奈良ブランド豚肉「郷Pork(郷ポーク)」について知るべきこと村田養豚場(村田畜産/村田商店)、奈良県、奈良市のこれまで
奈良県と奈良市が推奨し、奈良ホテルや奈良バーガーが採用した、奈良を代表するブランド豚肉「郷Pork(郷ポーク)」。この奈良ブランド豚を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、1-(1)その後も数十匹の犬を放し飼いにしたり1-(2)と敷地周辺の公道を実質的に占拠し続けています。しかし、奈良県と奈良市はこれら1-(3)をすべて黙認し、奈良ブランド推進対象として村田養豚場(村田畜産/村田商店)の「郷Pork(郷ポーク)」を積極的に支援しています。また奈良市に隣接する木津川市議会では、村田養豚場(村田畜産/村田商店)下流の水質汚濁が長年にわたり問題視されています。
目次
- FACT.1 2-(1)
- FACT.2 犬の放し飼い 公道の占拠
- FACT.3 公道を見捨てる奈良市行政
- FACT.4 赤田川下流の水質汚濁
- FACT.5 奈良を代表するブランド豚
- FACT.6 何も変える気がない奈良県と奈良市
FACT.1
2-(1)
2-(2)
2-(4)
このうち東鳴川のCさんの先代が、村田氏(当時の農場主=現村田商店代表の父)にこの山林を賃貸していました。両方の先代(先先代)がほぼ同時期に亡くなった後、当時の農場主(現村田商店代表の父)が「どのように使ってもいいという約束で先代から借りた」として、借りている山林を削り始めたのです。この件は裁判になっていますが、その裁判では、前述した山林賃貸の土地賃貸借契約書に、特約事項として「目的として、畜産業をいたします」と規定されていたことが認められ、裁判所の判断として、山林掘削工事も賃貸借契約の内容に含まれていたとされました。正直なところ、この裁判の一連の判決は、一般人にはあまりすっきりと理解できないものです。ぜひ判決の全文をお読みください(一審判決・控訴審判決)。
2-(5)AさんとBさんの土地の間にあった木津川市道 加2092号線(里道)は跡形もなくなりました。破壊される前の市道は、なんとか軽トラが通ることもできたといいます。
2006年には、奈良ブランド豚「郷Pork」を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、削りとった他人地で野焼きを繰り返し、農場主(現村田商店代表の父)が廃棄物処理法違反で現行犯逮捕されています。そして2007年3月、とうとうAさんBさんらが村田養豚場(村田畜産/村田商店)を、不動産侵奪,廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反につき刑事告訴しましたが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による掘削工事は、2008年1月ごろ、検察官が村田養豚場(村田畜産/村田商店)に工事をやめるよう指導するまで続けられました。しかし、木津川市からも問題解決の端緒になると期待されていた、AさんBさんらによる刑事告訴は、なぜか不起訴に終わりました。検察からは「けが人や死人が出たわけではないから」と言われたそうです。また、木津川市の平成20年第1回定例会において、当時の市議が報告していますが、関係者の方が検察に電話で問い合わせたところ、2-(6)
なお、Aさんの土地については、山を削られたわけではありません。2-(7)そのため以前は赤田川べりまで歩いて降りられた場所が、現在は数メートルの断崖になっています。
Aさんは谷の北東側が川にせり出すかっこうとなっていることをとても心配しています。ゲリラ豪雨がどこで降るわからない昨今、大水が出たとき土砂崩れで川が塞がれないか心配だと言うのです。
もしこの場所で川が塞がれたらどうなるでしょう。対応が遅れれば鉄砲水が下流の砂防ダムを襲います。後で触れますが、下流の砂防ダムには大量の汚泥が溜まっています。万が一鉄砲水で砂防ダムが決壊すれば、そこに溜まっている大量の汚泥が、加茂盆地の田畑に流れ込みます。ただの洪水被害ではすみません。
2-(8)
2-(9)
2012年ごろ村田養豚場に産廃を満載したトラックが入って行くところを見たという人がいます。赤田川北の荒れ地にトラックが沈み込まないよう鉄板を敷いて、産廃を運び込んでいたというのです。そこで私たちは、もしかしたら池になっていた場所に産廃が埋められたのではないかと考え、奈良市環境部産業廃棄物対策課にメールでこの場所のことを問い合わせました。その結果返ってきたのが下記回答です。
平成27年6月10日****** 様奈良市環境部産業廃棄物対策課長村田畜産の敷地に産業廃棄物が埋められている疑いについて
平素は、奈良市環境行政にご協力いただきありがとうございます。
村田畜産の敷地に産業廃棄物が埋められている疑いについて情報いただき、ありがとうございます。
まず、数年前に頻繁に大型トラックが産廃を積んで走行していた件につきましては、村田氏とは全く関係ないものであり、その関係者(土地所有者)に対し、持ち込んだ産業廃棄物について奈良市から指導した結果、搬出して適正に処分されました。
また、奈良市では今までパトロールを実施しておりますが、村田畜産が違法な産業廃棄物の処理を行ったと確認することはできませんでした。
これからも村田畜産のパトロールを継続して参りますので、よろしくお願いいたします。〒630-8580
奈良市二条大路南一丁目1番1号
奈良市環境部産業廃棄物対策課
TEL 0742-34-4592
FAX 0742-34-1162
産廃を捨てていたのは、村田氏と全く関係のない、産廃が捨てられていた土地の所有者で、市の指導により捨てられていた産廃は搬出され適正に処分されたとのことです。しかし村田氏が承知していないのに、産廃を積んだトラックが村田養豚場の間を抜けて赤田川北へ入れるとは思えません。
そのため奈良市の回答が別の場所のことを言っている可能性を考慮し、地図と航空写真(上写真)を示して、この場所でまちがいないかと何度も問い合わせました。しかし奈良市からは最後まで明確な返答を得られませんでした。
平成27年7月29日****** 様奈良市環境部産業廃棄物対策課長村田畜産の敷地に産業廃棄物が埋められている疑いについて
平素は、奈良市環境行政にご協力いただきありがとうございます。
さて、土地の所有者につきましては、土地の所有権が変わる場合があります。そのため、繰り返し申し上げておりますが、法務局でお調べいただく方法が良いと考えております。
廃棄物の指導につきましては、当時適正に行いました。しかし、その詳細な内容につきましては、信用に関する情報であり、回答できません。
ご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願いいたします。〒630-8580
奈良市二条大路南一丁目1番1号
奈良市環境部産業廃棄物対策課
TEL 0742-34-4592
FAX 0742-34-1162
なお池があった土地の当時の所有者、東鳴川のCさんは、産廃のことは知らないと言っています。2-(10)また村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、このとき「再生クラッシャーというものを埋めたが、それは、コンクリート片などを含む再生物であり、不法な廃棄物ではないということを説明」したと主張しています。
2-(11)その後埋めたものが撤去されたという情報はなく、奈良市が把握している事案がどこのことなのか、まったくわかりません。
2-(12)しかし、それまでの心労がたたったのか、その翌日脳梗塞で倒れ、その後は身体を自由に動かせなくなってしまいました。
2-(13)すると村田氏は帰り道を重機で塞ぎ、酷い言葉で恫喝したといいます。しかしBさんのご主人は毅然として脅しをはねのけたのだと、Bさんは誇らしげに語っていました。
2-(14)
上画像は、平成19年(2007)11月に確定した木津川市の市有土地境界確定図と、昭和58年作成の府県境が明示された平面図を、2018年ごろに撮影されたYahoo地図の航空写真に合成したものです(合成方法の詳細については裁判編を参照してください)。また薄い白の点線で、山林掘削前に土地所有者間で土地境界として了解されていた、山の稜線を再現しました。山林掘削前の稜線は1946年に米軍が撮影した地図などを参考に作成しました。
市有土地境界確定図に記載された長尾2と東鳴川町502の土地境界は、山林掘削により目印となる稜線が失われたため、赤田川対岸(南岸)にある府県境の杭(赤い点)と、掘削面の一番高いところを結ぶ線となっていますが、上図を見てわかる通り、土地境界の変更は最小限にとどまっています。
また、この市有土地境界確定図を確定するため、平成19年(2007)7月に行われた現地立会いは、京都府警の捜査に協力することを兼ねたもので、隣接所有者全員が召集されました。京都府警の捜査とはもちろん、AさんBさんらが村田養豚場(村田畜産/村田商店)を刑事告訴した、不動産侵奪,廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反に関するものです。Bさんによれば、この時、ヘリコプターによって上空から杭の位置を確認する作業まで行われたといいます。ただ、この市有土地境界確定図は、手続き上の問題から、現在一旦修正されています。しかし今後木津川市が、奈良市とともに既確定を考慮して再確定する見込みです。この市有土地境界確定図をめぐる問題については、ぜひ裁判編をご覧ください。
なお2016年には、Bさんの土地にあった小屋が撤去されましたが、その小屋は結局Cさんの土地に移されただけに終わりました(下画像)。
そしてその後も赤田川北の土地では、豚舎から出たとみられる汚泥や余剰食品残渣が、特に冬期、頻繁に捨てられるなどしていました。
しかし2019年8月9日、当会代表が村田養豚場(村田畜産/村田商店)から提訴されたことを受け、東鳴川のCさんにその後の状況をうかがったところ、2019年8月末に、東鳴川のCさんが、赤田川北の東鳴川502を村田養豚場(村田畜産/村田商店)に売却することがわかりました。また、お話をうかがった日の少し前、2019年8月の初め頃に、東鳴川のCさんと村田養豚場(村田畜産/村田商店)との間で、過去にさかのぼって、この土地の賃貸借契約が継続していたとみなすことでも合意が成立し、そのときに過去数年分について賃料がまとめて支払われたとのことでした。そして実際、2019年8月末に、東鳴川502の所有権は村田養豚場(村田畜産/村田商店)に移っています。
したがって現在では、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が過去において、土地所有者の許可を得ずに、東鳴川502に、小屋や再生クラッシャー、豚舎から出た汚泥など、様々なものを置いたり捨てたりしていたことの違法性を疑う根拠は、ほとんど消失していると考えられます。2016年にこの記事を公開した時と現在とで、事情が異なっていますので、ご注意ください。
FACT.2
犬の放し飼い
公道の占拠
村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、一時は50匹以上の犬を放し飼いにし、3-(1)長年にわたり公道を占拠し続けてきました。近年では、村田養豚場が放し飼いにしている犬が10匹単位で、隣接する観光地である木津川市浄瑠璃寺に入り込む事態となっています。しかし奈良県農林部畜産課はこれを今なお容認しており、公道の占拠にも理由を見つけてはお墨付きを与えようと蠢いています。奈良県農林部畜産課は自ら、3-(2)に加担しています。
赤田川北の山林がすっかり削られてしまった2007年、どこから資金を得たのか、奈良ブランド豚「郷Pork」を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)は多額の借金を弁済したと見られます。農場主の娘名義で、里道の西側の耕作放棄地などを買い取り、敷地を広げました。つまり道の両側が村田養豚場の敷地となったわけです。これ以前の1990年代から犬が放し飼いにされていたようですが、敷地が広がったことで、このころ以降、次第に、より多くの犬が村田養豚場周辺を徘徊するようになったと思われます。
2016年1月には、ざっと数えただけでも50匹以上、山林に隠れている犬を含めればおそらくもっと多くの犬が、村田養豚場周辺を徘徊していました。下写真は2016年1月に村田養豚場の間を抜ける公道で撮影したものです。
写真右奥にも数十匹の犬がたむろしています。
敷地周辺を自由に徘徊する犬。
なお京都府山城南保健所の平成26年3月12日付け「浄瑠璃寺の南方にある養豚場が飼養する犬の放し飼いについて(第3報)」によると、村田養豚場が放し飼いにしている犬は、実際にはもっと広い範囲を移動していたようで、奈良市保健所が「広範囲に移動しており、若草山で捕獲された犬について村田養豚場が引き取りに来たこともあった」と報告しています。
奈良ブランド豚「郷Pork」を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)が放し飼いにしている犬は、浄瑠璃寺でも頻繁に目撃されています。こちらは境内に迷い込んだ犬を、居合わせた観光客が浄瑠璃寺の犬と勘違いして撮影したものです。
2015年の末ごろからは、村田養豚場が放し飼いにしている犬が、10匹単位で早朝の浄瑠璃寺に現れるようになり、姿が見えない時も境内に多数の糞を残して行くため、浄瑠璃寺が非常に困る事態となっていました。国宝建造物などに尿をかけていた恐れもあります。下写真は2016年4月5日に執り行われた浄瑠璃寺の前住職葬儀の最中に現れた犬です。この犬はその後、浄瑠璃寺側に居ついてしまいましたが、餌に困ると餌が豊富に落ちている養豚場近辺に戻っていると思われ、浄瑠璃寺から養豚場へ向かう姿が度々目撃されています。
下記動画は2018年から2019年にかけての徘徊犬の状況です。
