯について奈良市交通政策課と奈良市観光振興課は次のように説明しています。浄瑠璃寺にたどりつけなかった観光客を周辺住民がたびたび案内せざるを得ず、苦情が寄せられたとのことです。

奈良市交通政策課からの回答

タイトル
Re:[質問]奈良交通の停留所「浄瑠璃寺南口」を改称するよう要望した理由をお聞かせください。
日時
2015年2月5日(木) 午後0時23分
発信者
奈良市交通政策課

****** 様

奈良市交通政策課です。

お世話になります。

この度のご照会についてでございますが、本件につきましては奈良交通㈱が命名していた旧「浄瑠璃寺南口」バス停留所で降車された観光客が、浄瑠璃寺にたどり着けず迷われることが多く、周辺住民の方々のご好意により、度々自家用車で送迎される事案が多発したことから、周辺住民の方々が奈良交通㈱宛てに対応を要望されておられたとの事です。

 しかし、奈良交通㈱からの回答がされなかったことから、奈良市に相談がよせられ、その要望内容について奈良交通㈱で対応いただくよう依頼したものです。

バス停留所の名称変更権限を持つ奈良交通㈱に聞きましたところ、社内で検討した結果、名称変更を判断されたとのことです。

ご返事が遅れて、申し訳ありませんでした。

奈良市観光振興課からの回答

タイトル
お問合せメールへの回答について
日時
2015年2月10日(火) 午後3時19分
発信者
奈良市観光振興課

****** 様

このたびは、奈良市へお問合せをいただき、誠にありがとうございます。頂戴いたしました内容について、観光振興課より回答いたします。
奈良交通「浄瑠璃寺南口」停留所の改称要望理由についてのお問合せでございますが、奈良市から奈良交通様に申し上げた理由として、浄瑠璃寺に奈良から向かわれる利用者より、「浄瑠璃寺南口」で降りた場合、近くに浄瑠璃寺が無くて迷ったというケースが多く発生したためです。停留所名が利用者にとって勘違いを生む要因となりました。更に、近隣の方が浄瑠璃寺への案内をお客様に求められるケースも多くあり、近隣の方にとって負担になっているためです。以上の内容を奈良交通様へご連絡させていただきました。

最後になりましたが、****** 様の今後ますますのご健勝をお祈りするとともに、引き続き、奈良市政に対しましてご理解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

奈良市観光振興課
℡0742-34-5135

先ほどの地図を見るとわかるとおり、浄瑠璃寺南口バス停から村田養豚場までは一本道です。そして、村田養豚場の敷地の間にある道を抜ければよいとさえわかれば、村田養豚場から浄瑠璃寺までもほぼ一本道です。すなわち迷う場所は、道が村田養豚場にぶつかる場所以外にあり得ません。村田養豚場以外の場所は、現在も道が保全されているからです。

実は、浄瑠璃寺から村田養豚場のすぐ近くの林の出口までは、当尾の西小地区の方が毎年草刈りをして道を保全しています。たとえその先で、村田養豚場の存在により通行が困難となっていたとしても、この道はこの地域にとって残しておきたい大切な道だということです。

さて、苦情主の「周辺住民」とは誰なのでしょうか。旧浄瑠璃寺南口バス停と浄瑠璃寺の間には村田養豚場しかありません。つまり苦情主の「周辺住民」とは村田養豚場(村田畜産/村田商店)以外に考えられないわけですが、そうであれば観光客をいちいち案内する必要はなく、村田養豚場の敷地の間にある道の入り口に「浄瑠璃寺はこちら」とでも掲示しておけば問題は解決したことでしょう。

つまり、観光客が迷うというのであれば、行政の側でバス停近くや村田養豚場周辺に簡単な道標を設置することでも対応できたはずで、観光振興課になぜそうしなかったのか、再度問い合わせました。

奈良市観光振興課に再質問

タイトル
Re:お問合せメールへの回答について
日時
2015年2月10日(火) 午後3時49分
発信者
******

奈良市観光振興課 御中

ご回答ありがとうございます。

中ノ川、東鳴川の方に停留所名変更についてうかがったことがありますが、近隣の方が案内を頼まれ負担になっているという話は初耳です。

さて、旧浄瑠璃寺南口から北へ、浄瑠璃寺に向けて道があります。この道は途中まで私道ですが、私道の持ち主は一切通行を制限していません。その先は奈良市の里道となっており、県境から先は木津川市の里道となっております。

迷われる方が多いということでしたら、バス停に小さな地図をつけたり、浄瑠璃寺に向かう道沿いに道標を立てるという対応もあり得たかと思います。

停留所で降りた観光客が迷わないよう道標を立てる方が、「観光振興」に役立つように思うのですが、なぜ停留所名変更という対応になったのか、そのあたりの事情がおわかりでしたらお答えください。

浄瑠璃寺南口ルートを残した方が、当該停留所近くには実範上人御廟塔や応現寺があり、地域の魅力を伝えるきっかけにもなったでしょう。浄瑠璃寺南口を利用すると、加茂駅から浄瑠璃寺へ向かうのではなく奈良市側から浄瑠璃寺に入るということで、奈良市の観光地へも立ち寄る可能性が高いルートとなります。浄瑠璃寺南口から浄瑠璃寺までは1キロもありませんので、道標さえあれば10分ほどで浄瑠璃寺にたどり着きます。

このルートを利用する観光客が多かった頃は、浄瑠璃寺南口を終点とするバスが出ており、中ノ川地区の方々にとっても重要なバス路線だったと聞いております。現在では浄瑠璃寺南口からのアクセスが観光ルートと見られなくなったため、バスの本数が減らされていっそう不便になりました。地域住民のためにもならず、観光にも貢献しない、停留所名変更という対応を選択されたのには、何かよほどの理由があるのだろうと拝察いたします。

加茂側には「浄瑠璃寺口」というバス停がありますが、こちらの方がよほど浄瑠璃寺から遠い位置にあります。しかし、遠いのに名前が紛らわしいということで問題になったことはありません。

お忙しいところ申し訳ありませんが、以上お答えいただけましたら幸いです。

奈良市観光振興課からの回答

タイトル
お問合せメールへの回答について
日時
2015年2月20日(金) 午前10時47分
発信者
奈良市観光振興課

****** 様

前回、奈良交通が運行する路線バス停留所の名称変更(「浄瑠璃寺南口」から「中ノ川東」、平成25年3月17日)について、当課がその改称を奈良交通株式会社に対し要望した理由のお尋ねを頂戴し、その回答として「利用者の誤解・誤認識の頻発、およびこれに伴う周辺住民への問合せ増加による各所への負担を考慮したため」とご説明させていただきました。そして、さらに今回「なぜ停留所名変更という対応になったのか」とのお尋ねを頂戴いたしましたので、観光振興課より回答させていただきます。

当市が奈良交通株式会社へ要望した内容は前述のとおりでございます。その後、どのような経過で停留所名を決定したのかは、最終的に奈良交通株式会社の判断となりますので、当市では詳細については分かりかねます。誠に申し訳ございませんが、当市といたしましては、前回の回答以上にお答えできる内容はございません。

 たびたびお問い合わせを頂戴し、本市の観光行政に対し熱心なご興味とご懸念をいただいておりますこと、誠にありがとうございます。引き続き奈良市政へのご理解を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。

奈良市観光振興課
℡0742-34-5135

上回答に「利用者の誤解・誤認識の頻発、およびこれに伴う周辺住民への問合せ増加による各所への負担を考慮したため」とありますが、それほど迷う人が多かったということは、それだけ通行需要のある道だったということになるでしょう。ともあれ上回答にも、やはり納得できなかったため再度問い合わせることにしました。しかし結局、下回答のとおり、納得のいくような回答は返ってきませんでした。

奈良市観光振興課に再質問

タイトル
Re:お問合せメールへの回答について
日時
2015年2月20日(金) 午前11時54分
発信者
******

奈良市観光振興課御中

ご返答ありがとうございます。
お答えになっていないように思います。

当方がお伺いしましたのは、なぜ観光振興課が、観光客が迷うと理由であるなら道標や地図の設置という手段があり得たのに、そうした方法をとらず、停留所名変更を奈良交通に要請したのか、ということです。

奈良交通が停留所名を変更したのは、奈良市からの再三の要請があったからとわかっております。

「周辺住民への問い合わせ増加による各所への負担」とおっしゃられましたが、バス路線を利用する中ノ川や東鳴川の近隣住民の意見は聞かれたのでしょうか。

当方では奈良市から地元自治会等にそういった相談があったという話は把握しておりません。
特定の誰かが、市へ何回も苦情の電話を入れたので、それをそのまま聞き入れたということはないでしょうか。

二点お答えください。下記は最初の質問とは別の質問であることにご留意ください。

*道標や地図を設置して観光客が迷わないようにすることを検討したかどうか。検討したならそれを採用しなかった理由。
*停留所名変更を奈良交通に要請する前に、中ノ川自治会などに相談したかどうか。

以上よろしくお願いいたします。

奈良市観光振興課からの回答

タイトル
Re:お問合せメールへの回答について
日時
2015年3月23日(月) 午後2時41分
発信者
奈良市観光振興課

****** 様

 奈良交通の路線バス停留所の名称変更に関するお問い合わせにつきまして、ご回答が遅くなりましたことお詫び申しあげます。お尋ねのありました二点について、改めましてお答えいたします。

