原告第1準備書面・証拠説明書
2019年11月19日提出
原 告 株式会社村田商店
被 告 遠藤 千尋
原告第1準備書面
被告第1準備書面「第2 被告の主張」(6頁〜65頁、以下「被告の主張」という) に対する反論
第1 はじめに
1 「被告の主張」全体について
被告は、その冒頭で「被告の主張の要旨」を述べるものの、「被告の主張」の全体は、60頁に亘る極めて大部のものである。
しかしながら、その「被告の主張」のうちには、奈良市や木津川市といった行政の対応の経過や、それに対する非難の主張が多く含まれている。また、本件記事は、「平成28年6月」時点において作成され掲載されたのであるから(「被告の主張」8頁)、事実の真実性の証明は、「平成28年6月」時点の事実が対象となる。しかし、「被告の主張」は、それ以前の事実関係を縷々平板的に述べているので、本件審理の争点が曖昧にされてしまっている。
従って、原告は、それらの「被告の主張」に対して、逐次認否反論せずに、本件訴訟の中核的部分の主張を行うこととする。
ただし、その前提として、「本件訴訟に至る経緯」(「被告の主張」2項)に対する認否反論は重要と考えるので、以下では、まず、「本件訴訟に至る経緯」を述べ、その後に「本訴訟における中核的争点」について述べる。
2 本件訴訟に至る経緯
(1)被告の主張
「本件訴訟に至る経緯」については、「被告の主張」に記載されている(同8頁〜9頁)が、そのうち、(4)は不知、(8)第2文は争い、その余は概ね認める。
(2)原告の主張
「被告の主張」における「本件訴訟に至る経緯」は、本件の実態を十分に示していないので、原告は、以下の通り、「本件訴訟に至る経緯」を詳細に説明する。
ア 刑事告訴
被告は、平成26年2月ごろから、乙1の本件記事と同趣旨の記事(その後、 記事の内容に変逐があって、原告に対する攻撃はエスカレートして本件記事に至っているが、その主旨は同一である、以下「本件同種記事」という)をインターネット上のホームページに掲載した。
原告は、本件同種記事の掲載によって、豚肉出荷先に対する信用が大きく毀損されたので、弁護士(本件代理人弁護とは別の弁護士である)に依頼し、平成28年5月10日、名誉毀損罪、偽計業務妨害罪で刑事告訴した(以下「本件告告訴事件」という、甲9)。ただし、当時、本件同種記事の掲載者が、「弥勒の道プロジェクト」と名乗るだけであったので、被告訴人については、特定できず「弥勒の道プロジェクトこと村田養豚場から周辺環境と赤田川を守る有志の会こと氏名不詳者」とせざるを得なかった(甲9、2頁)。
しかし、奈良警察署は精力的に捜査を行い、本件同種記事の掲載者を被告と特定し、被告に対する強制捜査(捜索押収)が行われたと聞いている。しかし、本件同種記事に関する刑事処分の結果としては、平成28年12月19日、不起訴処分となった(甲10)。
イ 被告の攻撃のエスカレート
被告は、上記告訴事件の継続中において、本件同稲記事よりも、表現や文字の大きさなどにおいてインパクトが強く、かつ、原告に対する攻撃を頗る激化させた本件記事をホームページに掲載した。
本件記事のホームページの掲載時期について、原告は特定できなかったが、被告の主張によれば、「平成28年6月」とのことである(「被告の主張」8頁)。
ウ 原告の対応
原告は、当時の弁護士と警察を通じて、被告に対して、本件記事の削除を求めた(「被告の主張」9頁)。しかし、本件記事が削除されることはなかった。
他方で、原告は、後述の通り、村田養豚場の周辺環境への配慮のため、漸次、環境対策に努めてきた。
なぜなら、原告は、本件記事で適示される違法行為は断じて行っていなかったが、被告が活動する「弥勒の道プロジェクト」の主旨が、赤田川及び周辺の自然的歴史的環境を守りたいという趣旨にあることは理解しており、できる限り、その趣旨を汲むべきであろうと考えたからである。
本来、原告には、適法な営業権、財産権が保障されている。しかし、原告は、上記「平成28年6月」以降、適法な営業権を振りかざして 何ら対策を取ってこなかったのでない。原告の有する営業権・財産権とのぎりぎりの調整の中で、「弥勒の道プロジェクト」の要求に対して、後述の通り、新たな環境設備を設置するなどの対策を取ってきたのである。
エ 被告の対応
しかしながら、被告は、地域環境のみを一方的に主張し、原告に保障されてい る営業権、財産権については、一顧だにしなかった。そして、原告に対する悪意 に満ちた虚偽内容の本件記事を削除しないばかりか、その内容をエスカレートさせていったのである。
そのため、原告は、やむなく、本訴訟に及んだ。
3 本訴訟における中核的争点
被告は、本件記事の冒頭において、村田養豚場の行為が「不法行為」に該当するものであると明確に記述している(甲2、1頁、8行目〜9行目)。
すなわち、被告は、原告の行為が「不法行為や迷惑行為」であると記述して(甲 2、1頁、8行目〜9行目)、両者の概念を区別して記述しているところ、「迷惑行為」と区別されるところの「不法行為」とは、民法709条の「不法行為」すなわち、私権に対する権利侵害行為に他ならない。
そして、被告の主張する、私権に対する権利侵害行為としては、FACT.1の「山林侵奪、他人地占有」と、FACT.4の「赤田川下流の水質汚濁」が、とりわけ重大である。
従って、この2つの記事が最も、原告に対する名誉を毀損するものである。よって、本書面においては、この2つの記事について、争点とすべき本件配事内容を明確にした上で、「被告の主張」に対する反論(すなわち、記事が虚偽事実の摘示であること)を行う。