なお当会が、京都府山城南保健所から開示された、浄瑠璃寺周辺で捕獲された徘徊犬に関する文書を集計したところ、2014年以降2019年3月までに、京都側で捕獲された徘徊犬は、計54頭にのぼりました。うち19頭が村田養豚場(村田畜産/村田商店)に返還されたとみられます。
一方、奈良市保健所から情報提供された捕獲犬リストは、抑留犬の公示文書を元にしており、公示前に返還された犬については、その数を捕獲数に含めていません。そのため実際の捕獲数はこれよりも多いと思われますが、同リストによれば、平成26年度以降、中ノ川町・東鳴川町で捕獲された犬の総数は33頭で、そのほぼ全数が処分されています。
これに加え、先にも紹介した京都府山城南保健所の平成26年3月12日付け「浄瑠璃寺の南方にある養豚場が飼養する犬の放し飼いについて(第3報)」によれば、奈良市保健所が、2014年1月6日から3月4日までの間に、計16頭を捕獲しうち2頭を村田養豚場に返還したと報告しています。
これらを全て合計すると、村田養豚場周辺では、2014年以降2019年3月までだけで少なくとも103頭の徘徊犬が捕獲され、うち21頭が村田養豚場(村田畜産/村田商店)に返還されています。そして残りの犬のほとんどが処分されました。浄瑠璃寺近隣の方々の証言によれば、村田養豚場による犬の放し飼いは二十数年前から始まっており、これまでにどれだけの数の徘徊犬が捕獲され処分されたかわかりません。
村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、京都府山城南保健所に対し「犬の避妊去勢をしておらず犬が勝手に増えすぎるのも困るので子犬が生まれた時に減らすこともある」と説明していたようですが、このような、繁殖を制限しない不適切な犬の飼養は、動物虐待に等しいと言わなければなりません。
さて、奈良ブランド豚「郷Pork」を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)を監督しているのは奈良県家畜保健衛生所です。そこで村田養豚場による犬の放し飼いについて、奈良県家畜保健衛生所に問い合わせたところ、「それは保健所の仕事だからうちは関係ない」の一点張りでした。ところが村田氏の娘さん(現村田商店代表)に、なぜ放し飼いをするのか聞くとやはり「イノシシ除けのために認められている」と主張します。
もちろん犬の放し飼いは奈良県動物愛護条例により禁止されています。
(犬の飼い主の遵守事項)
第五条 犬の飼い主は、前条各号に掲げるもののほか、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
一 次に掲げる方法により、常に、飼養する犬が人の生命等を侵害することのないようにしておくこと。
ア 飼養する犬の形態、性状等に応じ、丈夫な綱、鎖等で固定的な工作物等に係留すること。
イ 飼養する犬の形態、性状等に応じ、おり、囲い等の障壁の中で飼養すること。
ウ 飼養する犬を連れ出す場合にあっては、飼養する犬の形態、性状等に応じ、丈夫な綱、鎖等で保持する等これを制御できるようにしておくこと。
エ アからウまでに掲げるもののほか、規則で定める方法
二 犬の種類、発育状態等に応じて適正な運動をさせること。
三 犬の生態、習性及び生理を理解した上で、当該犬に適したしつけを行うこと。(措置命令)
第十四条 知事は、犬の飼い主が第五条第一号に掲げる事項を遵守していないと認めるときは、当該犬の飼い主に対し、期限を定めて、次に掲げる措置を講ずべきことを命ずることができる。
一 係留すること。
二 口輪をつけること。
三 前二号に掲げるもののほか、犬による人の生命等に対する侵害を防止するために必要な措置を講ずること。第十九条 第十四条の規定による命令に違反した者は、三十万円以下の罰金に処する。
そこで奈良市保健所になぜ犬の放し飼いを取り締まらないのか聞きました。すると「衛生管理区域」を理由に、保健所であっても村田養豚所の敷地に近づかないよう奈良県家畜保健衛生所に要請されているというのです。また奈良ブランド豚「郷Pork」を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、「敷地付近を徘徊している犬は、飼い犬じゃない、勝手に増えた野犬だ」と説明している、とのことでした。(なお上記は2015年ごろの状況で、現在の奈良市保健所は、依然として犬の放し飼いをやめさせられてはいないものの、村田養豚場の敷地へ近づくことはできているようです。)
つまり、村田養豚場が放し飼いにしている犬について、奈良県家畜保健衛生所はこれを容認しているだけでなく、村田養豚場の敷地が衛生管理区域に設定されていることを理由に、保健所が介入することを自ら妨害しているということです。しかし、犬の放し飼いの是非について、農林水産省安全局家畜防疫対策室に伺ったところ、次のような回答を得ました。
イノシシの進入を防ぐために犬を飼うことは飼養衛生管理基準違反ではありませんが、犬を放し飼いにするのは、その犬がどこで野生のイノシシと接触するかわからないので、よい措置とは言えません。柵で囲い、その中で犬を飼うなど、犬が衛生管理区域を出入りしないようにすることが望ましいと考えます。犬が行動できる範囲を、衛生管理区域の内側か外側かのいずれかに限定するべきです。
極めて常識的な見解です。農林水産省は、敷地の周りを柵で囲ってその中で放し飼いにすることを推奨しています。ところが奈良県家畜保健衛生所は、農林水産省の見解に沿った指導を今も頑に拒んでいます。
ここでさきほどから出てきているキーワードについて、確認しておきましょう。「衛生管理区域」とは、居住空間等と区別することにより、畜舎周辺を病原体に汚染される可能性が少ない清浄区域とし、畜舎への家畜伝染病の侵入リスクを低減することを目的として設定するものです。
当然のことながら、衛生管理区域は農場の敷地内にのみ設定可能で、公道や他人の所有地を衛生管理区域とすることはできません。法的にはそうです。ところが村田養豚場では違ったのです。村田養豚場では一時期、敷地の間にある公道が、農場主が通行を制限するべき衛生管理区域に含まれていました。
敷地の間にある公道だけではありません。そのころ奈良県家畜保健衛生所は敷地周囲の公道までも衛生管理区域とすることを認めていました。なぜなら周辺住民どころか保健所でさえ、衛生管理区域を理由に、村田養豚場周辺の公道を通らないよう要求されていたからです。
村田養豚場は、衛生管理区域を盾に、木津川市の立ち入りも拒んでいます。村田養豚場は2012年ごろから、通行人を含め、あらゆるじゃまものを衛生管理区域を理由に遠ざけてきました。そして奈良県家畜保健衛生所は、あれこれ言い訳をしながら、結局今でもそれらをことごとく追認し続けています。
衛生管理区域は、2010年から2011年にかけ宮崎県を中心に猛威をふるった口蹄疫の反省から、2011年10月、家畜伝染病予防法に基づく飼養衛生管理基準の見直しにより新設されたものです。衛生管理区域が新設された後、奈良ブランド豚「郷Pork」を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)では、2012年ごろから、敷地周辺の公道に「立入禁止」の札を立てるようになっていました。
3-(3)2015年ごろ、奈良県家畜保健衛生所にこのことを把握しているか問い合わせました。するとおどろくような答えが返ってきました。なんと奈良県家畜保健衛生所が公道の上に立入禁止の札を立てるよう指導しているというのです。
奈良県家畜保健衛生所は、「敷地の間にある公道を含めて衛生管理区域が設定されている以上、公道の上にも立入禁止の札を立てなければならない」として、「札を撤去させることはできない、むしろ立ててもらわなければならない」と言いきりました。そこで「公道の通行を妨げるのはおかしいではないか」と食い下がりましたが、奈良県家畜保健衛生所は「事前に連絡すれば消毒の上通行できるのであるから、通行妨害には当たらない」と主張しました。
なお、奈良市法定外公共物管理条例には「何人も、法定外公共物の保全又は利用に支障を及ぼし、又は支障を及ぼすおそれのある行為をしてはならない」とあります。奈良県家畜保健衛生所の主張は常軌を逸していると言わざるを得ません。
(行為の禁止)
第3条 何人も、法定外公共物の保全又は利用に支障を及ぼし、又は支障を及ぼすおそれのある行為をしてはならない。
また、農林水産省安全局動物衛生課の鶴田氏にうかがったところ、衛生管理区域の設定によって公道の通行を妨げてよいとする法的根拠はなく、一般市民の公道通行が優先されるべきとの見解でした。公道の通行を、一家畜保健衛生所職員の裁量によって妨げ得る法的根拠などあるはずがありません。くわえて後日、ある人の問い合わせに対し、農林水産省農林水産省消費・安全局動物衛生課は次のように回答しています。
- タイトル
- 【回答】奈良市の法定外管理物(里道)と衛生管理区域の設定について
- 日時
- 2016年6月14日(火) 午後8時1分
- 発信者
- 農林水産省 消費・安全局 動物衛生課
***様
日頃より当省の施策について、ご関心、ご理解をいただき、ありがとうございます。
昨年6月に***様から当省総合窓口へお問い合わせいただいた件につきまして、回答が大変遅くなり心よりお詫び申し上げます。
***様からは奈良市の法定外管理物(里道)と衛生管理区域の設定についてお問い合わせいただいておりましたところ、以下のとおりお答え申し上げます。
家畜伝染病予防法に基づく「飼養衛生管理基準」では、飼養する家畜を伝染病から守るために、自らの農場を衛生管理区域とそれ以外の区域とに分け、人や物の出入りを制限しています。衛生管理区域には、必要のない人が立ち入らないようにするとともに、関係者であっても出入りの際はしっかりと消毒するために、看板等により区域が明確に分かるようにすることとしています。このように、衛生管理区域は、所有者の農場内を区分するものであって、公道の占拠を認めるものではありません。
皆様からの御意見は当省の施策をより効果的に進めていくために大変貴重であると考えておりますので今後とも当省の施策に関するご不明な点等がありましたら、総合窓口を御活用いただきますようよろしくお願い申し上げます。
(農林水産省総合窓口)
https://www.contactus.maff.go.jp/voice/sogo.html農林水産省 消費・安全局 動物衛生課
TEL:03-3502-8111(代表)(内線:4581)
直通:03-3502-5994/FAX:03-3502-3385
農林水産省は上記のような見解を示していますが、奈良県家畜保健衛生所は、木津川市管理課に対しても、農林水産省の見解に反する説明をしています。奈良県家畜保健衛生所は、木津川市管理課との間で行われた協議の際、蛍光ペンで強調した「飼養衛生管理基準の改正に関するQ&A」Q10を示し、次のように説明したそうです。
「回答に、公道や私道を含めて同一の衛生管理区域とみなすことができるとありますね? そして両農場の出入り口で入念な消毒を行うよう求めています。つまり、公道を通行する人にも消毒をお願いしなければならないということです。」
まともな日本語能力があれば、この文章をそのように読むことはできません。はっきり「公道を通行する人や車両に消毒を義務づけることはできない」と書いてあります。この文章は農場関係者に向けて書かれたものです。農場関係者は、敷地の間にある道を渡るときにも長靴を消毒せよということです。
ところが、奈良県家畜保健衛生所は、義務はなくとも、公道を通行する人や車両に「消毒を行ってください」とお願いするべき、と解釈するのです。「両農場間の移動」という部分も「両農場の間にある道を移動する」と読むのでしょう。
この他にも奈良県家畜衛生所は木津川市に明白な嘘を報告しています。木津川市では、2014年の6月議会で、村田養豚場周辺の公道上に立てられていた立入禁止の看板が取り上げられました。市議から立入禁止の看板について問われ、木津川市の建設部長が次のように回答しています。
◯建設部長(若狭 朝明) 建設部長でございます。
西山議員の再質問にお答えいたします。
市道の関係でございます。市道に関しまして、奈良県の家畜保健衛生所と連絡・連携をとって今進めておりまして、実際のところ、保健衛生所からは、病気の発生する予防のための衛生管理区域の設定というのがございます。それを今現在は、指導市道(※引用者修正)も含めて、衛生管理の区域に入れているというところでございまして、その件につきまして、奈良県の家畜保健衛生所が国のほうへ、そういう状況の内容を国のほうへ確認するというところで問い合わせをしていただきました。その後、県の家畜保健衛生所から連絡がございまして、国からの回答につきましては、他人地を含めることにつきましては、好ましくないというふうな国からの回答であったというふうなことで、後日、指導に行くというところで、冒頭の回答をさせていただいたというところでございます。
その後でございます。その後に、6月に入りまして、奈良県の家畜保健衛生所の方が3名本市のほうに来庁いただきまして、その指導の帰りに寄ったというところでございました。その来られたときの内容でございますが、県のほうが調べたところ、木津川市道と奈良市道とはつながっていないという見解でございました。養豚場の浄瑠璃寺側にある看板を、この先行き止まり等とし、養豚場手前に置くこととし、原則は、養豚場内にある市道につきまして、看板を置いて伝染病予防のために、立ち入りについては消毒に御協力いただきたいというふうな県からの回答でございました。
我々といたしましては、そのようなことでございますけれども、認定市道でございますので、通行を規制するものではないというふうな認識はしておりますけれども、今現在、奈良市の道路管理者のほうに、その旨の実際のところの認識、状況、それと判断等を確認中でございまして、それのまだ回答は得ておりません。
以上でございます。
まず、「県のほうが調べたところ、木津川市道と奈良市道とはつながっていないという見解でございました。」とありますが、市道がつながっていないというのは完全にうそです。
