原告第2準備書面

令和元年(ワ)第338号 損害賠償等請求事件
原  告  株式会社村田商店
被  告  遠藤 千尋

原告第2準備書面

令和2年2月5日
奈良地方裁判所民事部3B係 御中
原告代理人弁護士

原告第1準備書面においては、本件記事中「FACT.1山林侵奪・他人地占拠」及 び「FACT.4永田川下流の水質汚濁」を核心的争点として主張をしたが、「FACT.2犬の放し飼い・公道の占拠」及び「FACT.3公道を見捨てる奈良市行政」においても、虚偽であるといわざるをえない記述がされている部分があるため、争点とすべき記事内容について、以下のとおり明らかにする。

第1 犬の放し飼い・公道の占拠(FACT.2)

1 争点とすべき記事内容

本件記事において、重大なる虚偽事実の摘示は、次の部分である(下線は、本書面にて、重要部分に付したもの)。

  1. 「村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、50匹以上の犬を放し飼いにし、通行人を恫喝するなどして、長年にわたり公道を占拠し続けてきました。2015年末には、村田養豚場が放し飼いにしている犬が10匹単位で、隣接する観光地である木津川市浄瑠璃寺に入り込む事態となっています。」(11頁本文1行目~12頁1行目)。

  2. 「奈良県家畜保健・・・公道の占拠にも率先してお墨付きを与えています。奈良県家畜保健・・・村田養豚場の不法行為に加担しています。」(12頁2行目~5行目)。

  3. 「下図は犬の徘徊状況です。」(12頁本文6行目及び図)

  4. 「ざっと数えただけでも50匹以上、山林に・・・もっと多くの犬が、村田養豚場周辺を徘徊していました。下写真は・・・ものです。」(13頁1行目~4行目及び写真部分)。

  5. 「放し飼いにしている犬は、浄瑠璃寺でも頻繁に目撃されています。」(13頁6行目及び写真)。

  6. 「2015年の末ごろからは、村田養豚場が放し飼いにしている犬が、10匹単位で早朝の浄瑠璃寺に現われるようになり、・・・境内に多数の糞を残して行くため、浄瑠璃寺が非常に困る事態となっていました。・・・下写真は・・・前住職葬儀の最中に現われた犬です。」(14頁1行目~5行目及び写真)。

  7. 「村田養豚場は、2012年ごろから、通行人を含め、あらゆるじゃまものを衛生管理区域を理由に遠ざけてきました。」(17頁12行目~13行目)。

  8. 「ところが村田養豚場は、この道は私道であるから・・・しばしば通行人を脅しています。」(23頁5行目~6行目)。

  9. 「下記は2015年10月ごろに、・・・しかしよく平気で嘘がつけるものだと感心しています。」(23頁8行目~24頁)。

  10. 奈良県家畜保健衛生所の職員は、村田養豚場を指導した際、木津川市に対し「私道だから通れないと言え」と要求され、・・・伝えたのです。」(25頁6行目~7行目)。

  11. 「しかも奈良県家畜保健衛生所は、・・・実際に職員が村田養豚場による通行妨害に協力しています。下記は・・・奈良県家畜保健衛生所が村田養豚場に言われるまま、公道の通行妨害に加担してきた」(26頁3行目~7行目)。

  12. 「以前から東鳴川の人に・・・ふつうの人は通行を断念してしまうにちがいありません。」(26頁8行目~27頁)。

以上、ア乃至シで記載されていることをまとめると以下のとおりとなる。

==原告が経営する村田養豚場は、50匹以上のもの犬を放し飼いにしており、 その犬は、養豚場の敷地を越えた広範囲を徘徊しており、浄瑠璃寺まで入り込むという事態になっている。また、村田養豚場は、接豚場の敷地の間にある公道(里道)を「衛生管理区域」を理由に占拠し続けてきた。

村田養豚場は、里道を通行しようとする者に対して、恫喝をし、罵習雑言を浴 びせ、名前や住所を要求したりすることで、通行を諦めさせるような行為を続けていた。

このように、村田養豚場は、公道の占拠、犬の放し飼いという不法行為を行っ てきたが、奈良県家畜保健衛生所は、村田養豚場の言いなりであり、適切な指導をしようとしない。==

2 犬の放し飼いについて

(1)原告が経営する村田養豚場では、確かに犬の飼育は行っている。飼育している犬の数は、約20~30頭ほどであり、50頭以上もの多数ではない。

原告が飼育している犬については、全て首輪が付けられており、首輪のついていない犬は原告が飼育する犬ではない。そもそも50匹以上の犬を放し飼いにし ていると記述する本件記事は、その数を誇張し、養豚場周辺で出没する野犬も、原告が飼育するものであると誤信させるものである点で虚偽事実の記載があるといわねばならない。