本書面においては、本件の中核的争点を明らかにするため、「他の記事(犬の放し飼いの記事、公道の違法占有の記事)」に関しては、訴状の「請求原因」に特に付加しない。
また、本訴訟は、本件記事が虚偽であるか否かが中核的争点であるので、本書面では、「公共目的や公共の利害」に関する反論も行わない。
また、本訴訟において、原告は、被告の名誉毀損行為に対して、損害賠償請求と共に、本件記事の抹消を求めているものであるが、既に、被告は本件記事を一部変更しているし、今後の変更も考えられる。したがって、本件記事の抹消についての詳細の主張は、現時点では行わなず、本件審理を経て、本件記事の変遷を見てから、弁論終結までに行うこととする。
第2 山林侵奪、他人地占有(FACT.1)
1 争点とすべき本件記事内容
本件記事において、重大なる虚偽事実の摘示は、次の部分である(下線は、本書面にて、重要部分に付けたもの。)
- 「・・・村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、2003年頃他人の山林を侵奪し、・・・、不法掘削した他人地・・・を・・・占拠し続けています」(1頁本文3行目〜6行目)。
- 「これら村田養豚場(村田畜産/村田商店)による不法行為や迷惑行為・・・」 (1頁本文8行目〜9行目)。
- 「山林侵奪 他人地占拠」(2頁表題)
- 「2003年頃他人の山林を掘削・侵奪し、その後も不法掘削した他人地を実質的に占拠し続けています・・・」(2頁本文1行目〜3行目)
- 「・・・村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、赤田川北側の他人の山林を無断で削る事件を起こしました。村田養豚場の敷地は上図のようになっており、削られた山林はすべて他人の土地です。」(3頁本文2行目〜4行目)
- 「東鳴川のCさんの先代が、村田氏の先代にこの山林を賃貸していました。・・・借りている山林を突如削り始めたのです。この件は裁判になっています」(3頁本文5行目〜8行目)
- 「2009年には、村田氏と東鳴川のCさんとの山林賃貸契約はどのような解釈によっても解消しています」(9頁本文5行目〜6行目)
- 「京都府木津川市側のAさんBさんは完全に巻き添えで山林を破壊され・・」 (3頁本文9行目)
- 「2005年AさんB さんらは村田養豚場(村田畜産/村田商店)を刑事告訴しました・・」(3頁本文10行目)
- 「村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、削りとった他人地で野焼きを繰り返し、農場主が現行犯逮捕されています」(4頁本文2行目〜3行目)
- 「しかし、山林を削り取られたAさんBさんらによる刑事告訴はなぜか起訴猶予に終わりました」(4頁本文3行目〜4行目)
以上、ア乃至サで被告が記事に記載していることを纏めれば、次の通りとなる。
== (i)原告は、借地(奈良市東鳴川町502番、当時の所有者〈東鳴川Cの亡父〉、以下、「本件土地1」という)を土地所有者に無断で掘削、侵奪し、裁判にまでなった。(i)また、土地所有者との借地契約は解消されているので、 原告は、本件土地1を不法占拠している。(iii)そして、原告は、本件土地1の北隣地である土地(京都府木津川市加茂町西小長尾2番、同1-乙、当時の所有者は〈加茂町B〉ら、以下、「本件土地2」「本件土地3」という。)までをも掘削し、〈加茂町B〉らは刑事告訴したが、なぜか起訴猶予になった。
そして、それらの原告の山林侵奪行為は、「不法行為」(民法709条)に該当する ==
2 本件土地1の不法掘削について
しかしながら、まず、原告は、本件土地1について、借地契約締結後の平成14年から本件土地1を掘削したものであるが、当時の所有者で賃貸人であった〈東鳴川Cの亡父〉(以下「〈東鳴川Cの亡父〉」という、記事中ではCさんの先代)に無断で掘削したものではない。この点は、民事裁判で確定している。
すなわち、原告が訴状5頁(2)で既述し、被告も事実経過として「被告の主張」13頁 14))で適示しているように、当時の本件土地1を〈東鳴川Cの亡父〉から相続した所有〈東鳴川C〉(以下「〈東鳴川C〉」という、記事中のCさん)は、本件土地1を掘削した〈村田商店代表乙の父〉(原告代表者〈村田商店代表乙〉の父)に対して、質貸借契約における借地人の用法違反等を理由として損害賠償請求訴訟を提起した(御庁平成21年(ワ)第1125号損害賠償請求本訴事件、以下「本件訴訟」という)。
しかし、平成23年9月30日、判決が下され、本件土地1を掘削することは借地契約の内容として含まれていると判示され、〈東鳴川C〉の請求は乗却された(甲5)。そして、同訴訟は、〈東鳴川C〉により控訴されたが、平成24年3月21日、控訴審(平成23年(ネ)第3211号)においても、原判決は維持され(甲6)、〈東鳴川C〉は上告しなかったので、遅くとも、平成24年4月中には判決が確定した。
よって、原告が、本件土地1を不法掘削した事実の存しないことは、本件訴訟の裁判確定によって明白である。本件訴訟の裁判確定は平成24年4月であるから、平成28年6月頃に掲載された本件配事は、明らかに虚偽なる事実の適示である。
