被告第6準備書面・証拠説明書(6)

令和元年(ワ)第338号 損害賠償等請求事件
原  告  株式会社村田商店
被  告  遠藤 千尋

被告第6準備書面

2020(令和2)年11月12日
奈良地方裁判所民事部合議1係 御中
被告訴訟代理人弁護士

第1 本準備書面の趣旨

原告は争点表の「Xの反論」欄において、これまでに主張していない新たな反論をいくつか追加している。被告は、それら新たな反論についても、再反論に相当する主張を、すでに十分提示していると考えるが、原告の反論(33)及び(34)(FACT.3)については、原告が、被告の提出した証拠に対し、誤った見解を断定的に示していることに加え、新たな証拠を提出してもいるので、本書面第2では、原告の反論(33)及び(34)に対し、簡単な反論を補充する。

本書面第3では、本件各記事が意見ないし論評である場合に、【人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものではない】ことにつき補充主張しておく。

第2 原告の反論(33)、(34)に対する反論

1 原告の反論(33)に対する反論

乙第59号証及び乙第129号証にある54枚の写真のうち、飼料等の積み下ろし作業をしていると原告が主張する、朝の8時30分から9時30分の間、あるいは、昼の12時30分から13時30分の間に撮影された写真は、7枚のみである(乙133乙134)。しかし、撮影時刻に偏りがあることは確かであるので、乙第135号証として、乙第59号証及び乙第129号証において数が少なかった時間帯の写真を、補充した。


なお、これら写真にある木津川市道は、ほぼ垂直に手前から奥へ伸びているが、乙第59号証の位置図を見るとわかるとおり、これは、これらの写真が木津川市道の当該区間を、北東方向から見下ろす形で撮影されているためである。したがって、写真中、車両等の影が落ちる方向は、午前中であれば画面右側、正午頃は右斜め手前、午後遅い時間には画面左側となる。すなわち、写真データに記録された撮影日時を確認するまでもなく、写真中の影の方向を見るだけで、これらの写真のいくつかが、原告の主張する時間帯に撮影されていないことは明らかである。

加えて、原告自身が撮影し、門扉の工事完了届に添付した写真(乙122、2頁1枚目)を見ると、やはり木津川市道上でフォークリフトが作業を行なっているようすが写っている。この写真をよく見ると、養豚場のある谷間は山影に入って日が当たっていない一方、背景の山には日が当たっているから、この写真が撮影されたのは、かなり日が傾いた夕刻である。


また、原告が行っている飼料等の積み下ろし作業は、10分程度で完了するようなものではないが、それだけでなく、原告は、飼料等の積み下ろし作業以外にも、市道脇に置かれたドラム缶を使った餌の混ぜ合わせ、ドラム缶の配置換え、木片チップとおぼしき床材の豚舎への搬入、汚れた床材の搬出等、様々な作業を、フォークリフトやミニローダーといった重機を用いて、市道上で日中断続的かつ頻繁に行っている。ホースや高圧洗浄機により、市道上でドラム缶や車両の洗浄が行われている場合もある。奈良交通の担当者が、村田養豚場付近を訪れた際、市道上を作業用の重機が往来していたこと(乙101の3)は、決して偶然ではない。


さらに言えば、すでに被告第3準備書面25頁で述べたとおり、飼養衛生管理基準上、畜産農場には、衛生管理区域内で用いられる重機が、極力公道を通らずに済むよう工夫することが求められていると考えられ、村田養豚場において、作業用重機が市道を往来する必要があるのであれば、そのこと自体、到底望ましいこととは言えない。

2 原告の反論(34)に対する反論

被告は小中学生の頃、現在村田養豚場の敷地の間を抜ける形となっている道を何度も徒歩あるいは自転車で通っているが、その際一度も養豚場関係者を見かけたことがないから、原告がこの道の年間通行者数をどのようにして把握したのか、皆目見当がつかない。


