被告第10準備書面・証拠説明書(9)

令和元年(ワ)第338号 損害賠償等請求事件
原  告  株式会社村田商店
被  告  遠藤 千尋

被告第10準備書面

2021(令和3)年10月8日
奈良地方裁判所民事部合議1係 御中
被告訴訟代理人弁護士

第1 本準備書面の趣旨

原告が提出した原告第5準備書面には、2021(令和3)年9月時点の本編記事に対する原告の「評価」として、原告の新たな主張が含まれている。そこで、以下のとおり、それら原告の新たな主張について、被告の反論を述べる。

第2 原告の新たな主張に対する反論

1 2021(令和3)年9月版FACT.1に対する評価について

(1) 被告は、2016(平成28)年6月に本件記事をインターネット上に公開して以降2019(令和1)年9月まで、本件記事記載の事実に大きな変化がなかったため、記事を一切変更していない。しかし、原告が本件土地1を購入したことで、本件記事記載の事実が大きく変化したため、2019(令和1)年9月、被告は本件記事を、状況の変化に合わせ一部変更し、新たな記述や資料を書き加えた。またその後も、原告が本件土地2に越境する形で防護柵を設置するなど、本件記事記載の事実に関わる状況は度々変化した。そのため、2019(令和1)年9月以降、被告は、状況の変化を反映させる形で、本件記事を適宜更新している。

被告は、これまでに主張してきたとおり(被告第9準備書面、第2、1、(1)、①及び被告第9準備書面、第2、1、(2)の主張リスト)、原告による山林掘削を、不法行為あるいは山林侵奪と論評することは表現の自由の範疇であり、全く名誉毀損には当たらないと考える。しかし、本件記事を変更するにあたり、原告第1準備書面等で原告が被告の「不法」という評価を特に問題視していることに配慮し、「不法」という被告の評価に基づく表現を、「無断」という事実の範囲の表現に一部変更した。なお被告は、原告第1準備書面より前に、原告から、どの記述を削除してほしいといった個別具体的な要望を伝えられたことはないが、もとより被告は、本件記事の趣旨が保たれる範囲であれば、原告に対し、一定程度、表現上の配慮をすることにやぶさかではない。

(2) カ、キ、サの変更については、根拠を明示したものである。

即ち、本件記事の掲載当時は被告が当該裁判の判決文を目にすることは事実上不可能であったが、カについては、原告から当該裁判の判決文が証拠として提出されたため、読者が本件記事からリンクをたどり、仮名化処理をした判決文を参照できるよう記述を変更した。原告はカの修正後文章に含めていないが、実際には、修正後文章に「ぜひ判決の全文をお読みください(一審判決・控訴審判決)。」という一文が続いており、「一審判決・控訴審判決」の部分にそれぞれ判決文へのリンクが設定されている。

2 2021(令和3)年9月版FACT.2に対する評価について

(1) 現在も原告による犬の放し飼いは続いているものの、その後の保健所による指導や犬の捕獲により、現在では50匹以上の犬が放し飼いとなっているような状況は見られなくなっている。そのため被告は、アに「一時は」と追記した。

(2) オについては、甲第2号証13頁に「フォロワー」や「プロフィールを見る」といった文字が見えることからわかる通り、初めからこの写真は Instagram からの引用で、本来は甲第22号証21頁同様の内容がその引用に含まれていた。甲第22号証21頁にある写真やテキストが甲第2号証に見当たらないのは、原告が本件記事を印刷した際、何らかの印刷設定により省略されてしまったか、原告が証拠提出の際1頁失くしてしまったかのいずれかの事情によるものと考えられる。すなわち、原告が指摘する引用は変更により追加されたものではなく、本件記事公開当時から本件記事に含まれていたものである。

(3) サにおいて、被告が当初、証言者が被告自身であることを伏せていたのは、原告に恫喝されて身の危険を感じた経験から、被告は、原告に対しては、なるべく自分自身の身元を明かしたくないと考えていたためである。しかし、原告が被告の身元を特定し訴訟を提起した現在、被告にとり、証言者が被告本人であることを伏せる意味はなくなった。

3 2021(令和3)年9月版FACT.3に対する評価について

(1) エの変更については、少しでも誤読の余地をなくすためのものである。被告は、本件記事の前後の文脈から、この「常に」を「恒常的に」と解釈することはおよそあり得ないと考えるが、原告が準備書面において「恒常的に」と誤読していることが窺えたため、「常に」を「日中頻繁に」と変更した。

(2) キについては、本件記事中、被告は「占用」という言葉を、一般的な意味、すなわち「独占して用いること。占有して使用すること。(精選版 日本国語大辞典)」という意味で用いたが、道路法第32条にいう「占用」との混同を避けるためこの言葉を削除した。ところで原告は、2019(令和1)年春ごろから豚熱対策として市道に門扉を設置することを認めるよう木津川市に求め、実際に2019(令和1)年10月には木津川市から「道路占用許可」を得て市道上に門扉を設置した。被告は、このことを本件記事に追記するにあたり、「道路占用許可」という言葉に引きずられて、一般的意味で用いた「占用」という言葉も、法律用語として解釈されてしまう恐れがあると考え、キの記述からこの言葉を削除した。

(3) オの変更は、原告が2019(令和1)年8月末に、本件土地1を購入したことに対応するものである。なお甲第22号証14〜15頁に削除した理由がわかる記述がある。また、赤田川北側の土地のうち、本件土地2に「村田養豚場のコンテナや檻、トラックなどが許可なく置かれ」ていることについては、甲第22号証12頁に記載がある。

4 2021(令和3)年9月版FACT.4に対する評価について

(1) キの記述にある「特に日暮れごろ臭く」なる現象は、2017(平成29)年末ごろ以降、それほど頻繁には起きていない。このことは、木津川市の赤田川水質調査によっても、裏付けられている(乙19)。そのため、キについては、2016(平成28)年から2017(平成29)年にかけての出来事として、過去形の記述に変更した。その際、地域でキのように言われていたことを強調する記述に変更したが、被告に、原告が指摘するような意図はない。

以上
令和元年(ワ)第338号 損害賠償等請求事件
原  告  株式会社村田商店
被  告  遠藤 千尋

証拠説明書(9)

2021(令和3)年10月13日
奈良地方裁判所民事部合議1係 御中
【乙第145号証】平成20年(2008)の航空写真(写し)
作成日:H20(2008).5.15
作成者:国土地理院
立証趣旨:2008年5月15日に撮影された本件土地1乃至3の航空写真。
【乙第146号証】令和3年(2021)の航空写真(写し)
作成日:R3(2021).3ごろ
作成者:Google
立証趣旨:2008年5月15日に撮影された本件土地1乃至3の航空写真。