すなわち、上記ア「・・・村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、2003年頃 他人の山林を侵害し、・・・、不法掘削した他人地・・・を・・・占拠し続けてい ます」、上記エ「2003年頃他人の山林を掘削・侵奪」、オ「他人の山林を無断で削る事件を起こしました。」は明らかな虚偽の事実の適示である。
また、カの「借りている山林を突如削り始めたのです。この件は裁判になっています」という記事も、不法掘削でないことが確定した裁判であるのに、裁判となった事実だけを適示し、あたかも不法掘削が裁判で認められたかのように表示するものであって、虚偽の事実の適示というべきである。
3 本件土地1の不法占有
次に、原告は、本件土地1を侵奪(不法占有)している事実もない。その理由は以下の通りである。
(1)占有権限
訴状で既述の通り、前記、不法掘削による借地契約の用法違反を根拠になされた損害賠償請求訴訟(御庁平成21年(ワ)第1125号損害賠償請求本訴事件)に対して、被告であった〈村田商店代表乙の父〉は、反訴として、〈東鳴川C〉に対し、債務不履行に基づく本件借地契約の解除及び損害賠償請求を行っている(以上、本訴、反訴をあわせて、「本件訴訟」という)。これは、〈東鳴川C〉が、前記訴訟を提起したということ自体が、本件借地契約における、賃借人に土地を使用収益させる義務を履行する意思がないことを明らかにしたとして提起したものである。
しかし、この反訴事件は、原審では、〈村田商店代表乙の父〉の主張が認められ、〈東鳴川C〉に5031万2652円の損害賠償支払義務が命じられた(甲5) ものの、控訴審では覆されて、〈村田商店代表乙の父〉の請求は棄却された(甲6)。控訴審においては、本件訴訟紛争によって、〈村田商店代表乙の父〉の本件土地の使用収益が法的に困難になったとまでは評価できないとし(甲6、8頁)、〈東鳴川C〉の債務不履行責任は認められないとしたのである(甲6、9頁)。
従って、反訴請求でなされた、〈村田商店代表乙の父〉の本件借地契約の解除は、解除原因がないので、無効である。そして、実際的にも、本訴において、契約の内容として、土地の掘削をすることが含まれているとの判示がなされた以上、〈村田商店代表乙の父〉には契約解除をする必要性もなくなったのである。
よって、本件訴訟の確定によって、本件土地1の借地契約は解除されることがなく、賃貸借契約が継続していることが明らかにされたのである。
そして、本件訴訟確定後も、借地契約当事者のいずれからも、借地契約解除の申出がなされたことは一度もない。
従って、後述の本件土地の売買契約による、令和元年8月27日の、原告代表者〈村田商店代表乙〉による本件土地1の所有権取得に至るまで、本件借地契約は継続していたのである。
よって、原告には、本件土地1に対する法的な占有権限があったのであるから、原告が本件土地1を侵奪(不法占有)したという事実はない。
(3)原告と〈東鳴川C〉の実質的な関係
また、本件訴訟確定後の原告と〈東鳴川C〉との実質的な関係からみても、原告の不法占拠(侵奪)の事実が無いことが明らかである。
すなわち、本件訴訟は、その判決確定によって、結局、本訴・反訴ともに認められず、笑質的にゼロ和解に等しい結果に終わった。そのため、原告は、当時の訴訟代理人弁護士からは、その委任契約の終了時に、今後〈東鳴川C〉との契約関係をどうするかについては、〈東鳴川C〉と直接話し合って決めるようにと指導された。
そこで、原告は、本件訴訟確定後、本件土地1をこのまま賃貸し続けるのか、あるいは、〈東鳴川C〉が望むならば売買するのか、〈東鳴川C〉に打診した。
これに対して、当初、〈東鳴川C〉は、本件訴訟の控訴審費用の借入及び〈東鳴川C〉居宅の外壁の修理工事費用の支払いのため、本件土地1に建設会社の担保が付けられたので(甲3の1)、売却ができないから暫く待ってほしいということであった。
その後、平成25年10月25日には、上記担保は抹消された(甲3の1)。
しかし、それでも、その後、〈東鳴川C〉は、再三の原告の申し入れに対しても、「考えておく」と言いながら、なかなか結論を出してくれなかった。
そして、平成28年ころ、原告代表者〈村田商店代表乙〉が申し入れた際、〈東鳴川C〉は「・・・ 実は・・・」と、〈村田商店代表乙〉に、次のような話を打ち明けた。
それは「・・実は、本件土地1については、共産党議員や〈加茂町B〉氏(後述の本件土地2の所有者の一人)から、村田には本件土地を貸したり売ったりしないように責められ、「売らない、貸さない」約束の一筆を取られている。それで、売るのも、賃料取るのも隣躇しているんや」という、尋常でない打ち明け話であった。
この「弱常でない打ち明け話」は、本件の実態を如実に表していると言わねばならない。すなわち、私権侵害が先にあるのではなく、環境団体の活動によって、私権が利用されている図式である。
そして、〈東鳴川C〉は、〈村田商店代表乙〉に対して、「・・・そんな事情があるので、とりあえず、ねえちゃん、勝手に使っており・・」と言った。
実際、本件訴訟確定後、原告は、本件土地1を使用することについて、〈東鳴川C〉から不法占拠であるとの抗議を受けたことは一度たりともない。
そして、〈東鳴川C〉は、平成31年5月頃になり、漸く、本件土地1の処分について前向きに取り組むようになった。その理由は、一つとして、被告からの本件土地1に関する問い合わせによって、もう煩わされたくない、本件土地1には関わりたくない、という気持ちが強くなったことにあるようであった。そして、もう一つは、〈東鳴川C〉が〈東鳴川C〉の弁護士に相談すると、上記「売らない、貸さない」といった書面には効力がないと言ってもらえたこと、にあるようであった。
