被告第3準備書面・証拠説明書(3)

令和元年(ワ)第338号 損害賠償等請求事件
原  告  株式会社村田商店
被  告  遠藤 千尋

被告第3準備書面

2020(令和2)年3月16日
奈良地方裁判所民事部3B係 御中
被告訴訟代理人弁護士

第1 原告第2準備書面に対する認否

1 「第1 犬の放し飼い・公道の占拠(FACT.2)」について

(1)「1 争点とすべき記事内容」について
  • 本件記事にア乃至シに該当する記述があることは、認める。ただし「カ」については、直前に「おそらくこういうことです」とあり、続く文章が推測であることを明示している。

  • 「==」で囲まれたまとめについては認める。

(2)「2 犬の放し飼いについて」について
  • (1)は、争う。詳細は第2で述べる。

  • (2)は、争う。詳細は第2で述べる。

  • (3)のうち、

    • 第1段落は、争う。詳細は第2で述べる。

    • 第2段落は、認める。ただし、原告が飼育する犬が、敷地の外にまで自由に徘徊していたことは事実である。

    • 第3段落は、争う。詳細は第2で述べる。

    • 第4段落ア及びイは、争う。詳細は第2で述べる。

  • (4)は、争う。詳細は第2で述べる。

(3)「3 公道の占拠について」について
  • (1)は、争う。詳細は第2で述べる。

  • (2)は、争う。詳細は第2で述べる。

  • (3)は、争う。詳細は第2で述べる。

  • (4)は、争う。詳細は第2で述べる。

2 「第2 公道を見捨てる奈良市行政(FACT.3)」について

(1)「1 争点とすべき記事内容」について
  • 本件記事にア乃至キに該当する記述があることは、認める。

  • 「==」で囲まれたまとめについては概ね認めるが、被告は「恒常的な」とは表現していない。確かに被告は、「エ」に該当する記述において、「常に」と表現したが、「常に」という言葉は必ずしも「恒常的に」ということを意味しない。例えば、「彼は常に嘘をつく」という文章を、「彼は恒常的に嘘をつく」という意味として受け取る人は、何らかの揚げ足を取ろうという意図がない限り、まれであろう。「エ」に該当する記述は、本文ではなく、本文に付属する写真につけられたキャプションであるが、被告は、本文中では「常に」に該当する表現を「日常的に」と記述しており、本件記事の文脈から、「エ」に該当する記述にある「常に」が「恒常的に」という意味で用いられていないことは明らかである。

(1)「1 里道の占拠について」について
  • (1)は、争う。詳細は第2で述べる。

  • (2)は、争う。詳細は第2で述べる。

  • (3)は、争う。詳細は第2で述べる。

  • (4)は、争う。詳細は第2で述べる。

(2)「2 バス停の改名について」について
  • (1)のうち、

    • 第1段落は、認める。

    • 第2段落第1文は、認める。

    • 第2段落第2文は、争う。詳細は第2で述べる。

  • (2)は、争う。詳細は第2で述べる。

  • (3)は、争う。詳細は第2で述べる。

第2 被告の主張

1 犬の放し飼い(FACT.2)について

(1) 村田養豚場周辺を徘徊する犬の数について

ア 被告は、平成28(2016)年1月20日に、木津川市議会議員の〈木津川市議O〉とその支持者男性4名とともに、村田養豚場の間にある木津川市道を通り抜けているが、被告は当時、村田養豚場の諸問題について〈木津川市議O〉に相談しており、この日の村田養豚場通過は、現地を確認したいという〈木津川市議O〉の要望に応じたものである。

被告は、村田養豚場の現地を確認した後、〈木津川市議O〉及びその支持者らとしばらく話をしたが、その際、支持者男性(氏名不詳)が、「村田養豚場には少なくとも50頭の犬がいた。現地で数えた。実際にはもっと多くいたと思う」と述べた。被告自身の観察でも、村田養豚場を通過した際、少なくとも50頭は犬がいるように見えた。

以上のとおり、本件記事に「2016年1月には、ざっと数えただけでも50匹以上、山林に隠れている犬を含めればおそらくもっと多くの犬が、村田養豚場周辺を徘徊していました」とあるのは、〈木津川市議O〉の支持者男性の証言と、被告自身の観察に基づく。

なお、村田養豚場通過の際、〈村田商店代表乙〉と〈村田商店代表乙の父〉が、被告らに話しかけてきたため、写真を撮ることがはばかられ、現地を撮影した写真はあまりないが、本書面作成にあたり、被告あるいは〈木津川市議O〉らが当日撮影した写真に写っている犬の数を数えたところ、青い檻の中で飼養されているとされる4頭(乙36ー3頁)を加えると、32頭の犬が確認できた(乙91の1乃至3)。このうち6頭は明らかに首輪がなかった(乙91の1乃至3の赤字)が、首輪のない犬も首輪のある犬と行動をともにしており、原告も首輪のない犬を追い払うようなことはしていなかった。

乙91の2 は、〈村田商店代表乙の父〉の顔が入らないよう一部トリミングした上で、本件記事にも掲載した写真である。この写真に写っている人物のうち、青いリュックを背負っているのが被告で、被告に体を寄せているのが〈村田商店代表乙の父〉である。このとき被告は、被告の立っている木津川市道の右手、村田養豚場の休憩小屋の前(南側)あたりに、多数の犬がたむろしているのを見ている。また、村田養豚場敷地南側の市道にも、数頭の犬が徘徊していた。

したがって、平成28(2016)年1月に、村田養豚場に50頭以上の犬がいたと記載することは、まったく誇張ではない。

イ 村田養豚場周辺では、平成26(2014)年以降、平成31(2019)年3月までに、少なくとも103頭の徘徊犬が捕獲されたが、うち21頭が原告に返還され、残りの82頭はほぼ全数処分されている(被告第1準備書面35頁〜36頁乙35乙36乙49乙52乙53乙54)。このうち、平成28(2016)年1月以降に捕獲され、原告に返還されることなく処分された徘徊犬の数は、京都側で22頭(乙52乙53)、奈良側で28頭(乙54)にのぼり、合計すると50頭となる。

したがって、現在も原告が約20〜30頭の犬を飼育しているとすると、当時、村田養豚場周辺には、少なくとも70〜80頭の犬が徘徊していたことになるから、平成28(2016)年1月20日に、村田養豚場周辺に50頭以上の犬がいたとしても、何ら不思議はない。

ウ 平成24(2012)年2月27日、木津川市議会議員〈木津川市議P〉が、木津川市に、村田養豚場で多くの犬が放し飼いになっていることについて苦情を申し立てているが、その際、支持者が数えた数として、40頭以上の犬を確認したと述べている(乙34)。

(2) 原告が飼育する犬には、必ずしも首輪がつけられていなかった。

ア 平成26(2014)年3月4日に、木津川市、京都府山城南保健所、奈良市保健所が合同で、犬の捕獲場所の視察と情報交換を行っているが、このとき奈良市は次のように報告している。(乙35ー2頁)