たしかに、村田養豚場から県道33号線へ向かう道は途中から私道になっています。しかし市道(里道)は途中で県境沿いに西に折れ、ずっと奈良坂までつながっています。またこの私道は大阪の不動産業者が所有していますが、電話で問い合わせたところ「土地取得前からある勝手道であり、なんら通行は制限していない」とのことです。
そもそもこの道は当尾の人が県道に出るために取り付けた道です。今は村田養豚場が重機を渡すために架けた橋の下に埋もれていますが、赤田川に架かる橋も、当尾の人が架けたものでした。この道を自由に通行してかまわないとする不動産業者の姿勢は至極真っ当なものと言えます。
3-(4)実は、この道が私道だから通れないと主張しているのは、村田養豚場だけなのです。
下記は2015年11月ごろに、村田養豚場の間を抜ける里道を通行しようとした方の証言(一部抜粋)です。この方は京都市内からの観光客でした。直前に、当会代表が運営していたツイッターの「弥勒の道プロジェクト」アカウント宛に、この方から、古い道を通ってみたいと相談があり、当会代表は村田養豚場界隈の状況を説明して、今通り抜けることはおすすめできないと伝えたのですが、それでもぜひ歴史ある古道を歩いてみたいと、たった一人で通行を決行したとのことです。3-(5)
こんばんは。先ず養豚場内里道通過の件ですが村田氏自身により通過を拒否されましたがいただいた資料にある内容を告げそのまま進行しました。すると中程で前に立ちはだかり住所氏名を告げるよう要求し始めました。3-(6)たまたま奈良県家畜保健衛生所職員が2名検査で来ており彼女達にも住所氏名を控えるよう要求していましたが当方が拒否する以上私たちには権限が無い旨説明されていました。
3-(7)犬の放し飼いも酷いです。境界確定させずにこのまま占有を続け、里道を荒廃させれば事実上自由に使えますからこのまま放置することは彼の目論見を幇助することになりますね。なんともやりきれないです。ちなみに今回は郷ポークを話題にしても効果無しでした(笑)。このような一触即発的な状況ではいつか殴り掛かられるような事態が起きないか憂慮します。まあ、手を出せば刑事事件ですから多少事態は動くかもですが。
林への入り口付近より上のコンクリート舗装されている道は私道でしょうか。3-(8)。3-(9)説得に応ずるようなタイプではないかと。。録画録音は必須と感じました。しかしよく平気で嘘がつけるものだと感心しています。
3-(10)奈良県と奈良市はこのような状況を今なお黙認し続けています。
話を戻します。奈良県家畜保健衛生所が木津川市に対し「木津川市道と奈良市道とはつながっていない」と主張したのは、おそらくこういうことです。奈良県家畜保健衛生所の職員は、村田養豚場を指導した際、木津川市に対し「私道だから通れないと言え」と要求され、それをそのまま木津川市に伝えたのです。調査などしていません。私道とは別に赤田川沿いに県道へ抜ける市道もあり、地図を見ればそのような主張がおかしいことはすぐにわかるからです。
そして、先に引用した木津川市建設部長による答弁の後段では、奈良県家畜保健衛生所による信じ難い回答が紹介されています。繰り返しになりますが再度引用します。
養豚場の浄瑠璃寺側にある看板を、この先行き止まり等とし、養豚場手前に置くこととし、原則は、養豚場内にある市道につきまして、看板を置いて伝染病予防のために、立ち入りについては消毒に御協力いただきたいというふうな県からの回答でございました。
奈良県家畜保健衛生所は、公道に立入禁止の札を立てさせることを農林水産省に否定されるや、今度は木津川市に嘘をついてまで、「この先行き止まり」という札を立てさせることを正当化しようとしました。なんとしても公道の通行妨害を継続させたかったようです。彼らはいったいなぜここまでするのでしょうか。
しかも奈良県家畜保健衛生所は、木津川市に違法性が高い指導方針を回答するだけでなく、実際に職員が村田養豚場による通行妨害に協力しています。下記は2015年11月4日に、当会代表が村田養豚場の北側で草刈りをした時の体験です。この体験からも、奈良県家畜保健衛生所が村田養豚場に言われるまま、公道の通行妨害に加担してきたことがよくわかります。
以前から東鳴川の人に、村田養豚場は電話魔だと聞いていました。3-(11)困っているのは村の人間なのに、奈良市役所はおまえらが我慢しろと言ってくる。まったく頼りにならないと。それで赤田川北側の草刈りは、あえて村田養豚場が役所に電話できるよう無理して平日の日中に行いました。
3-(12)もちろん村田養豚場の敷地ではない里道の草刈りをするのに、村田養豚場に許可を得る必要などありません。まして村田養豚場は草刈りをしていた里道の隣接地所有者でもないのです。私はあらかじめ手に入れておいた市有土地境界確定図のコピーを示して、この里道の隣接地はあなたの土地ではないし、隣接地所有者には草刈りの許可は取ってあると告げ、草刈りを続けました。
すると農場主は、本当にあちこちに電話しはじめました。誰かのお墨付きを圧力に、私の名前と住所を聞き出そうとやっきなのです。最初は不動産業者に電話していましたが、不動産業者が私の名前と住所を聞き出すことに難色を示すと、次に奈良県家畜保健衛生所に電話しました。村田養豚場周辺では公道を含めて衛生管理区域であるから、公道を歩くにも名前と住所を入場記録につけなければならないと言わせたかったようです。ところが、電話に出てきた女性職員は、公道は敷地ではないから、通行する人に名前と住所を告げるよう言うことはできないと、ごく当たり前のことを答えていました。
3-(13)次に電話口に現れた男性職員は「村田養豚場では衛生管理のため公道を通る場合も入場記録を取ることになっています」と私に言ってきました。これに対し私が法的根拠の有無を問いただすと、「法的根拠はありませんが、村田養豚所ではこうすることになっています。強制ではなく、“お願い”ということです」とのこと。それで「では通行に際し入場記録の求めに応じる義務はないですね」と確認すると、この男性職員は「そうです」と認めました。
3-(14)
3-(15)
法的根拠がなく農林水産省のガイドラインにも反することを知りながら、それでも「お願い」を求める奈良県家畜保健衛生所の指導は非常に悪質です。おかしいと言われれば「お願い」だと言って逃げ、言われたことを素直に聞く人間には「こういうことになっている」と言いきるのです。さきほどの木津川市の答弁でも木津川市は奈良県から「ご協力」を求められています。
一方で、不可解なことに奈良県家畜保健衛生所は、月に2回の高頻度で、村田養豚場の検査を行っているようです。京都府家畜保健衛生所は、村田養豚所と奈良県家畜保健衛生所の関係について、「良好な関係」と評しました。これだけ高頻度の検査は、両者の関係が「良好」でないとできない、とのことです。
なお、立ち入り禁止の札については、2016年に撤去されました。このとき村田養豚場の敷地の間にある里道についても衛生管理区域から外されたようです。しかしながら奈良県は、2019年3月以降4月にかけても、豚コレラ対策を名目に村田養豚場の敷地の間にある市道を封鎖することを認めるよう、毎週のように木津川市に要求しており、なぜそこまでするのか、理解に苦しみます。
奈良県が求める豚コレラ対策を名目とした市道封鎖については、木津川市が京都府警木津署と協議をもっていますが、木津署交通課は「公道を遮断し、通行権を制限するには相当の事情が必要と考える。電気柵設置でイノシシ等野生動物の侵入を防ぐのであれば、豚舎等養豚場施設のみを包囲し、公道部分を解放することができるはずである。施設への出入りが不便になるという言い分は、申請者の身勝手である」と、2019年5月の時点では指摘しています。
しかし結局、奈良県と村田養豚場(村田畜産/村田商店)の強い働きかけにより、木津川市と木津署は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し、2019年10月に、道路占用許可書と道路使用許可書を交付しました。そして2019年10月中ごろには、村田養豚場(村田畜産/村田商店)により、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道の二箇所に、門扉が設置されました。このときは、村田養豚場の南側と、赤田川の北側に門扉が設置されました。
村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、その後さらにもう一箇所門扉を設置しています。
前述のとおり、2019年8月末に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は東鳴川町502を購入していますが、東鳴川町502に隣接する長尾2の共同所有者らが、防護柵を設置する場合は、2007年(平成19年)に木津川市が府県境として確定し、東鳴川町502の前所有者と合意した土地境界を越えないよう求めていたにも拘らず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、土地境界は未確定だと一方的に主張して、2020年1月、長尾2の共同所有者らが主張する土地境界を越境する形で、防護柵の設置を強行しました。この防護柵の、木津川市道にかかるあたりに、三つめの門扉が設置されています。なお、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張や詳しい経緯については、ぜひ裁判編をご覧ください。
上記のような経緯で設置された防護柵と門扉ですが、設置にかかった費用は、下画像のとおり、独立行政法人農畜産業振興機構(alic)と奈良県からの補助金で、全額賄われる仕組みになっています。
また奈良県は、木津川市と間で開かれた協議の席上、補助金を得るために、「民々界が決まらないので、暫定的に張っていて、境界が決まれば事業者の責任で張り直される」旨、国に説明したと述べています。
ところが実際に奈良県が独立行政法人農畜産業振興機構(alic)に送った報告書には、奈良県が木津川市にした説明とは異なる内容が書かれていました。
上画像は、奈良県が独立行政法人農畜産業振興機構(alic)に送った報告書です。ここには、あたかも長尾2の共同所有者らが、防護柵の位置に異存がないかのように書かれています。しかしこれはまったくの虚偽です。しかもこの報告書は、奈良県農林部畜産課長の印がある有印公文書なのです。
したがって奈良県畜産課の行為は、虚偽公文書作成等罪(刑法第156条)及び偽造公文書行使等罪(刑法第158条)に該当する可能性が高いと言わなければなりません。それだけでなく、奈良県畜産課は独立行政法人農畜産業振興機構(alic)を欺いて、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に補助金を得させようとしたのですから、奈良県畜産課の行為は詐欺罪(刑法第246条)に該当する可能性も考えられます。詳しくは、ぜひ裁判編をご覧ください。
このような、違法性が強く疑われる行為をも厭わない、奈良県畜産課の振る舞いは、明らかに常軌を逸していますが、ともあれ防護柵が緊急に必要なものであるとしても、もし土地境界に争いがあるのであれば、まずは争いのない場所に柵を設置するべきであることは、言うまでもありません。その上で、どうしてもその場所に納得いかない場合は、事業を行いたい側が費用を負担して、筆界特定制度などによって争いを解決し、それによって可能となった場合のみ、もともと希望していた場所に柵を移設する、というのが、本来あるべき手続きではないでしょうか。
ところが現状ではそうなっていません。この状態で補助金が交付されれば、他人の土地を囲う柵に国と県が全額出資している可能性を、国と県が許容しているということになるでしょう。そのため、長尾2所有者からの問い合わせを受けた独立行政法人農畜産業振興機構(alic)は補助金の支払をいったん保留し、令和2(2020)年8月17日、前述の虚偽公文書を前提とした「交付決定には瑕疵があった」として、事業実施主体である奈良県畜産会に対し、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が「隣接地の権利者との間で問題とならない位置へ防護柵を移動させる等」の対応を取ること、及び、その結果について令和2(2020)年11月16日までに書面で報告することを求めました。
しかし奈良県畜産会は報告期限を無視し、令和3(2021)年2月26日になってようやく、問題となっている赤田川北側の防護柵を、補助金対象から外したことを独立行政法人農畜産業振興機構(alic)に報告しました。なお、〈加茂町B〉さんが奈良県畜産会に問い合わせたところによると、奈良県畜産会に主体的な活動実態はなく、奈良県畜産会の事務処理は実質的に奈良県畜産課が行っているとのことです。そして驚いたことに、独立行政法人農畜産業振興機構(alic)は、奈良県畜産会の報告を受け入れ、令和3(2021)年3月ごろ、奈良県畜産会の請求通りに補助金を振り込んだとみられます。
ところで、「ASF侵入防止緊急支援事業実施要綱」「第4 事業の実施等」の5の(3)に、「補助対象経費は、本事業に直接要する経費であって、本事業の対象として明確に区分できるものであり、かつ、証拠書類によって金額等が確認できるものに限るものとする。」との規定がありますが、赤田川北側の防護柵は赤田川南側の防護柵と区分されず、これらの防護柵は一体の工事として設置されました。そのことは防護柵の設置が完了した令和2(2020)年3月1日より後の、令和2(2020)年3月19日に、奈良県畜産会が独立行政法人農畜産業振興機構(alic)に提出した、事業実施計画書変更申請書を見ても明らかです。この申請書別添1の備考欄に、赤田川北側を含め防護柵の設置長が実測で412メートルであることを、家畜防疫員も立ち合いの上確認したという趣旨の記述があります。つまり、赤田川北側の防護柵は、赤田川南側の防護柵とは全く区分されておらず、この時点では両方ともが補助金対象事業とされていたとわかります。