そして、上記の通り、令和元年8月27日、本件土地1の売買契約が成立し、本件土地1は〈村田商店代表乙〉の所有となった(甲11)。
そして、売買協議の中で、賃料も一部払われた(甲12の1乃至3)。
(4)小括
以上の通り、原告が、本件土地1を不法占拠(侵奪)した事実の存しないことは、上記訴訟の経緯と確定判決、そして、その後の原告と地主〈東鳴川C〉の実質的関係から、明らかである。
従って、本件土地1 の不法占拠(侵奪)に関する本件記事は、明らかに虚偽なる 事実の摘示である。
すなわち、上記ウ「山林侵奪 他人地占拠」(2頁表題)上記キ「2009年には、村田氏と東鳴川のCさんとの山林賃貸契約はどのような解釈によっても解消しています」は明らかな嘘偽の事実の適示である。
4 本件土地2、本件士地3の不法掘削について
上記の通り、〈村田商店代表乙の父〉は、平成14年から本件土地1を〈東鳴川Cの亡父〉との借地契約に基づき掘削していたところ、平成16年夏ごろ、〈加茂町B〉ら(以下「〈加茂町B〉ら」という) から、本件土地1の境界を越境して掘削工事を行っていると苦情を受けた。そして、〈加茂町B〉らは、平成19年夏ごろまでに、〈村田商店代表乙の父〉を不動産侵奪、廃棄物処理法違反の容疑で告訴した。そして、〈村田商店代表乙の父〉は、平成19年末頃まで工事を続けたが、その後、検察官の指導を受けて、掘削工事を中止した(以上、甲5、5頁〜6頁)。
被告は、この平成16年夏ごろから平成19年末ころまでの掘削工事について、本件土地1を越境して、本件土地2、本件土地3まで不法掘削したと主張しているものである。
しかし、以下の理由から、そのような不法掘削の事実は存しない。
(1)〈東鳴川Cの亡父〉の指示
〈東鳴川Cの亡父〉は、本件借地契約時の平成14年1月上旬、〈東鳴川C〉を同行の上、〈村田商店代表乙の父〉に対して、本件土地1の境界を説明した(甲5、5頁(4))。そして、〈村田商店代表乙の父〉は、平成14年1月10日、〈業者A〉に対し、〈東鳴川Cの亡父〉の説明した上地の範囲を指示した上、同〈業者A〉との間で、本件土地1の山林伐採及び土砂撤去工事請負契約を締結し、同〈業者A〉は、上記指示された範囲内で工事を行った(甲5、5頁(5))。
ところで、その際、本件土地1 と本件土地2,3は、いずれも山林であり、かつ、地主もほとんど出入りすることがないような放置された山林であったので、明確な境界標等は一切なかった。しかし、〈東鳴川Cの亡父〉は、歩いて、〈村田商店代表乙の父〉に境界を示してくれたところ、その示されたところを境に、樹木の塊りや成育状況など、林相に差異が見られた。そのため、〈村田商店代表乙の父〉は、その〈東鳴川Cの亡父〉の境界の指示に従い、その範囲までが借地の範囲と認識して、以降の掘削工事を行ってきたのである。
よって、〈村田商店代表乙の父〉の掘削行為は、〈東鳴川Cの亡父〉の境界指示に基づく行為であるから、不法掘削ではない。万が一、〈東鳴川Cの亡父〉の指示に境界越境があったとすれば、掘削工事の責任は、〈東鳴川Cの亡父〉にあるのであって、〈村田商店代表乙の父〉に責任はなく、〈村田商店代表乙の父〉に不法行為責任は成立しない。
(2)刑事告訴の帰趨
上記の通り、〈加茂町B〉らは、平成19年夏ごろまでに、〈村田商店代表乙の父〉を不動産侵奪、廃棄物処理法違反の容疑で告訴した。しかし、平成20年2月29日、この告訴事件は不起訴となった。それは、被告が本件記事で適示しているように「起訴猶予」でなく、あくまでも「不起訴」処分である。
そして、この不起訴処分にあたって、〈村田商店代表乙の父〉は、上記の通り、検察官から掘削工事を中止する指導を受けたが、既に掘削済みの山林部分についての原状回復の指導は受けていない。
従って、〈加茂町B〉らの刑事告訴の結果、少なくとも既に堀削済みの山林部分についての不動産侵奪は認められなかったものである。
(3)その後の〈加茂町B〉らの法的主張がないことについて
そして、平成20年2月29日、〈村田商店代表乙の父〉の不起訴処分の後、〈加茂町B〉らは、原告に対して、〈村田商店代表乙の父〉の不法掘削を民事上問資する法的手段は何ら取っていない。民事訴訟を提起していないのはもとより、内容証明郵便通知等による法的請求すら行っていない。
当時、〈東鳴川C〉は、民事裁判を提起し、〈村田商店代表乙の父〉の不法掘削を主張し損害賠償請求していたにもかかわらず、〈加茂町B〉らは、〈東鳴川C〉と歩調を合わせる形で、不法掘削による損害賠償請求を行うことをしなかったのである。
その理由は明白である。それは、〈加茂町B〉らが、〈村田商店代表乙の父〉の不動産侵奪を証明する証拠(すなわち、本件土地1と本件土地2,3間の境界を客観的に示し、〈村田商店代表乙の父〉の行為が本件土地2,3に及んでいる事実を客観的に示す証拠)が無かったからに他ならない。
そして、〈加茂町B〉らの、〈村田商店代表乙の父〉に対する、不法行為による損害賠償請求権は、本件記事が掲載される平成28年6月ころには、とっくに時効消滅してしまったのである。
(4) 木津川市作成の市有土地境界確定図について
