裁判編

ISSUE.4
赤田川下流の
水質汚濁

目次

本件記事では、赤田川下流の水質汚濁についても記載されており、その原因が村田養豚場からの排水にある可能性があるという内容を掲載している。

村田養豚場には、奈良市及び木津川市から、その排水について立入検査が入ったことも何度かあるが、その中で、排水が規制値に違反しているという結果が出たことはなく、具体的な指摘を受け、排水に関する是正を求められたことはない。

本件記事においても、村田養豚場への立入検査では基準値を満たしているとの結果が出ている旨の記載はあり、当会代表としても、村田養豚場の排水に問題がないことを認識していることは明らかである。にもかかわらず、赤田川の水質汚濁について主に言及する FACT 4 も含め、本件記事全体の構成として、村田養豚場の違法行為を行政が放置しているという体裁になっており、村田養豚場の排水については現状問題がないということが伝わるものではない。

さらに、本件記事 FACT 6 の中で、「排水の水質を十二分に改善するよう指導すること」という奈良県及び奈良市への要望が挙げられており、このことからも、本件記事の中で村田養豚場の排水に問題があるという事実が伝えられているとしか考えられない。

したがって、本件記事は、根拠なく村田養豚場の排水に問題があり、赤田川の水質汚濁を引き起こしているという内容を伝えるものであり、真実を記載しているとは到底いえない。

1)木津川市は赤田川の水質汚濁を「府県境を跨ぐ公害」と捉えている。

赤田川水質汚濁に係る主な経緯及び今後の対策

赤田川水質汚濁に係る主な経緯及び今後の対策

赤田川の水質汚濁は合併前の加茂町時代から懸案事項となっており、地元三区長から加茂町長への要望など平成14(2002)年ごろから記録があるという。加茂町は住民からの要望を受け、平成15(2003)年ごろから、その対策に乗り出している。河川の状況から、当初より村田養豚場が赤田川の水質汚濁源となっていることが疑われており、加茂町と京都府は村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対し立ち入り調査を受け入れるよう求めていたが、平成15年3月、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は京都府側の立ち入りを拒否している(乙8の2資料・乙9の1)。

そこで平成16(2004)年以降、加茂町と町村合併後の木津川市は、年4回、赤田川で水質検査を実施するようになった。合併後の木津川市は、平成21(2009)年10月、京都府に問題解決に向けた関係行政機関連絡会の設置を依頼し、翌月には「赤田川上流域の環境問題等に係る連絡調整会議」が開かれた。この連絡調整会議は、平成22(2010)年3月にも開かれ、以降平成23(2011)年3月にかけ、木津川市と京都府は奈良県側と協議を重ねて、一定の解決を見ている(乙9の1)。

しかしその後も、赤田川の水質状況は悪く、木津川市には地元住民から度々悪臭や浮遊物の流出など苦情が寄せられていた(乙9の1)。

そして平成28(2016)年12月26日、木津川市による赤田川の水質検査で、著しい水質汚濁が検出(高田で BODが30mg/L、CODが26mg/L)された。これを受け木津川市は、水質検査の頻度を年4回から月1回以上に増やしたが、その後も異常な数値が検出され続けたため、平成29(2017)年4月10日、木津川市と京都府山城南保健所は、水質検査を依頼しているエヌエス環境株式会社と、赤田川の水質汚濁について協議を行なった。エヌエス環境株式会社は、提案書において次のように述べた(乙8の1)。

特に糞便生大腸菌が10,000個/mlを超過した状態は、し尿レベルの汚染であり、他の病原菌に汚染が心配される。一般河川、また農業用水として衛生的に心配。

平成29年4月11日-赤田川の水質問題について

平成29(2017)年4月14日には、木津川市が京都府山城南保健所とともに、京都府山城南農業改良普及センターを訪れ助言を求めている。以下のとおり京都府山城南農業改良普及センターの見解は厳しいものであった(乙8の2乙9の2

現在の水質が続けば、水稲・ナス等への生育への影響が懸念される。

平成29年4月14日-赤田川の水質問題について

その10日後の平成29(2017)年4月24日、木津川市長が市町村会議で京都府庁を訪れた際、木津川市長が京都府の協力を求めて、京都府環境部長に手渡した木津川市市民部作成の資料には次のように書かれている。「府県境を跨ぐ公害」という表現には、木津川市の強い危機感が反映されていると言える(乙9の2