 まず「道標や地図設置といった方法の検討」についてですが、これは、当該停留所から浄瑠璃寺に向かう経路が私道を通っていることを理由に見送ったものです。観光施設への経路案内において、仮にその私道権利者のご厚意で「通行を制限しない」との申し出があった場合においても、私道を含む経路を案内、あるいは看板等製作することは、市としてはできかねるためです。

 次に、奈良交通への連絡前に「自治会への相談をしたか」についてですが、自治会等への相談は行っておりません。市では、当該停留所に関する誤解が少なからず生じている状況を、一つの情報として奈良交通に対し申し伝えたということでございます。停留所が、市の所管施設名を冠しているような限られた場合を除き、市が停留所名の変更を「要請」することはございませんし、当該停留所の名称について私どもが「再三の要請」を行った事実もございません。

 たびたびのお問い合わせを頂戴し、本市の観光行政に対し熱心なご興味とご懸念をいただいておりますこと、誠にありがとうございます。今後とも奈良市政へのご理解を賜りますようよろしくお願い申しあげます。

奈良市観光振興課
℡0742-34-5135

ところで上回答で、奈良市観光振興課は奈良交通に対し停留所の名称変更を「要請」していないと強調しています。そこで、奈良市の認識と齟齬があることについて奈良交通に確認したところ、下記回答がありました。

奈良市は「要望」していないと言っていることについて問い合わせた結果返ってきた奈良交通からの回答

タイトル
停留所名の変更について(ご返答)
日時
2015年3月27日(金) 午後5時50分
発信者
奈良交通(株) お客様サービスセンター

******ご担当者様

 この度は、お問い合わせ賜りありがとうございます。

 お客様サービスセンター長の米田が回答させていただきます。

 この度、浄瑠璃寺南口停留所名の変更につきまして、2月3日付の当社からの返信で奈良市交通政策課・奈良市観光振興課よりの「要望」とお答えいたしましたところ、奈良市観光振興課様からの回答が「当該停留所に関する誤解が少なからず生じている状況を一つの情報として、奈良交通に申し伝えた」との返信があったとのことでございますが、実情は、奈良市様に「何らかのご意見(当該バス停に関する誤解)」が寄せられ、奈良市様から停留所名を変更することの「検討の依頼」がございました。

 当社は奈良市様からそうした依頼があったということは奈良市様からの「要望」であったと解釈しておりましたので、「要望」と返答させていただいた次第であり、「検討の依頼」と訂正させていただきます。

 当時の担当者によりますと、奈良市様からの検討の依頼を受け、実際、浄瑠璃寺への道がどういった状況であるのかを確認いたしましたところ、道が途中で養豚場の敷地内に進入し、作業用の重機も往来しており、だれが見ても「これ以上奥へ進めない」状況であり、このような状況でお客様への案内に「浄瑠璃寺南口」は不適切であると判断したためです。また、奈良市様から依頼をいただく前にもバスをご利用の観光客から運転手に対し、「浄瑠璃寺へ行こうとしたが道が途切れいて、戻ってきた」とのご意見も頂いておりました。

 なお、「奈良市から再三の要請を奈良交通に対して行った事実」につきまして、当社への「検討の依頼」は1度のみでございました。

 停留所名変更につきましては、自治会の同意を得ることもございますが、原則は当社の判断で変更しており、前述のような状況でございましたので、自治会様にはお話しておりませず、当社の判断にて変更いたしました。また、名称を変更をしたことについて、その後、地元自治会やご乗客からご意見を頂いたことはございませんでした。
以上を回答とさせていただきますので、よろしくお願い申しあげます。

 
奈良交通株式会社
 乗合事業部
 お客様サービスセンター
  センター長 米田 佳弘
 奈良市大宮町1丁目1番25号
 ℡ 0742-20-3100

どうやら奈良市においては「検討の依頼」と「要望」と「要請」は異なる概念のようです。いずれにしても、周辺自治会や木津川市に何の相談もなく、歴史ある「浄瑠璃寺南口」バス停はこうしてその名前を消し去られました。かつては「浄瑠璃寺南口」から浄瑠璃寺へ向かうコースが定番でしたから、昔の思い出を辿って、あえて「浄瑠璃寺南口」で降りることを計画する観光客の方が時々いらっしゃるようです。しかし名前が「中ノ川東」に改称されたことで、旧「浄瑠璃寺南口」で降りて浄瑠璃寺に向かう観光客はほとんどいなくなり、そうした観光客が村田養豚場に近づく可能性は今やほぼなくなったと思われます。

もう一点、奈良交通の回答には注目するべき点があります。奈良交通として「道が途中で養豚場の敷地内に進入し、作業用の重機も往来しており、だれが見ても『これ以上奥へ進めない』状況」と判断していることです(上引用下線部)。つまり、公道であるはずの木津川市道が敷地の一部にしか見えない状況ということです。それも長年親しまれたバス停名を変えなければならないほどの状況です。このような状況を公道の占拠と言わずになんと言うのでしょうか。そしてこの状況は現在にいたるも全く改善していません。それどころか、2020年(令和2年)1月には公道上に門扉が設置されてしまいました。

衛生管理区域の設定を根拠とした事実上の公道封鎖

奈良県家畜保健衛生所も前例がないと認めた衛生管理区域

FACT.1でも触れましたが、2010年(平成22年)に国内で口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザが発生したことで、2011年(平成23年)9月に家畜の飼養衛生管理基準が改正され、畜産農場に「衛生管理区域」の設定が義務付けられました。これにともない、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、遅くとも2014年(平成26年)5月までに、下図の範囲を村田養豚場の衛生管理区域に設定しました。

平成26年6月12日-養豚場に係る奈良県家畜保健衛生所の見解-02

平成26年6月12日-養豚場に係る奈良県家畜保健衛生所の見解-03

村田養豚場(村田畜産/村田商店)が設定した上図の衛生管理区域は極めて異例のもので、自らが所有する土地だけでなく、赤田川北側の山林掘削によって平坦に造成された土地の全体と、山林掘削で破壊された区間の木津川市道、敷地の間にある木津川市道、さらには、養豚場南側の県道に続く他人所有の私道までをも、村田養豚場の衛生管理区域に含めていました。飼養衛生管理基準上、衛生管理区域に設定された場所では、農場関係者以外の立ち入りが制限され、立ち入る際には消毒と、衛生管理区域専用の衣服と靴の着用、氏名と住所の記録が求められることになります。実際、2014年(平成26年)春ごろまでに、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が設定した衛生管理区域の周囲には、下写真のような看板が掲示され、木津川市道上にバリケードが設置されました。

2014年に設置されたバリケード-01

2014年に設置されたバリケード-02

上写真のとおり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が公道上に設置した立入禁止の看板には、次のような文言が書かれており、その内容は一般の通行者に、看板より先がすべて村田養豚場の敷地であり、法律により立ち入りが禁じられていると信じさせるものだったと言えます。

敷地内立ち入り禁止

家畜伝染病予防法第12条の3の2に定められている飼養衛生管理基準に従い、農場主の許可なくみだりに敷地内に立ち入ることを禁じる。

家畜伝性病発生予防の為、関係者以外立入禁止

立ち入るものは車両。手指・靴の消毒を実施すること

家畜伝染病予防のため

  • 一週間以内に海外から入国した方の立ち入りを固くお断りします。
  • 4ヶ月以内に海外で使用した衣服や靴の持ち込みは禁止です。
  • 車両及び靴底の消毒、立入記録ノートへの記帳をお願いします。

しかし、公道である木津川市道が、このような形で実質的に封鎖されて良いのでしょうか。通行が許される場合でも、消毒と立入記録ノートへの記帳が必要だというのです。これではとても公道とは思われない状態です。そのため2014年(平成26年)4月に、村田養豚場の間にある木津川市道を通ろうとして消毒を求められた通行者が、そのことを木津川市に相談しています。相談を受けた木津川市は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が通行者に消毒を求めていることについて、奈良県家畜保健衛生所に法的根拠を問い合わせました。このときの奈良県家畜保健衛生所の回答は、「(衛生管理)区域は敷地のまわりに設定されるのが通例であり、道路からすべてを衛生管理区域だということには衛生所も違和感がある」「衛生管理区域は事業主が設定する。事業主が設定を行い、衛生所は助言するというのが通常であるが、村田養豚場のようにその地域一帯を衛生管理区域に設定するというのは前例がない」といったものでした。またその後、奈良県家畜保健衛生所は「国からは他人地を衛生管理区域に設定するのは好ましくないとのことであった」と木津川市に報告しています。

平成26年4月24日-苦情-村田養豚場が市道の通行に消毒が必要だと主張している-01

平成26年4月24日-苦情-村田養豚場が市道の通行に消毒が必要だと主張している-02

平成26年4月24日-苦情-村田養豚場が市道の通行に消毒が必要だと主張している-03

詭弁を弄して村田養豚場(村田畜産/村田商店)を擁護する奈良県家畜保健衛生所

しかし、奈良県家畜保健衛生所は、その後すぐに村田養豚場(村田畜産/村田商店)を擁護する方向に態度をひるがえします。

木津川市議会では、2014年(平成26年)の6月議会で、村田養豚場周辺の市道上に設置されていた立入禁止の看板が取り上げられました。その際木津川市は次のように答弁しています。