  • 「奈良市としては首輪を付ける、囲うように指導しており、首輪に(村田の)名前が書いてあるようになった。しかし、首輪が外れた等全ての犬に徹底できていないとのことだった。」

イ 平成26(2014)年3月26日に、原告が京都府山城南保健所を訪れ次のように発言している。(乙36ー3頁)

  • 「奈良市から野犬か自分の犬か区別するように指導を受けており、自分の犬に首輪をつけた。ただし犬によっては首輪を嫌がって外してしまい、以降首輪を着せなくなった犬もいる。」

ウ 原告は、平成26(2014)年3月18日に、平成26(2014)年3月13日及び3月14日に浄瑠璃寺近くで捕獲された、首輪のない犬2頭を、飼い犬として引き取っている。(乙36ー別表)

(3) 原告が、飼い犬を収容するのに十分な、犬小屋あるいは囲いを整備したのは、平成28(2016)年3月末ごろである。

ア 平成28(2016)年3月25日に、原告は京都府山城南保健所に対し、次のように述べている。(乙92ー1頁。下線は被告による)

  • (ア) 「現在、犬を囲うオリを作っている最中。既に30万以上は費やした。群れごとに分けており、将来はオスメスに分けて入れるようなオリを目指す。」

  • (イ) 「イノシシ対策として、犬の放し飼い以外の方法(電柵の設置等)は過去にも検討している。」

イ 平成28(2016)年5月10日に、原告は被告を刑事告訴しているが、その告訴状の中で次のように述べている。(甲9ー8頁。下線は被告による)

  • 「告訴人は,被告訴人からの誹謗中傷を受けることを避けるため、飼い犬を檻の中に入れる、立て札を外すなどした」

ウ 被告は、本件記事の「FACT.6 何も変える気がない奈良県と奈良市」において、「2016年5月現在の現状を報告します」として、「2016年3月ごろから村田養豚場では、放し飼いにされていた犬が、狭い囲いの中に押し込められるようになりました」と記述し、写真とともに、原告が設置した新しい囲いについても記載している(甲2)。しかし、残念ながら、その後原告による犬の放し飼いは再開された(乙55乙60)。

(4) 浄瑠璃寺周辺の徘徊犬について

ア 平成28(2016)年3月1日に、山城南保健所は村田養豚場を抜ける里道の現地確認を行っており、次のように報告している。(乙42

  • (ア) 「浄瑠璃寺〜村田養豚の入口までの里道において、多数の犬の足跡が認められた。」

  • (イ) 「また、複数の徘徊犬(少なくとも4頭)が京都府内の里道を徘徊していた。」

  • (ウ) 「村田養豚場内では多数の犬が放し飼いにされており、これらが里道の上から吠えかかるため、里道を通行することが出来なかった。(元の道を戻りました。)」

  • (エ) 「上記里道については、例え家畜伝染病予防法の「衛生管理区域」の対象外となったとしても、多数の徘徊犬が存在しているため、一般人が通行することは困難であると考えます。」

イ 京都府山城南保健所の平成28(2016)年3月10日付け伺い書に、次の記述がある。(乙93

  • 「現地確認(3月1日)の結果、未だに養豚場内では多数の犬が放し飼いにされており、それらの犬が京都府内に侵入していることが確認されました。」

ウ 平成28(2016)年3月17日に、京都府山城南保健所が奈良市保健所に手交した要望書に、次のような記述がある。(乙44

  • 「先日も村田養豚場内を徘徊している犬が浄瑠璃寺側へ出入りしている様子を確認したところです。」

エ 平成26(2014)年以降、平成31(2019)年3月までに、浄瑠璃寺周辺で捕獲された徘徊犬のうち、原告は19頭の返還を受けている。うち2頭は首輪のない犬であった。(被告第1準備書面35頁〜36頁乙36乙52乙53

オ 被告は、浄瑠璃寺周辺で首輪のある犬を度々目撃している(乙55(7)・(8)・(14)・(15)・(20)、乙60(2)・(3))。平成31(2019)年2月5日に撮影された、乙55(15)に写っている、青い首輪をつけた白い犬など3頭の犬は、その直前に撮影された、村田養豚場周辺を山の上から撮影した写真にも写っており、まさにこの時、これらの犬が村田養豚場周辺から浄瑠璃寺方面に向かっていたことが見て取れる(乙60(19))。

(5) 村田養豚場内を徘徊している犬の行動範囲について

ア 本件記事において被告が図示した犬の徘徊範囲(甲2ー12頁)は、被告が実際にその範囲内で犬を目撃したことに基づく。

イ 平成26(2014)年3月4日に、木津川市、京都府山城南保健所、奈良市保健所が合同で、犬の捕獲場所の視察と情報交換を行っているが、このとき奈良市は次のように報告している。(乙35ー2頁。下線は被告による)

  • (ア) 「村田養豚場の犬は20頭ぐらいとのことだが今のところ8頭登録されており、捕獲犬の返還時に登録させている。」

  • (イ) 「広範囲を移動しており、若草山で捕獲された犬について村田養豚場が引取に来たこともあった。」

ウ 上述イの(ア)から、原告がしばしば奈良市保健所から捕獲犬の返還を受けていたことがわかるが、乙35に資料として添付された地図によれば、奈良市保健所が捕獲箱を設置していたのは、二ノ尾墓地(①)、ニノ尾墓地から県道33号線を挟んで南側の里道(②)、県道33号線と国道369号線の分岐から西へ入る里道(③)の三箇所である(乙35ー2頁)。

これら捕獲箱の設置場所は、いずれも、本件記事において被告が図示した犬の徘徊範囲よりも、村田養豚場から離れている。すなわち、奈良市保健所の報告から、被告の図示した犬の徘徊範囲よりも遠くで捕獲された犬について、原告が返還を求めたことがあるとわかる。

(6) 本件記事記載の犬の徘徊状況の図(甲2ー12頁)にある写真3枚に写っている犬がいる場所は、下記の通り、いずれも村田養豚場の敷地の外である

ア 「養豚場に近づくと放し飼いの犬が多数集まってきます」とキャプションのある写真は、平成26(2014)年2月1日午後1時25分に、赤田川北側の林の出口付近で撮影された(乙94の1、位置図:乙94の4)。犬がいるのは、木津川市加茂町西小長尾谷1ー乙(本件土地3)と木津川市加茂町西小長尾2(本件土地2)に挟まれた木津川市道のあたりで、明らかに村田養豚場の敷地ではない。また、写真に写っている8頭の犬のうち、少なくとも2頭には首輪がつけられていない。

イ アの下、左側の写真は、平成26(2014)年2月11日午後4時9分に、村田養豚場南側の道で撮影された(乙94の2、位置図:乙94の4)。写真左奥の車やトラックが置かれている場所は、村田養豚場の駐車場であるが、右手前から右奥へ伸びているのは、奈良市の市道(正確には手前のわずかな区間は勝手道である)である。この写真に写っているのは、村田養豚場周辺にいる犬が、村田養豚場敷地内の駐車場から、敷地外の道路へ、まさに好き勝手に飛び出しているところである。なお手前の4頭とも首輪をしていない。