被告は、以上の諸事実が存するにもかかわらず、木津川市作成の「市有土地境界確定図」(甲7の3)に基づき、本件土地1と本件土地2との境界を本件記事中に 掲載し、それをもって、本件土地2の侵奪を主張している。
しかし、上記境界確定図は、平成30年8月10日及び同年11月28日に、修正されている。その結果が甲7号証の4の「市有土地境界確定図」である(以下「修正図」という、また、甲7の3の図面は「旧図」という)。
従って、「旧図」に基づき、原告の不動産侵奪の根拠とするのは明らかな誤りである。訴状で既述の通り、被告は、木津川市より、「旧図」の本件記事への掲載について配慮するように指示を受けている(甲8)。
また、山林の境界確定は難しく、ここで、その詳細に立ち入ることはしないが、境界は当事者の主観ではなく客観的資料に基づき確定されるものであり、私人に処分権はない。そして、境界確定訴訟において参考にされる「古図」(東鳴川町の前身である東里村で保管されてきた古図、甲13)においては、本件土地1 (甲11で「〈東鳴川Cの亡父〉」との記載ある左上の土地)とその北側の本件土地2との境界は、本件土地2側に曲線で膨らんでいるが、それは、「旧図」で記された一直線の境界と明らかに異なる。
このことからだけでも、「旧図」が参照にされるべきでないことは明らかである。
(5) 小括
以上の通り、本件土地2、本件土地3の不法掘削については、〈東鳴川Cの亡父〉の境界指示による掘削工事であったこと、〈加茂町B〉らの刑事告訴の帰趨及び〈加茂町B〉らの民事的請求がないまま、損害賠償請求権は時効消滅していること、そして、被告の論拠とする木津川市作成の「旧図」は修正されて根拠にならないことから、本件記事は、虚偽の事実摘示であることに間違いない。
すなわち、ウ「山林優輝 他人地占拠」(2頁表題)、「京都府木津川市側のA さんBさんは完全に巻き添えで山林を破壊され・・」(3頁本文7行目〜8行目) は、明らかに虚偽事実の適示である。
また、ケ「AさんB さんらは村田養豚場(村田畜産/村田商店)を刑事告訴しました・・」(3頁本文9行目) サ「しかし、山林を削り取られたAさんBさんらに よる刑事告訴はなぜか起訴猶予に終わりました」(4頁本文3行目〜4行目)は、 起訴猶予でなく不起訴処分であるから、虚偽の事実であって、かつ、「刑事告訴の 記載」自体も、それが「なぜか・・・終わった」という記載と合わせて、全体として、原告の犯罪の成立をにおわせるような記載となっており、虚偽の事実記載と言わねばならない。
また、コ「村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、削りとった他人地で野焼きを繰り返し、農場主が現行犯逮捕されています」(4頁本文2行目〜3行目)との記載は、〈村田商店代表乙の父〉は、かつて、野焼きの廃棄物処理法で逮捕されたことはあるが、他人地を削り取った行為(不動産侵奪)で現行犯逮捕されたことはない。同記載は、まるで、不動産侵奪の刑事責任が問賛されたかのような記載になっており、虚偽事実である。
5 まとめ
以上の通り、本件記事のうち、山林侵奪、他人地占有(FACT.1)に関する 記事については、「本件土地1の不法掘削」「本件土地1の不法占有」「本件土地2、本件土地3の不法掘削」が含まれるところ、それらは、いずれも虚偽の事実である。
そして、山林侵奪、他人地占有(FACT, 1)は、記事の第一番目の記事であり、他の記事と比較しても、違法性や犯罪性のインパクトの強い記事になっている。 山林侵奪、他人地占有(FACT.1)の記事は、本件記事冒頭のイ.「これら村田養豚場(村田畜産/村田商店)による不法行為や迷惑行為・・・」に該当しないのに、民事上の不法行為が成立していると断じ、更には、犯罪性をもにおわせる記事になっており、その名誉棄損性は甚だしい。
加えて、山林侵奪、他人地占有(FACT, 1)は、記事の第一番目に存することで、FACT.2以下の不法行為性、犯罪性を印象付ける記事になっいるものである。従って、本件記事全体の名誉棄損性を強めるものとして許しがたい。
第3 赤田川下流の水質汚濁 (FACT.4)
1 争点とすべき本件記事内容
- 「村田養豚場(村田畜産/村田商店)下流の水質汚濁が・・・問題視されてきました。しかし、奈良県と奈良市は・・・不法行為や迷惑行為をすべて然認し・・・」(甲2、1頁本文6行目〜9行目)
- 「赤田川下流の水質汚濁」(甲2、47頁FACT.4表題)。
- 「村田養豚場(村田畜産/村田商店)からの排水が、下流に落しい水質汚濁汚濁をもたらしている可能性について・・・議論されています」(甲2、47 頁頭書3行目〜6行目)。
- 「赤田川の地権者・・・養豚場の少し下流の山林の持ち主が、しいたけ栽培のため川からポンプで・・・ぼやいていた」(甲2、50頁5行目〜7行目)。
- 「砂防ダムより上流であるためか・・・茶色いヘドロがたまっています。撮影した人によると、・・・一面白い粉をふいていたとのことです。撮影した人 は、帰宅後熱が出ました」(甲2、50頁9行目〜51頁2行目)。
- 「こうした水質汚濁の原因として・・・長年議論されている場所のひとつが、 ・・・村田養豚場(村田畜産/村田商店)です」(甲2、51頁3行目〜5行目)。
- 「村田養豚場より下流に限って・・・どぶ川のような臭いが酷いという現実 があります。最近は・・・日暮れごろ臭くなります。谷の上の尾根道まで・・ ・ほどです。外にいる人が少なくなる時間を見計らって汚水が流されているのかもしれません」(甲2、51頁6行目〜10行目)。