生活環境部長(駒野 弘子) 生活環境部長でございます。
(中略)
 また、本市では、養豚場に通じる木津川市道の途中に通行規制看板とバリカーが置いてあるのを確認しております。
 看板には、「家畜伝染病発生予防のため立入禁止」と表示されていたため、本市から奈良県家畜保健衛生所に連絡を行ったところ、同所から市道の通行について養豚場へ行政指導を行っていただけると聞いております。
 以上でございます。

2014年06月24日:平成26年第2回定例会(第5号)

◯建設部長(若狭 朝明) 建設部長でございます。
 議員の再質問にお答えいたします。
 市道の関係でございます。市道に関しまして、奈良県の家畜保健衛生所と連絡・連携をとって今進めておりまして、実際のところ、保健衛生所からは、病気の発生する予防のための衛生管理区域の設定というのがございます。それを今現在は、指導市道(※引用者修正)も含めて、衛生管理の区域に入れているというところでございまして、その件につきまして、奈良県の家畜保健衛生所が国のほうへ、そういう状況の内容を国のほうへ確認するというところで問い合わせをしていただきました。その後、県の家畜保健衛生所から連絡がございまして、国からの回答につきましては、他人地を含めることにつきましては、好ましくないというふうな国からの回答であったというふうなことで、後日、指導に行くというところで、冒頭の回答をさせていただいたというところでございます。
 その後でございます。その後に、6月に入りまして、奈良県の家畜保健衛生所の方が3名本市のほうに来庁いただきまして、その指導の帰りに寄ったというところでございました。その来られたときの内容でございますが、県のほうが調べたところ、木津川市道と奈良市道とはつながっていないという見解でございました。養豚場の浄瑠璃寺側にある看板を、この先行き止まり等とし、養豚場手前に置くこととし、原則は、養豚場内にある市道につきまして、看板を置いて伝染病予防のために、立ち入りについては消毒に御協力いただきたいというふうな県からの回答でございました。
 我々といたしましては、そのようなことでございますけれども、認定市道でございますので、通行を規制するものではないというふうな認識はしておりますけれども、今現在、奈良市の道路管理者のほうに、その旨の実際のところの認識、状況、それと判断等を確認中でございまして、それのまだ回答は得ておりません。
 以上でございます。

2014年06月24日:平成26年第2回定例会(第5号)

上記木津川市の答弁にあるとおり、奈良県家畜保健衛生所は、2014年(平成26年)6月12日、村田養豚場の指導の帰りに、木津川市管理課に立ち寄っています。まず、上で引用した二つ目の答弁に、「県のほうが調べたところ、木津川市道と奈良市道とはつながっていないという見解でございました。」とありますが、市道がつながっていないという奈良県家畜保健衛生所の主張は全くの誤りです。

たしかに、村田養豚場から県道33号線へ向かう道は途中から私道になっています。しかし市道(里道)は途中で県境沿いに西に折れ、ずっと奈良阪までつながっています。またこの私道は大阪の不動産業者が所有していますが、電話で問い合わせたところ「土地取得前からある勝手道であり、なんら通行は制限していない」とのことでした。

市道と私道

そもそもこの私道は、元々は当尾の人が県道33号線に出るために取り付けた道です。今は村田養豚場(村田畜産/村田商店)が重機を渡すために架けた橋の下に埋もれていますが、赤田川に架かる橋も、奈良との行き来のため当尾の人が架けたものでした。この道を自由に通行してかまわないとする不動産業者の姿勢は、たいへん真っ当なものと言えます。

このとき奈良県家畜保健衛生所は、上で引用した一つ目の答弁にあるように、公道上に立てられた立入禁止の看板を村田養豚場(村田畜産/村田商店)に撤去させるよう、木津川市から申し入れを受けていました。しかし奈良県家畜保健衛生所は、道がつながっていないと木津川市に嘘をついてまで、村田養豚場の浄瑠璃寺側に「この先行き止まり」などと書かれた看板を立てることを、木津川市に認めさせようとしたわけです。奈良県家畜保健衛生所は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による公道の通行妨害をなんとしても擁護したかったとみられます。奈良県家畜保健衛生所はいったいなぜここまでするのでしょうか。

なお、道がつながっていないから「この先行き止まり」という看板を設置するという主張は、2012年(平成24年)5月17日ごろ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が木津川市道上から建物を撤去した際、木津川市に述べていたこととほとんど同じです。したがって「県が調べた」という奈良県家畜保健衛生所の主張は極めて疑わしく、奈良県家畜保健衛生所は、指導先の村田養豚場(村田畜産/村田商店)で聞いた主張を、そのまま木津川市に伝えていたとも考えられます。

平成24年5月17日-加茂町養豚場に伴う市道敷きプレハブ撤去について-01

また、木津川市管理課によると、奈良県家畜保健衛生所は、木津川市管理課を訪れた際、蛍光ペンで一部を強調した「飼養衛生管理基準の改正に関するQ&A」のQ10を示し、次のように説明したそうです。

Q10.農場が公道や私道で分断されている場合、その行き来をする場合にも消毒等 の実施が必要ですか。答) 1.両農場が道路を隔てて隣接しており、又は両農場間に別の畜産関係施設が存在しない場合には、公道や私道を含めて両農場を同一の衛生管理区域とみなすことができます。2.ただし、この場合には、公道を通行する人や車両に消毒を義務付けることはできないので、両農場間の移動に当たっては、両農場の出入口で踏込消毒槽等による長靴の入念な消毒を行ってください。

「回答に、公道や私道を含めて同一の衛生管理区域とみなすことができるとありますね? そして両農場の出入り口で入念な消毒を行うよう求めています。つまり、公道を通行する人にも消毒をお願いしなければならないということです。」

まともな日本語能力があれば、この文章をそのように読むことはできません。はっきり「公道を通行する人や車両に消毒を義務づけることはできない」と書いてあります。そもそもこの文章は農場関係者に向けて書かれたものですから、農場関係者は、敷地の間にある道を渡るときにも長靴を消毒せよということです。

ところが、奈良県家畜保健衛生所は、義務はなくとも、公道を通行する人や車両に「消毒を行ってください」とお願いするべき、と解釈するのです。「両農場間の移動」という部分も「両農場の間にある道を移動する」と読むのでしょう。奈良県家畜保健衛生所の説明は、詭弁としか評価しようのないものです。

そのため木津川市は、奈良県家畜保健衛生所の主張を受け入れなかったようで、2015年(平成27年)の3月議会でも、次のように答弁しています。

◯建設部長(若狭 朝明) 建設部長でございます。
 議員のただいまの御質問につきまして、お答えをいたします。
 この道は、養豚場の衛生管理区域設定により、通行禁止看板が設置されているところでございますが、その看板の撤去を奈良県家畜保健衛生所から養豚場に指導していただくよう申し入れており、通行について家畜保健衛生所と協議を行ってまいります。
 以上であります。

2015年03月06日:平成27年第1回定例会(第3号)

◯生活環境部長(駒野 弘子) 生活環境部長でございます。
 議員の御質問にお答えいたします。
 ハイキング道として整備するということでございますけれども、今現在、おっしゃっておられますように、養豚場の衛生管理区域という通行を妨げるような状況があるということで、そこのことに対しましては、奈良市の、先ほど建設部長が答えましたように、奈良県家畜衛生保健所のほうから御指導いただき、許可権者でもあるところでございますので、しっかり御指導いただき、対策を講じていただけるように求めてまいりたいと思います。
 以上でございます

2015年03月06日:平成27年第1回定例会(第3号)

ところが、2015年(平成27年)ごろ、当会が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が設置している立入禁止の看板について、奈良県家畜保健衛生所に問い合わせた際には、奈良県家畜保健衛生所からは、むしろ立入禁止の看板を積極的に正当化する答えが返ってきました。奈良県家畜保健衛生所が公道の上に立入禁止の札を立てるよう指導しているというのです。先ほど見たように、奈良県家畜保健衛生所は、2014年(平成26年)6月の時点では、「この先行き止まり」という看板を立てることとしたいなどと、立入禁止の看板の代替案のようなことを木津川市に提案していましたが、結局は木津川市からの申し入れをうやむやにして、立入禁止の看板をそのまま立てさせることにしたとみられます。

当会からの問い合わせに、奈良県家畜保健衛生所は、「敷地の間にある公道を含めて衛生管理区域が設定されている以上、公道の上にも立入禁止の看板を立てなければならない」として、「看板を撤去させることはできない、むしろ立ててもらわなければならない」と言いきりました。そこで「公道の通行を妨げるのはおかしいではないか」と食い下がりましたが、奈良県家畜保健衛生所は「事前に連絡すれば消毒の上通行できるのであるから、通行妨害には当たらない」と主張しました。

しかし、村田養豚場の敷地の間にある道は、道路法及び道路交通法の適用を受ける木津川市の認定市道「加2092号線」です。道路法において、道路管理者は道路の構造を保全すること、または、交通の危険を防止することを目的とする場合のみ、管理している道路について、通行の禁止又は制限ができます(道路法第46条及び第47条)が、言うまでもなく村田養豚場(村田畜産/村田商店)による通行制限は、上記のいずれにも該当しませんし、そもそも村田養豚場(村田畜産/村田商店)は道路管理者ではありません。