ウ アの下、右側の写真は、平成26(2014)年2月11日午後4時10分に、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道で撮影された(乙94の3、位置図:乙94の4)。また、写真に写っている11頭の犬のうち、少なくとも2頭には首輪がつけられていない。

(7) ククリ罠にかかった犬を救出した経緯

ア 原告が主張する、ククリ罠にかかった犬を救出した経緯は、事実と異なる。実際には次のような経緯であった。

  1. (ア) 平成26(2014)年2月11日、被告は中ノ川町の山林に残る中川寺跡を踏査する目的で、中ノ川町の山林へ向かった。山林の中、谷を遡り中ノ川町共同墓地の下あたりに差し掛かった時、少し上の木の陰あたりから、犬が激しく吠える声が聞こえた。

  2. (イ) 被告は、平成26(2014)年2月1日にも、2月11日に犬が吠えてきた場所に近い里道で、村田養豚場からやって来たと思われる徘徊犬を見かけていた(乙95の1)ため、被告は、また近くまで徘徊犬が来ているのだろうと考え、しばらくすればどこかへ行くはずだと思い、犬の声がする場所から少し離れた山林を踏査しつつ、犬の様子を伺っていたが、その間犬が移動する気配が全くなかった。

  3. (ウ) 犬が動かないことを訝しく思い、被告が犬の方へ近づいてみると、黒茶の犬がククリ罠にかかっていることがわかった。被告はなんとか罠を外そうとしたが、犬が激しく暴れ、すぐに噛み付こうとするため、やむなくそれを断念した。

  4. (エ) そこで被告は、ククリ罠にかかった犬のことを保健所に連絡するほかないと考えたが、現場は山林であり、土地勘がないであろう保健所職員に携帯電話で場所を伝えることは難しいと判断し、またそれ以上現地で犬に時間を取られることがわずらわしく感じられたため、一旦犬を放置して、帰宅後、保健所にメールで、地図画像上に場所を示して、ククリ罠にかかった犬のことを知らせることにした。その際保健所に、現地の状況を伝えるため、ククリ罠にかかった犬の写真を撮影した。 被告がククリ罠にかかった犬を撮影したのは、平成26(2014)年2月11日午後2時13分である(乙95の2)。

  5. (オ) その後被告は、当初の予定通り、中川寺跡の踏査を行った。被告は、予定していた時間より遅い時間まで中ノ川町の山林を調べていた。(乙95の3)

  6. (カ) 午後4時ごろ、被告は村田養豚場の敷地の間を通り抜ける木津川市道に差し掛かった(乙94の2及び3)。被告がこの道を通って帰ることにしたのは、単純に一番の近道だからである。

    前述の通り被告は、ククリ罠にかかった犬は、村田養豚場の犬だろうと考えていた。それまでにも、村田養豚場から来たと思われる犬を、中ノ川町の山林で目撃していた(乙95の1)ことに加え、村田養豚場の犬は、黒茶の雑種犬が多く(乙52乙53乙54)、ククリ罠にかかった犬は黒茶で、この特徴によく一致していたためである。

    しかし被告は、この時までに、それがいつのことで誰から聞いたのか記憶が定かでないが、おそらく奈良市クリーンセンターの中ノ川町への移転に反対する奈良市内の団体に属する人など複数の人物から、「以前村田養豚場を通り抜けて浄瑠璃寺へ行こうとしたが、農場主に通れないと言われ、押し問答になった。最終的に恫喝してきたので、諦めて別の道を歩いた」という主旨のことを聞いていた。また、平成26(2014)年2月1日に、中ノ川町の三社神社で、地元の高齢女性二人組から、「犬がたくさんいるから危ない。あんなところに近づいてはいけない。怖い目にあうからやめときなさい」と忠告も受けていた。

    一方で被告は、それまでに何度か村田養豚場を通り抜けた経験から、通行人に声をかけてくるのは、〈村田商店代表乙の父〉と〈村田商店代表乙〉だけであり、他のほとんどの従業員は、敷地の間にある木津川市道を誰かが歩いていても何も言わないことを知っていた。従業員は、近くに〈村田商店代表乙の父〉か〈村田商店代表乙〉がいれば呼びに行くことはあったが、被告が足早に通り抜けてしまえば、〈村田商店代表乙の父〉あるいは〈村田商店代表乙〉に、後ろから「通行できない」といったことを言われることはあっても、追いかけてきて通行を制止されるようなことはなかった。

    そのため被告は、日暮れが迫っていたこともあり、当初は、いつも通り、村田養豚場を素早く通り過ぎるつもりであった。しかし、村田養豚場を少し通り過ぎたところで、やはりククリ罠にかかった犬がかわいそうに思い、引き返して、村田養豚場の従業員男性に声をかけた。

  7. (キ) 被告が「山中で罠にかかっている犬を見たが、ここの犬ではないか」と村田養豚場の従業員男性に声をかけ、午後2時13分にiPhoneで撮影した犬の写真を、iPhoneの画面に映して従業員男性に見せると、「確かにうちの犬だ」ということになった。その場には〈村田商店代表乙の父〉もいた。

  8. (ク) 被告は、ククリ罠にかかった犬がいる場所を口頭で説明したが、村田養豚場の従業員男性は、その場所がまったくわからないようであった。そのため被告は、従業員男性から「一緒に軽トラに乗って、現地まで案内してほしい」と要請された。被告はそれを承諾し、従業員男性2名とともに、村田養豚場の軽トラで、ククリ罠にかかった犬がいる場所へ向かった。

  9. (ケ) 被告はこの時、従業員男性に、村田養豚場には犬が何匹いるのか聞いたが、従業員男性が「何匹いるのかわからない。勝手に増えた。時々いなくなるやつもいる」という主旨のことを、事も無げに答えたので、被告は少なからず驚いた。被告が、その後インターネット上の記事に「違法性を認識していない従業員」と記載した(甲9)のは、この時の経験に基づく。

  10. (コ) それまで被告は、車で中ノ川町共同墓地を訪れたことはなく、軽トラとは言え、細い山道を奥まで車が入れるのか、入れたとしてもUターンして引き返せるのか確信が持てなかった。そこで被告は、中ノ川町の民家があるあたりで一旦軽トラを停めてもらい、まずは徒歩で、従業員男性らを現地へ案内しようとした。

  11. (サ) ところが中ノ川町共同墓地の手前に駐車スペースがあったため、従業員男性は、「これならここまで軽トラで入った方が良い」と言い、軽トラを取りに戻った。

  12. (シ) 上記のような経緯があり、被告が従業員男性とともに現地に到着するまでには、被告が思っていたより時間がかかった。

  13. (ス) 現地でククリ罠にかかった犬を確認した従業員男性は、「いつも???(具体的な場所を言っていた記憶はある)のあたりにおるやつや」「こいつこんなとこまで来とるんか」と言っていた。