  • 昨年末から、一級河川赤田川の水質汚濁(有機物汚濁)が進行しています。
  • 悪臭などの生活環境への影響と共に、農繁期を控えて流域の農業被害が憂慮される状況です(複数の農業用利水点で、国基準値の4倍を超過する汚濁)。
  • 当尾京都府歴史的自然環境保全地域、砂防堰堤で、著しい汚濁が見られます。
  • 汚染源は、赤田川上流の奈良県(奈良市)域にある可能性があります。
    ➡本市でも対策を進めておりますが、府県境を跨ぐ公害問題であり、府民・市民の生活環境と財産を守るため、特段のご配慮・ご支援をお願いするものです。

平成29年4月24日-市長・府庁訪問用資料1

平成29年4月24日-市長・府庁訪問用資料2

2)木津川市の赤田川水質汚濁状況調査では、汚濁源が村田養豚場付近にあると結論づけている。

平成29(2017)年5月30日、木津川市は、調査業務を委託したエヌエス環境株式会社、京都府環境管理課、山城南保健所、奈良市保健所に加え、地元代表者ともに、赤田川水質汚濁状況調査を実施している。この調査では、砂防堰堤から上流へ向けて100mごとに底質のサンプルを採取しつつ、この区間に沢や支流の流入がないかについても確認された(乙10)。

現地調査の報告書では、以下のように、村田養豚場を境に河川の状況が変化する様子が報告された。こうした河川の状況は、当会代表が川の上から観察して感じていた印象(本件記事)と一致している。

  • 養豚場直下では、川底に大量の食品残渣が見られ、川底の泥から強烈な悪臭が発生していた。
  • 赤田川本流への養豚場からの排水路を過ぎると、川底の食品残渣が見られなくなり、底質が黒く変色していることもなくなった。
  • 養豚場を過ぎると、水の濁りはましになり魚影も見られた。

平成29年5月30日-赤田川水質汚濁状況調査の実施について/養豚場直下では、川底に大量の食品残渣が見られ、川底の泥から強烈な悪臭が発生していた。赤田川本流への養豚場からの排水路を過ぎると、川底の食品残渣が見られなくなり、帝室が黒く変色していることもなくなった。養豚場を過ぎると、水の濁りはましになり魚影も見られた。

平成29(2017)年5月30日に行われた赤田川水質状況調査の概要は、ほどなくして下流地域も伝わり、平成29(2017)年6月23日には、京都やましろJAから木津川市長に、赤田川の水質改善を求める要望書が直接手渡された(乙11)。

京都やましろJAからの要望書

また平成29(2017)年7月21日、西小・大門・高田・観音寺・大野の流域五地区からも、赤田川の水質改善要望書が、木津川市長に、やはり手渡しする形で、提出されている(乙12)。

赤田川下流地域からの要望書

木津川市では、平成29(2017)年6月15日から9月26日にかけ、汚濁源からの流入が、恒常的・定期的ではない可能性を考慮し、赤田川の水質の連続モニタリング調査を行っている。これは赤田川の浄瑠璃寺奥の院付近において、河川水の電気伝導度(EC)を15分間隔で連続モニタリングするというもので、値の変化により流入の頻度と時間帯を把握することが期待された。ECは水中の電解質濃度を一括して推定する指標とされる(乙15)。

このEC連続モニタリング調査の中で、高頻度で夜間にピークが現れることが観察されたため、木津川市は、平成29(2017)年7月19日の19時30分から、ECメーターが設置された浄瑠璃寺奥の院前の赤田川で、一時間ごとに採水して水質を調査している。その結果、19時30分に、COD=170mg/L、BOD=830mg/L(環境基準の100倍以上)、全窒素=35mg/L、全りん=2.0mg/L、アンモニア性窒素=23mg/Lと著しい有機汚濁が検知され、その後急速にそれらの数値が低下する様子が確認された。