(2)また、原告は、その飼育する犬を犬小屋や艦の中に入れて管理をしている。訴状でも主張をしているが、豚コレラを媒介するイノシシを養豚場内に侵入させないために養豚場敷地内で放すことはあるが、自由に放し飼いという状態にしていることはない。

(3) 本件記事の中で、木津川市浄瑠璃寺で、10数頭の犬が出没しているという内容があるが、かかる内容も真実ではない。浄瑠璃寺に出没しているのは単なる野犬であり、原告が飼育する犬ではない。かかる記事内容も野犬の被害を原告に帰責させようとするものに外ならず、虚偽事実の記載である。

本件記事12頁において、2014年ごろの犬の徘徊状況として、図が示されており、その範囲は、養豚場の敷地を大きく越え、あたかも原告が飼育する犬が、 好き放題に広範囲を徘徊しているかのように記載されている。

しかし、同図は、真実を反映したものではない。図右下部の写真3枚については、犬の様子が映っているが、あくまでも養豚場の敷地内のものである。そして、 同図左下部で「ククリワナにかかった犬がいた場所」として、写真が示されているが、この犬は原告が飼育する犬ではない。このことは被告も確認をしているはずである。同写真の犬についての経緯は次のようなものであった。

  1. 同写真に映っている罠は、地元猟友会により仕掛けられたものであると考えられるが、その罠に犬がかかっているのを見つけた被告が、原告の養豚場を訪ねてきた。その際、被告は、養豚場の従業員男性に対し、「犬が罠にかかっているから助けてあげて欲しい。」と述べた。

  2. それを聞き、養豚場の従業員男性2名が、罠を外すための工具を持ち、現場へと向かった。そして、現地へとついた従業員男性は、犬の罠を外し、それが養豚場で飼育している犬ではないことを確認した。被告は、その現場に同行しており、罠にかかった犬が原告が飼育している犬ではないことを確認している。従業員男性によれば、犬が罠にかかっている現場で被告は、写真を撮っていたという。

(4)同写真は以上の経緯で撮影されたものであるにもかかわらず、被告は、あたかも原告が飼育している犬が罠にかかっており、それほど広範囲を徘徊していると誤信させるような記載を本件記事でしている。以上からすれば、犬の徘徊状況として記載されている図も虚偽事実の記載であるといわねばならない。

3 公道の占拠について

(1)被告は、本件記事の中で、原告が、衛生管理区域を理由として、養豚場敷地の間にある里道や、養豚場周辺の公道から通行人を排除しようとし、恫喝するなどしていたと記載している。しかし、かかる記載も真実ではない。

(2)原告は、被告が本件記事の中で主張するように養豚場敷地間の里道を通行しようとする者を恫喝してその通行を妨害したことなどない。訴状でも主張しているとおり、道に迷ったと思われる観光客に対して道案内をしたり、ときには、車で目的地へ送ったりしていたものである。

(3) 原告が、養豚場周辺の里道を通行しようとする者に対し、声をかけたとすれば、それは被告本人かその関係者であると思われる人物に対してのみである。

先に述べたとおり、ククリワナにかかった犬の関係で、被告は、原告従業員に犬を助けさせ、その際に撮影した写真を用いて、あたかも原告が飼育する犬が広範囲を徘徊しているかのような本件記事を作成している。このことは、被告が原告従業員の行為をを悪意を持って利用しているとしか考えられない。

このような事態を受けて、原告としては、被告から今後また同じように、虚偽事実を記載した記事をインターネット上に掲載されてしまうのではないかという危惧が生じ、被告及びその関係者が養豚場周辺に近づいてくるのを確認した際には、名前を聞いたり、「何をしているんだ。」と声を掛け、警戒することはあった。

本件記事に、第三者の証言という体裁で記載されている部分については、被告本人の体験を記載しているものであると考えられる。しかし、それは、養豚場に 関し、原告従業員が被告に利用され、虚偽事実をインターネットに掲載されたという経験から、被告が養豚場に近づくことを警戒してのことであり、公道を通行する人を妨害したということとは、全く次元の異なるものである。

また、本件記事によれば、罵詈雑言を浴びせたということや、いつ殴りかかられるような事態が起きないか等、原告が相当な恫喝を行っているような記載がされているが、そのような事実はない。あくまでも、前述の経緯を踏まえ、被告が養豚場へ近づくことを警戒していたに過ぎない。

(4)以上のとおり、原告は、養豚場敷地の間の距道及びその周辺の公道に関し、通行人を恫喝し、妨害したことなどないにもかかわらず、あたかも全くの第三者たる通行人を恫喝し、何人も寄せつけようとせず占拠しているかのような内容を記載した本件記事は虚偽事実であるといえる。

第2 公道を見捨てる奈良市行政(FACT.3)

1 争点とすべき記事内容

  1. 「奈良市土木管理課は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)により奈良市の認定市道が占拠されていることを知りながら・・・何もしようとしません。」(29頁本文1行目~4行目)。