  14. (セ) 被告は、犬の救出を手伝おうとしたが、やはり犬が噛み付こうとするため、従業員男性から手を出さないよう言われた。そこで道具が必要だという事になり、もう一人の従業員男性が軽トラに道具を探しに行った。

  15. (ソ) そのころにはあたりがかなり暗くなってきており、救出にはまだ時間がかかりそうだったため、被告は暗くなってきたので先に帰る旨、従業員男性に伝え、山道を帰路についた。なお被告は、従業員男性2名を、ククリ罠にかかった犬のところへ案内した時には、今さら必要もないので写真を撮っていない(乙95の3)。また被告は、従業員男性らが、犬の罠を外すところは見ていない。

  16. (タ) 被告が、帰路、再び村田養豚場の間にある木津川市道を通った際、〈村田商店代表乙の父〉に、無事犬を見つけて今犬を助けているところだと伝えると、〈村田商店代表乙の父〉は被告に礼を述べた。

  17. (チ) 被告は、この時点では「村田養豚場の人は、意外と話が通じるのかもしれない」と感じ、その後村田養豚場を通り抜けたときに、〈村田商店代表乙の父〉に「あの犬は元気にしていますか」などと声をかけた事もある。すると〈村田商店代表乙の父〉は、少し困ったような顔をしていたが、「おう元気にしとる」と答えていた。被告は、犬を助けた後しばらくは、それまでのように「通行できない」と声をかけられることもなかった。

イ 原告が主張する、ククリ罠にかかった犬を救出した経緯は、飼い犬を適切に飼養しているとする原告の主張と矛盾する。

原告の主張によれば、「現地へとついた従業員男性は、犬の罠を外し、それが養豚場で飼育している犬ではないことを確認した」(原告第2準備書面4頁、第1ー1ー(3)ーイ)とのことであるが、仮に、「原告は、その飼育する犬を犬小屋や艦の中に入れて管理をしている。訴状でも主張をしているが、豚コレラを媒介するイノシシを養豚場内に侵入させないために養豚場敷地内で放すことはあるが、自由に放し飼いという状態にしていることはない」とする原告の主張が真実であるとすると、このような経緯はあり得ない。

なぜなら、ククリ罠にかかった犬が村田養豚場の飼い犬であるかどうかは、現地に行かずとも、原告が村田養豚場に整備されていたと主張する囲いの中を確認し、犬の数を数えれば、容易に判明するはずだからである。たとえイノシシ除けのため一時的に放している飼い犬がいたとしても、飼い犬を適切に管理しているという原告の主張が真実だとすれば、飼い犬が敷地の外には出ないよう、目の届く範囲にそれらの飼い犬は管理されていたはずであり、やはり容易に存在を確認できなければならない。

すなわち、現地で村田養豚場で飼育している犬ではないことを確認したとする原告の主張は、「村田養豚場の飼い犬には、敷地外のどこにいるかわからない犬が含まれる」ということが前提されているのである。

(8) 原告が何をもって飼い犬と野犬を区別しているのか不明である

ア 原告は飼い犬について正確な数を提示しておらず、下記の通り、あやふやな数のみを主張している。

  • (ア) 原告が訴状において示した飼い犬の数は「30匹ほど」である(訴状8頁)。

  • (イ) 原告が原告第2準備書面において示した飼い犬の数は「約20〜30頭ほど」である(訴状3頁)。

イ 原告の主張する飼い犬の数は、下記の通り、狂犬病予防法に基づいて登録された犬の数と一致していない。

(ア) 平成26(2014)年3月4日に、木津川市、京都府山城南保健所、奈良市保健所が合同で、犬の捕獲場所の視察と情報交換を行っているが、このとき奈良市は次のように報告している。(乙35ー2頁。下線は被告による)

  • 「村田養豚場の犬は20頭ぐらいとのことだが今のところ8頭登録されており、捕獲犬の返還時に登録させている。」

(イ) 平成28(2016)年3月17日に、京都府山城南保健所が奈良市保健所に要望書を手交した際、奈良市保健所が次のように主張している。(乙44。下線は被告による)

  • ① 「村田養豚場の犬の数は把握できていない。」

  • ② 「登録と予防注射については、お金がないので全頭できていない。少しずつ実施させている段階である。」

ウ 上述(2)で検討した通り、村田養豚場には、首輪をつけていない飼い犬も存在した。

エ 被告は、村田養豚場の敷地の内外で、首輪のある犬と首輪のない犬が行動を共にしているようすを何度も目撃している(乙56乙60乙91の2及び3、 乙94の1乃至3 )。

オ 原告は、餌やりにおいて、首輪のある犬と首輪のない犬の区別をしておらず(乙56ー写真(9)、(10))、村田養豚場の敷地内に首輪のない犬がいても、原告が首輪のない犬を追い払っている様子は見られなかった(乙91の2)。また野犬が養豚場周辺を徘徊することは、防疫上問題があるにも拘わらず、原告が、奈良市保健所に対し、野犬の捕獲を要請した記録もみつかっていない。

カ 原告には、平成28(2016)年3月末ごろからしばらくの間、村田養豚場周辺にいた犬を、ほぼ全頭囲いの中に収容した実績がある。

その結果、平成28(2016)年5月31日に、京都府山城南保健所が、奈良市保健所を訪れ、「(村田養豚場)周辺で見かける犬がほとんどいなくなった。浄瑠璃寺でも見かけなくなり、捕獲箱は置いてあるが閉めてある状態である。指導対応していただいたことに感謝している」と礼を述べている(乙33)。

残念ながら、その後原告による犬の放し飼いは再開された(乙55乙60)が、この一件は、原告がその気にさえなれば、村田養豚場周辺の徘徊犬のほとんどを、囲いの中に収容し続けられることを示すものである。

以上ア乃至カから、原告の主張する飼い犬の数とは、「原告が村田養豚場周辺で最低限徘徊させておきたい犬の数」という以上の意味がないようにも思われる。

少なくとも、本件記事で徘徊犬の状況について記述した、平成26(2014)年から平成28(2016)年1月ごろにおいては、村田養豚場周辺には首輪のない犬も多数徘徊しており、原告の飼い犬への首輪の装着は徹底されておらず、原告が首輪のない犬を追い払ったりもしていない中、原告の飼い犬と、それ以外の野犬とを、正確に見分けることは、原告以外にはおよそ不可能と言ってよい状況にあった。

そこで、原告に対し、次の資料の提出を求めたい(後記求釈明)。

  1. 原告の飼い犬の正確な数がわかる資料。

  2. 原告の飼い犬のうち何頭が登録されているのかがわかる資料。

  3. 原告が何をもって飼い犬と野犬とを区別しているかがわかる資料。

(9) 原告は、奈良市保健所・京都府山城南保健所の双方から、「害獣対策よりも通行人や地域住民への危害の防止が優先されることは疑う余地はありません(乙41)」などとして、犬を係留するか囲いの中に入れて飼育するよう、繰り返し指導を受けている。詳細は、被告第1準備書面32頁から35頁で、すでに述べた。