こうした詳細な調査と分析を経て、平成29(2017)年11月には、赤田川水質汚濁状況調査報告書の内容が固まり、平成29(2017)年11月7日、木津川市長が奈良県農林部長を訪れて赤田側の水質汚濁改善への協力を要請している。

木津川市から開示された文書はほとんどが黒塗りとなっているが、市長の発言のうち読み取れる箇所を抜き出すと以下のようになる(乙14)。

  • 平成15(2003)年頃から水質汚濁が進んできており、流域市民から苦情や相談を受けるに至っている。
  • 昨年末頃から水質汚濁が顕著になってきており、農家のみなさんは、大変困っている。何とか助けて欲しい。
  • ブランド肉を作る事業者も応援したいし、事業者をどうこうしようなど一切、思っていない。

随行した職員は、概況として以下のとおり報告している。

  • 市長は始終、水質改善に向けたお願いをされていた。
  • 水質を改善したいこと、事業者を適切に指導してほしいこと、[不開示]が主な依頼であった。

平成29年11月7日-赤田川水質汚濁改善に向けた要請-平成15年頃から水質汚濁が進んできており、流域市民から苦情や相談を受けるに至っている。昨年末頃から水質汚濁が顕著になってきており、農家のみなさんは、大変困っている。何とか助けて欲しい。ブランド肉を作る事業者も応援したいし、事業者を同行しようなど一切、思っていない。随行した職員は、概況として以下のとおり報告している。市長は始終、水質改善に向けたお願いをされていた。水質を改善したいこと、事業者を適切に指導してほしいこと、[不開示]が主な依頼であった。

木津川市長の「ブランド肉を生産する事業者」という言葉から、木津川市長の依頼が村田養豚場を念頭に置いたものであることは明らかである。

翌11月8日には、木津川市が奈良県と奈良市の担当部局を相次いで訪れ、赤田川水質汚濁状況調査報告書について説明しているが、とりわけ奈良市はECメーターに現れた夜間のピークについて、大きなショックを受けている(乙16の1

なお木津川市による赤田川水質汚濁状況調査報告書は、赤田川の汚濁原因について、次のように結論づけている(乙15)。

連続モニタリング調査の結果から、赤田川の水質汚濁については、「奥の院」における水質を著しく悪化させるような、高濃度かつ大量の有機汚濁成分が、人為的に、高い頻度で主に夜間に排出され、河川に流入することによって生じている可能性が高い。

4月17日の水質調査では、「奥の院」で従来見られなかった高濃度の有機汚濁が確認されたが、これは、有機汚濁成分の流入時の水質である可能性が高い。

本年度の赤田川の水質は、参考資料2のとおりだが、河川への汚濁成分の流入が短時間に集中していると考えられる今回のようなケースでは、通常の水質検査では、汚濁状況を十分把握することが困難である。

一方、底質は、河川水の影響を蓄積するため、一時的な汚濁成分の流入についても、一定捕捉することができる。汚濁源の確認調査において、底質に大きな差異が認められたのは底質⑤と底質⑥の間であり、底質⑤から下流側で底質の有機物汚濁を示す化学的酸素要求量(COD)が高い状況であった。

また、養豚場周辺の流入水に強い有機物汚濁が認められたことから、府県境に位置する養豚場付近で、高濃度かつ大量の有機汚濁成分が排出されて、赤田川の水質汚濁を引き起こしていると考えられる。

なお、事業所敷地内の状況が不明であることから、付近の事業所の汚水処理等の調査が必要である。

この結論を受け、平成29(2017)年11月14日には、木津川市長が奈良県知事を訪れ、赤田川の水質改善に配慮を願う要請書を手渡している(乙17の1)。

平成29年11月14日-赤田川水質汚濁状況調査の結果について(奈良県知事宛)

当初木津川市はこの要請書を京都府知事と連名で発出することを希望していたが、このことは木津川市の問題解決にかける強い意志を感じさせる(乙17の2)。

平成29年7月14日-今後の赤田川の水質汚濁への対応に係る木津川市の意向について

また、検討中の文案では「奈良市と木津川市の境界付近で河川の状況が大きく悪化していることが確認され、その付近にある事業所が上流側の汚濁源の一つとなっている可能性が示唆されています」としており、最終案よりも踏み込んだ表現となっていた(乙17の3)。