実際、赤田川北側の防護柵は、赤田川南側の防護柵が設置し終わると同時に、連続して設置され、使われている資材も全く同じです。したがって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が設置した防護柵に対し補助金が支払われたことは、「ASF侵入防止緊急支援事業実施要綱」第4の5の(3)に反すると言わなければなりません。まして、赤田川北側の防護柵は、独立行政法人農畜産業振興機構(alic)により、補助金交付対象として不適切だと判断されているのです。やはり、独立行政法人農畜産業振興機構(alic)が当初求めたように、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が「隣接地の権利者との間で問題とならない位置へ防護柵を移動させる」対応を取ったのでなければ、補助金は支払われるべきではありませんでした。以上のことから、当会としては、「ASF侵入防止緊急支援事業実施要綱」第10の1に基づき、当該補助金の全額が返納されなければならないと考えます。
さて、こうした経緯により、現在、村田養豚場の敷地の間にある木津川市道を通るには、三箇所もの門扉を開閉する必要があります。木津川市の「占用許可条件」によると、門扉は本来、日中開けておかなければならないのですが、実際には閉じられています。門扉に鍵はかけられていませんが、鎖が巻かれていて開閉に手間がかかる門扉もあります。
一応、木津川市の「占用許可条件」にしたがって、門扉の一つには、下写真のような掲示がなされてはいます。門扉設置直後には全ての門扉に同じ掲示がありましたが、現在は風で吹き飛ばされ残っていません。掲示が残っていた時も、防護柵と門扉があることで、遠目には、道が養豚場の敷地に突き当たり、そこで終わっているように見えるため、通行を諦めて、引き返してしまう人もいたようです。また、少なくとも、門扉に挟まれた木津川市道には、多数の犬が徘徊しており、ほとんどの人は通行を躊躇するでしょう。
一方で、防疫という公益を門扉の目的として掲げている割に、木津川市道と村田養豚場の敷地の間には柵がなく、犬やカラスにくわえ、村田養豚場の重機は、何にも妨げられず、自由に木津川市道と敷地や豚舎とを行き来しています。市道と市道両側の敷地との間には柵をしていない、このような状況で、市道に三箇所もの門扉設置を許可することは、行政として著しくバランスを欠いていると言わざるを得ません。
そんな中、2021年7月ごろ、木津川市道として機能している道の上にタンクや資材が多数置かれるようになり、通行できるようには全く見えない状態となりました。
しかも驚いたことに奈良県は、市道の通行権が著しく侵害されているこの状況を追認しているばかりか、2021年9月30日には木津川市を訪れ、豚熱(CSF)対策を理由に、村田養豚場の敷地の間にある市道を通行止めとするよう木津川市に求めています。
その時の協議(上報告書抜粋)の中で気になるのは、奈良県が「(日中も門扉を締め切ったままにしておけば)一時的に門扉で囲うことによって飼養衛生管理区域として認めてもらえるかと思う」と述べていることです。奈良県がどこに「認めてもらえる」ことを期待しているのかは不明ですが、奈良県がその前段で「公道も含めて衛生管理区域とできた」と述べていることと考え合わせると、奈良県が、2014年から2016年ごろと同様、村田養豚場の敷地の間にある公道を衛生管理区域として扱いたいと考えていることは明らかです。つまり、この道を通行しようとする一般人に対して、住所・氏名の申告と消毒を求められるようにしたいということです。万が一再びこのようなことがまかり通れば、いよいよこの道を通行することはほとんど不可能となります。これでは実質的に公道を廃止するのと同じです。奈良県が、公道を「自由に通行できる」ことに苦情を述べていることには、呆れるほかありません。法に反するこのような主張を隣接市に対し堂々と繰り返す奈良県はもはや異様です。
なお、農林水産省が令和2(2020)年10月1日に作成し、令和3(2021)年10月5日一部変更した、「飼養衛生管理基準遵守指導の手引き(豚及びいのししの場合)」21ページには、「不特定多数の者が出入りのたびに消毒や衣服・靴の交換ができない場所(公道、生活居住区等)は、衛生管理区域の範囲に含めることはできません。」と明記されています。
そこで当会が農林水産省に行政文書の開示を請求し、木津川市に開示された農林水産省の行政文書を情報提供したところ、木津川市も下報告書の通り奈良県の説明が虚偽であることを確認しました。
また、「飼養衛生管理基準遵守指導の手引き(豚及びいのししの場合)」27ページには、参考情報として「野生動物の侵入防止については、犬等の飼育ではなく、防護柵の設置等の方法により対策してください。(中略)また、飼育場所が衛生管理区域内にあった場合、自宅や他の場所に飼育場所を変更するか、衛生管理区域の設定を工夫して飼育場所を衛生管理区域外とする必要があります。」とも書かれています。公道上を自由に犬が徘徊している村田養豚場の現状は、飼養衛生管理基準上もまったく望ましくないものです。
前述の通り、奈良県畜産課は国からの説明を捏造し、木津川市に虚偽の説明をしていましたが、このことが発覚した後は、木津川市と木津署の双方ともに、木津川市道の封鎖を求める奈良県畜産課の要請に対し、慎重な態度を示すようになっています(下画像は「令和4年3月22日 (株)村田商店に対する市道(加2092号)占用許可の3者協議」と「令和4年3月25日 (株)村田商店による市道(加2092号)占用箇所の現地確認」に関する報告書の抜粋です。)。2022年4月の段階では、木津川市と木津署は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し一定の猶予期間を設ける譲歩は示しつつも、猶予期間の後は公道を衛生管理区域から除外させるか、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の側で代替路を作るなどして、公道の自由通行を確保するよう奈良県畜産課に強く求めています。
FACT.3
公道を見捨てる
奈良市行政
奈良市土木管理課は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)により奈良市の認定市道が占拠されていることを知りながら、敷地境界が確定していないことを理由にいっさい何もしようとしません。
奈良市土木管理課は、奈良市の公道である村田養豚場の敷地の間にある里道を、村田養豚場が4-(1)占拠している現状について、次のように回答しています。
****** 様
この度は、貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございます。
東鳴川町村田養豚場が里道の通行を妨害していることにつきまして、奈良市では里道(法廷外公共物)の管理につきましては条例で定めております。
○奈良市法定外公共物の管理に関する条例
(行為の禁止)
第3条 何人も、法定外公共物の保全又は利用に支障を及ぼし、又は支障を及ぼすおそれのある行為をしてはならない。また、市では法定外公共物の敷地確定につきましては、隣接土地所有者からの申請により境界明示確定作業として実施しているため、当該地付近における法定外公共物の敷地確定はできておりません。
隣接地所有者からの申請が提出されましたら、確定作業の実施ならびに工作物等による不法占用等違反行為が確定され次第、速やかに撤去及び原状回復の行政指導を行って参ります。
ご理解をよろしくお願いします。平成27年1月23日
奈良市 建設部 土木管理課
つまり「敷地と里道の境界が確定していないから、何の指導もできない。もし、村田養豚場から敷地確定の申請があったら境界を確定して指導もする。」ということのようです。
しかしこれでは、もし村田養豚場が敷地の周囲にある里道(奈良市の認定市道)を自分の土地のように使いたい場合、永遠に敷地確定の申請などしなければよい、ということになります。村田養豚場が境界確定を申請しなければ、境界はいつまでも確定せず、したがってなんらかの取り締まりを受けることは未来永劫あり得ない、ということになるからです。
しかし、奈良市道の管理に支障が出ていることが明らかであるにも拘わらず、奈良市が隣接所有者からの申請がなければ境界確定をできないとしていることは、奈良市公有財産規則に違反しています。同規則によれば、奈良市建設部長には、村田養豚場の敷地の間にある里道について、すみやかに境界確定手続きを進める義務があります。
(境界確定の協議等)
第18条 教育委員会及び部長は、その所管に属する土地の境界が明らかでないため管理に支障がある場合には、隣接地の所有者と協議のうえ、境界線上の主要な箇所に永久境界標を設置するとともに、土地境界確認書を作成しなければならない。
2 教育委員会及び部長は、前項の規定により土地境界確認書を作成したときは、その写しを総務部長に提出しなければならない。
付言すると、奈良県家畜保健衛生所が、敷地の間にある公道を含めて衛生管理区域とし、公道の通行にも消毒や入場記録を「お願い」していた根拠もまた、敷地と里道の境界が確定していないことにありました。境界が確定していないからどこまでが敷地かわからない、ゆえに里道も敷地と同じように扱わざるを得ない、という理屈です。もしこれが通るなら逆に敷地すべてを公道と見なしてもいいはずですが、決してそうはなりません。
一目瞭然の事実として、村田養豚場では今や日常的に公道が作業場となっており、公道の4-(2)占拠が続いています。それにも関わらず、奈良市も奈良県も境界が確定していないからと見て見ぬふりをしています。その上奈良県は、前述の通り、一時は公道を衛生管理区域に設定することを認めていましたし、今もまた公道を衛生管理区域に含めることを認めるよう、木津川市に繰り返し働きかけています。
日中頻繁に重機やトラックが公道上を右往左往し、公道の真ん中で従業員が豚の餌となる残飯の仕分けなどを行っています。
吠えながら集まってくる放し飼いの犬。公道の路上に青いドラム缶が多数転がっています。敷地と敷地周辺には犬の糞がところかまわず落ちており「衛生管理」されているとは到底信じられない状況です。
この写真は2014年に撮影されました。道の左右に蓋のない残飯カゴや重機が置かれています。奥に見える山が、2003年頃から村田養豚場が掘削した山です。
残飯の扱いがずさんなため、この付近ではカラスが大量に繁殖し、近隣の田畑を荒らしています。時間帯によっては空が黒くなるほどのカラスが、養豚場上空を旋回しています。近年この付近のカラスは、すぐ北の浄瑠璃寺近辺にも多数姿を見せており、観光客がいぶかしそうにしていることが少なくありません。
奈良ブランド豚「郷Pork」を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)による公道占拠に協力しているのは、奈良県家畜保健衛生所と奈良市土木管理課だけではありません。奈良市交通政策課と奈良市観光振興課もまた、敷地に人を近づけたくない村田養豚場を側面支援しています。ここで下地図を見て下さい。村田養豚場からまっすぐ南に伸びる道を行くと、県道33号にぶつかることがわかります(大きな地図を表示)。
県道33号に出てすぐのところに、2013年3月まで「浄瑠璃寺南口」というバス停がありました。かつては浄瑠璃寺観光の奈良側の玄関口として多くの人が利用したバス停です。このバス停は当尾の人が奈良に出るのにも長らく利用されていました。
そんな、当尾の人にとっても愛着のある「浄瑠璃寺南口」バス停は、2013年3月、突如「中ノ川東」に改称されてしまいました。そこで奈良交通に改称理由を問い合わせたところ、これは奈良市交通政策課と奈良市観光振興課からの要望によるものとわかりました。
奈良交通にホームページの問い合わせフォームを通じ名称変更の理由について問い合わせた返答
- タイトル
- お問合せの件
- 日時
- 2015年1月26日(月) 午後4時36分
- 発信者
- 奈良交通(株) お客様サービスセンター
****** 様
この度は、ご照会いただき、ありがとうございます。
さて、お問い合わせの件ですが、以前は浄瑠璃寺に行くことが出来ましたが、現在は養豚場があり行くことは出来ません。
バス停名変更前は、観光客が多数降車されて、迷うようなバス停名の変更の依頼を奈良市より受けました。
当社と致しましても、以前より浄瑠璃寺へは浄瑠璃寺行きのバスを案内しておりましたので変更させて頂きました。
-----------------
奈良交通株式会社
乗合事業部
お客様サービスセンター
主任 東田行三
奈良市大宮町1丁目1番25号
℡ 0742-20-3100
奈良交通からの回答
- タイトル
- Re: お問合せの件
- 日時
- 2015年2月3日(火) 午後5時34分
- 発信者
- 奈良交通(株) お客様サービスセンター
****** 様
返信が遅くなり申し訳ございません。
お尋ねの件ですが、奈良市交通政策課・奈良市観光振興課よりの要望でございました。
以上、よろしく取り計らい願います。
-----------------
奈良交通株式会社
乗合事業部
お客様サービスセンター主任 東田行三
奈良市大宮町1丁目1番25号
℡ 0742-20-3100
その経緯について奈良市交通政策課と奈良市観光振興課は次のように説明しています。浄瑠璃寺にたどりつけなかった観光客を周辺住民がたびたび案内せざるを得ず、苦情が寄せられたとのこと。
奈良市交通政策課からの回答
- タイトル
- Re:[質問]奈良交通の停留所「浄瑠璃寺南口」を改称するよう要望した理由をお聞かせください。
- 日時
- 2015年2月5日(木) 午後0時23分
- 発信者
- 奈良市交通政策課
****** 様
奈良市交通政策課です。
お世話になります。