以上、ア乃至キで被告が記事に記載していることを纏めると以下のとおりである。
== 原告の排水が赤田川下流の水質汚濁の原因ではないかということが長年議論されている。その影響は、農作物にも被害を及ぼし、また、付近で写真を撮っていた人の身体に害を及ぼすほどである。水質汚濁は養豚場の下流に限って発生しており、夕方に特に酷いことから、人が少ない時間を見計らって原告が汚水を流しているものと考えられる。==
本件記事1頁目の記載(前記ア.)からすると、被告は、原告が養豚場から排出する排水が赤田川の水質汚濁の原因となっている可能性があるということを、原告による「不法行為や迷惑行為」という言葉でひとくくりにし、あたかも原告が水質汚濁の原因を作出しており、それが迷惑行為ひいては不法行為に該当するかのような記述をしている。
確かに、本件記事においては、「下流に著しい水質汚濁をもたらしている可能性」というような表現を用いてはいるが、養豚場の下流だけに汚濁が見られるということや、養豚場下流で写真を撮った人物が発熱したというような記述をし、読み手に対して、明らかに村田養豚場が水質汚濁の原因であり、農作物、人体に実害が出ているという印象を与える記載内容となっている。
2 原告が赤田川水質汚濁の原因者として記載されていることについて
(1)水質汚濁防止法について
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本件記事の中で、特にFACT.4において頻繁に用いられている「汚濁」という表現であるが、これは、直接的に本件配事中には出てはいないが、水質汚濁防止法にいう「汚濁」を示しているものと考えられる。「汚濁」という言葉は、水質汚濁防止法に特有の表現であり、その原因となっている可能性が高いということをインターネットにおいてことさらに記載されることは、一般人をして、原告が、法律に反する営業活助をしているのではないかという強烈なインパクトを与えるものであり、原告の名誉を毀損する程度は大きいといえる。
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まず以下では、水質汚濁防止法において、村田養豚場に課される排水基準について論じる。
村田養豚場は、水質汚濁防止法上の「特定事業場」に該当し、かつ、1日当たりの平均排水量が50㎥未満の施設であることから、水質汚濁防止法上の排水基準としては、甲14の別添2表1記載のものとなる。この項目の中で、村田養豚場のような養豚場施設については、一般的に、「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」という項目が排水検査の対象となる(他の項目に係る物質についてはそもそも取扱いをしていないため)。その排水基準値は一律排水基準は100mg/Lであるが、畜産農業に係る暫定排水基準は500mg/Lである(甲14、甲15の4頁)。
排水量50㎥以上の事業場と、50㎥未満の事業場とで、異なる排水基準が設けられている趣旨は、排水量の多寡により、有害物質の希釈の程度には差異があり、河川等に流入する物質の絶対量にも大きな差があると考えられることから、生活環境への影響の大きさの違いという観点で、排水量の多い事業場と少ない事業場では異なる基準が設けられているものだと考えられる。
なお、原告が経営する村田養豚場は、1日の排水量は8㎥程度である。
(2)村田養豚場の排水検査結果
赤田川において水質汚濁が問題視されたのは、平成28年12月頃であるが(被告第1準備書面49頁23行目〜27行目)、平成28年3月23日に実施された、奈良市による村田養豚場の排水検査によれば、村田養豚場は、「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」において、1.4〜6.0mg/Lの値に収まっているものであり(甲16)、畜産農業に適用される暫定排水基準500mg/lを満たしていることはもとより、より厳しい一律排水医準100mg/Lと比較しても、大きく基準値を下回っており、法律上の基準を問題なく満たしている。
水質汚濁防止法上の排水基準を満たしている以上、養豚場からの排水が、赤田川の水質汚濁の原因であると論難されるいわれはないと言わざるを得ない。
したがって、村田養豚場が、赤田川の水質汚濁の原因を作出しているかのような印象を与える本件記事は、虚偽の事実を記載しているものといえる。
(3)村田養豚場に対する行政の対応
被告は、原告が、木津川市の赤田川水質汚濁状況調査報告に基づき、奈良県・奈良市から水質の改善を指導されている旨主張する。
しかし、前記のとおり村田養豚場は、法律上の排水規制に違反したことはない。
水質汚濁防止法を所管しているのは奈良市であるが、村田養豚場の排水処理に関し、行政法上の指導を行ったことはない。木津川市からの赤田川の水質汚濁に関する報告を受けて、排水を扱う事業場として、水質の改善に努力するよう要請するレベルでの話をしたことはあるが、それは当然、赤田川の水質汚濁の原因が村田養豚場にあることを前提とするものではない。
そして、奈良県は、水質汚濁防止法ではなく、家畜排せつ物法を所管しており、村田養豚場における排せつ物処理について監督を行っている。村田養豚場は、排せつ物処理における管理基準についても、前記排水基準と同様違反したことはなく、奈良県としては、不定期的に養豚場へ立入り検査を行い、排せつ物の処理の観点から、排水をより良くするための助言を行っているに過ぎず、これも村田養豚場が赤田川の水質汚濁の原因であることを前提とするものではない。