要請書案(奈良県知事宛)

次いで平成29年11月22日には、木津川市長が奈良市長を訪問して、奈良県知事宛と同内容の要請書を手渡している(乙18の1)。

平成29年11月22日-赤田川水質汚濁状況調査の結果について(奈良市長宛)

この要請文においても、途中の文案は最終案と少し異なっており、「調査・対応をされた結果につきましては、木津川市及び京都府に提供いただけますようお願いいたします」という、具体的な要請が含まれていた(乙18の2)。奈良市側から十分な情報が入ってこないことに対する木津川市の苛立ちが滲み出ていると言えよう。

要請書案(奈良市長宛)

3)村田養豚場(村田畜産/村田商店)はECメーターの測定値を踏まえて、排水設備の改修を行った。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は平成29(2017)年11月8日、木津川市から赤田川水質汚濁状況調査報告の説明を受けた奈良県から、夜間のECメーターのピークを含め、同報告書の概要を聞かされている(乙16の2

その後木津川市は平成29(2017)年12月8日から22日にかけても、再びEC連続モニタリング調査を行なったが、その結果を奈良県畜産課に以下のとおり説明している(乙19)。

府県境の奈良側ではECにほとんど変化が見られなかったが、京都側では明確な変化があり、この間でEC上昇を引き起こす物質が河川に流入していることが確認できた。また、昼間(10時頃・14時頃)にピークが見られるようになり、原因行為が変化していると考えられる。

年が明けて、平成30(2018)年1月16日、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は奈良県を通じ、木津川市にEC連続モニタリング調査結果の詳細を問い合わせている。木津川市は1月23日、これに回答して村田養豚場(村田畜産/村田商店)に詳細なデータを提供している(乙20)。

そして翌月の平成30(2018)年2月16日、奈良県から木津川市に以下のような連絡が入るのである(乙21)。

先日提供を受けたECの測定値等を踏まえて、養豚場と話し合っており、養豚場は[不開示]の費用をかけて排水処理設備の改修を行う意向を示している。

ところが翌月の3月5日、奈良県から村田養豚場(村田畜産/村田商店)の意向が変わったと新たな連絡が入る(乙22)。

(養豚場が)過去から主張されている、木津川市の市道管理、水路管理、境界確定等の改善を改めて求められ、これらが整理されなければ、予定されていた排水対策は取りやめるという意向であった。

この時の報告書には木津川市職員による興味深い手書きの書き込みが見られる(乙22)。

平成30年3月5日-村田養豚場の排水対策に関する奈良県畜産課からの連絡-02

  • 木津川市は原因者を村田養豚場とは特定していない。奈良県が特定したのなら、市に報告があったのか?
  • 里道・水路については市にもルールがある。
  • 堰堤についてはそもそも原因者が回復すべきもの。
  • 指導管理責任を有している主体が会議室を確保すべきで理解に苦しむ。

正直なところ、当会代表の目から見ても、奈良県の非協力的な態度には目に余るものがある。木津川市長自らが要請に訪れていても、このような対応にしかならないということが、全く信じられない。木津川市側担当者の溜まりに溜まった不満は相当なものであったに違いない。

それはさておき、ここでは書き込み「ア」には注目しなければならない。「ア」からは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が赤田川水質汚濁の原因者であるということを前提として、奈良県が何ごとかを発言していたことがうかがえる。2月16日の連絡と合わせ考えると、ECの測定値等から、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が排水設備の改修を検討せざるを得ない状況に追い込まれ、そのことを奈良県としては、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が水質汚濁の原因者であることを認めたと、受け取っていたのであろう。

しかし、この時点では「里道・水路については市にもルールがある」と書き込んだ木津川市だが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の強硬な姿勢に押され、やがて排水設備改修と交換で、水路工事と境界修正を行う方向に舵を切って行くのである。

平成30年3月29日、どうしても年度内に開きたいという村田養豚場(村田畜産/村田商店)の強い要望で、奈良県、奈良市、京都府、木津川市、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による合同会議が開かれたが、その席上でも、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は終始高圧的な態度で木津川市に接しており、「今後、どういった対策をしてもらえるのか」などと迫っている。また、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は村田養豚場からの排水が、水質汚濁防止法上、規制対象とならない排水量であることから、「村田養豚場は、基準を満たしており、BOD、CODは基準に含まれていない。河川の色で汚濁していると言えるのか。塩水を流してやろうか」と言い放っている。これなどは、とても「奈良を代表する」ブランド豚を生産する農場の発言とは思われない(乙24)。

