乙第3号証

御返答

冠省 「奈良ブランド豚肉「郷Pork(郷ポーク)」について知るべきこと」と題する記事(以下「本件記事」という。)に関し、貴殿が平成31年3月1日に発送した御通知書で指摘された四点について、下記の通り返答します。

1. 事実の摘示であること

以下に示す通り、本件記事の、貴殿が指摘するところの①〜④は、事実を摘示するものです。

① 奈良市東鳴川町630株式会社村田商店(以下「貴社」という。)の〈村田商店代表乙の父〉氏と奈良市東鳴川502土地の地権者との間で締結された賃貸契約は、貴殿の指摘する裁判があったことにより、完全に解消されていますので、今現在、赤田川より北の土地に貴社が設置している小屋や犬の檻などは、木津川市加茂町西小長尾2土地と奈良市東鳴川502土地の土地境界がどこにあるかに関わらず、他人地を不法に占拠するものです。したがって、貴殿の指摘はあたりません。なお、「村田養豚場から赤田川と周辺環境を守る有志の会」が、木津川市から、本件記事に付属する市有地境界確定図を本件記事から削除するよう指導された事実は存在しません。

② 貴社は現在も、貴社の敷地の間にある、奈良市あるいは木津川市の市道上で、日中頻繁に、重機を用いた作業を行っています。とりわけ奈良市東鳴川町641土地と木津川市加茂町西小長尾谷6土地に挟まれた区間では、市道上で、運搬トラックを路上に停めての食品残渣の荷下ろし、路上に多数並べられた食品残渣の入ったドラム缶をフォークリフトで持ち上げ、ミニタイヤショベルのバケットに食品残渣を注ぎ込む作業、水を使ったドラム缶や重機の洗浄など、様々な作業が、断続的に、長時間行われており、作業が行われていない間も、市道上あるいはそのすぐ近くに、常に数匹から10匹ほどの放し飼いの犬がいるため、今なお貴社の敷地の間にある市道は、安全に通行できる状況にありません。その様子は、一年以内に撮影された日付の異なる複数の写真と動画によっても確認しています。したがって貴殿の指摘はあたりません。なお、木津川市加茂町西小地区では、現在でも毎年9月に、浄瑠璃寺から赤田川近くの林の出口付近までは、市道の草刈りをして、歩行に支障がないよう道を整備していますが、その先の、貴社が平らにした土地を通る市道については、貴社が放し飼いにしている犬が多数寄ってくるため、草刈りを断念して、引き返しています。これが事実です。

③ 貴社が放し飼いにしている犬は、特に秋から翌年の初夏にかけ、数匹から10匹ほどの群れとなって、木津川市加茂町西小地区の民家近くを頻繁に徘徊しており、あまりに数が多い場合には、住民から保健所に通報されることもしばしばです。貴社が飼養する犬のうち、一部の犬は確かに囲いの中に入れられていますが、残りの犬は放し飼いにされています。貴社の敷地周辺において、年間を通じ、10匹から20匹ほどの犬が放し飼いにされている様子は、一年以内に撮影された日付の異なる複数の写真と動画によっても確認しています。したがって貴殿の指摘はあたりません。

④ 平成29年3月以降、木津川市による赤田川の水質検査で、貴社のすぐ下流にある採取地点において、環境基準値を大きく上回る水質汚濁が度々検出されいます。一方で貴社のすぐ上流にある採取地点ではそのような水質汚濁は検出されていません。両採取点の間には、貴社以外に事業所あるいは民家は存在せず、上流採取点の近くにわずかな田畑がある程度です。この区間には、山林以外を流れてくる赤田川の支流もありません。したがって、本件記事公開後に実施された水質検査によっても、赤田川の水質汚濁の原因として、貴社の排水を疑うことの合理性は、現在、よりいっそう高まっています。また、本件記事公開時において、奈良市による排水検査で、貴社の排水に何の問題もないとされていたことについては、本件記事の中で明確に触れておりますので、貴殿の指摘はあたりません。