また、道路占用許可について定めた道路法32条に照らして、木津川市の許可なくこのような立入禁止の看板を設置することは明らかに違法です。仮に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、看板やバリケードの設置に関して木津川市に道路占用許可を申請したとしても、「交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進する」という道路法の趣旨からすると、道路の遮断を目的とする道路占用が認められることはあり得ません。同様に、道路を遮断する行為は、現に交通の妨害となるおそれがあり(道路交通法第77条第2項の一に該当せず)、かつ、どのような条件を付しても交通の妨害となることが明らかであって(道路交通法第77条第2項の二に該当せず)、しかも公益上又は社会の慣習上止むを得ないとは到底認められません(道路交通法第77条第2項の三に該当せず)から、道路交通法第77条に基づく道路使用許可が下りることもあり得ません。

ちなみに、村田養豚場の敷地の間にある道は木津川市道であると同時に奈良市の里道でもあると捕らえた場合も、奈良市法定外公共物管理条例には「何人も、法定外公共物の保全又は利用に支障を及ぼし、又は支障を及ぼすおそれのある行為をしてはならない」と定められています。

加えて、看板で言及されている家畜伝染病予防法では、通行の制限または遮断について、第15条で「都道府県知事又は市町村長は、家畜伝染病のまん延を防止するため緊急の必要があるときは、政令で定める手続に従い、七十二時間を超えない範囲内において期間を定め、牛疫、牛肺疫、口蹄てい疫、豚熱、アフリカ豚熱、高病原性鳥インフルエンザ又は低病原性鳥インフルエンザの患畜又は疑似患畜の所在の場所(これに隣接して当該伝染性疾病の病原体により汚染し、又は汚染したおそれがある場所を含む。)とその他の場所との通行を制限し、又は遮断することができる」と定めていますが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による通行制限は、この規定には明らかに該当しません。

なお、2015年(平成27年)ごろ農林水産省安全局動物衛生課の鶴田氏に、衛生管理区域と公道の扱いについてうかがったところ、衛生管理区域の設定によって公道の通行を妨げてよいとする法的根拠はなく、一般市民の公道通行が優先されるべきとの見解でした。また2016年(平成28年)6月にも、農林水産省農林水産省消費・安全局動物衛生課は、奈良市在住の方からの問い合わせに対し、次のように回答しています。

タイトル
【回答】奈良市の法定外管理物(里道)と衛生管理区域の設定について
日時
2016年6月14日(火) 午後8時1分
発信者
農林水産省 消費・安全局 動物衛生課

***様

日頃より当省の施策について、ご関心、ご理解をいただき、ありがとうございます。

昨年6月に***様から当省総合窓口へお問い合わせいただいた件につきまして、回答が大変遅くなり心よりお詫び申し上げます。

***様からは奈良市の法定外管理物(里道)と衛生管理区域の設定についてお問い合わせいただいておりましたところ、以下のとおりお答え申し上げます。

家畜伝染病予防法に基づく「飼養衛生管理基準」では、飼養する家畜を伝染病から守るために、自らの農場を衛生管理区域とそれ以外の区域とに分け、人や物の出入りを制限しています。衛生管理区域には、必要のない人が立ち入らないようにするとともに、関係者であっても出入りの際はしっかりと消毒するために、看板等により区域が明確に分かるようにすることとしています。このように、衛生管理区域は、所有者の農場内を区分するものであって、公道の占拠を認めるものではありません。

皆様からの御意見は当省の施策をより効果的に進めていくために大変貴重であると考えておりますので今後とも当省の施策に関するご不明な点等がありましたら、総合窓口を御活用いただきますようよろしくお願い申し上げます。

(農林水産省総合窓口)
https://www.contactus.maff.go.jp/voice/sogo.html

農林水産省 消費・安全局 動物衛生課
TEL:03-3502-8111(代表)(内線:4581)
直通:03-3502-5994/FAX:03-3502-3385

このように、衛生管理区域の設定を根拠とした公道の通行制限が、法的に不可能であることは明白です。ところがこのころの奈良県家畜保健衛生所は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による実質的な公道封鎖を積極的に擁護していたばかりか、2015年(平成27年)ごろ当会が奈良市保健所から聞き取ったところによると、奈良県家畜保健衛生所は、奈良市保健所に対しても、養豚場から県道へ続く道が衛生管理区域に設定されていたことを理由に、事前の連絡なしに村田養豚場には近づかないよう求めていたといいます。それも村田養豚場周辺にいた大量の犬が、広範囲に溢れ出していた最中にです。こうして2015年(平成27年)ごろ、木津川市の申し入れは奈良県家畜保健衛生所に無視され、村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身が設定した衛生管理区域を理由に、周辺住民や観光客、一般の通行者、それどころか保健所さえも、村田養豚場に近づいてはならないということが、次第に既成事実化されつつありました。

「お願い」を聞かない通行者に浴びせられる恫喝まじりの罵詈雑言

2015年(平成27年)ごろ、家畜保健衛生所が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による実質的な公道封鎖を後押しするようになったことで、村田養豚場(村田畜産/村田商店)はますます強硬な態度で通行者に接するようになっていました。

下記は2015年(平成27年)11月4日に、当会代表が村田養豚場の北側で草刈りをした時のことを体験談としてまとめたものです。当会代表が実際に体験したことからも、奈良県家畜保健衛生所が村田養豚場に言われるまま、公道の通行妨害に加担していたことがよくわかります。

以前から東鳴川の人に、村田養豚場は電話魔だと聞いていました。何かにつけ役所にしつこく電話をし、さんざんわめいて自分に都合がいいことを役所に言わせるのだと。困っているのは村の人間なのに、奈良市役所はおまえらが我慢しろと言ってくる。まったく頼りにならないと。それで赤田川北側の草刈りは、あえて村田養豚場が役所に電話できるよう無理して平日の日中に行いました。

予想通り、農場主は私が草刈りをしているのをみつけると、誰の許可を取ってやっているのかと因縁をつけてきました。もちろん村田養豚場の敷地ではない市道の草刈りをするのに、村田養豚場に許可を得る必要などありません。まして村田養豚場は草刈りをしていた市道の隣接地所有者でもないのです。私はあらかじめ手に入れておいた市有土地境界確定図のコピーを示して、この市道の隣接地はあなたの土地ではないし、隣接地所有者には草刈りの許可は取ってあると告げ、草刈りを続けました。

すると農場主は、本当にあちこちに電話しはじめました。誰かのお墨付きを圧力に、私の名前と住所を聞き出そうとやっきなのです。最初は不動産業者に電話していましたが、不動産業者が私の名前と住所を聞き出すことに難色を示すと、次に奈良県家畜保健衛生所に電話しました。村田養豚場周辺では公道を含めて衛生管理区域であるから、公道を歩くにも名前と住所を入場記録につけなければならないと言わせたかったようです。ところが、電話に出てきた女性職員は、公道は敷地ではないから、通行する人に名前と住所を告げるよう言うことはできないと、ごく当たり前のことを答えていました。

それを聞いた農場主は「お前じゃ話にならない、別のやつを出せ」と怒鳴り散らしました。次に電話口に現れた男性職員は「村田養豚場では衛生管理のため公道を通る場合も入場記録を取ることになっています」と私に言ってきました。これに対し私が法的根拠の有無を問いただすと、「法的根拠はありませんが、村田養豚所ではこうすることになっています。強制ではなく、“お願い”ということです」とのこと。それで「では通行に際し入場記録の求めに応じる義務はないですね」と確認すると、この男性職員は「そうです」と認めました。

私は事前にいろいろと教えてもらっていたので、この場所の事情をくわしく知っていましたが、そうでなければ、あんな態度で詰め寄られ、役所にも名前を言うよう言われたら、ふつうの人はあきらめて引き返すと思います。最後に農場主は、今度ここを通ろうとして里道から少しでもはずれたらどうなっても知らんぞと恫喝して去って行きました。

上記にもあるとおり、農場主から威丈高に名前と住所を問われ、奈良県家畜保健衛生所にもそれに従うように言われれば、ふつうの人は通行を断念してしまうにちがいありません。

法的根拠がなく農林水産省の飼養衛生管理基準にも反することを知りながら、それでも「お願い」に従うことを求める奈良県家畜保健衛生所の態度は非常に悪質です。おかしいと言われれば「お願い」だと言って逃げ、言われたことを素直に聞く人間には「こうすることになっている」と言いきるのです。

一方で、不可解なことに奈良県家畜保健衛生所は、少なくともこのころ月に2回の高頻度で、村田養豚場の検査を行っているようです。2016年(平成28年)1月ごろ、京都府家畜保健衛生所は、村田養豚所と奈良県家畜保健衛生所の関係について、「良好な関係」と評しました。これだけ高頻度の検査は、両者の関係が「良好」でないとできない、とのことです。

またこのころ村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、養豚場南側の道は私道であるから通ってはならないと主張していました。ただし、実際にはその私道の土地所有者は何ら通行を制限しておらず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張には根拠がありません。

下記は2015年(平成27年)11月12日に、村田養豚場の間を抜ける木津川市道を通行した方の証言(一部抜粋)です。この方は大阪からの観光客でした。直前に、当会代表が運営していたツイッターの「弥勒の道プロジェクト」アカウント宛に、この方から古い道を通ってみたいと相談があり、当会代表は村田養豚場界隈の状況を説明して、今通り抜けることはおすすめできないと伝えたのですが、それでもぜひ歴史ある古道を歩いてみたいと、たった一人で通行を決行したとのことです。村田養豚場が、この方を恫喝したケースでも、私道だから通れないという理屈が、その根拠となっています。なお、当会代表とこの方との間に、この時点では全く面識はなく、直前にツイッターで何度かやりとりをした程度の関係でしたが、後日、現地での体験をくわしく報告してくださいました。この方は〈村田商店代表乙の父〉氏に脅されたことで同じ道を引き返すことができなくなったため、奈良まで山道を歩いたのち、車を置いた浄瑠璃寺まではバスで戻ったそうです。