境界修正についてはすでに検討したところであるが、木津川市が平成30年4月から10月にかけて村田養豚場の西側の水路で行った工事(以下、「本件水路工事」という。)も、極めて異常なものであった。

本件水路工事の出来高報告書(乙66)によると、本件水路工事は随意契約によるいわゆる単価契約で、当初こそ70万2000円の見積もりであったが、第一回変更で318万6000円もの費用が追加され、総額で388万8000円が支出されている。工事を元請負業者と異なる業者が施工している点も不審である。しかも施工体制台帳が提出されていないうえ、出来高報告書には日報が一切含まれておらず、この工事は違法な一括下請負に該当する可能性が高い。

なお本件水路工事は、実際には大和郡山市の〈建設業者H〉が施工しているが、〈建設業者H〉がウェブサイト上で協力業者として紹介している〈配管業者I〉は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の自宅兼会社事務所と同じ住所を連絡先としており(乙67)、〈建設業者H〉と村田養豚場(村田畜産/村田商店)は近しい関係にあることがうかがわれる。加えて〈建設業者H〉は、本件水路工事と並行して、村田養豚場の汚水槽の撤去なども行なっている。〈建設業者H〉は、のちに村田養豚場の新しい排水設備のほか、村田養豚場敷地内の様々な工事を施工している。(乙68

以上のように、本件水路工事についても、境界修正同様、木津川市が相当な無理を重ねて実現したものであることがうかがえるが、本件水路工事が完了しても、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による排水設備改修は、すぐには始まらなかった。

それどころか村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、平成31(2019)年3月から4月にかけ、奈良県を通じてさかんに、木津川市に対し追加の水路工事を求めている。

  1. 平成31(2019)年3月19日、赤田川の水質汚濁にかかる連絡調整会議で京都府が以下のように発言(乙62)。

    • 木津川市の水路の工事が完了していないため、汚水処理装置の工事ができない状況だと聞いている。
    • 水質を改善するためには汚水処理装置の工事が重要であると考えているが、周りの工事が進まなければできない。
  2. 平成31(2019)年3月27日、木津川市農政課との協議において奈良県畜産課長桜木が以下のように発言(乙63)。

    • こちらが、村田から聞いているのは、河川工事は完了しているが応急工事とのことで、村田が設置する施設は河川に隣接することから、将来沈下する恐れがあることから本工事を望んでいるとのことであった。
  3. 平成31(2019)年4月17日、奈良県畜産課を訪問した木津川市に奈良県畜産課長溝杭が以下のように発言(乙64)。

    • 隣接する国有水路について、木津川の改修では、基礎が抉られる恐れがあり、安心して曝気槽を作ることができないという認識でいる。
    • 奈良県が現地を見たところ水路の管が波打っていた。また、大雨の際には水路の上流の桝からオーバーフローした水が豚舎に流入する可能性があると考える。
    • 養豚場が安心して水処理施設の工事ができるようにするための環境整備が重要だと考えている。
  4. 平成31(2019)年4月26日、奈良県畜産課長溝杭が木津川市を訪れ以下のように発言(乙65)。

    • 先般、市が施工した水路であるが、既存は開渠であるが管渠になっている。山側からの雨水処理はどうなるのか。暗渠の上に土砂が堆積しているが、どこが除去するのか。

しかし結局、特に支障なく、平成31(2019)年4月末ごろから新しい排水設備を作る工事が始まり、6月中旬ごろには完成した排水設備が稼働し始めている(乙68)。前述のとおり、新しい排水設備の工事を施工したのは、木津川市の水路工事を施工したのと同じ、大和郡山市の〈建設業者H〉であった。

4) 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は木津川市の立ち入り調査を拒否し続けている。

  1. 平成15(2003)年3月19日、加茂町が奈良市に対して村田養豚場への合同立ち入り調査を申しいれたが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は京都府側行政の立ち入りを拒否した(乙9の1)。