  2. 「・・・奈良市の公道である村田養豚場の敷地の間にある里道を、村田養豚場が不法に占拠している・・・」(29頁5行目~6行目)。

  3. 「厳然たる事実として、村田炎豚場では今や日常的に公道が作業場となっており、公道の不法占拠が続いています。」(31頁7行目~8行目)。

  4. 常に重機やトラックが公道上を右往左往し公道の真ん中で従業員が豚のエサとなる残飯の仕分けなどを行っています。」(32頁左上部)。

  5. 「橋の向こうは他人地ですが、村田養豚場により犬小屋や山小屋が建てられています。」(33頁左上部3行目~5行目)。

  6. 残飯の扱いがずさんなため、・・・カラスが大量に繁殖し、・・・田畑を荒らしています。」(33頁右上部1行目~3行目)。

  7. 「つまり、公道であるはずの里道が敷地の一部にしか見えない状況ということです。それも、長年親しまれたバス停名を代えなければならないほどの状況です。 ・・・違法な公道占拠が放置されていることを示す重要な証言です。」(46頁 21行目~24行目)。

以上、ア乃至キで記載されていることをまとめると以下のとおりとなる。

==原告は、養豚場の敷地の間にある里道を、恒常的な重機、トラックの往来や、作業場とすることにより違法に占拠している。また、他人地にも犬小屋や山小屋といった施設を建て、また、残飯の処理がずさんなため、カラスの大量繁殖等が起こり、周辺の田畑に被害が及んでいる。

原告による、里道の占拠が原因で、かつての「浄瑠璃寺南口」バス停は、「中ノ川東」バス停へと改名をせざるを得なくなった。行政は、原告のこのような 違法な占拠に対し、里道と養豚場敷地との境界が確定していないことを理由に 何もしようとしない。==

1 里道の占拠について

(1)被告が主張する里道は、確かに養豚場敷地の間に存在しており、原告の重機やトラックが往来をすることはある。里道を挟んで養豚場敷地が存在している以上、養豚場経営において、里道を重機やトラックが通行することそれ自体は避けがたいものである。

(2) しかし、本件記事で記載されているように、常に重機やトラックが公道上に存在していたり、公道のど真ん中で作業をしていたりという事実は存在していない。

被告が主張する里道の左右には確かに養豚場関係の物が置かれていることはあるが、公道を塞ぐ形では置かれていない。里道と養豚場敷地の境界が確定されて いない中、原告としては、里道を全て塞ぐようなことはせず、あくまでも通行することが可能な幅を確保しているものである。

そうであるにもかかわらず、常に養豚場の重機、トラックが里道上にあり、または、里道の真ん中で作業をしているため人が通行することができないかのような記載をしている本件記事については、虚偽事実の摘示であるといわねばならない。

(3)また、被告は、本件記事の中で、原告の残飯処理がずさんなためカラスが大量発生し、近隣の田畑に被害を及ぼしているかのような記載をするが、原告は適正に残飯の処理をしているし、養豚場が原因がカラスが繁殖していること、さらには、それが近隣の田畑に被害を及ぼしているということについて因果関係が不明であるにもかかわらず、養豚場が原因であるかのように決めつけ記載している。これも虚偽事実の記載である。

2 バス停の改名について

(1) 被告は、本件記事の中で、「浄瑠璃寺南口」バス停が、「中ノ川東」バス停に改名された経緯について、被告と奈良交通株式会社とのメールのやり取りによれば、浄瑠璃寺へ続く本件里道が、途中で養豚場内に侵入し、誰が見てもこれ以上奥へ進めない状況にあることから、「浄瑠璃寺南口」という名前が適切ではないと判断したためであるとしている。

そして、このメールの内容を受けて、被告は、原告が本件里道を違法に占拠していることを示す証言であると結んでいる。しかし、かかる内容も、被告の意見が強く反映されたものであり、原告が里道を違法に占拠しているという事実はないにもかかわらず、断定するような記載をされているという点で虚偽事実の記載である。

(2)原告は、里道を占拠するようなことをしていないのは前記のとおりであるが、そもそも、里道が隣接している施設が養豚場ということそれ自体が、一般人をして通行しにくいと感じさせる要因となっていると考えられる。

つまり、原告としては、養豚場の経営の中でも、里道は通行できるよう里道上に恒常的に設備を置いたりはしていないが、養豚場という性質上実際に通行をするということははばかられてしまうような状況があると思われる。

そうした状況から、バス停の名称として「浄瑠璃寺南口」という名前は不適切であり、「中ノ川東」という名前に改名をしたのではないかと考えられる。

(3) したがって、あたかも原告が原因となってバス停名を改名せざるを得なくなったように記載する本件記事は、虚偽事実の記載があるといえる。

以上