(10) 小括

以上の通り、原告の主張は当を得ないものである。なお、被告第1準備書面35頁から43頁ですでに詳細を述べたように、原告による犬の放し飼いの実態は、イノシシを追い払うために短時間犬を放つというようなものではなく、放し飼いにされた犬が広範囲を群で移動する、極めて危険なものであり、また、原告による犬の放し飼い及び野犬の餌付けは、村田養豚場の餌の管理がずさんであることと合わせ、豚コレラ対策として犬を放っているとする原告の主張とは逆に、豚コレラを含む防疫上の重大なリスク要因ともなっている。

2 公道の占拠(FACT.2)について

(1) 前述の通り、原告の主張する、ククリ罠にかかった犬を助けた経緯は、事実と異なる。

(2) 被告は確かに、ククリ罠にかかった犬に関する記述がある記事「浄瑠璃寺裏の養豚場」をインターネット上に公開したが、原告が記事の公開から間をおかず、当該記事の存在を知ったとは思われない。

ア 「弥勒の道プロジェクト」のウェブサイトは、狭い地域のマニアックな話題を取り扱っているため、1日あたりのアクセス数は全体で10〜20件ほどである。個別記事となると日々のアクセスはほとんどなく、まして観光地でも文化財でもない養豚場について書かれた当該記事へのアクセスは、非常に少なかった。

当該記事は、元々は、平成26(2014)年2月1日ごろ、浄瑠璃寺から東大寺まで、現在、京都府と奈良県の府県境にもなっている古い道を紹介する、全体で14ある一連の記事の一つで、被告は、当該記事に、養豚場の敷地の間にある木津川市道を通り抜ける上で注意するべきことなどを記載していた。

その後被告は、平成26(2014)年2月11日に、ククリ罠にかかった犬を見つけたので、そのことを、被告の率直な感想とともに、当該記事に追記した。道を安全に通行するためには、周辺に徘徊犬がいる可能性があることを、あらかじめ知っておいた方が良いと考えたためである。それ以降も被告は、新たに判ったことで、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道を通行するにあたり知っておいた方が良いと思われる事柄については、折に触れ当該記事に追記していった。

しかし、当該記事では「村田養豚場」という固有名詞は使っておらず、上記の通り、もともとアクセスの少ないウェブサイトであったので、インターネット上の検索エンジンで、原告に関連するキーワードで検索しても、当該記事が検索結果に表示されることは、まずなかったと思われる。

また原告が、「弥勒の道プロジェクト」が取り扱う話題に関心があるとは到底思われないため、原告が偶然「弥勒の道プロジェクト」のウェブサイトを閲覧し、当該記事をみつけるということもあまり考えられない。

イ 原告の指摘する「シ」(甲2ー26頁3行目〜7行目)は、被告第1準備書面6頁で述べたとおり、被告自身の体験を記載したものである。

被告は実際に、〈村田商店代表乙の父〉から「今度ここを通ろうとして里道から少しでもはずれたらどうなっても知らんぞ」と恫喝された。ただしこれは、正確には、平成27(2015)年11月4日のことであった。

(ア) このとき被告は、〈村田商店代表乙〉から、以前何回か通ったことがあるのではないかといったことは聞かれたが、被告は、〈村田商店代表乙の父〉、〈村田商店代表乙〉のいずれからも、被告がインターネット上に公開した記事については何も言われていない。

(イ) 原告は、このときの被告とのやりとりの中で、被告が原告に犬を繋ぐように言ったことがよほど腹に据えかねたらしく、16時45分ごろに被告が立ち去った後すぐ、原告は17時過ぎに京都府山城南保健所に電話をし、「先日、数名の人が養豚場にやってきた。目的は道の整備のためとかで、草刈り等をしていった。その際に、犬を繋ぐよう言われた。確かに犬が放たれており、その人たちに吠えかかったが、特に咬むような犬はいない(咬みそうな犬は繋いでいる)。安易に犬を繋げというが、ここいらにはイノシシが多く出没する。犬が放たれて場内を歩いているからイノシシにとって脅威となって近寄らないが、もし犬を繋いだら場内を好きに荒らされるだけでなく、犬が襲われる危険もある」と主張している(乙39)。同様の主張は、被告も現地で、〈村田商店代表乙の父〉あるいは〈村田商店代表乙〉から聞かされた。

これに対し、山城南保健所は「公道を通る際に犬に吠えかかられては、通行者が脅威を感じることは当然である。イノシシの害は理解できるが、人に危害を与えないよう係留は必要なことと思われる」と答えている(乙39)。

このとき原告は、なぜか被告が数人で草刈りをしていたと思ったようだが、実際にはこの日被告は一人で草刈りをしていた。ただし、浄瑠璃寺から村田養豚場手前の林の出口までは、毎年9月中旬に地元西小地区の草刈りがあるので、その区間については、被告が草刈りをする前から、すでに草刈りが終わった状態であった。

しかし、地区の草刈りでは、毎年、浄瑠璃寺から林の出口までは草刈りされるものの、村田養豚場周辺の徘徊犬が増えて以降、林の出口あたりで草刈りをしていると、多数の徘徊犬が寄ってくるようになったため、そこから先は草刈りを断念して、来た道を引き返している。被告は、その林の出口から、橋のあたりまでの草刈りをして、道を繋げただけである。

原告としては、浄瑠璃寺から林の出口までを含めると、一人で草刈りをするには範囲が広いので、数人で来て草刈りをしていたに違いないと考えたのかもしれない。

ところで山城南保健所の報告書(乙39)からは、原告が怒りで興奮した様子で電話をしてきたことがうかがえるが、このとき原告は「弥勒の道プロジェクト」の名前を出していない上、以前インターネット上に嘘の記事を書かれたとも訴えていない。もしこの時点で、被告が「弥勒の道プロジェクト」名義でインターネット上でも活動していることを、原告が知っていたとすれば、原告が京都府山城南保健所に苦情を申し立てる際、「弥勒の道プロジェクト」を名指ししなかったことは不自然である。

ウ 原告は平成28(2016)年3月ごろから、行政に対して「弥勒の道」という名前を口にするようになった(乙92)。したがって、原告はこのころになって、公文書公開請求により、被告が行政に対して送っていたメールを入手し、被告が「弥勒の道プロジェクト」名義で活動していることを知ったものと考えられる。

なお、被告は、原告による刑事告訴に係る、原告関係者や市議会議員に送った手紙では、「村田養豚場から赤田川と周辺環境を守る有志の会」を名乗っており、「弥勒の道プロジェクト」とは一切名乗っていない。しかし、行政機関に送ったメールでは、差出人メールアドレスが「弥勒の道プロジェクト」名義のものとなっていた(甲9ー6頁)。

以上ア乃至ウから、「被告から今後また同じように、虚偽事実を記載した記事をインターネット上に掲載されてしまうのではないかという危惧が生じ」たとする原告の主張には疑問がある。原告が、「弥勒の道プロジェクト」のウェブサイトに掲載された記事を、その公開直後から知っていたとは、到底思われないからである。