2. 公益を目的とする記事であること

本件記事中でも述べているとおり、貴社から南へ伸びる道が県道33号と交わる地点には、奈良交通のバス停があり、その停留所名は、近年まで「浄瑠璃寺南口」とされていました。この停留所名からも、貴社の敷地の間にある、木津川市あるいは奈良市の市道が、奈良側から浄瑠璃寺へ向かう多くの観光客に長らく利用されてきたことがわかります。また、貴社から南へ伸びる道の途中で、木津川市の市道が西側の山林に入っていきますが、この道の歴史は古く、享保20年(1735)頃に出版された大和志には、中ノ川から西小田原へ抜ける道として、この道が「中川越」という名前で記録されています。さらに浄瑠璃寺の歴史を記録した古文書「浄瑠璃寺流記事」には、平治元年(1159)の十万堂棟上をはじめとして、中川寺の僧侶が度々浄瑠璃寺に出仕していた記録が残っています。すなわち、中川寺(奈良市中ノ川町にかつてあった寺院)から浄瑠璃寺へ至る道は、貴社の敷地の間を通る道(以下「中川越道」という。)以外にあり得ないことから、中川越道が遅くとも平安時代後期に存在していたことは、古文書からも明らかです。当尾地域は、奈良の喧騒を嫌い、修行の地を山岳に求めた僧らによって、その歴史と文化が育まれてきました。中川越道は、まさにそうした僧らが歩いた道であり、当尾地域の歴史と文化のルーツを体現する道と言えます。そしてこの中川越道は、名前を変えながら、弥勒信仰の聖地だった笠置山まで繋がっており、現在いわゆる「当尾の石仏の道」と呼ばれている区間には、鎌倉時代から南北朝時代に造立された石仏が道沿いに点在しています。このような歴史ある古い道を、一農場の身勝手な都合で、敷地の一部のように占用することは、到底許されないことです。まして、多数の犬が放し飼いにされ、その犬の一部が、当尾地域の観光ハイキングコースや、本来静謐であるべき浄瑠璃寺庭園(国の特別名勝)にまで現れる現在の状況は、極めて異常だと言わなければなりません。しかも関連行政機関は、貴社による犬の放し飼いを、未だやめさせられずにいます。これは行政が正常に機能していないことを示すものです。

また、赤田川の「アカ」は神仏に供える水「閼伽」に由来すると言われ、当尾地域のお年寄りは、昔の赤田川は非常に美しい清流だったと証言しています。貴社より下流の赤田川は当尾京都府歴史的自然環境保全地域に接しており、浄瑠璃寺奥之院付近は当尾磨崖仏文化財環境保全地区にも指定されています。しかしながら現在の赤田川は、とりわけ貴社のすぐ下流に位置する浄瑠璃寺奥之院付近において、ほとんど常に川の水が泡立ち、時には谷中に酷い臭いが充満するという状況にあり、かつての清流の面影はもはやなく、現状は「環境保全」からかけ離れたものとなっています。

本件記事は、上述のような、地域の持つ様々な価値が毀損され続けている現状を打開するべく公開されました。本件記事は、地域の歴史と文化を育んできた古い道を後世に伝えること、地域住民と観光客を危険に晒している犬の放し飼いをやめさせること、本来静かで清らかな山村の魅力に溢れているはずの当尾地域の環境を保全すること、そのために行政による監視と指導を正常化させること、といった、公益を目的とするものであり、公益以外の目的は一切ありません。

3. 回答

以上のことから、本件記事を削除する必要はないと考えます。ただし、本件記事で指摘している全ての問題に、貴社が、ごまかしや詭弁を用いることなく誠実に対処し、木津川市あるいは京都府による抜き打ちでの厳正な調査・検証を受け入れて、嘘偽りのない形で、本件記事で指摘している問題を全て完全に解消させたのち、その状態を将来にわたって継続することを、奈良市ならびに木津川市ならびに奈良県ならびに京都府に対し、書面をもって約束した場合に限り、本件記事を削除することにやぶさかではありません。

以上、返答いたします。

平成31年3月28日
遠藤 千尋
村田商店 代理人弁護士 殿