この度のご照会についてでございますが、本件につきましては奈良交通㈱が命名していた旧「浄瑠璃寺南口」バス停留所で降車された観光客が、浄瑠璃寺にたどり着けず迷われることが多く、周辺住民の方々のご好意により、度々自家用車で送迎される事案が多発したことから、周辺住民の方々が奈良交通㈱宛てに対応を要望されておられたとの事です。
しかし、奈良交通㈱からの回答がされなかったことから、奈良市に相談がよせられ、その要望内容について奈良交通㈱で対応いただくよう依頼したものです。
バス停留所の名称変更権限を持つ奈良交通㈱に聞きましたところ、社内で検討した結果、名称変更を判断されたとのことです。
ご返事が遅れて、申し訳ありませんでした。
奈良市観光振興課からの回答
- タイトル
- お問合せメールへの回答について
- 日時
- 2015年2月10日(火) 午後3時19分
- 発信者
- 奈良市観光振興課
****** 様
このたびは、奈良市へお問合せをいただき、誠にありがとうございます。頂戴いたしました内容について、観光振興課より回答いたします。
奈良交通「浄瑠璃寺南口」停留所の改称要望理由についてのお問合せでございますが、奈良市から奈良交通様に申し上げた理由として、浄瑠璃寺に奈良から向かわれる利用者より、「浄瑠璃寺南口」で降りた場合、近くに浄瑠璃寺が無くて迷ったというケースが多く発生したためです。停留所名が利用者にとって勘違いを生む要因となりました。更に、近隣の方が浄瑠璃寺への案内をお客様に求められるケースも多くあり、近隣の方にとって負担になっているためです。以上の内容を奈良交通様へご連絡させていただきました。最後になりましたが、****** 様の今後ますますのご健勝をお祈りするとともに、引き続き、奈良市政に対しましてご理解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
奈良市観光振興課
℡0742-34-5135
浄瑠璃寺南口バス停から村田養豚場までは一本道です。そして、村田養豚場の敷地の間にある道を抜ければよいとさえわかれば、村田養豚場から浄瑠璃寺までもほぼ一本道です。すなわち迷う場所は、道が村田養豚場にぶつかる場所以外にあり得ません。村田養豚場以外の場所は、現在も道が保全されているからです。
実は、浄瑠璃寺から村田養豚場のすぐ近くの林の出口までは、地域の方が毎年草刈りをして道を保全しています。たとえその先で、村田養豚場の存在により通行が困難となっていたとしても、この道はこの地域にとってなんとしても守り伝えたい道なのです。
さて苦情主の「周辺住民」とは誰なのでしょうか。ともあれ、観光客が迷うというのであれば、道標の設置でも対応できるはずです。そこで観光振興課になぜそうしなかったのか、再度問い合わせました。
奈良市観光振興課に再質問
- タイトル
- Re:お問合せメールへの回答について
- 日時
- 2015年2月10日(火) 午後3時49分
- 発信者
- ******
奈良市観光振興課 御中
ご回答ありがとうございます。
中ノ川、東鳴川の方に停留所名変更についてうかがったことがありますが、近隣の方が案内を頼まれ負担になっているという話は初耳です。
さて、旧浄瑠璃寺南口から北へ、浄瑠璃寺に向けて道があります。この道は途中まで私道ですが、私道の持ち主は一切通行を制限していません。その先は奈良市の里道となっており、県境から先は木津川市の里道となっております。
迷われる方が多いということでしたら、バス停に小さな地図をつけたり、浄瑠璃寺に向かう道沿いに道標を立てるという対応もあり得たかと思います。
停留所で降りた観光客が迷わないよう道標を立てる方が、「観光振興」に役立つように思うのですが、なぜ停留所名変更という対応になったのか、そのあたりの事情がおわかりでしたらお答えください。
浄瑠璃寺南口ルートを残した方が、当該停留所近くには実範上人御廟塔や応現寺があり、地域の魅力を伝えるきっかけにもなったでしょう。浄瑠璃寺南口を利用すると、加茂駅から浄瑠璃寺へ向かうのではなく奈良市側から浄瑠璃寺に入るということで、奈良市の観光地へも立ち寄る可能性が高いルートとなります。浄瑠璃寺南口から浄瑠璃寺までは1キロもありませんので、道標さえあれば10分ほどで浄瑠璃寺にたどり着きます。
このルートを利用する観光客が多かった頃は、浄瑠璃寺南口を終点とするバスが出ており、中ノ川地区の方々にとっても重要なバス路線だったと聞いております。現在では浄瑠璃寺南口からのアクセスが観光ルートと見られなくなったため、バスの本数が減らされていっそう不便になりました。地域住民のためにもならず、観光にも貢献しない、停留所名変更という対応を選択されたのには、何かよほどの理由があるのだろうと拝察いたします。
加茂側には「浄瑠璃寺口」というバス停がありますが、こちらの方がよほど浄瑠璃寺から遠い位置にあります。しかし、遠いのに名前が紛らわしいということで問題になったことはありません。
お忙しいところ申し訳ありませんが、以上お答えいただけましたら幸いです。
奈良市観光振興課からの回答
- タイトル
- お問合せメールへの回答について
- 日時
- 2015年2月20日(金) 午前10時47分
- 発信者
- 奈良市観光振興課
****** 様
前回、奈良交通が運行する路線バス停留所の名称変更(「浄瑠璃寺南口」から「中ノ川東」、平成25年3月17日)について、当課がその改称を奈良交通株式会社に対し要望した理由のお尋ねを頂戴し、その回答として「利用者の誤解・誤認識の頻発、およびこれに伴う周辺住民への問合せ増加による各所への負担を考慮したため」とご説明させていただきました。そして、さらに今回「なぜ停留所名変更という対応になったのか」とのお尋ねを頂戴いたしましたので、観光振興課より回答させていただきます。
当市が奈良交通株式会社へ要望した内容は前述のとおりでございます。その後、どのような経過で停留所名を決定したのかは、最終的に奈良交通株式会社の判断となりますので、当市では詳細については分かりかねます。誠に申し訳ございませんが、当市といたしましては、前回の回答以上にお答えできる内容はございません。
たびたびお問い合わせを頂戴し、本市の観光行政に対し熱心なご興味とご懸念をいただいておりますこと、誠にありがとうございます。引き続き奈良市政へのご理解を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。
奈良市観光振興課
℡0742-34-5135
奈良市観光振興課に再質問
- タイトル
- Re:お問合せメールへの回答について
- 日時
- 2015年2月20日(金) 午前11時54分
- 発信者
- ******
奈良市観光振興課御中
ご返答ありがとうございます。
お答えになっていないように思います。当方がお伺いしましたのは、なぜ観光振興課が、観光客が迷うと理由であるなら道標や地図の設置という手段があり得たのに、そうした方法をとらず、停留所名変更を奈良交通に要請したのか、ということです。
奈良交通が停留所名を変更したのは、奈良市からの再三の要請があったからとわかっております。
「周辺住民への問い合わせ増加による各所への負担」とおっしゃられましたが、バス路線を利用する中ノ川や東鳴川の近隣住民の意見は聞かれたのでしょうか。
当方では奈良市から地元自治会等にそういった相談があったという話は把握しておりません。
特定の誰かが、市へ何回も苦情の電話を入れたので、それをそのまま聞き入れたということはないでしょうか。二点お答えください。下記は最初の質問とは別の質問であることにご留意ください。
*道標や地図を設置して観光客が迷わないようにすることを検討したかどうか。検討したならそれを採用しなかった理由。
*停留所名変更を奈良交通に要請する前に、中ノ川自治会などに相談したかどうか。以上よろしくお願いいたします。
奈良市観光振興課からの回答
- タイトル
- Re:お問合せメールへの回答について
- 日時
- 2015年3月23日(月) 午後2時41分
- 発信者
- 奈良市観光振興課
****** 様
奈良交通の路線バス停留所の名称変更に関するお問い合わせにつきまして、ご回答が遅くなりましたことお詫び申しあげます。お尋ねのありました二点について、改めましてお答えいたします。
まず「道標や地図設置といった方法の検討」についてですが、これは、当該停留所から浄瑠璃寺に向かう経路が私道を通っていることを理由に見送ったものです。観光施設への経路案内において、仮にその私道権利者のご厚意で「通行を制限しない」との申し出があった場合においても、私道を含む経路を案内、あるいは看板等製作することは、市としてはできかねるためです。
次に、奈良交通への連絡前に「自治会への相談をしたか」についてですが、自治会等への相談は行っておりません。市では、当該停留所に関する誤解が少なからず生じている状況を、一つの情報として奈良交通に対し申し伝えたということでございます。停留所が、市の所管施設名を冠しているような限られた場合を除き、市が停留所名の変更を「要請」することはございませんし、当該停留所の名称について私どもが「再三の要請」を行った事実もございません。
たびたびのお問い合わせを頂戴し、本市の観光行政に対し熱心なご興味とご懸念をいただいておりますこと、誠にありがとうございます。今後とも奈良市政へのご理解を賜りますようよろしくお願い申しあげます。
奈良市観光振興課
℡0742-34-5135
奈良市観光振興課は奈良交通に対し停留所の名称変更を「要請」していないと強調しています。もしかすると奈良市観光振興課は、「要望」はしたが「要請」はしていないと言いたかったのかもしれません。しかし、このメールをやり取りしていた人は、どちらも同じような意味だととらえ、そのことに気づきませんでした。それで最初の話と違ってきているように思い、奈良交通にもう一度確認した結果、下記回答がありました。
奈良市は「要望」していないと言っていることについて問い合わせた結果返ってきた奈良交通からの回答
- タイトル
- 停留所名の変更について(ご返答)
- 日時
- 2015年3月27日(金) 午後5時50分
- 発信者
- 奈良交通(株) お客様サービスセンター
******ご担当者様
この度は、お問い合わせ賜りありがとうございます。
お客様サービスセンター長の米田が回答させていただきます。
この度、浄瑠璃寺南口停留所名の変更につきまして、2月3日付の当社からの返信で奈良市交通政策課・奈良市観光振興課よりの「要望」とお答えいたしましたところ、奈良市観光振興課様からの回答が「当該停留所に関する誤解が少なからず生じている状況を一つの情報として、奈良交通に申し伝えた」との返信があったとのことでございますが、実情は、奈良市様に「何らかのご意見(当該バス停に関する誤解)」が寄せられ、奈良市様から停留所名を変更することの「検討の依頼」がございました。
当社は奈良市様からそうした依頼があったということは奈良市様からの「要望」であったと解釈しておりましたので、「要望」と返答させていただいた次第であり、「検討の依頼」と訂正させていただきます。
当時の担当者によりますと、奈良市様からの検討の依頼を受け、実際、浄瑠璃寺への道がどういった状況であるのかを確認いたしましたところ、道が途中で養豚場の敷地内に進入し、作業用の重機も往来しており、だれが見ても「これ以上奥へ進めない」状況であり、このような状況でお客様への案内に「浄瑠璃寺南口」は不適切であると判断したためです。また、奈良市様から依頼をいただく前にもバスをご利用の観光客から運転手に対し、「浄瑠璃寺へ行こうとしたが道が途切れいて、戻ってきた」とのご意見も頂いておりました。
なお、「奈良市から再三の要請を奈良交通に対して行った事実」につきまして、当社への「検討の依頼」は1度のみでございました。
停留所名変更につきましては、自治会の同意を得ることもございますが、原則は当社の判断で変更しており、前述のような状況でございましたので、自治会様にはお話しておりませず、当社の判断にて変更いたしました。また、名称を変更をしたことについて、その後、地元自治会やご乗客からご意見を頂いたことはございませんでした。
以上を回答とさせていただきますので、よろしくお願い申しあげます。
奈良交通株式会社
乗合事業部
お客様サービスセンター
センター長 米田 佳弘
奈良市大宮町1丁目1番25号
℡ 0742-20-3100
どうやら奈良市においては「検討の依頼」と「要望」と「要請」は大きく違う概念のようです。いずれにしても、周辺自治会や木津川市に何の相談もなく、歴史ある「浄瑠璃寺南口」バス停はその名前を消し去られました。これにより奈良側からの観光客が村田養豚場に近づく可能性はいっそう低下した事でしょう。
それも木津川市や木津川市民からこの道を通行できるようにしてほしいと、何度も奈良市に申し入れがあったさなかのことでした。なぜ奈良市は、奈良市の財産たる公道を誰もが通れるようにするのではなく、関連部署が一致団結して、道をなかったことにしてしまうのでしょうか。奈良市と奈良県はよってたかって一事業者の都合を優先し、市民の共有財産たる里道の機能を、無惨に見捨てているのです。
もう一点、奈良交通の回答には注目するべき点があります。奈良交通として「道が途中で養豚場の敷地内に進入し、作業用の重機も往来しており、だれが見ても『これ以上奥へ進めない』状況」と判断していることです(上引用下線部)。
つまり、公道であるはずの里道が敷地の一部にしか見えない状況ということです。それも長年親しまれたバス停名を変えなければならないほどの状況です。このような状況を公道の占拠と言わずになんと言うのでしょうか。4-(3)公道占拠が放置されていることを示す重要な証言です。そしてこの状況は現在にいたるも全く改善していません。
FACT.4
赤田川下流の
水質汚濁
奈良市に隣接する木津川市議会では、奈良県と奈良市が推奨する奈良ブランド豚「郷Pork」を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)からの排水が、下流に著しい水質汚濁をもたらしている可能性について、長年にわたり何度も議論されています。