こんばんは。先ず養豚場内里道通過の件ですが〈村田商店代表乙の父〉氏自身により通過を拒否されましたがいただいた資料にある内容を告げそのまま進行しました。すると中程で前に立ちはだかり住所氏名を告げるよう要求し始めました。更に拒否すると罵詈雑言を叫び始め次回通過しようとするのを見つけたら無事には通過させないと恫喝されました。たまたま奈良県家畜保健衛生所職員が2名検査で来ており彼女達にも住所氏名を控えるよう要求していましたが当方が拒否する以上私たちには権限が無い旨説明されていました。

その後も恫喝しながら林への入り口まで追いかけられました。犬の放し飼いも酷いです。境界確定させずにこのまま占有を続け、里道を荒廃させれば事実上自由に使えますからこのまま放置することは彼の目論見を幇助することになりますね。なんともやりきれないです。ちなみに今回は郷ポークを話題にしても効果無しでした(笑)。このような一触即発的な状況ではいつか殴り掛かられるような事態が起きないか憂慮します。まあ、手を出せば刑事事件ですから多少事態は動くかもですが。

林への入り口付近より上のコンクリート舗装されている道は私道でしょうか。〈村田商店代表乙の父〉氏は具体的な会社名挙げて絶対通行ならんと言っておりました。入り口まで追って来たのもそれが言いたかったのかもしれません。

罵詈雑言には強い方だと自負していますがやはり非生産的な無意味な議論は消耗します。ただギリギリまで身体を寄せてきたり、林の入り口まで追ってきたりと尋常ならぬ殺気を感じましたので今後は十分お気をつけ下さい。説得に応ずるようなタイプではないかと。。録画録音は必須と感じました。しかしよく平気で嘘がつけるものだと感心しています。

このように、2015年(平成27年)ごろ、奈良県家畜保健衛生所の村田養豚場(村田畜産/村田商店)におもねる態度が、村田養豚場の通行妨害を助長させ、ただ公道を通行しようとしているだけの観光客に対して、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は恫喝と受け取られるような態度をとるようになっていました。

もっとも、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、通行者の安全のため「声かけ」をしていただけだと主張しています。しかし、〈村田商店代表乙の父〉氏よる「声かけ」は、例えば次のようなものです。

上音声は、2019年(令和元年)12月7日に、Bさんが支援者とともに赤田川北側の土地を訪れたときのものです。〈村田商店代表乙の父〉氏は、初めから友好的な態度ではないことが多いのですが、自分の意に沿わない行動をとる相手には、それが高齢女性であろうと、初対面の通行者であろうとお構いなしに、上音声のような「声かけ」を行う傾向があります。こうした「声かけ」は、一般には罵詈雑言と評価されるでしょうし、ここに「どうなっても知らんぞ」といった言葉が混じれば、恫喝と受け止められても仕方がないと考えます。

なお、奈良市保健所が作成した中ノ川町・東鳴川町の徘徊犬に関する経過文書の2016年(平成28年)1月20日の記事に、奈良市保健所が奈良県畜産課を訪問した時の記録がありますが、その中で、奈良県畜産課からの情報提供として、〈村田商店代表乙〉氏と思しき人物が「恫喝行為についても今後しないように説得する」と奈良県畜産課に話していたことが報告されています。

平成28年1月奈良市保健所経過文書

2016年(平成28年)に衛生管理区域から公道が除外

このように、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が木津川市道を衛生管理区域に設定したことは、それを根拠に市道上に立入禁止の看板が立てられるなどして、市道の通行を著しく妨げる結果となっていましたが、木津川市からの申し入れなどにより、2016年(平成28年)2月ごろになって、ようやく木津川市道や赤田川北側の土地が村田養豚場の衛生管理区域から除外されました。

平成28年3月16日-村田養豚場横の里道における衛生管理区域除外の確認について-01

平成28年3月16日-村田養豚場横の里道における衛生管理区域除外の確認について-02

平成28年6月奈良市保健所経過文書

しかし2017年(平成29年)7月には、村田養豚場で複数の犬に取り囲まれ怖い思いをしたうえ、従業員に「入るな」と言われた旨、京都府山城南保健所に通報があったようです。公道が衛生管理区域から除外された後も、実際には、村田養豚場の間にある市道を通ろうとして、村田養豚場(村田畜産/村田商店)から拒否される場合があるという状態が、そのまま続いていたと考えられます。

平成29年7月10日-村田養豚の犬について

平成29年7月10日-平成29年9月19日奈良市保健所経過文書

村田養豚場の衛生管理の実態

このように奈良県畜産課と村田養豚場(村田畜産/村田商店)は防疫あるいは衛生管理区域をことさらに言い立てるのですが、村田養豚場でまともな衛生管理が行われているとはとても思われません。村田養豚場では、多数の犬が「衛生管理区域」の内外を自由に行き来しており、市道上にもあちこちに犬の糞が落ちています。また、村田養豚場では餌の管理がずさんで、重機を使って市道上で餌を混ぜ合わせる際、たくさんの餌が路上にこぼれ落ちるため、村田養豚場周辺にはたくさんのカラスが集まっています。それらのカラスは周辺地域の農作物を荒らしているだけでなく、近年浄瑠璃寺付近にも多数飛来するようになり、国宝の浄瑠璃寺三重塔の上に白い糞を落としたり、民家の茅葺き屋根をついばむなどしています。

村田養豚場のずさんな餌の管理-01

村田養豚場のずさんな餌の管理-03

村田養豚場のずさんな餌の管理-04

ただ、村田養豚場の衛生管理に全く改善が見られないというわけではありません。2018年(平成30年)に豚熱(CSF/豚コレラ)が発生し、全国の養豚場で衛生管理が強化される中、村田養豚場(村田畜産/村田商店)では、2020年(令和2年)1月ごろから、市道脇に置かれた餌の入ったドラム缶に板で作った蓋をするようになりました。また、2020年(令和2年)11月に防鳥ネットの設置が義務化されたため、2020年(令和2年)末から2021年(令和3年)の春ごろにかけて、村田養豚場でも順次防鳥ネットが整備されました。

しかし結局、路上での餌の混ぜ合わせは続いており、その際たくさんの餌がこぼれ落ちるため、カラスの数は一時期よりは減ったように見えるものの、2023年(令和5年)現在も数が多いことには変わりがありません。犬の状況も同様で、2023年(令和5年)現在も多数の犬が衛生管理区域の内外を自由に行き来し、犬の糞が場内に散乱しています。

公道の衛生管理区域指定、再び

「防疫」という「公益」のため許可された市道上の門扉

先ほど少し触れましたが、2018年9月(平成30年)、岐阜県で豚熱(CSF/豚コレラ)発生しました。そのため奈良県でも、県内養豚農場への防護策設置が進められ、2019年春ごろから、村田養豚場でも西側水路の法面の縁に防護柵が設置されたほか、養豚場南側には電気柵も設置されました。また奈良県畜産課は、2019年(平成31年)3月から4月にかけ、豚熱(CSF/豚コレラ)対策を名目に、木津川市に対し市道の封鎖を執拗に求めています。2016年(平成28年)2月に木津川市道が衛生管理区域から除外されたはずですが、それはなかったことにされてしまいました。

平成31年4月26日-豚コレラ感染拡大防止に係る柵による農場囲い込み措置について(協力依頼)

奈良県畜産課が求める豚熱(CSF/豚コレラ)対策を名目とした市道の封鎖については、2019年(令和元年)5月7日、木津川市が京都府警木津警察署と協議を行っています。このときの木津警察署交通課は「公道を遮断し、通行権を制限するには相当の事情が必要と考える。電気柵設置でイノシシ等野生動物の侵入を防ぐのであれば、豚舎等養豚場施設のみを包囲し、公道部分を解放することができるはずである。施設への出入りが不便になるという言い分は、申請者の身勝手である」との判断を示しました。

令和1年5月7日-村田養豚場における豚コレラ対策で市道上に電気柵を設置する件について(木津警察署)

しかし結局、奈良県と村田養豚場(村田畜産/村田商店)の強い働きかけによって、2019年(令和元年)10月、木津川市と京都府警木津警察署は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に道路占用許可書と道路使用許可書を交付してしまいました。そして2019年(令和元年)10月中ごろには、村田養豚場(村田畜産/村田商店)により、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道の二箇所に、早速門扉が設置されました。このとき門扉が設置されたのは、村田養豚場の間にある市道の南側と、赤田川にかかる橋の北側のたもとです。