  2. 平成28(2016)12月、奈良市保健所から立ち入りを申し入れ(乙9の1)。

    • ➡平成29(2017)年1月4日、奈良県畜産課、京都府畜産課、木津川市市民部長、管理課長、全て管理職の同行を求められる。加えて、インフルエンザ予防接種証明書および防疫服の着用、万一、インフルエンザ被害が出た場合の補償を求められる。
    • ➡日程指定を受けるも、状況が整わず立ち入りを中止することになる。

    (村田養豚場(村田畜産/村田商店)は実現困難な条件を突きつけて実質的に立ち入りを拒否した。)

  3. 平成29(2017)年8月18日、京都府と木津川市が奈良県を通じ村田養豚場への立ち入り調査を申し入れたところ、村田養豚場(村田畜産/村田商店)はこれを拒否した。村田養豚場(村田畜産/村田商店)は京都府が求めた調査への回答も拒否した(乙13)。

  4. 平成30(2018)年3月29日、奈良県、奈良市、京都府、木津川市、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による合同会議が開かれたが、その席上、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は次のように発言している(乙24)。

    • なぜ木津川市は、養豚場内に立ち入りができないと思うか。
    • 行政は、法律・条例に基づいて行動すべきで、木津川市の職員には勉強しようとする努力が見られないからである。民間より知識や経験が欠けている。
    • 京都府は、よく勉強しているし、時と場合によっては対処法が違うと理解できる人たちだから入ってもらっている。
    • 村田養豚場としては、会社としてやるべきことはやっていくつもりで、奈良県や京都府に協力も求めていく。しかし、その内容については、一切、木津川市に伝えないよう言っている。知りたかったら木津川市も変わってほしい。

実際、木津川市は、村田養豚場の排水設備について、現在でも奈良県や京都府からもその詳細を一切知らされておらず、実態をほとんど把握していない。そのため、地元説明会でも説明に苦慮している様子が見られる(乙69)。

5) 新しい排水設備には疑問が多い。

村田養豚場の新しい排水設備は、平成31(2019)年4月末ごろから工事が始まり、6月上旬に完成したとみられる。この排水設備は、1.5m四方の縦穴の隣に、6m×1.5m×深さ1mの長方形の槽と7.5m×1.5m×深さ0.1mの長方形の浅い槽が並んだ構造をしている。最終貯留槽の容量は10㎥強ほどでしかない。

新しい排水設備

外から観察する限り、この排水設備には次の機能があるように見える(乙70)。

  1. 豚舎から出た汚水を集める縦穴①から汚水がポンプで汲み上げられ、まず二つの振動篩②を通り、固形分を槽の外側のコンクリート台の中に落とす。
  2. その後、汚水は浅い槽③を流れ、汚水の上に浮かんだ油分や浮遊物を槽に渡した板でせき止め、液体のみ板の下をくぐらせ次の貯留槽④に流す。
  3. 貯留槽④に貯められた汚水は、ポンプで再び見えない位置にある縦穴⑤に戻され、汚水が何度もこの工程を繰り返すことで固形分を分離する。

新しい排水設備拡大写真

したがって、この排水設備の主な機能は、固体・油分と液体の分離で、尿分離機とも呼ばれるものと思われる。しかし、村田養豚場の排水設備をめぐるこれまでの議論では、これとは異なる排水処理設備が取りざたされていた。

平成30(2018)年7月5日、奈良県畜産課及び家畜保健衛生所が、村田養豚場の汚水処理について相談するため、京都府畜産センターを訪問しているが、その際「回分槽」という汚水処理設備を紹介されている(乙71の1乙71の2)。

  1. 仮に回分槽を設置するのであれば、60㎥程度のものが必要。(50㎥程度で250〜300万円程度、100㎥で500万円程度。)
  2. 回分槽では、曝気後に静置を行うことにより一定脱窒素を行なっている。(水濁法のアンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物の基準が将来的に下がっていくと考えられるため、窒素除去は必要。)
  3. 一度、畜産センターに現地を確認してもらう必要がある(7月下旬か8月)。