(3) 原告が通行を拒絶したり、通行人を恫喝していたことは、行政への相談や通報として、報告書が残されている。

ア 京都府山城南保健所の平成26(2014)年4月28日付け連絡事項処理用紙「養豚場周辺のウォーキングについて(第2報)」に、「4/26(土)にウォーキングをする木津川市加茂町の人が村田養豚場に電話したところ、『浄瑠璃寺から村田養豚場への道は入られないことになっている』と言われた」とある(乙96)。

イ 平成26(2014)年5月23日、「加茂の水と緑を守る会」(乙97の1)が木津川市長に提出した「養豚場に関しての申し入れ書」に「現状は『市道』に立ち入ることを明らかに拒んでいます」とある(乙97の2)。

ウ 平成27(2015)年11月13日の奈良市保健所への通報に、「昨日(12日(木))の午前中に、木津川市から奈良市にかけての里道を通り、奈良市側の養豚場の傍まで行ったところ、6〜7匹の犬の取り囲まれて咬まれかけた(咬まれてはいない)。養豚場の人が出てきたが、『勝手に入るな』と叱られただけで犬については何もしなかった。養豚場は奈良市の管轄であろうが、犬は京都府の浄瑠璃寺あたりまで来ている。なんとか対応してほしい。養豚場の人にかなり脅されたので名前は言いたくない。」とある(乙40)。

エ 平成29(2017)年7月10日の木津川市まち美化推進課への通報に、「昨日弥勒の道を歩いて村田養豚場付近まで行ったところ、複数の犬に取り囲まれ吠えられ怖い思いをした。養豚場から出てきた人に『入るな』とも言われた。」とある(乙47)。通報者は、加茂町在住であることから、京都側から村田養豚場まで歩いたと考えられる。被告には該当する人物が思い当たらないが、この通報者は「弥勒の道プロジェクト」のウェブサイトなどを見て、道を歩いてみたものと思われる。

(4) 上記(3)のウは、原告の指摘する「ケ」(甲2ー23頁8行目〜24頁)に該当する証言を、被告に提供した人物による通報と考えられる。

当該人物は、古い道や遺跡、石造物などを訪ねることを楽しみにとしている人で、平成27(2015)年11月9日に、被告が運営していたツイッターの「弥勒の道プロジェクト」アカウントに、それまでに被告がウェブサイトなどで紹介してきた古道を歩いてみたい旨、初めてメッセージを送った。

これに対し被告は、その少し前の平成27(2015)年11月4日に、村田養豚場の北側で草刈りをした際、前述の通り、〈村田商店代表乙の父〉から恫喝を受けた経験から、当該人物に、今通り抜けることは勧められないと答えたが、当該人物がどうしても古い道を通ってみたいということだったので、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道を通り抜けるのに必要と思われる情報や、古い道がある場所などについて、当該人物に対し、説明した。

そのような経緯があった上で、平成27(2015)年11月12日に当該人物が村田養豚場の敷地の間にある木津川市道を通り抜けた際、やはり〈村田商店代表乙の父〉から恫喝されたため、当該人物は、そのことを、古い道を歩いた感想とともに、被告に知らせた。本件記事記載の証言は、この時の当該人物による報告に基づく。なお、当該人物が〈村田商店代表乙の父〉から恫喝されている様子は、奈良県家畜保健衛生所の女性職員2名も見ていたとのことである。

被告と当該人物は、この時点では全く面識がなく、上記の通り、ツイッターで何度かメッセージをやりとりした程度であり、当該人物は、被告の「関係者」と呼べるような関係になかった。被告は今もって当該人物がどこに住んでいるかも知らない。被告と当該人物は、平成30(2018)年12月に、初めて浄瑠璃寺近辺で会っているが、両者の年齢はそれほど近くなく、古い道や遺跡、石造物などを訪ねるのが好きなこと以外、共通点はほとんどない。

原告は、「被告及びその関係者が養豚場周辺に近づいてくるのを確認した際には、名前を聞いたり、『何をしているんだ。』と声を掛け、警戒することはあった」とするが、被告はともかく、通行人が被告の関係者であるかどうかをどのようにして見分けることができたのか、皆目見当がつかない。

(5) 小括

以上の通り、そもそもククリ罠にかかった犬を助けた経緯に関する原告の主張が事実と異なる上、被告がインターネット上に公開した記事を原告が直ちに感知できていたとも思われず、加えて、原告は通行人が近づくだけで被告の関係者かどうかを確認できたとしており、不自然である。したがって、原告の主張は信用に値しない。

3 里道の占拠について(FACT.3)

(1) 原告は現在も、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道上で、日中頻繁に、重機を用いた作業を行っている。とりわけ奈良市東鳴川町641土地と木津川市加茂町西小長尾谷6土地に挟まれた区間では、市道上で、運搬トラックを路上に停めた上での食品残渣の荷下ろし、路上に多数並べられた食品残渣の入ったドラム缶をフォークリフトで持ち上げ、ミニローダーのバケットに食品残渣を注ぎ込む作業、水を使ったドラム缶や重機の洗浄など、様々な作業が、断続的に、長時間行われている(乙59)。

(2) 村田養豚場の敷地の間にある木津川市道「加2092号線」は、道路法及び道路交通法の適用を受ける認定市道であるから、木津署長の許可なく路上で作業をすることは、道路交通法第77条に反する。

(3) 本件記事でも紹介した農林水産省「飼養衛生管理基準の改正に関するQ&A」Q10(乙98ー5頁)の答えに、「公道を通行する人や車両に消毒を義務付けることはできないので、両農場間の移動に当たっては、両農場の出入口で踏込消毒槽等による長靴の入念な消毒を行ってください」とある。また、Q10(乙98ー6頁)の答えには、「生活関係車両や人の通行帯を設け、衛生管理区域と区分することが望ましい」とある。

公道は、当然のことながら、不特定多数が通行する可能性があるので、公道上で、豚の餌となる食品残渣の荷下ろしや、重機を用いた餌の混ぜ合わせなどの作業を行うことは、上述の飼養衛生管理基準の趣旨からは、全く望ましくないと言える。

加えて、餌の保管や混ぜ合わせなどに使用しているドラム缶を、不特定多数が通行し得る公道脇に放置することについても、飼養衛生管理基準の趣旨からは、到底望ましいことと思われない。

すなわち、飼養衛生管理基準の趣旨に従えば、餌の荷下ろしや混ぜ合わせは、公道上で行われるべきではなく、公道から柵などで明確に区分された、養豚場の敷地の中で完結するべき作業であると言える。

また、上述Q10(乙98ー5頁)の答えの趣旨からすると、衛生管理区域内で用いられる重機は、本来、公道を出入りするたび、念入りに消毒されなければならない。しかし毎回そうした作業を行うことが面倒であるのは確かであり、飼養衛生管理基準上、畜産農場には、衛生管理区域内で用いられる重機が、極力公道を通らずに済むよう工夫することが求められていると考えられる。