木津川市も、赤田川の上流に汚濁源があるとはしつつも、村田養豚場が原因であると特定しての報告・指導を行ったことはない。
そして、原告は、奈良県や奈良市からの要請や助言を受け、後述のとおり、豚に与えるエサの改良や、浄化設備の設置といった対策を講じており、努力をしてきた。
3 村田養豚場の不法行為責任について
(1)私権の侵害について
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村田養豚場が、法律上の排水基準を満たしており、汚濁原因として論難される理由のないことは前述のとおりである。しかし、仮に、村田接豚場からの排水が 原因で、地域住民への健康被害や、農作物の栽培不良等私権の侵害が発生しているのだとすれば、原告の営業権と地域住民の法的権利利益が衝突し、原告に公法上の違法がないとしても、私法上の責任が生じる余地はある。
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しかし、原告訴訟代理人が、令和元年11月1日、木津川市まち美化推進課に聞き取り調査を行ったところ、現状において、地域住民や農作物に対し、実害が 出ているとの報告が、山城広域振興局山城南農業改良普及センターにされたことはなく、具体的な権利利益侵害状況は発生していないものである。
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そもそも具体的侵害の発生していない状況において、村田養豚場を名指しで赤田川の水質汚濁の原因であるかのように記載し、その影響で、養豚場下流のしい たけ栽培農家に被害が出ているということや、養豚場下流で写真を撮っていた人物が発熱した等、あたかも村田養豚場が農作物や人の生命身体を侵害していると 読めるような記事をインターネット上に掲載することは、原告に対する名誉毀損に当たるといわざるを得ない。
(2)因果関係について
原告に不法行為責任があるかのような記載がされている本件記事において、前述のようにそもそも具体的権利利益侵害が発生していないということに加え、仮に何らかの私権の侵害が発生していたとしても、村田養豚場の排水との因果関係が問題となる。
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本件記事にも若干の指摘があるが、村田養豚場よりもさらに上流には、閉鎖された産業廃棄物処分場が存在している。赤田川には、同処分場から汚水が流れ込むということや、埋め立てられている産業廃棄物が汚染の原因となっているという可能性は大いに考えられる。
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そして、村田養豚場下流には、砂防ダムが位置している。同ダムは、平成26年頃までは、地域住民の農業用水を取水するため、開閉が行われていたが、平成 27年以降は、開閉設備の故障等の理由により、開閉されなくなった。
以降、同ダムに溜まった水が流れる機会がなくなり、ダム内の水が、微生物が分解できない栄養量となり、水が腐るといった状況が発生している。
このことは、赤田川における有機汚濁成分の増加の原因となっている可能性があるにも関わらず、本件記事においては、このことへの言及はされておらず、前述のとおり、村田養豚場が原因であるとの印象を与える構成となっている。
(3)小括
以上からしても、村田養豚場を経営する原告に不法行為責任等が成立する余地はないにもかかわらず、本件記事では、村田養豚場が赤田川の水質汚濁の原因であり、そのために、周辺地域の農作物や人体に実害が出ているかのような記載がされているものであり、虚偽の事実を適示するものであるといえる。
4 まとめ
以上のとおり、被告がインターネット上に記載した本件記事FACT.4は、村田養豚場下流の水質汚濁が長年問題視されてきたということを、「不法行為や迷惑行為」としてひとくくりにし、村田養豚場の下流に限って臭いが酷いということや、養豚場下流の山林の持ち主のしいたけ栽培に悪影響が出ている、養豚場下流で写真を撮った人は発熱した、夕方は特に臭いが酷く、人が少なくなる時間を見計らって汚水が流されているのではないか等記載し、あたかも、原告が経営する村田養豚場が原因となって赤田川の水質汚濁が発生しており、周辺住民や農作物に具体的権利侵害をもたらしているかのような印象を与えるものであって、虚偽の事実の適示により、原告の名誉を毀損するものである。
5 原告の排水に対する取組み
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なお、原告が、排水に関する法的基準を遵守した上で、適正な営業権の行使として養豚場経営をしてきたことはこれまでの主張のとおりであるが、排水を扱う事業場として、原告もその排水を少しでも良いものにすべく、自身の営業権との関係で調整をしつつ、努力をしてきた。
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家畜のエサの改善