木津川市議会では村田養豚場の汚水処理が不十分であることが長年強く疑われてきました。村田養豚場は一時期浄化槽を設置していましたが、2015年ごろ養豚場を訪問した人に「コストがかかりすぎるから浄化槽は設置しない」と話したようですので、そのころまでには浄化槽を使用できなくなっていたとみられます。
村田養豚場は奈良市と木津川市の境界にあり、村田養豚場からの排水はすべて木津川市を流れる赤田川に流れこみます。この赤田川は、奈良市水道の木津川取水口の少し上流で木津川に合流します。下写真は浄瑠璃寺奥之院瑠璃不動三尊像のすぐ前を流れる赤田川です。奥の白丸で示したあたりに、昭和に造立された瑠璃不動三尊像が見えます。写真では見えませんが、さらにその奥にある小さな滝に、鎌倉時代の線彫り瑠璃不動像があります。
残念ながら、浄瑠璃寺奥之院がある谷は、下水のような臭いが充満していることが多く、冬場でも気分が悪くなることがあります。下写真は2015年の大晦日に撮影された、浄瑠璃寺奥之院前の赤田川です。雨の後でもないのに川の水が茶色く濁り、ちょっとした落差でできた泡がなかなか消えないようすが見て取れます。この日の臭いはとりわけ酷く、谷の上にあるバス道にまで下水のような臭いが漂っていました。この写真を撮られた方は観光で来ていたそうですが、あまりに臭いが酷かったので、年が明けてから木津川市役所に苦情を入れてくださったとのことです。
下動画は浄瑠璃寺奥之院から砂防ダム付近で撮影した赤田川の状況です。2016年5月から2019年10月までの動画を一つにまとめました。2016年から2017年にかけ、浄瑠璃寺奥之院の少し下流にある砂防ダムでは、初夏から秋にかけ、水底からメタンと見られる気泡があがり、水面が泡だらけとなっていました。臭いも酷く、砂防ダムでできた池のそばにいると、気分が悪くなるほどでした。
浄瑠璃寺奥之院下流にある砂防ダムは、水面近くまでヘドロで埋まっており、2017年まで、夏には無数の泡に覆われた茶色く濁った水がゆっくりと流れ、ところどころに真っ黒なヘドロが浮かんでいました。2018年の夏には水面が泡で覆われることはほぼなくなり、2019年現在、2017年以前と比べ、水質が改善していることは確かですが、山あいの谷にある砂防ダムとは思えない、酷いありさまであることには変わりありません。
赤田川北の地権者(Aさん)によると、養豚場の少し下流の山林の持ち主が、以前は持ち山でしいたけ栽培をしており、しいたけ栽培のため川からポンプで水を汲み上げていたが、糞尿やゴミですぐポンプが詰まるとぼやいていたといいます。実際、下流は糞尿のようなヘドロでひどく汚れています。下写真は2015年ごろ、養豚場から400mほど下流の、小さな滝が連なるあたりで撮影しました。砂防ダムより上流であるためか、渓流にある水たまりにも、どろりとした茶色いヘドロがたまっています。谷にただよう滝しぶきが乾いて、葉っぱやあたり一面白い粉をふいていました。これを撮影した日は帰宅後熱が出ました。寒い中長時間川べりにいたため軽い風邪を引いただけかもしれませんが、あまり気持ちのいい体験ではありませんでした。
冒頭でも述べましたが、こうした水質汚濁の原因として、木津川市議会で長年議論されている場所のひとつが、奈良ブランド豚「郷Pork」を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)です。なにより村田養豚場より上流の赤田川では水の濁りも臭いもほとんどない一方、村田養豚場より下流の赤田川に限って糞尿あるいはどぶ川のような臭いが酷いという現実があります。2016年から2017年にかけては、特に日暮れごろ臭くなると言われていました。谷の上の尾根道まで酷い臭いが漂ってくることもしばしばで、外にいる人が少なくなる時間を見計らって、夜に汚水が流されているのではと噂されていました。
村田養豚場から300mほど上流にある東鳴川簡易水道付近の赤田川。
このあたりではあまり濁りがなく、橋の上にいても臭いがまったくしません。
ただ、村田養豚場よりさらに上流の奈良市法用町に、不法に造られた産廃処分場があり、大雨が降ったときなどに、そこから染み出した未処理の汚水が流れ出すこともあるようです。そのため、木津川市も奈良市も、赤田川の汚れが酷いことを認めつつ、原因を特定できないとしてきました。
しかし2017年12月、木津川市による赤田川の水質調査で、とうとう著しい水質汚濁が検知されました。下流の高田でも、BODが30mg/L、CODが26mg/Lと、作物への影響が心配されるほどの異常な値です。これを受け木津川市は、水質検査の頻度を年4回から月1回以上に増やしましたが、その後も異常な数値が検知され続けたため、2017年4月10日、木津川市と京都府山城南保健所は、水質検査を依頼しているエヌエス環境株式会社と、赤田川の水質汚濁について協議を行いました。このときエヌエス環境株式会社は、提案書において「特に糞便生大腸菌が10,000個/mlを超過した状態は、し尿レベルの汚染であり、他の病原菌に汚染が心配される。一般河川、また農業用水として衛生的に心配」と指摘しています。
また2017年4月14日には、木津川市が京都府山城南保健所とともに、京都府山城南農業改良普及センターを訪れ助言を求めていますが、京都府山城南農業改良普及センターは「現在の水質が続けば、水稲・ナス等への生育への影響が懸念される」との厳しい見解を示し、木津川市に事態の深刻さを印象づける結果となりました。
事態が切迫していると考えた木津川市は、間をおかず、木津川市長自ら京都府に協力を要請しています。平成29年4月24日、木津川市長が市町村会議で京都府庁を訪れた際、木津川市長が京都府環境部長に手渡した木津川市市民部作成の資料には、「府県境を跨ぐ公害」と書かれおり、文面には赤田川の水質に対する木津川市の強い危機感が反映されています。
そして平成29年5月30日、木津川市は、調査業務を委託したエヌエス環境株式会社、京都府環境管理課、山城南保健所、奈良市保健所に加え、地元代表者ともに、赤田川水質汚濁状況調査を実施しています。この調査では、砂防堰堤から上流へ向けて100mごとに底質のサンプルを採取しつつ、この区間に沢や支流の流入がないかについても確認されました。踏査の報告書では、以下のように、村田養豚場を境に河川の状況が変化する様子が報告されています。
平成29年5月30日に行われた赤田川水質状況調査の概要は、ほどなくして下流地域にも伝わり、平成29年6月23日には、京都やましろJAから、赤田川の水質改善を求める要望書が、木津川市長に直接手渡されました。
また平成29年7月21日、西小・大門・高田・観音寺・大野の流域五地区から合同で、赤田川の水質改善要望書が、木津川市長に、やはり手渡しする形で提出されています。
こうした下流農家の強い懸念を背景に、平成29年6月15日から9月26日にかけ、木津川市では、汚濁源からの流入が、恒常的・定期的ではない可能性を考慮し、水質の連続モニタリング調査を行っています。これは赤田川の浄瑠璃寺奥の院付近において、河川水の電気伝導度(EC)を15分間隔で連続モニタリングするもので、値の変化により汚濁物質流入の頻度と時間帯を把握することが期待されました。ECは水中の電解質濃度を一括して推定する指標とされるものです。
このEC連続モニタリング調査の中で、高頻度で夜間にピークが現れることが観察されたため、木津川市は、平成29年7月19日の19時30分から、ECメーターが設置された浄瑠璃寺奥之院前の赤田川で、一時間ごとに採水して水質を調査しています。その結果、19時30分に、COD=170mg/L、BOD=830mg/L(環境基準の100倍以上)、全窒素=35mg/L、全りん=2.0mg/L、アンモニア性窒素=23mg/Lと著しい有機汚濁が検知され、その後急速にそれらの数値が低下する様子が確認されました。
こうした詳細な調査と分析を経て、平成29年11月には、赤田川水質汚濁状況調査報告書の内容が固まり、平成29年11月7日、木津川市長が奈良県農林部を訪れ、赤田側の水質汚濁改善への協力を要請しています。
上報告書を見ると、木津川市長自ら、奈良県農林部長に、切々とお願いをしていたことがわかります。木津川市長の「ブランド肉を生産する事業者」という言葉から、木津川市長の依頼が村田養豚場を念頭に置いたものであることは明らかでしょう。なお木津川市による赤田川水質汚濁状況調査報告書は、赤田川水質汚濁の原因について、次のように結論づけています。
連続モニタリング調査の結果から、赤田川の水質汚濁については、「奥の院」における水質を著しく悪化させるような、高濃度かつ大量の有機汚濁成分が、人為的に、高い頻度で主に夜間に排出され、河川に流入することによって生じている可能性が高い。
4月17日の水質調査では、「奥の院」で従来見られなかった高濃度の有機汚濁が確認されたが、これは、有機汚濁成分の流入時の水質である可能性が高い。
本年度の赤田川の水質は、参考資料2のとおりだが、河川への汚濁成分の流入が短時間に集中していると考えられる今回のようなケースでは、通常の水質検査では、汚濁状況を十分把握することが困難である。
一方、底質は、河川水の影響を蓄積するため、一時的な汚濁成分の流入についても、一定捕捉することができる。汚濁源の確認調査において、底質に大きな差異が認められたのは底質⑤と底質⑥の間であり、底質⑤から下流側で底質の有機物汚濁を示す化学的酸素要求量(COD)が高い状況であった。
また、養豚場周辺の流入水に強い有機物汚濁が認められたことから、府県境に位置する養豚場付近で、高濃度かつ大量の有機汚濁成分が排出されて、赤田川の水質汚濁を引き起こしていると考えられる。
なお、事業所敷地内の状況が不明であることから、付近の事業所の汚水処理等の調査が必要である。
この結論を受け、平成29年11月14日には、木津川市長が奈良県知事を訪れ、赤田川の水質改善に配慮を願う要請書を手渡しています。
ちなみに、当初木津川市はこの要請書を京都府知事と連名で発出することを希望していました。このことは木津川市の問題解決にかける強い意志を感じさせます。
また、検討中の文案では「奈良市と木津川市の境界付近で河川の状況が大きく悪化していることが確認され、その付近にある事業所が上流側の汚濁源の一つとなっている可能性が示唆されています」としており、最終案よりも踏み込んだ表現となっていました。
次いで平成29年11月22日には、木津川市長が奈良市長を訪問して、奈良県知事宛と同内容の要請書を手渡しています。
この要請文においても、途中の文案は最終案と少し異なっており、「調査・対応をされた結果につきましては、木津川市及び京都府に提供いただけますようお願いいたします」という、具体的な要請が含まれていました。奈良市側から十分な情報が入ってこないことに対する、木津川市の苛立ちが滲み出た文面と言えそうです。
赤田川水質汚濁の原因が村田養豚場だと特定されたわけではないものの、こうした木津川市の綿密な調査と粘り強い働きかけにより、2018年2月ごろ、ついに村田養豚場が排水設備の改修を行う意向を示します。しかしその後も紆余曲折があり、新しい排水設備が実際に完成したのは2019年の5月ごろでした。このあたりのくわしい経緯については、ぜひ「裁判編」をご覧ください。
なお、2019年5月に村田養豚場が新しく設置した排水設備は、上写真の通り、外部から観察する限り、概ね次のような機能があるとみられます。
- まず豚舎 北西端の地下に集められた汚水が縦穴①からポンプで地上に汲み上げられ、二台の振動篩②を通ります。この時、汚水中の固形分が コンクリート台の外側へふるい落とされます。
- 次に汚水は浅い槽③を流れ、槽に渡された板(↓印)によって、表層の油分や浮遊物がせき止められ、下層の液体成分のみが次の貯留槽④へと流れます。
- 貯留槽④に溜められた汚水は、豚舎北西端にある、地下の汚水管に繋がる縦穴⑤(見えない位置にある)へ戻されます。
このように1から5を何度も循環することで、汚水中の固形分を取り除くのが、この排水設備の主な機能と思われます。これは固液分離装置あるいは尿分離装置と言われるもので、曝気槽は作られていないように見えます。
ところで、西側豚舎から突き出ている柵のついた通路Aは、豚の搬出入口となっています。したがって、豚を搬出入する際には、ここに豚の運搬トラックが後ろづけされることになります。しかしながら、運搬トラックが停車する位置Bには、コンクリート台の外へふるい落とされた固形分から液体成分が滲み出し、コンクリート敷の上に広がっている状況があります。村田養豚場の新しい排水設備は、運搬トラックが豚の排泄物と容易に接触し得る構造と配置となっており、病原体を拡散させるリスクが高いと言えるでしょう。
しかし新しい排水設備は、排水設備の変遷をまとめた上動画からわかるように、完成後にもしばしば配管が変更されており、安定して稼働しているようには思われません。また前述の通り、この排水設備は、外部から観察する限り、曝気槽のようなものは見当たらず、固体と液体を分離する機能しかないように見えます。これで本当に十分な浄化機能があるのか疑問に思いますが、実は木津川市も、新しい排水設備の詳細を未だほとんど把握できていないのです。それというのも、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、木津川市の立ち入りを強硬に拒絶している上、奈良県や奈良市に加え京都府に対しても、木津川市に情報を提供しないよう求めているからです。
平成30年3月29日、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の強い要求で、奈良県、奈良市、京都府、木津川市、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による合同会議が開かれましたが、その席上、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は次のように発言しています。
- 排水基準の50㎥/日等の知識も持っていないのではないか。
- 排水が法規制にかからず、産業廃棄物の問題もないのであれば、何が問題なのか。奈良県も奈良市も指導できないのではないのか。