ところが、村田養豚場では、上述(1)で述べたとおり、木津川市道上で日中頻繁に作業が行われている上、豚舎を出入りする重機が毎回不可避的に木津川市道を通過している(乙59)。このような衛生管理が、一般市民が「奈良を代表するブランド豚」を生産する農場に期待する水準を満たしているとは、到底思われない。

(4) 原告は、平成28(2016)年3月ごろ、奈良県家畜保健衛生所より、奈良市側の里道について、すみやかに境界確定を行うよう求められている(乙99)。

(5) 村田養豚場では、屋外の木津川市道上で餌の荷下ろしや餌の混ぜ合わせが行われており、その際路上にこぼれ落ちる餌は多い(乙56)。また、平成29(2017)年及び平成30(2018)年の、冬から翌年春にかけて、村田養豚場は、余剰食品残渣らしきものを、本件土地1に大量に投棄している(乙31ー(1)乃至(3)、(18)乃至(24))。原告による、こうしたずさんな餌の管理が、村田養豚場周辺に異常な数のカラスが集まっている(乙100の1乃至3)ことと無関係であるとは、およそ考えられない。

なお、村田養豚場から、東鳴川町の田畑までは200mと離れていない(乙100の4)。被告は、実際に東鳴川町の畑で、防鳥ネットをくぐり抜け、作物を荒らしているカラスを目撃しているが、そうしたカラスが、村田養豚場に集まっているカラスとは全く別のカラスだと考える方が、困難である。

(4) 小括

以上の通り、本件記事記載の事実は虚偽とは言えない。

4 バス停の改名について(FACT.3)

(1) 奈良交通「浄瑠璃寺南口」バス停の改称に関する、奈良交通及び奈良市交通政策課からの返答メールは、本件記事にも掲載されているが、これらのメールから判明した、「浄瑠璃寺南口」バス停が改称された経緯は、以下のとおりである。

  1. 旧「浄瑠璃寺南口」バス停留所で降車した観光客が、浄瑠璃寺にたどり着けず迷うことが多く、度々観光客を自家用車で送り届けていると主張する周辺住民が、奈良交通にバス停改称などの対応を要望していた(乙101の2)。

  2. アの周辺住民は、奈良交通からの回答がなかったことから、奈良市に相談した(乙101の2)。

  3. 奈良市は、その要望内容について奈良交通で対応するよう依頼した(乙101の2)。

  4. ウの奈良市の依頼について、奈良交通は、観光客が迷うようなバス停名を変更するよう依頼されたものと受け止めた(乙101の1)。

  5. 奈良市からの依頼を受け、奈良交通の担当者が、実際浄瑠璃寺への道がどういった状況であるのかを確認したところ、道が途中で養豚場の敷地内に進入し、作業用の重機も往来しており、だれが見ても「これ以上奥へ進めない」状況であり、このような状況では「浄瑠璃寺南口」というバス停名は不適切であると判断した(乙101の3)。

ところで、上記アの「周辺住民」の主張と、「道に迷っている通行人を、養豚場の従業員が車で目的地(岩船寺等)へ送り届けるなどの対応をしている」とする、訴状における原告の主張(訴状9頁6〜7行目)は、ほぼ同じである。また、奈良交通「浄瑠璃寺南口」バス停から浄瑠璃寺へ続く道の途中には、村田養豚場の他に民家や事業所が存在しないため、この上記アの「周辺住民」は、原告のことだと考えられる。

そうすると、上記ア乃至オの経緯のとおり、原告の苦情が発端となって、奈良交通「浄瑠璃寺南口」バス停は改称されたということになるから、本件記事に、原告が原因となって、バス停名が改称されたと受け取れる記述があるとしても、その記述は何ら虚偽ではない。

(2) 原告は、「里道が隣接している施設が養豚場ということそれ自体が、一般人をして通行しにくいと感じさせる要因となっていると考えられる」「養豚場という性質上実際に通行をするということははばかられてしまうような状況があると思われる」と主張するが、被告が小・中学生だった平成元(1989)年前後までは、村田養豚場に隣接する里道は、通行がはばかれるような状態になかった。その当時は、おそらく〈村田商店代表乙の父〉の父、〈村田商店代表乙の祖父〉が、村田養豚場を経営していたと思われる。

小・中学生の頃、被告は何度もこの里道を自転車や徒歩で通っている。当時は現在のように道の両側が村田養豚場の敷地ではなく、道の東側のみが村田養豚場の敷地ではあったが、被告が重機の往来に遭遇したことはなかった。また、村田養豚場周辺に犬はおらず、カラスも見かけなかった。被告の記憶するところでは、道と村田養豚場の敷地は、板塀か柵で仕切られ、樹木も生えていて、敷地の中の様子は全くうかがい知れず、ごくまれに、叫び声のような豚の鳴き声がして、ようやく中で豚か何かが飼われているらしいと気づく、といった状態であった。被告は、あまりに人気がないので、廃屋ではないかと思ったこともある。

被告は、中学生の頃には、友人たちと大晦日の晩に、懐中電灯を片手に、この里道を通って、初詣を名目に、奈良の春日大社まで歩いたりもした。当時は、そうすることに危険を感じる道ではなかったのである。

以上の通り、過去の村田養豚場を思い起こすだけでも、養豚場があることそれ自体が、一般人をして、隣接する道を通行しにくいと感じさせるということはないと言える。

3ー(3)でも指摘したが、飼養衛生管理基準が求める通り、もし原告が里道と敷地を柵や板塀などで明確に区分し、かつ、作業用重機が公道を通過することなしに、作業が敷地内のみで完結するよう、作業工程あるいは建物の配置を見直すならば、奈良交通が「現在は養豚場があり行くことは出来ません」(乙101の1)、「道が途中で養豚場の敷地内に進入し、作業用の重機も往来しており、だれが見ても『これ以上奥へ進めない』」(乙101の3)と指摘した状況は、解消されると考えられる。

しかし現状では、村田養豚場の豚舎は、出入口がほとんど直接木津川市道に接しており、豚舎と市道の間は何によっても区分されていない。加えて、豚舎出入口にはカーテンの仕切りがあるだけで、日中はそれすらも開け放たれていることがあり、木津川市道から容易に豚舎の中が見えるような状態となっている(乙100の2)。こうした光景は、「道が途中で養豚場の敷地内に進入」していると見られても仕方のないものである。

加えて、村田養豚場周辺にいる徘徊犬が通行の妨げとなっていることも改めて指摘しておきたい。すでに述べたが、平成28(2016)年3月1日に、山城南保健所は村田養豚場を抜ける里道を現地確認し、「多数の徘徊犬が存在しているため、一般人が通行することは困難である」と評価している。

なお、株式会社都市景観設計と木津川市文化財保護課が編集・執筆を担当した、令和元(2019)年8月19日発行の「特別名勝及び史跡 浄瑠璃寺庭園 保存修理事業報告書II(保存修理工事編)」の「第5章 今後の課題」に、「2 活用上の課題」として、「奈良県側の悪質な土地利用による古道の実質的な封鎖」が挙げられている(乙102)。「奈良県側の悪質な土地利用による古道の実質的な封鎖」が何を指しているのかは、今さら言うまでもない。