令和1年10月18日受付-工事完了届-02-10月9日南側ゲート設置完了写真

令和1年10月18日受付-工事完了届-03-10月17日北側ゲート設置完了写真

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、この後さらにもう一箇所門扉を設置しています。FACT.1でくわしく触れましたが、2019年(令和元年)8月末に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は東鳴川町502を購入し、2019年(令和元年)10月には、東鳴川町502のある赤田川北側にも防護柵を設置しようとしました。ところがその防護柵は、Bさんら、東鳴川町502に隣接する長尾2の共同所有者が主張する土地境界を越境する位置に設置する計画となっていました。なお長尾2共同所有者らが主張する土地境界は、東鳴川町502の前所有者であるCさんと合意して、2007年(平成19年)に木津川市が作成した市有土地境界確定図に、府県境として書き込まれた土地境界です。そのため、長尾2共同所有者らは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し、防護柵を設置する場合は、2007年(平成19年)に木津川市が作成した市有土地境界確定図に記載された土地境界を越えないよう求めました。しかし、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、土地境界は未確定だと一方的に主張して、2020年(令和2年)1月、長尾2共同所有者らが主張する土地境界を越境する形で、防護柵の設置を強行しました。そして、この防護柵が木津川市道と交差するあたりに、防護柵の設置と同時に、三つめの門扉が設置されました。

こうした経緯により、2020年(令和2年)1月以降、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道を通るには、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が市道に設置した門扉を開閉しなければならなくなりました。木津川市の「占用許可条件」によると、これらの門扉は本来、日中は開けておかなければならないのですが、実際には日中も閉じられています。門扉に鍵はかけられていないものの、鎖が巻かれていて開閉には手間がかかります。

道路占用許可条件(期間更新)

道路占用許可条件(期間更新)

門扉の設置当初は、一応、木津川市の「占用許可条件」にしたがって、門扉に下写真のような掲示がなされてはいました。門扉設置後しばらくは全ての門扉に同じ掲示がありましたが、そのうち全て風で吹き飛ばされてしまいました。掲示が残っていた時も、防護柵と門扉があることで、遠目には道が養豚場の敷地に突き当たり、道がそこで終わっているように見えるため、通行を諦めて引き返してしまう人もいたようです。また、門扉に挟まれた木津川市道には、相変わらず多数の犬が徘徊していますから、ほとんどの人が通行を躊躇する状態が今も続いています。

通行される方へのお願い/家畜伝染病(豚コレラ)予防のため、門を設置しています。/夜間については門を閉めますが、施錠していませんので、自由に開閉し通行できます。/通行の際に門を開けた方は、閉めて頂きますようご協力をお願いします。/木津川市道 加2092号線/道路占用許可番号 1木管第1-122号/道路使用許可番号 第1219号/期間 令和元年10月3日〜未定※/※豚コレラが終息するまでの間/株式会社村田商店

一方で、「防疫」という「公益」なるものを門扉設置の目的として掲げている割に、木津川市道と村田養豚場の敷地の間には柵がなく、犬やカラス、村田養豚場の重機は何にも妨げられず、自由に木津川市道と敷地とを行き来しています。市道と市道両側の敷地との間には柵をしていない、このような状況で、市道に三箇所もの門扉設置を許可することは、あまりにも一方的に一般の通行権を侵害しています。これは行政として著しくバランスを欠く判断だと言わなければなりません。

嘘の説明を繰り返す奈良県畜産課

そんな中、2021年(令和3年)7月ごろには、木津川市道として機能している道の上に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)によってタンクや資材が多数置かれてしまい、とても通行できるとは思われない状態となりました。

2021年11月撮影の市道加2092号線

しかも驚いたことに奈良県畜産課は、市道の通行権が著しく侵害されているこうした状況を是正しようとしないばかりか、2021年(令和3年)9月30日には、豚熱(CSF/豚コレラ)対策を強化したいとして、門扉設置に関する道路占用許可条件第2条で、「通行者が自由に開閉し通行できるようにする」とされていることに対し、「なんとかできないものか」と木津川市に不満を述べています。

令和3年9月30日(村田養豚場)感染確認区域の拡大に伴う対応策について-奈良県との協議

しかし、農林水産省が2020年(令和2年)10月1日に作成し、2021年(令和3年)10月5日一部変更した、「飼養衛生管理基準遵守指導の手引き(豚及びいのししの場合)」21ページには、「不特定多数の者が出入りのたびに消毒や衣服・靴の交換ができない場所(公道、生活居住区等)は、衛生管理区域の範囲に含めることはできません。」と明記されています。公道の完全な封鎖を求める奈良県畜産課の主張は、この手引きとは明らかに矛盾しています。

飼養衛生管理基準遵守指導の手引き(豚及びいのししの場合)21頁

この点に関して、2021年(令和3年)11月9日、奈良県畜産課は「国に問い合わせたところ、現在、公道は衛生管理区域外という扱いになるが、少なくとも防護柵により衛生管理区域は守られており、現在のままで野生動物の侵入を防ぐことはできている。区域と境界の明示化、従事者等以外の侵入防止という管理基準の本旨に適合しているものであれば、扉は常時閉めておいて、通行者にインターホンを押してもらって対応するのは衛生管理上望ましい対応との回答を得ている」と説明し、「感染防止対策の強化」のため、市道上の門扉についての道路占用許可条件を変更し、日中も門扉を閉鎖することを認めるよう、木津川市に要請しました。

令和3年11月9日-飼養衛生管理区域における占用許可に関する協議-01

令和3年11月9日-飼養衛生管理区域における占用許可に関する協議-02

ところが当会代表が農林水産省に関連行政文書の開示を請求したところ、奈良県畜産課が得たという国からの回答が全くの嘘だったとわかりました。農林水産省の実際の回答は「公道を含めて衛生管理区域を設定することは、原則として認められません。しかしながら、家畜の飼養者が公道を使用することができる特段の事情があること、当該区域に出入りする全ての者が出入口での消毒や衣服・靴の交換等を行うこと、いのししの侵入を防ぐための防護柵が設置されていること、公道を含めて敷地を定期的に消毒することなど飼養衛生管理基準の全項目を遵守できると貴県が判断した場合は、この限りでないと考えます」というものでした。

令和3年12月14日-衛生管理区域の考え方について(回答)-メール

その後木津川市も、下報告書の通り奈良県畜産課の説明が嘘だったことを確認しています。

令和4年2月2・3日 飼養衛生管理区域に接する市道の取り扱いについて 2頁

このようにして、奈良県畜産課による嘘が明らかとなったことで、ようやく木津川市は、奈良県畜産課の主張に対して、それまでよりは慎重な態度を示すようになりました。2022年(令和4年)2月21日に開かれた、木津川市管理課と奈良県畜産課の協議では、木津川市は、奈良県畜産課の説明と農林水産省の実際の回答との間に齟齬があることや、飼養衛生管理基準のいくつかの項目が遵守されていないと判断せざるを得ない村田養豚場の現状について、率直に指摘しています。

  • 特に、放し飼いにされた多数の犬が、■■■の内外を自由に徘徊し、これらの犬の排泄物が場内に散乱しており、管理基準の不遵守が確認できる。
  • 里道及び私有地と思われる里道に沿ったところに資材等が放置されている。侵入防止柵が設置された当初には更地状になっていたが、現在では平成19年(2007年)の■■■■に発展した当時のような状況になっている。北側の門扉から通行できるスペースがあればなんとか説明できるが、資材等が放置され通行できない状況である。

令和4年2月21日-村田商店の占用許可条件変更について(奈良県との協議)-01

令和4年2月21日-村田商店の占用許可条件変更について(奈良県との協議)-02

令和4年2月21日-村田商店の占用許可条件変更について(奈良県との協議)-03

上報告書のとおり、時折り浄瑠璃寺周辺にまで徘徊する犬がいることもあって、木津川市は特に犬の放し飼いを問題視していました。これに対して奈良県畜産課は、2022年(令和4年)3月22日の協議で、村田養豚場で飼養している40頭の犬のうち、20頭を衛生管理区域内で放し飼いにすることが防疫上必要だとして、犬の放し飼いに関する飼養衛生管理基準の解釈について農林水産省と調整中であるので、犬の放し飼いについては判断を保留してほしいと主張しました。この件については、FACT.2でも触れています。

令和4年3月22日-(株)村田商店に対する市道(加2092号)占用許可の3者協議-02

ところが、農林水産省に関連行政文書の開示を請求したところ、関連行政文書は一枚も存在しませんでした。したがってこの奈良県畜産課の説明も嘘である可能性が極めて高いと言えます。

このように奈良県畜産課が村田養豚場(村田畜産/村田商店)による犬の放し飼いを黙認し続けているため、2023年9月になってもなお、木津川市道上を多数の犬が徘徊する状況は続いていました。

令和5(2023)年9月4日-(株)村田商店による市道の占用状況の現地確認-01

令和5(2023)年9月4日-(株)村田商店による市道の占用状況の現地確認-02

そこで木津川市は、2023年9月に門扉に関する占用許可を更新するにあたって、占用許可条件に条件12を追加して、次回の占用許可更新までに犬を全頭収容するか、それが無理な場合は、次回の占用許可更新から9ヶ月以内に犬を全頭収容する計画を提出するよう村田養豚場(村田畜産/村田商店)に求めました。

令和5(2023)年9月25日-(株)村田商店に対する市道占用の許可更新に係る協議-02

令和5(2023)年9月25日-(株)村田商店に対する市道占用の許可更新に係る協議-06

その後、2023年11月30日に村田養豚場(村田畜産/村田商店)から「犬の飼育改善計画」が提出されましたが、付属する計画図によって、木津川市道が村田養豚場の衛生管理区域に含まれていることが判明しました。

令和5(2023)年11月30日-犬の飼育改善計画-02

また、2023年12月12日に奈良県畜産課が木津川市に提出した「豚熱感染防止対策への協力について」という文書にも、「本事例に限っては市道であっても衛生管理区域の範囲に含めることができております。この件については農林水産省にも確認しております」との記述がありました。

