行政文書不開示決定処分及び行政文書部分開示決定処分に対する審査請求について(答申)
2023年8月28日 奈良市情報公開審査会の答申が出ました
情報公開審査請求に至った経緯
2007年、木津川市は京都府警の求めにより赤田川北側の土地の境界を明らかにするため、赤田川北側の木津川市道に関する市有土地境界確定図を作成し、その際市道隣接地の土地所有者が示した土地の境界も同確定図に確定線で書き込みました。しかし、2018年8月と11月、木津川市は村田養豚場(村田商店/村田畜産)の要求に応じる形で、手続きに誤りがあったことを理由に、同確定図から木津川市と奈良市の市境にあたる土地境界の確定線及び確定点を、2度にわたり削除しました。木津川市としてはその後市境を元の位置のまま再確定させることを予定していましたが、奈良市の協力が得られず再確定作業は全く進みませんでした。そして再確定作業が停滞するうちに、2019年8月末に村田養豚場(村田商店/村田畜産)が赤田川北側の市境に接する奈良市側の土地を買い取り、市境にあたる土地境界は市有土地境界確定図から削除されて未確定になったとして、2020年1月、2007年に木津川市が作成した市有土地境界確定図に記載された土地境界を越える位置に養豚場の防護柵を設置しました。このことは、2021年9月に木津川市側隣接地の土地所有者らが、境界確定、所有権確認、妨害排除、損害賠償を求めて村田養豚場(村田商店/村田畜産)を提訴した理由の一つともなりました。こうして市境の再確定は結局宙に浮くこととなりました。市境に接する土地の新しい所有者となった村田養豚場(村田商店/村田畜産)が、元の位置で市境を再確定することを拒否したからです。現在は木津川市も奈良市も、市境の確定は、当事者による裁判の結果に従うほかないということで一致しています。一連の出来事については、「FACT.1 絶え間ない土地境界トラブル」でくわしく触れていますので、ぜひご覧ください。
この間、奈良市は木津川市に市境にあたる土地境界の削除を求めるばかりで、市境の再確定に必要な事前調整には全く協力しませんでした。しかし市境に接する奈良側の土地の元々の所有者は、2007年に木津川市が作成した市有土地境界確定図に記載された土地境界に合意しており、もし奈良市が市境の削除から間をおかず市境を再確定できるよう木津川市に協力していた場合、元々の土地所有者は、2007年に木津川市が確定した位置で市境を再確定することに何の異論もなかったと考えられます。そして奈良市も関与した上で市境が迅速に再確定していれば、村田養豚場(村田商店/村田畜産)がその再確定された市境を越えて防護柵を設置することは極めて困難だったことでしょう。つまり、この間の奈良市の振る舞いは、村田養豚場(村田商店/村田畜産)が市境に接する土地を購入した後、土地境界について紛争を起こせるよう不当に協力したものとも評価され得るものです。
そこで、当会代表が2019年5月と6月に、奈良市に対し2018年1月以降の関連行政文書を開示するよう請求したところ、2018年3月に村田養豚場(村田商店/村田畜産)が奈良市に送ったファックス4枚(収受日時を示す文書や供覧したことを示す文書はなし)と、2018年8月に奈良市が木津川市に送った、村田養豚場の要求をそのまま伝えるファックス1枚(なぜか2枚目はなし)、それに木津川市が奈良市に提供した市有土地境界確定図(収受日不明)しか開示されず、関連行政文書はそれら以外に存在しないとされました。木津川市側には奈良市との協議に関する報告書がいくつもある一方、奈良市側には上司の決裁印のある文書は一枚もなく、ファックス数枚と図面1枚しかないというのです。奈良市が木津川市に送った、木津川市に市有土地境界確定図という重要な書類の変更を求めるファックスにさえ、行政文書上は上司の決裁を得た形跡がありません。また、そのファックスの送り主でもある奈良市土木管理課の仙波氏は、行政文書開示時に当会代表と面談した際、村田養豚場(村田商店/村田畜産)に赤田川北側の市境に接する土地を購入する意思があることを知っていたと明言しました。
市民の財産権に深く関わり、隣接市とたびたび協議している案件で、奈良市の意思決定過程がわかる行政文書が一切作られていないことはあまりにも異様です。そのため当会代表は2022年7月に奈良市情報公開審査会に対し、情報公開審査を請求しました。2023年3月1日の情報公開審査会では、この審査請求に関して、当会代表による口頭での意見陳述と、奈良市土木管理課担当者による口頭での説明などが行われました。
審査会の答申について
木津川市とたびたび協議している案件で、奈良市の意思決定過程がわかる行政文書が何一つ存在しないことは極めて不自然です。奈良市が木津川市に伝えたことに関し、上司による決裁を行政文書で確かめられないとすれば、奈良市の意思決定過程は無責任極まりない状態にあると言わなければなりません。
答申では、この点につき特に「付言」として、「本件処分等の妥当性に疑義が生じたのは、処分庁における文書管理が適切であるとは必ずしもいえない部分があったことによるものである。行政文書の開示制度が有効に機能し、条例の趣旨の沿った適正な制度運用が行われるためには、適切な文書管理が前提となる」と指摘して、「処分庁におかれてはこの点に留意し、適切な文書管理に務めること」を求めています。審査会の結論そのものは、後から追加開示されたファックス文書の二枚目を除き、文書不存在決定が妥当であったとするものでしたが、「付言」として適切な文書管理を求める意見がついたことを当会としては高く評価します。この答申は実質的に、奈良市土木管理課の文書管理が不適切であったことを認めるものだと言えるでしょう。今後、奈良市管理課が、審査会の「付言」を重く受け止め、適切な文書管理に務めるよう望みます。
なお下記答申は、奈良市情報公開審査会のウェブサイトで公開されているものです。