- 村田養豚場は、基準を満たしており、BOD、CODは基準に含まれていない。河川の水の色で汚濁していると言えるのか。塩水を流してやろうか。
- 苦情を言う市民や、議会の言い訳としてお願いをするのは勝手だが、市も県も指導できず、効果はないのではないか。
- なぜ木津川市は、養豚場内に立ち入りができないと思うか。
- 行政は、法律・条例に基づいて行動すべきで、木津川市の職員には勉強しようとする努力が見られないからである。民間より知識や経験が欠けている。京都府は、よく勉強しているし、時と場合によっては対処法が違うと理解できる人たちだから入ってもらっている。
- 木津川市は、来年度も水質調査を継続し、その結果を奈良県・奈良市に伝えていくと言っているが、おかしくないか。奈良県はどう思う。
- 村田養豚場としては、会社としてやるべきことはやっていくつもりで、奈良県や京都府に協力も求めていく。しかし、その内容については、一切、木津川市に伝えないよう言っている。知りたかったら木津川市も変わってほしい。
「排水基準の50㎥/日等の知識」とは、水質汚濁防止法に定められた一律排水基準が、有害物質以外の項目については、1日当たりの平均的な排出水の量が50㎥以上である工場又は事業場に係る排出水についてのみ適用されることを指しています。ただし、奈良県においては下記のとおり、条例によって、より厳しい基準が規定されています。
この表に規定する排水基準は、一日当たりの平均的な排出水の量が五十立方メートル以上である特定事業場に係る排出水について適用する。ただし、昭和四十七年一月一日以後に設置された特定事業場で、次のいずれかに該当するものにあっては、一日当たりの平均的な排出水の量が十立方メートル以上である特定事業場に係る排出水について適用する。
(1) 政令別表第一第一号の二イに規定する特定施設(豚(生後五月未満のものを除く。)百頭以上の飼養に係るものに限る。)、同表第十一号、第二十二号、第二十四号から第二十八号まで、第三十二号、第三十三号、第四十三号、第四十六号、第四十七号、第四十九号、第五十号若しくは第五十三号に規定する特定施設、同表第五十五号に規定する特定施設(混練機の混練容量が〇・六立方メートル以上のものに限る。)又は同表第五十七号、第六十二号ニ、第六十三号ニ、第六十五号若しくは第六十六号に規定する特定施設を設置する特定事業場であること。
村田養豚場の現在の排水設備は、2006年以降に取得された敷地に設置されていますが、奈良市保健所は、村田養豚場は昭和47年1月1日より前から存在しているとして、一日当たりの平均的な排出水の量が50㎥以上でなければ、有害物質以外の項目に係る排水基準は適用されないとしています。
また村田養豚場では谷川の水をタンクに集め、これを様々な用途に使用しています。加えて市道上での作業で使用された水は市道脇の側溝へ流れ、そのまま赤田川に流れこんでいるとみられます。そのため、村田養豚場の排水量を正確に把握することは極めて困難で、おそらく水道使用量や豚の尿量などから計算した場合、村田養豚場における一日当たりの平均的な排出水の量は、10㎥を越えるかどうかという範囲に収まっているものと考えられます。
したがって、水質汚濁防止法に定められた、有害物質以外の項目に係る排水基準は、村田養豚場における1日当たりの平均的な排水量が、規制対象とならない量であることから、村田養豚場の排水には適用されないのです。仮に、村田養豚場の排水が原因で、赤田川の河川水自体が排水基準を越えるような状態となっているとしても、それでも水質汚濁防止法では、BODやCODの排水基準が村田養豚場の排水に適用されることはありません。
以上をふまえた上で、前述の合同会議において、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、排水が法規制にかかる可能性がない以上、奈良県も奈良市も村田養豚場を指導することはできないのだから、木津川市が赤田川の水質調査を行って、奈良県や奈良市に結果を報告することに意味はなく、木津川市が水質調査を継続するのはおかしいと主張しています。
ところで、近年、村田養豚場は、オリジナルブランドの「郷Pork(郷ポーク)」を、人間の食べ残しを食べさせるエコな豚、奈良の自然豊かなむらざとで育んだブランド豚として盛んに宣伝しています。そして2016年5月には、西日本ハンバーガー協会が企画した「奈良バーガー」の必須材料にも選ばれました。
前述のように、村田養豚場が木津川市による立ち入りも、木津川市への情報提供も拒んでいるため、木津川市は村田養豚場の排水設備についてほとんど何も把握していません。その結果、木津川市による下流地域への説明会でも、村田養豚場の排水設備に関しては具体的な説明が一切なく、したがって木津川市民には何も情報が伝えられていないので、実際のところは不明なのですが、先ほどから指摘しているとおり、外部から観察する限りは、排水設備の中に糞と尿を分離する装置はあるものの、浄化槽は見あたりません。しかしながら、はたして浄化槽も設置せずに、上記のうたい文句にふさわしい環境対策は可能なのでしょうか。ちなみに下記は、畜産の情報-調査・報告-2003年10月 月報国内編「養豚に切っても切れない汚水処理」からの引用です。
放流できる処理水を得るためには浄化槽(活性汚泥処理施設)が必要である。養豚ではふんと尿を分離し、ふんはたい肥化、尿は浄化槽がメジャーな方法となっているのである。
また、2020年3月26日に開かれた「赤田川の水質汚濁に係る連絡調整会議」の席上、京都府畜産課が、村田養豚場が改修した排水設備について、「処理は二段階方式で、そのうち一次処理までを技術支援した。その水は二次処理することになっているが関わっていないので不明。奈良県の指導によるところ。」と述べています(下線は当会による)。この会議における京都府畜産課の一連の発言は、村田養豚場には本来あるべき二次処理施設が未だ存在しておらず、汚水が「適正に処理」されているとは言い難い状態が続いている、ということを示唆するものです。おそらく「二次処理」には、回分式活性汚泥法などによる浄化槽が想定されていると考えられますから、京都府畜産課の言う「二段階方式」とは、上述の「メジャーな方法」そのものなのでしょう。
なお砂防ダムより下流の赤田川では、2017年ごろと異なり、2018年4月以降は、環境基準値を大きく超える水質汚濁がほとんど検知されなくなっています。下図はBOD値の変化を表したグラフです。環境基準の8mg/Lと排水基準の160mg/Lに当たる横軸に太線を引きました。一方で、赤田川の奥之院付近では、2022年3月現在に至るまで、BODの排水基準(160mg/L)を、河川水が越えてしまうような、異常な水質汚濁が度々検知されています。しかし2018年から2019年の前半にかけては、浄瑠璃寺奥之院付近でも、概ね、BODが環境基準値(8mg/L)前後か、せいぜい環境基準値の2倍程度に収まっていました。残念ながらそれでも「非常に汚い」と言ってよい水質であることには変わりありませんでしたが、その頃奥之院や砂防ダムを実際に訪れた際には、2017年ごろに比べ、川に溜まったヘドロやぬめりが減り、泡立ちも少なく、見た目にも水質が改善しているように感じられました(前述の動画の後半参照)。ところが、2019年9月以降、奥之院では環境基準値を大きく超える水質汚濁が、再び何度も検知されるようになっています(2019年9月=77mg/L、2019年11月=66mg/L、2019年12月=170mg/L、2021年4月=99mg/L、2021年8月=210mg/L、2021年11月=210mg/L、2021年12月=290mg/L、2022年1月=300mg/L)。そのため2022年3月現在では、奥之院付近の赤田川は、川底一面にベージュ色のバクテリアのようなものがこびりつく状況に戻ってしまっています。今後、奥之院下流にある砂防ダムが満砂となった場合、奥之院付近の汚濁状況のまま、河川水が下流に流れくだる恐れがあります。赤田川の水質については今後も注視し続ける必要があります。
繰り返しになりますが、先にも述べたように、村田養豚場の新しい排水処理がどのようなもので、どの程度赤田川の水質改善に寄与しているのかは、下流地域に全く伝えられていません。これでは今後、より水質が改善していくのか、それとも以前浄化槽が設置された時と同様、しばらくすると元の木阿弥に戻ってしまうのか、下流地域の農業者や、赤田川の水質汚濁を懸念する人々が、心配に思うのは当然のことと言えます。村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、今後、木津川市による立ち入り調査を快く受け入れるとともに、自らすすんで、木津川市に排水設備に関する詳細な情報を伝えるべきです。そうすれば、木津川市も、下流地域に対して、赤田川の水質改善見通しに関し具体的な説明ができるようになり、もし新しい排水設備が赤田川の水質改善に十分なものであるなら、それは下流地域の理解と安心につながることでしょう。
ちなみに、奈良県畜産課は、2020年4月に、赤田川の現状について、次のような見解を述べています。
- 木津川市
- 「下流域住民は水の現状を見て、『本当にこの水で基準内か?』と不信を持っている。」
- 奈良県
- 「それは仕方がないのではないか。他の事業場でも同じである。」
少なくとも奈良県下の養豚場では、どこも同じような状況にあるということのようです。
FACT.5
奈良を代表する
ブランド豚
村田養豚場(村田畜産/村田商店)の生産する「郷Pork(郷ポーク)」は、奈良県および奈良市のみならず、奈良のタウン情報誌や有名レストランからも支持される、奈良を代表するブランド豚です。
木津川市や周辺住民から村田養豚場の迷惑行為や不法行為に関して、さまざまな申し入れがある中、奈良市は村田養豚場の生産する「郷Pork」を、奈良のブランド豚として積極的に宣伝しています。下写真は奈良市役所奈良ブランド推進課の外壁に貼られた「郷Pork(郷ポーク)」のポスターです。
2016年3月に奈良市観光センターで開かれた「第23回奈良まちなか市場 SAKE×HOME 奈良の地酒とふるさと納税物産展」でも、村田養豚場の「郷Pork」が奈良のブランド豚として誇らしげに売られていました。また奈良市は「ふるさと納税」の記念品に「奈良が誇る、流通量の少ない希少なブランド豚」として「郷Pork(郷ポーク)」を採用しています。
大阪市も、2015年7月10日、村田養豚場に対し、優良食肉出荷者に対する感謝の意を込めて、市長感謝状を授与しています。
なお、大阪市に対し、木津川市議会で長年問題となっている農場と知った上で村田養豚場に感謝状を送ったのか問い合わせたところ、「大阪市として他の地方公共団体が管轄する内容について回答をすることができません」との回答を得ました。
- タイトル
- 平成27年12月23日付けでいただいたご意見の回答について
- 日時
- 2016年1月6日午後4時19分
- 発信者
- 大阪市中央卸売市場南港市場
****** 様
平素は大阪市政にご協力いただき誠にありがとうございます。
このたび、平成27年12月23日付けでご意見をいただいた件ですが、大阪市として他の地方公共団体が管轄する内容について回答をすることができませんのでご理解いただきますようお願い申し上げます。
今後とも大阪市政に対しまして、一層のご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
【本件に関するご質問・お問い合わせ先】
大阪市中央卸売市場南港市場
(担当:小島 電話番号:06-6675-2010)
また、村田養豚場は、農林水産省生産局畜産部飼料課がまとめた「各地域でのエコフィードの取組事例(PDF)」に奈良の事例として掲載されています(No.15)。事例として農林水産省に上げたのは近畿農政局です。
こちらについても村田養豚場の実態を知った上で事例に含めているのか問い合わせました。その回答がこちらです。エコフィードの利用は重要なので、他のことは関知しないということのようです。
- タイトル
- エコフィードの取り組み事例で紹介されている村田商店に関するご質問の回答
- 日時
- 2016年4月14日午後0時2分
- 発信者
- 近畿農政局
当局からの返信が大変遅くなりまして、申し訳ございませんでした。
家畜を飼養する際の衛生管理のため、家畜伝染病予防法第12条の3により定めた、飼養衛生管理基準の遵守につきましては、都道府県が家畜の所有者に対して指導及び助言をすることになっており、当局としては、奈良県畜産課(家畜保健衛生所を所管)に対して、丁寧な対応をとっていただけるよう、お願いしております。また、農林水産省消費・安全局動物衛生課からも、奈良県畜産課に対して助言を行っております。
一方、食品残さ等を原料に製造されるエコフィードの利用については、輸入に大きく依存している家畜用の飼料の代替となり、飼料自給率を向上させ、安定的な畜産経営を実現させるものであることから、当局としては推進しております。この推進活動の一環として、当局HPにおいて、近畿管内における特徴的なエコフィードの取組事例として4事業者の取組について紹介させていただいています。
エコフィードの利用については、資源の有効利用、食品製造業者における処理費用の低減、畜産農家側における飼料費の低減等のメリットもあり重要な取組でありますので、このような取組について何とぞご理解いただきますようお願いいたします。
このメールアドレスは回答専用です。
本メールに対しての返信にはお答えできませんのでご了承ください。
以上のように、奈良県も奈良市も農林水産省も、村田養豚場(村田畜産/村田商店)を、問題があるどころか、優良農場だと評価しています。
さらに、行政だけでなく奈良のホテルやレストランも「郷Pork(郷ポーク)」を高く評価しています。中でも奈良を代表するホテル「奈良ホテル」は、県庁食堂と同時期にいち早く「郷Pork(郷ポーク)」を採用しました。「Main Dining 三笠」のシェフ杉谷光弘氏は、新聞などの取材でも「郷Pork(郷ポーク)」に好意的なコメントを寄せています。奈良ホテルの「Main Dining 三笠」では、2016年6月現在も、村田養豚場が生産する「郷Pork(郷ポーク)」を、奈良ブランド豚としてメニューに加えています。