令和5(2023)年12月25日決裁-道路占用許可(更新)申請に関する協力依頼への疑義照会について(伺い)市道加2092号-05

しかし2023年10月13日に農林水産省は、当会代表の問い合わせに対し、農林水産省が奈良県畜産課に送った「衛生管理区域の考え方について(回答)」と題するメールは、農林水産省として公道を衛生管理区域に含めることを了解したものではないと、明確に回答しています。したがって、奈良県畜産課の文書にある「この件については農林水産省にも確認しております」という文言は明らかに虚偽です。

令和5(2023)年10月13日-「衛生管理区域に関する質問書」に対する農林水産省の回答-03

木津川市と京都府警木津警察署は、当会代表が情報を提供したことにより、農林水産省からの回答について把握していました。おそらくそのこともあって、木津川市と京都府警木津警察署は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が提出した計画で、木津川市道が村田養豚場の衛生管理区域に含まれていることを問題視し、2023年12月7日の協議で京都府警木津警察署は「市道を含む計画では受理できない。含めるのであれば、法的根拠を提出してほしい」と述べています。一方木津川市は2023年12月25日に、奈良県畜産課に対して、「貴課(奈良県畜産課)が木津川市道加2092号の一部を衛生管理区域に含めることが妥当と判断された根拠及び貴県(奈良県)の取り組み」に関し、文書による疑義照会を行いました。

令和5(2023)年12月25日決裁-道路占用許可(更新)申請に関する協力依頼への疑義照会について(伺い)市道加2092号-03

令和5(2023)年12月25日決裁-道路占用許可(更新)申請に関する協力依頼への疑義照会について(伺い)市道加2092号-04

木津川市の疑義照会に対する奈良県畜産課の回答は、単に奈良県畜産課が農林水産省からのメールを都合よく解釈して、木津川市道を衛生管理区域に含めることが妥当と判断したと主張するばかりで、法的根拠と言えるようなものは何も示されませんでした。また、2023年12月12日に奈良県畜産課が木津川市に提出した「豚熱感染防止対策への協力について」という文書にはあった「この件については農林水産省にも確認しております」との文言が消えたことにも注目するべきでしょう。そのような事実がないことが露見したために、さすがの奈良県畜産課としても、もはや嘘を繰り返すことができなくなったものと考えられます。

令和6年1月5日施行-道路占用の許可について(期間更新)-17

なお、2020年に改正された家畜伝染病予防法では衛生管理区域に出入りする人や車両に消毒が義務付けられ、消毒を怠った場合に30万円以下の罰金を科す罰則が新設されました。

家畜伝染病予防法

(衛生管理区域における消毒設備の設置等の義務)

第八条の二 政令で定める家畜の所有者は、農林水産省令の定めるところにより、衛生管理区域(畜舎その他の農林水産省令で定める施設及びその敷地(農林水産省令で定める敷地を除く。)をいう。以下同じ。)の出入口付近に、特定疾病又は監視伝染病の発生を予防するために必要な消毒をする設備を設置しなければならない。

 前項の設備が設置されている衛生管理区域に出入りする者は、農林水産省令の定めるところにより、あらかじめ、当該設備を利用して、その身体を消毒するとともに、当該衛生管理区域に持ち込み、又は当該衛生管理区域から持ち出す物品であつて農林水産省令で定めるものを消毒しなければならない。

 第一項の設備が設置されている衛生管理区域に車両を入れ、又は当該衛生管理区域から車両を出す者は、農林水産省令の定めるところにより、あらかじめ、当該設備を利用して、当該車両を消毒しなければならない。

(罰則)

第六十八条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。

 第八条の二(中略)の規定に違反したとき。

したがって、もし木津川市道を衛生管理区域に含めてしまうと、消毒が罰則つきで義務化された改正家畜伝染病予防法と、通行者に消毒を強制できないとする木津川市の道路占用許可条件とが衝突してしまいます。いうまでもなく、この場合木津川市の道路占用許可条件が優先されるべきであり、そもそも公道を衛生管理区域に含めることなど法的に不可能なのです。一事業者が恣意的に設定できる衛生管理区域によって、公道の通行権が侵害されることなどあってはなりません。木津川市道を衛生管理区域に含むことが妥当だとする奈良県畜産課の判断は、このように法的な矛盾を抱えており、行政機関の判断としてあり得ないものです。

加えて、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が提出した犬の収容計画には、もう一つ重大な問題がありました。現在、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、木津川市側の隣接地所有者(Bさんら)から境界確定、所有権確認、妨害排除、損害賠償を求める裁判を起こされていますが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が提出した犬の収容計画では、木津川市側の隣接地所有者が主張する土地境界を越境する位置に、犬の収容場所を作る計画となっているのです。これは裁判を無視して自力による既成事実の拡大を図ろうとするものであって、裁判の意義を蔑ろにする振る舞いだと評価されても仕方のないものです。

しかしながら木津川市は2024年1月、犬の収容計画については、犬の全頭係留に向けた村田養豚場(村田畜産/村田商店)の自主的な取り組みの予定を確認するために提出を受けたもので、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の所有権や権原の及ぶ範囲を審査するものではないとし(このことは占用許可条件にも明記〈リンク先5枚目〉されています)、また所管行政機関である奈良県畜産課の判断は一定尊重せざるを得ないとして、道路占用許可の更新を認めました。犬の徘徊により市道の安全な通行が確保されない現状を解消することが何より優先された形です。木津川市のこの判断が妥当であるかについては、疑問が残ります。

ともあれ以上のとおり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)を擁護する奈良県畜産課の嘘は、わかっているだけでこれだけあります。

  1. 2014年(平成26年)6月12日、「飼養衛生管理基準の改正に関するQ&A」のQ10の曲解を木津川市に堂々と披露
  2. 2020年(令和2年)3月19日、防護柵の補助金に関する虚偽有印公文書を作成して行使
  3. 2021年(令和3年)11月9日、衛生管理区域に公道を含めることに関する国からの回答を捏造
  4. 2022年(令和4年)3月22日、犬の放し飼いに関する農林水産省との調整を捏造
  5. 2023年(令和5年)12月12日、衛生管理区域に公道を含めることについて農林水産省に確認したという虚偽説明を行う

このうち虚偽有印公文書作成については、Bさんが京都府警木津警察署に、当時の奈良県畜産課長を虚偽有印公文書作成・同行使・詐欺の罪で刑事告発しました。その結果、京都府警木津警察署に呼び出された当時の畜産課長が1日取り調べを受けたとのことですが、その中で畜産課長が反省の弁を述べたことから、Bさんは起訴を見送ることに同意しました。そうしたことが過去にありながら、奈良県畜産課が国とのやり取りを捏造するような嘘をつくことにいまだ全く抵抗がないことには、驚くばかりです。しかも嘘がばれた後、新たにまた同じような嘘をついています。奈良県畜産課では、相手が国であろうと別の地方公共団体であろうと、平気で都合の良い嘘をつくということが常態化しているとしか考えられません。

市道の正常化をめざす木津川市と京都府警木津警察署

2022年(令和4年)年2月以降、木津川市と京都府警木津警察署は、公道を衛生管理区域に含めることは例外であることを指摘し、公道上を犬が徘徊している現状を改善させるよう奈良県畜産課に繰り返し求めてきました。木津川市の報告書によれば、2022年(令和4年)年3月25日に行われた現地確認では、京都府警木津警察署が、市道上でフォークリフトが操業していることを問題視し、奈良県畜産課に対し、公務員には犯罪があると思われる場合告発する義務がある(刑事訴訟法239条2項)ことを指摘して、「県が丸抱えして殊更に申請者(村田養豚場(村田畜産/村田商店))を擁護しようとする姿勢には疑問を感じる」とまで述べたといいます。

令和4年3月25日-(株)村田商店による市道(加2092号)占用箇所の現地確認-02

令和4年3月25日-(株)村田商店による市道(加2092号)占用箇所の現地確認-03

なお、FACT.2で見たように、その後木津川市は2024年(令和6年)3月21日に、「衛生管理区域内で複数の犬が未係留の状態で飼育され、市道上を徘徊する」事態が、「占用許可条件に違反し、市道の安全かつ円滑な通行の妨げとなるばかりでなく(中略)、飼養衛生管理基準に抵触する」とはっきり指摘した文書を、奈良県畜産課と村田養豚場(村田畜産/村田商店)に発出しています。

令和6(2024)年3月21日-適切な豚熱感染防止対策の実施に必要な指導について(要請)

令和6(2024)年3月21日-市道占用許可条件の順守について

このように、2022年(令和4年)から2024年(令和6年)にかけ、木津川市と京都府警木津警察署は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し一定の猶予期間を設ける譲歩は示しつつも、最終的には公道を衛生管理区域から除外するなどして、公道の自由通行を確保するよう奈良県畜産課と村田養豚場(村田畜産/村田商店)に根気強く働きかけていました。ほんのわずかずつしか進んでいないとはいえ、木津川市と京都府警木津警察署が市道の正常化に向け努力していることは、高く評価したいと思います。