原告は、家畜のエサとして食品残渣等を原料に製造されるエコフィードを採用していたが、その中で、アクや色が出やすく、浮きやすいエサがあるということを認職していた。そこで、平成29年夏か秋頃、最終排水への影響も考慮し、そのようなエサの仕入取引を辞め、より排水への影響の小さいエサを利用するように取り組んできた。
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浄化設備の設置
原告は、排水基準は満たしているという状況の中で、より排水を良いものとするため、養豚場に浄化設備を設置した。令和元年10月の時点で、ほぼ完成形となっており、最終調整の段階である。
この浄化設備については、原告代表者〈村田商店代表乙〉が、浄化設備を設置するに当たり、設置費用、維持管理等の観点からどのような浄化設備にすべきか検討していたところ、知人の農家より、「京都に技術を持った人がいる。」という話を聞き、実際にその知人の浄化設備を自身の目で確認した上で、費用や維持管理のことについても話を聞き、村田養豚場としても、その浄化設備を設置しようという考えに至った。
そして、平成29年9月25日付けで、奈良県を通じて、京都府農林水産技術センター畜産センターに汚水処理技術の指導協力を依頼(甲17)し、派遣された技術者が図面等を作成した上で、現在、ほぼ完成という状況に至った。
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このように、原告は、排水をより良いものとするため、自身の営業権との関係でギリギリの調整をしながら、「弥勒の道プロジェクト」の要求に応じ、排水改良のための努力を行ってきた。
そのような中で、原告の営業権、財産権を一切顧慮することなく、原告を攻撃し続ける被告の対応は、非常に苛烈なものであるといわざるを得ない。
被告の求釈明に対する回答
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木津川市に対する質問書と回答書の提出が、本訴訟の争点について、どのような意味があるのか明らかにされたい。
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賃料は毎年継続して支払っていない。一部供託し、一部は売買時に最終清算しただけである。
しかし、質貸借契約が続いていたこと(賃貸借契約が解除されていなかったこと)、及び、原告の占有が不法占拠でなかったことは、前述の通りである。
そして、継続する賃貸借契約において、賃料が毎年継続的に支払われなかったとしても、契約当事者間で、賃料の支払猶予や一部免除の合意は、あり得ることであって、その事情は、前述のとおりである。
原 告 株式会社村田商店
被 告 遠藤 千尋
証拠説明書
- 【甲第9号証】告訴状(写し)
- 作成日:H28.5.10
- 作成者:弁護士 藤井茂久、弁護士 高谷政史、弁護士 加見旬嗣
- 立証趣旨:原告が本件同種記事の掲載に対し、被告訴人を「弥勒の道プロジェクトこと村田養豚場から周辺環境と赤田川を守る有志の会と氏名不詳者」として告訴状を提出したこと
- 【甲第10号証】処分通知書(写し)
- 作成日:H28.12.19
- 作成者:奈良地方検察庁 検察事務官 齋藤 望
- 立証趣旨:甲第9号証の告訴に係る被疑者が被告であると特定され、不起訴処分となったこと
- 【甲第11号証】全部事項証明(写し)
- 作成日:R1.9.3
- 作成者:奈良地方法務局 登記官 菊池寛之
- 立証趣旨:令和元年8月27日、売買を原因として、本件土地1の所有者が〈村田商店代表乙〉となったこと
- 【甲第12号証の1】領収証(2017年1月〜12月)(写し)
- 作成日:R1.8.8
- 作成者:〈東鳴川C〉
- 立証趣旨:本件土地1の協議の中で、原告から〈東鳴川C〉に対し、本件土地1の賃料が一部支払われたこと
- 【甲第12号証の2】領収証(2018年1月〜12月)(写し)
- 作成日:R1.8.8
- 作成者:〈東鳴川C〉
- 立証趣旨:本件土地1の協議の中で、原告から〈東鳴川C〉に対し、本件土地1の賃料が一部支払われたこと
- 【甲第12号証の3】領収証(2019年1月〜6月)(写し)
- 作成日:R1.8.8
- 作成者:〈東鳴川C〉
- 立証趣旨:本件土地1の協議の中で、原告から〈東鳴川C〉に対し、本件土地1の賃料が一部支払われたこと
- 【甲第13号証】古図(写し)
- 作成日:不明
- 作成者:不明
- 立証趣旨:古図において、本件土地1と本件土地2の境界は、本件土地2側に膨らんでいること
- 【甲第14号証】水質汚濁防止法に基づく工場・事業用排水の規制・届出について(写し)
- 作成日:H29.12.1
- 作成者:奈良市保健所 保健環境衛生課
- 立証趣旨:水質汚濁防止法に基づき、原告に課される排水基準について
- 【甲第15号証】排水基準を定める省令の一部を改正する省令(写し)
- 作成日:R1.6.20
- 作成者:環境省
- 立証趣旨:原告に適用される暫定排水基準について
- 【甲第16号証】事業場排水の水質検査結果について(写し)
- 作成日:H28.5.13
- 作成者:奈良市保健所 保健・環境検査課
- 立証趣旨:古図において、本件土地1と本件土地2の境界は、本件土地2側に膨らんでいること
- 【甲第17号証】奈良県内養豚場への汚水処理技術に係る指導について(写し)
- 作成日:H29.9.25
- 作成者:奈良県農林部長
- 立証趣旨:原告が、浄化設備の設置に際し、奈良県を通じて京都府に協力を依頼したこと