また奈良の地域情報誌「ぱーぷる」も、2016年1月、タウン情報全国ネットワークによる「地元編集者が選ぶ各県の旨い肉を読者プレゼント」企画に、奈良の旨い肉として「郷Pork(郷ポーク)」を推薦しています。
奈良の自然豊かな村里で育まれた 口あたりの優しい絶品ブランド豚
奈良の自然豊かな村郷で育てられた、ブランド豚「郷ポーク」。飼料は食品関連会社の協力のもと、野菜・果物・麺などを利用し、60年前から循環農法に取り組んでいる。肉の赤身は柔らかく旨味がありジューシー、脂の溶ける温度は人肌と同じで口当たりが優しく噛むと肉汁がじゅわりと広がり、素材の生命感あふれる豊かな味わい。
そこで「郷Pork(郷ポーク)」を推薦した「ぱーぷる」の杉本さんに、その理由を伺いました。
地元編集者が選ぶ各県の旨い肉というコーナーに掲載する際に「郷ポーク」と「大和肉 鶏」どちらかがいいのではないかという案が出ました。編集部内で話し合い「郷ポーク」は奈良のブランド豚と呼ばれていること。そして今、様々なお店で使用されており、私たちも実際においしいと感じたお肉でもありましたので「郷ポーク」がいいのではないかという結論に至りました。
奈良において、「郷Pork」は「大和肉鶏」と肩を並べる、奈良が誇るブランド畜産物だと認められていることがわかります。下写真は、近鉄奈良駅近くのレストランに掲げられていたポスターです。
こうした高評価を受け、奈良市の生涯学習推進団体「奈良ひとまち大学」は、2014年6月に「奈良ブランド、郷ポークの挑戦 ~若き3代目が挑む、畜産とは?~」と銘打ち、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の娘さんを「奈良ひとまち大学」の講師として招いて、「授業」を開催しています。ちなみに、「奈良ひとまち大学」のブログ「人と同じものを食べる豚?! ~その2~」では、犬の放し飼いが常態化している村田養豚場の異様な状況がそのまま報告されています。
FACT.6
何も変える気がない
奈良県と奈良市
実は、私たち「村田養豚場から赤田川と周辺環境を守る有志の会」は、2016年1月から3月にかけ、このページの2016年版と同じような内容の手紙を方々に送りました。それで各方面より圧力があったのでしょうか。2016年3月ごろから村田養豚場では、放し飼いにされていた犬が、狭い囲いの中に押し込められるようになりました。
小屋の二階にたくさんの犬が押し込められています。階段の途中に柵があり、降りられないようになっています。
白丸印で示したにわか作りの囲いの中にたくさんの犬が押し込められています。
小屋の間に板を渡しただけの作りで、いつでも取り外せるようになっています。
奈良市の認定市道である里道上に多数のドラム缶が放置されています。現在も公道の占拠は続いています。
ただ、見ての通り、このときは、ベニア板で作られたにわか作りの囲いの中や、建物の二階に犬を多数押し込めているのが実態でした。当時から私たちは、このような飼い方が長続きするとはとても思えませんでしたが、後述の通り、事実長続きしませんでした。村田養豚場は、一日でも早く敷地境界を確定して、敷地を囲う板塀や柵を作り、明確に敷地と市道とを区分するべきと考えます。
ところが村田養豚場は、敷地と市道の境界を確定して、敷地の周りに板塀や柵を作り、柵に囲われた敷地の中でのみ犬を飼うことを、頑なに拒んできました。イノシシ除けに犬の放し飼いが必要だと主張していたのですから、イノシシ除けのために、市道の両側にある敷地をそれぞれしっかりした柵で囲えばよいと思うのですが、そうはしなかったのです。
板塀や柵で囲った敷地の中でのみ犬を放し飼いにするなら、誰も犬の放し飼いに文句を言わないというのに、村田養豚場は、なぜかそうはせず、2016年3月ごろからしばらくの間、狭いスペースに無理矢理犬を押し込めていました。不可解としか言いようがないことです。いずれほとぼりが冷めたら、元通りに放し飼いを再開するつもりとしか考えられない対応でした。そして実際、一年と持たず、2016年の秋頃には犬の多頭放し飼いが再開されてしまいました。
また、奈良県家畜保健衛生所は「今後犬の放し飼いをしないよう指導する」とは絶対に明言しません。「規模に見合った浄化槽をつけるよう指導する」ことも拒んでいます。それどころか、奈良県家畜保健衛生所は、市道を含めた敷地全体を衛生管理区域とし、通行には入場記録と消毒が必要だとする、それまでの指導方針を明確には撤回しようとしません(少なくとも当会はそのような回答を未だ受け取っていません)。
しかし実際には、木津川市の行政文書によると、2016年春ごろに市道については衛生管理区域から外されたようです。その一方、FACT.2 で触れたように、2019年には、村田養豚場と奈良県からの防疫を名目とした強い要請によって、木津川市が門扉による市道封鎖を認めてしまいました。現在市道上に設置されている3箇所の門扉は、豚熱(豚コレラ)対策として全額補助される防護柵設置事業の一環で、2019年秋頃から設置されたものです。ところがこのとき、門扉と門扉に挟まれた区間の市道において、市道と敷地の間には防護柵が設置されませんでした。申請しさえすれば、市道と敷地の間にも、全額補助を受ける形で防護柵を設置できたにも拘らず、村田養豚場はそうすることを拒み、その代わりに、防疫のためと称して、木津川市道を門扉で封鎖する必要があると強硬に主張したわけです。そしてその「身勝手」(木津署)は、奈良県の後押しもあって、結局木津川市に認められてしまいました。
2020年7月に改定された飼養衛生管理基準により、豚熱(豚コレラ)対策として、畜産農場が敷地周囲に防護柵を設置することが義務化されましたが、敷地の間にある市道を含め、防護柵で囲ってしまうようなやり方が、適切であるとは到底考えられません。しかも、門扉と門扉に挟まれた区間の市道では、市道と敷地の間に柵がなく、市道上を多数の犬が自由に徘徊し、頻繁に市道上で重機を用いた作業が行われています。こうした村田養豚場の現状は、言うまでもなく一般人の通行権を著しく侵害するものですが、それに加えて飼養衛生管理基準に照らしても、非常に問題があると考えられます。
2016年春頃は、村田養豚場は敷地の間の市道を通る通行人を、それ以前のように制止したり恫喝したりはしていませんでした。しかしそれは、奈良県家畜保健衛生所の視点から見ると、あくまでも農場のご厚意で、本来通行が制限されるべき衛生管理区域に、「伝染病を恐れながらも」(これはある市議を通じ2016年春頃に当会に対し内々に伝えられた返答案に書かれていた文言です)、特別に「通行帯」を作っていただいている、ということだったようです。しかも、奈良県家畜保健衛生所の言う「通行帯」は、柵などによって衛生管理区域と全く区別されていませんでした。前述の通り、防護柵が設置された2020年においても、その状況はまったく変わっていません。現在に至るも相変わらず公道が実質的に占拠され続けているというのが実態です。行政文書に残る記録から、2017年ごろに通行を制止された人がいたこともわかっています。
また同じ頃、赤田川北側の長尾2所有者Bさんの息子さんが、奈良側から村田養豚場の敷地の間にある道を通り、浄瑠璃寺へ抜けようとした際にも、やはり「通れない」と言われたそうです。その後、日を置いて再訪した時に、Bさんの息子だと名乗ったところ、今度は通ることができたとのことでした。このような状況ですから、この先も何かもっともらしい理由をつけることさえできれば、奈良家畜保健衛生所は、また平気で通行に際しては名前と住所を言うよう「お願い」するかもしれません。その可能性は未だ十分にありますので、将来の保証として、当会としては、奈良県から指導方針転換の言質を得ることが、どうしても必要だと考えています。
そこで当会では、2016年春頃、奈良県家畜保健衛生所に対し、村田養豚場に次の5項目の指導をするよう要望しました。しかし奈良県家畜保健衛生所は、単に現状を説明するばかりで、今後どのように指導するつもりなのか一切答えませんでした。そしてその後全く返答がありません。当会は、2021年現在も返答を待ち続けています。
- 里道の通行をいっさい妨げないよう指導すること。
- 敷地を柵で囲い、常時里道の安全な通行を確保するよう指導すること。
- 犬を放し飼いにせず、犬を飼う場合は、柵の中で飼うよう指導すること。
- 規模に応じた浄化槽を設置し、排水の水質を十二分に改善するよう指導すること。
- (必要あれば消毒等したうえで)奈良市保健所職員、木津川市職員、京都府職員の敷地への立ち入り(検査)を認めるよう指導すること。
※上記の二項目めで敷地を柵で囲うことを求めていますが、言うまでもなくこれは、里道の両側にある敷地のそれぞれを柵で囲うよう求めるものです。そうすることなしに、里道を封鎖する形で門扉を設置することは、市民の通行権を一方的に侵害していると考えます。
そこでこれを読んでいるみなさんにお願いがあります。もし奈良市や奈良県の対応がおかしいと感じたなら、ぜひ奈良県と奈良市の担当部署に電話やメールをして、なぜこんなことをしているのか聞いてみてください。その受け答えからも、きっとこの場所の真実が見えてくることでしょう。
奈良県 家畜保健衛生所 業務第一課(養豚場の指導)
電話:0743-59-1700
FAX:0743-59-1740
E-mail:kachiku-hh@office.pref.nara.lg.jp
奈良市 建設部 道路室 土木管理課(奈良市の里道の管理)
電話:0742-34-4893
E-mail:dobokuk@city.nara.lg.jp
奈良市保健所 健康医療部 保健衛生課(犬の放し飼い)
電話:0742-93-8395
FAX:0742-34-2485
E-mail:hokeneisei@city.nara.lg.jp
Twitter(問い合わせには非対応)
2017年秋に、木津川市長自ら奈良県農林部に足を運び、「適切な指導」求めて切々とお願いをしても、さらには木津川市長自らが奈良県知事と奈良市長を訪れ、協力を要請する文書を手渡しても、木津川市長がそこまでやっても、ほとんど何も解決しませんでした。しかし今後、奈良県・奈良市に、村田養豚場に対する適切な指導を求める多くの意見や通報が寄せられれば、奈良県・奈良市も動くかもしれません。どうぞご協力よろしくお願いいたします。
村田養豚場(村田畜産/村田商店)が生産する
「郷Pork(郷ポーク)」は
あらゆる意味で奈良を代表する
ブランド豚です。
更新履歴
- 2016年6月
- 本ウェブサイトを公開しました。
- 2019年9月11日
- 2016年以降の状況の変化や新しく判明した事実をふまえ、記事の内容を一部修正しました。
- 2019年10月20日
- 赤田川を撮影した動画を、2016年5月から2019年10月までの動画をまとめたものに差し替えました。それに合わせ、2016年に公開された当時のままだった、赤田川の水質に関する動画や写真について説明した文章を、現在の状況に合わせ修正しました。
- 2019年11月30日
- 2019年9月の木津川市による赤田川水質調査において、奥之院付近で環境基準値の10倍近いBODが検知されていたことが判明したため、それに合わせ水質汚濁に関する記述を変更しました。
- 2020年2月9日
- 赤田川の最新の水質検査結果を記事に反映させました。また、いくつかの記述を、より誤読を招かない表現に修正しました。
- 2020年3月12日
- 冒頭に2019年12月〜2020年3月の村田養豚場を撮影した動画を追加しました。
- 2020年3月30日
- 長尾2の土地境界を越えてコンテナなどが置かれていることを示した図を、その後の検討を反映したものに変更しました。また、いくつかの文章をより読みやすいものに修正しました。
- 2020年5月25日
- 奈良県畜産課の赤田川の現状に対する見解を追記しました。
- 村田養豚場の敷地の間にある木津川市道に三箇所の門扉が設置されたことなどを追記しました。
- 2020年6月15日
- 冒頭に2020年3月〜2020年6月の村田養豚場を撮影した動画を追加しました。
- 2020年8月26日
- 奈良県畜産課が虚偽公文書を作成したことについて追記しました。
- FACT.6 を現状に即したものに修正しました。
- 2020年12月1日
- 防護柵補助金の振り込みが、現在のところ保留されていることを追記しました。
- 2021年3月9日
- 令和2(2020)年3月26日に開かれた赤田川の水質汚濁に係る連絡調整会議で、村田養豚場の新しい汚水処理施設に関する京都府畜産課の見解について追記しました。
- 2021年6月7日
- 冒頭に2020年6月〜2021年6月の村田養豚場を撮影した動画を追加しました。
- 2021年6月13日
- 防護柵補助金が振り込まれたことと、その問題点について追記しました。
- 2021年12月1日
- 奈良県が木津川市に村田養豚場の敷地の間にある市道を通行止めにするよう求めてきたことを追記しました。
- 2021年12月27日
- 資料編に農林水産省が令和2(2020)年10月1日に作成し、令和3(2021)年10月5日一部変更した、「飼養衛生管理基準遵守指導の手引き(豚及びいのししの場合)」の抜粋を、追加しました。
- 農林水産省が令和2(2020)年10月1日に作成し、令和3(2021)年10月5日一部変更した、「飼養衛生管理基準遵守指導の手引き(豚及びいのししの場合)」の内容について、追記しました。
- 2022年2月22日
- 冒頭に2021年6月〜2022年2月の村田養豚場を撮影した動画を追加しました。
- 2022年3月4日
- 赤田川の最新の水質汚濁状況を記事に反映させました。
- 2022年5月18日
- 木津川市と木津署の、公道の封鎖を求める奈良県に対する対応を追記しました。