被告の言う「公道の占拠」、奈良交通の言う「だれが見ても『これ以上奥へ進めない』状況」、浄瑠璃寺庭園保存修理事業報告書の言う「古道の実質的な封鎖」、表現は違えど、これらが言わんとする状況は、いずれも同じであり、被告の意見は取り立てて特異なものではない。

(4) 小括

以上の通り、本件記事記載の事実は真実相当性が認められることはもとより、真実である。

第3 求釈明

1 趣旨

次の資料を提出されたい。

  1. 原告の飼い犬の正確な数がわかる資料。

  2. 原告の飼い犬のうち何頭が登録されているのかがわかる資料。

  3. 原告が何をもって飼い犬と野犬とを区別しているかがわかる資料。

2 理由

原告が主張する飼い犬の数は、これまでのところ不確かであるので、原告は、飼い犬の正確な数を明らかにするべきである。また、原告は、本件記事が、村田養豚場周辺にいる野犬を原告の飼い犬と誤信させていると主張するが、原告が何をもって飼い犬と野犬とを区別しているかが不明であるため、原告はこの点についても明らかにするべきである。

第4 被告第1準備書面の訂正

被告第1準備書面に、書証番号のずれがあったため、下記の通り訂正する。

  • 55頁16〜17行目「そして翌月の平成30(2018)年2月16日、奈良県から木津川市に以下のような連絡が入るのである(乙22)」→乙21

  • 55頁21〜22行目「ところが翌月の3月5日、奈良県から原告の意向が変わったと新たな連絡が入る(乙23)」→乙22

  • 56頁4〜5行目「この時の報告書には木津川市職員による興味深い手書きの書き込みが見られる(乙23)」→乙22

- 以上 -
令和元年(ワ)第338号 損害賠償等請求事件
原  告  株式会社村田商店
被  告  遠藤 千尋

証拠説明書(3)

2020(令和2)年3月16日
奈良地方裁判所民事部3B係 御中
【乙第91号証の1乃至3】村田養豚場通過時の写真(写し)
撮影日:H28.1.20
作成者:被告、〈木津川市議O〉の支持者
立証趣旨:被告が〈木津川市議O〉らと村田養豚場を通過した際、多数の犬を目撃していたこと
【乙第92号証】連絡事項処理用紙(写し)
作成日:H28.3.25
作成者:山城南保健所 環境衛生副室長 杉浦
立証趣旨:原告が犬を囲う檻を作っている最中と述べていること
【乙第93号証】伺い書(写し)
作成日:H28.3.10
作成者:山城南保健所 環境衛生副室長 杉浦
立証趣旨:山城南保健所が、村田養豚場内の徘徊犬が京都府内に侵入していることを確認していること
【乙第94号証】本件記事にある犬の徘徊状況を示した図にある3枚の写真(写し)
撮影日:H26.2.1、H26.2.11
作成者:被告
立証趣旨:本件記事にある犬の徘徊状況を示した図に記載された写真が、村田養豚場の敷地の外にいる犬を写したものであること
【乙第95号証の1】中ノ川町の山林にいた犬の写真(写し)
撮影日:H26.2.1
作成者:被告
立証趣旨:被告が中ノ川町の山林で、村田養豚場から来たと思われる徘徊犬を目撃していたこと
【乙第95号証の2】ククリ罠にかかった犬の写真(写し)
撮影日:H26.2.11
作成者:被告
立証趣旨:被告が中ノ川町の山林で、ククリ罠にかかった犬を撮影したのは、村田養豚場を通りがかる前の午後2時過ぎであったこと
【乙第95号証の3】平成26年2月11に撮影した写真の一覧(写し)
撮影日:H26.2.11
作成者:被告
立証趣旨:被告は、ククリ罠にかかった犬を発見した後、中川寺跡の踏査を行っていたこと
【乙第96号証】連絡事項処理用紙(写し)
作成日:H26.4.28
作成者:京都府山城南保健所 環境衛生室衛生担当主主任 長崎
立証趣旨:加茂町の人が、原告から、浄瑠璃寺から村田養豚場への道は入られないことになっていると言われていたこと
【乙第97号証の1】申し入れ書(写し)
作成日:H19.7.23
作成者:加茂の水と緑を守る会
立証趣旨:乙91の2の申し入れを行ったのがが、加茂の水と緑を守る会であること。
【乙第97号証の2】養豚場に関しての申し入れ書(写し)
作成日:H26.5.23
作成者:加茂の水と緑を守る会
立証趣旨:加茂の水と緑を守る会が、原告は、市道に立ち入ることを明らかに拒んでいると指摘していること。
【乙第98号証】飼養衛生管理基準の改正に関するQ&A(写し)
作成日:H23
作成者:農林水産省
立証趣旨:公道は衛生管理区域として扱えないこと
【乙第99号証】復命書(写し)
作成日:H28.3.16
作成者:木津川市まち美化推進課 竹田昌史
立証趣旨:原告が奈良県家畜保健衛生所から、すみやかに奈良市側の里道境界を確定するよう求められていたこと
【乙第100号証の1乃至3】カラスの写真(写し)
撮影日:H31.02.18、H31.03.05、H31.03.20
作成者:被告
立証趣旨:村田養豚場の周辺に異常な数のカラスが集まっていること
【乙第100号証の4】航空写真(写し)
作成日:H27ごろ
作成者:Yahoo!地図
立証趣旨:村田養豚場から東鳴川町の田畑まで200mほどしか離れていないこと
【乙第101号証の1】奈良交通の返答メール(写し)
作成日:H27.1.26
作成者:奈良交通株式会社 乗合事業部 お客様サービスセンター 主任 東田行三
立証趣旨:奈良交通が、奈良市から浄瑠璃寺南口バス停の改称を依頼されたとメールで返答していたこと
【乙第101号証の2】奈良市交通政策課からの返答メール(写し)
作成日:H27.2.5
作成者:奈良市交通政策課
立証趣旨:奈良交通に苦情を申し立てたが返事をもらえなかった周辺住民が奈良市に相談していたこと
【乙第101号証の3】奈良交通からの返答メール(写し)
作成日:H27.3.27
作成者:奈良交通株式会社 乗合事業部 お客様サービスセンター センター長 米田 佳弘
立証趣旨:奈良交通が、「道が途中で養豚場の敷地内に進入し、作業用の重機も往来しており、だれが見ても「これ以上奥へ進めない」状況」と判断したこと
【乙第102号証】特別名勝及び史跡 浄瑠璃寺庭園 保存修理事業報告書II(保存修理工事編)(写し)
作成日:R1.8.19
作成者:発行:宗教法人浄瑠璃寺/編集執筆:株式会社都市景観設計・木津川市文化財保護課
立証趣旨:影のつき方と植生の違いから、赤田川北側の府県境となっている稜線が見て取れること
【乙第103号証】判決(写し)
作成日:R1.10.4
作成者:東京地方裁判所民事第1部裁判官
立証趣旨:参考となりそうな争点表の作成例