門扉に掲示された「お願い」について

市道通行の正常化に取り組む木津川市と京都府警木津警察署とは正反対に、奈良県畜産課は市道封鎖が必要だとして譲らなかったため、木津川市と京都府警木津警察署は一定の譲歩をせざるを得なくなりました。2022年(令和4年)年5月ごろ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、通行者に協力をお願いする看板を、市道上の門扉に掲示しました。その内容は、通行する際には呼び鈴を鳴らして従業員を呼び、門扉脇のゴミ箱に入っている防護服とブーツカバーを着用した上、従業員の案内に従って、ロープで示された「仮通路」を通行するよう求めるもので、それはまさしく、奈良県畜産課が市道の封鎖を求めてきた当初に捏造した、あの「国からの回答」で言及されている対処とほぼ同じでした。

令和4年5月20日-村田商店防護柵への掲示物確認-04

しかし木津川市はこのとき占用許可条件を緩めることはせず、日中は門扉を開けておくことを引き続き条件とつつ、代替防疫対策が整うまで暫定的に協力願いの掲示を容認するという対応を採りました。また木津川市は協力願いは通行者に強制できず、通行者が協力を拒否した場合も通行を妨げてはならないとしていました。

令和4年7月19日-「市道加2092号線の通行に関する質問書」に対する回答書-03

令和4年7月19日-「市道加2092号線の通行に関する質問書」に対する回答書-04

主張が対立する市道幅

こうして門扉に掲示された「お願い」に対応するものとして、2022年(令和4年)年5月ごろ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、村田養豚場の敷地の間にある市道に、通行者が歩く場所を示すため、ロープで90cm幅の通路を描きました。これはかねてより、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、村田養豚場の敷地の間にある市道は、元々は道幅が91cm(三尺)ほどしかなかったと主張しているためです。

しかし奈良市は、2019年(令和元年)9月2日に開かれた木津川市と奈良市の協議で、市道の幅は2mと述べています。

令和1年9月2日-境界確定について(奈良市との協議)-02

また木津川市も、2022年(令和4年)11月18日に開かれた木津川市、奈良市、奈良県、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が参加した協議で、木津川市の道路台帳上の市道幅は2.8mだと指摘しています。

令和4年11月18日-(株)村田商店の道路使用及び道路占用許可更新(延長)に関する協議(境界確定申請の進め方について)-02

いずれにせよ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が設定した通路の位置と幅には、確かな根拠が何もないため、先ほど紹介した木津川市の回答にあるとおり、たとえ通路からはみ出して通行しても、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が通行を拒否することはできません。通路を示すロープの内側を歩くということも、根拠のない「お願い」でしかないからです。

下図は1983年(昭和58年)に作成された里道境界と府県境を明示する平面図です。青字は、図面から計算した道幅です。このうち点線の矢印があるものは、道幅が確定しているものです。この図を見ると、養豚場南側の18-18'とある場所では、確定済みの道幅が3mあるとわかります。さらに南の三叉路近くにある17-17'とある場所では確定済みの道幅が4.2mあります。また、村田養豚場が現在地に移転する前から存在していた赤田川にかかる橋は、道幅が3.17mほどあったようです。この図面に基づけば、村田養豚場の敷地の間にある市道の元々の幅は、狭いところでも3m前後だったと言えます。

昭和58(1983)年-京都府相楽郡加茂町、木津町、奈良市中ノ川町、地内平面図 里道+道幅

この1983年(昭和58年)の平面図を、村田養豚場が移転してくる前の1961年(昭和36年)の航空写真と重ねてみると、航空写真の解像度が低いためわかりにくいものの、道幅がだいたい一致するように見えます。少なくとも、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が主張するように、現在村田養豚場の敷地の間となっている市道が、元は道幅が90cmだったということはありません。

昭和58(1983)年-京都府相楽郡加茂町、木津町、奈良市中ノ川町、地内平面図 里道+1961年の航空写真

以上のことから、村田養豚場の敷地の間にある市道について、木津川市の道路台帳上2.8mの幅が認定されているとする木津川市の指摘は極めて妥当なものです。まず市道境界を確定しなければならないというのであれば、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、木津川市の道路台帳上の認定幅員(2.8m)を尊重し、現況の道幅で市道境界を確定することに進んで協力するべきです。

なお市道の道幅に関しては、2023年(令和5年)2月24日、木津川市側の地元地域である西小地区浄瑠璃寺などから、奈良市と木津川市に要望書が提出されました。

令和5(2023)年2月24日-木津川市道加2092号線奈良市域区間の境界確定に関する要望書-西小地区-01

令和5(2023)年2月24日-木津川市道加2092号線奈良市域区間の境界確定に関する要望書-西小地区-02

令和5(2023)年2月24日-木津川市道加2092号線奈良市域区間の境界確定に関する要望書-浄瑠璃寺

奈良市と木津川市は、木津川市側地元からのこうした要望を重く受け止め、木津川市の道路台帳上の認定幅員(2.8m)を尊重し、すみやかに奈良市の里道と木津川市の市道の境界を現況の道幅で確定して、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道を、1日も早く誰もが安心して自由に通行できる状態に戻さなければなりません。

道路占用許可の打ち切り

これまで見てきたように、木津川市と京都府警木津警察署は、法的な矛盾を抱えてでも村田養豚場(村田畜産/村田商店)と奈良県の主張に一定の配慮を見せてきました。一方、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は2024年(令和6年)8月末日までに犬を全頭収容する約束を守りませんでした。そのため、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道「加2092号線」に関し村田養豚場(村田畜産/村田商店)に繰り返し交付されてきた道路占用(使用)許可は、2024年(令和6)9月30日をもって打ち切られることとなりました。下画像は2024年(令和6年)9月2日の現地確認に関する報告書です。この現地確認には仲川奈良市長と谷口木津川市長も同行しました。

令和6(2024)年9月2日 (株)村田商店による市道の占用状況の現地確認-01

令和6(2024)年9月2日 (株)村田商店による市道の占用状況の現地確認-02

令和6(2024)年9月2日 (株)村田商店による市道の占用状況の現地確認-04

なお木津川市は「道路占用許可申請に対する回答書」の中で、木津川市道「加2092号線」上に設置した門扉を2024年(令和6)9月30日までに撤去するよう村田養豚場(村田畜産/村田商店)に求めています。

令和6年9月10日決裁-道路占用の不許可について-03

望まれる1日も早い市道の開放

門扉の占用許可が打ち切られた以上、もはや村田養豚場(村田畜産/村田商店)には、木津川市道の両側にある敷地をそれぞれ防護柵で囲うほか、飼養衛生管理基準を満たす手立てはないと言えます。村田養豚場(村田畜産/村田商店)はただちに公道を作業場とすることをやめ、すみやかに市道を完全に開放しなければなりません。

そのために市道(里道)境界を確定することは必ずしも必要ではありません。木津川市の道路台帳上の道幅である2.8mもしくは現況の道幅を確保する形で、村田養豚場(村田畜産/村田商店)がまずは争いのない位置に防護柵を設置すれば良いのです。もし敷地の間にある木津川市道を防護柵で分割して現況と同程度の道幅を確保しない場合、敷地側を通行するにしても市道側を通行するにしても、道幅が狭いために大型車両や重機の通行が困難となる恐れがあります。それでは村田養豚場(村田畜産/村田商店)としても困ったことになるはずです。現在、防護柵の設置は飼養衛生管理基準で義務付けられています。現行の飼養衛生管理基準に対応するため現況の道幅を確保した上で木津川市道と敷地の間に防護柵を設置することは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)にとっても合理的な解決だと考えます。

市道と敷地の間に防護柵を設置するためには、施設の配置を見直すことも必要となるでしょう。下図は市道上で作業をしないための施設配置例です。現在、村田養豚場が木津川市道を作業場にしているのは、飼料保管小屋(飼料調整)の出入口が直接市道に接しているため、作業の動線上、市道上で餌を混ぜ合わせることが最も効率が良い状態となっているからだと考えられます。そうであるなら、この飼料保管小屋を、養豚場の北西隅にある、現在ほとんど使われていない資材置き場に移動させ、資材置き場の前や休憩小屋の前にあるスペースを作業場としてはどうでしょうか。これなら、公道を作業場にするメリットはなくなりますし、餌の荷下ろしも休憩小屋の前にあるスペースで行うことができます。市道の両脇に餌の入ったドラム缶を並べるのではなく、休憩小屋前のスペースにドラム缶を並べれば良いわけです。また休憩小屋前のスペースから、市道西側の豚舎に上がるスロープを作れば、市道を使わずに西側豚舎と行き来ができるようになります。それでも東側の豚舎と赤田川北側に新設される豚舎に餌を運ぶには、市道を使う必要が出てきますが、市道上で餌を混ぜ合わせたりするわけではないので、養豚場の車両や重機が市道を通過する頻度と時間を相当減らせるはずです。

市道上で作業をしないための施設配置例

この案が気に入らない場合であっても、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は別の何らかの方法で、すみやかに市道を開放しなければなりません。もし最終的に代替路によって解決する場合は、例えば敷地の縁に沿う形でこれまでの市道と同等の幅がある道を新たに作る必要があります。これを実現するには、既存の豚舎や設備を撤去したり、新たに赤田川に橋をかけたりしなければなりません。このように、どのような方法とるにしても困難が伴うことは明らかですが、そもそも公道を作業場とすることを前提とするような配置で施設を建設したのは村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身です。そのことによって生じた問題は、施設の配置を見直すなどして、村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身で解決するのが当然です。公道を封鎖して通行権を侵害することは、問題の解決などではなく、一方的に周囲に負担を押し付けているだけであって、そのような単なる一事業者の身勝手を、行政が容認するべきではありません。