被告が浄瑠璃寺周辺の住民から聞き取ったところによれば、村田養豚場の敷地の間を抜ける道は、かつては歩行者や自転車、バイクばかりでなく、軽トラックも通っていた道であり、浄瑠璃寺付近から奈良の市街地へ出る一番の近道だったとのことである。そのことは甲第19号証を見ても明らかで、もしこの道が快適に利用できれば、浄瑠璃寺付近からまっすぐ南へ、県道33号へ出られるはずのところ、現状では岩船寺まで東へ大きく迂回するか、梅谷の方を回らなければ、浄瑠璃寺付近から奈良市街地へ向かうことができない。


実際現在でも、例えば岩船寺付近の住民に聞くと、奈良市街地へ出る際、京都側から回り込むことは滅多にないそうである。たいていの場合、岩船寺すぐ南側の県道33号に出て、東鳴川町、中ノ川町を抜け、奈良市街地へ向かうという。

原告は、東鳴川町では生活しておらず、自動車で奈良市法華寺町から村田養豚場まで通っているため、村田養豚場のあるあたりを、打ち捨てられた最果ての山奥のように考えている節があるが、木津川市の当尾側から見れば、この道は古来奈良への入り口であった。

また被告は、村田養豚場のある東鳴川町に隣接する中ノ川町出身者から、「20年ほど前、まだ山が削られる前に、子供の頃、父親といっしょに、何度か村田養豚場の横を抜けて浄瑠璃寺まで探索したが、その時にはすでに放し飼いの犬がたくさんいて怖かった」という話を聞いている。当然のことながら、徒歩で中ノ川町から浄瑠璃寺へ向かうのにも、村田養豚場の敷地の間を抜ける道が最短であり、その距離は2キロほどである。この道を使わずに、徒歩で中ノ川町から浄瑠璃寺へ向かうには、中ノ川町から加茂町西小へほぼ真北に伸びる尾根筋の里道を下り、そこからバス道を浄瑠璃寺へと登り返さなければならず、距離も3キロと少し長くなるため、気軽な父子の散歩とはいかなくなる。


言うまでもなく山間部にも暮らしがあり、徒歩によるものも含め、人々の行き来があるのであって、道の役割は観光地へのアクセスにのみ求められるものではない。


第3 本件各記事が意見ないし論評である場合に、【人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものではない】こと

意見ないし論評に関する免責要件は一般に「公正な論評の法理」といわれ、この点についての最高裁判例は次のとおりである(最3小判1997(平成9)年9月9日・判タ955号115頁、判事1618号52頁)。

「ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、右意見ないし論評の前提としている事実が主要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、右行為は違法性を欠くものというべきである・・・。そして、仮に右意見ないし論評の前提としている事実が真実であることの証明がないときにも、事実を摘示しての名誉毀損における場合と対比すると、行為者において右事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定されると解するのが相当である」としている。

もとより、本件各記事は、主観的にも客観的にも、原告ないしその代表者(実質的代表者を含む)に対し、人身攻撃に及ぶなどの記載は全く無く、意見ないし論評としての域を逸脱したものではない。

- 以上 -
令和元年(ワ)第338号 損害賠償等請求事件
原  告  株式会社村田商店
被  告  遠藤 千尋

証拠説明書(6)

2020(令和2)年11月11日
奈良地方裁判所民事部合議1係 御中
【乙第133号証】乙59に撮影時刻を追記したもの(写し)
作成日:各写真に記載
作成者:被告
立証趣旨:乙59にある38枚の写真のうち、原告が飼料等の積み下ろし作業をしていると主張する時間帯に撮影された写真は3枚のみであること。
【乙第134号証】乙129に撮影時刻を追記したもの(写し)
作成日:各写真に記載
作成者:被告
立証趣旨:乙129にある16枚の写真のうち、原告が飼料等の積み下ろし作業をしていると主張する時間帯に撮影された写真は4枚のみであること。
【乙第135号証】市道上での作業(追加写真)(写し)
作成日:各写真に記載
作成者:被告
立証趣旨:乙59及び乙129で撮影枚数が少ない時間帯においても、市道上で重機を用いた作業が行われていたこと。