また、平成31(2019)年4月17日、奈良県畜産課を訪問した木津川市に、奈良県畜産課長溝杭が「隣接する国有水路について、木津川の改修では、基礎が抉られる恐れがあり、安心して曝気槽を作ることができないという認識でいる」と述べており、この時点では回分槽のような曝気槽が作られると想定されていた可能性がある(乙64)。

ところが、実際に完成した排水設備は容量が小さく、曝気槽らしきものが見当たらない。また、汚水槽の外に落ちた固形分からは汚い水がにじみ出ており、これが汚水槽の周りに敷かれたコンクリートの上を流れて広がっているが、この場所は豚の運搬トラックが後ろづけする、豚の搬出入口ともなっている。したがって村田養豚場の新しい排水設備は、仮に村田養豚場で豚コレラ等の患畜が発生した場合、運搬トラックのタイヤに容易に病原体が付着し得る配置と構造となっている(乙70)。

そもそも新しい排水設備は、その作りが極めて粗雑で、これが本当に京都府畜産センターの指導を受けて作られたものなのか、にわかに信じがたい。その上、この排水設備は完成した後にも何度か配管が変わっている。(乙72

本件訴状によれば、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は排水の水質に自信を持っていることがうかがえる。そうであるならば、相手が木津川市であれどこであれ、立ち入り調査を認めたとして何も支障はないはずである。今後村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、木津川市の立ち入り調査を快く受け入れるとともに、自らすすんで、木津川市に排水設備に関する詳細な情報を伝えるべきであろう。そうすれば、木津川市も、下流地域に対して、赤田川の水質改善見通しに関し具体的な説明ができるようになり、もし新しい排水設備が赤田川の水質改善に十分なものであるなら、それは下流地域の理解と安心につながるはずである。

以上のとおり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、木津川市の赤田川水質汚濁状況調査報告に基づき、奈良県・奈良市から水質の改善を指導されている。また、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は木津川市の立ち入り調査を拒否し続けている。したがって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は当たらない。

1 争点とすべき本件記事内容

  1. 村田養豚場(村田畜産/村田商店)下流の水質汚濁が・・・問題視されてきました。しかし、奈良県と奈良市は・・・不法行為や迷惑行為をすべて然認し・・・」(甲2、1頁本文6行目〜9行目)
  2. 「赤田川下流の水質汚濁」(甲2、47頁FACT.4表題)。
  3. 村田養豚場(村田畜産/村田商店)からの排水が、下流に落しい水質汚濁汚濁をもたらしている可能性について・・・議論されています」(甲2、47 頁頭書3行目〜6行目)。
  4. 「赤田川の地権者・・・養豚場の少し下流の山林の持ち主が、しいたけ栽培のため川からポンプで・・・ぼやいていた」(甲2、50頁5行目〜7行目)。
  5. 「砂防ダムより上流であるためか・・・茶色いヘドロがたまっています。撮影した人によると、・・・一面白い粉をふいていたとのことです。撮影した人 は、帰宅後熱が出ました」(甲2、50頁9行目〜51頁2行目)。
  6. 「こうした水質汚濁の原因として・・・長年議論されている場所のひとつが、 ・・・村田養豚場(村田畜産/村田商店)です」(甲2、51頁3行目〜5行目)。
  7. 「村田養豚場より下流に限って・・・どぶ川のような臭いが酷いという現実 があります。最近は・・・日暮れごろ臭くなります。谷の上の尾根道まで・・ ・ほどです。外にいる人が少なくなる時間を見計らって汚水が流されているのかもしれません」(甲2、51頁6行目〜10行目)。

以上、ア乃至キで当会代表が記事に記載していることを纏めると以下のとおりである。

== 村田養豚場(村田畜産/村田商店)の排水が赤田川下流の水質汚濁の原因ではないかということが長年議論されている。その影響は、農作物にも被害を及ぼし、また、付近で写真を撮っていた人の身体に害を及ぼすほどである。水質汚濁は養豚場の下流に限って発生しており、夕方に特に酷いことから、人が少ない時間を見計らって村田養豚場(村田畜産/村田商店)が汚水を流しているものと考えられる。==

本件記事1頁目の記載(前記ア.)からすると、当会代表は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が養豚場から排出する排水が赤田川の水質汚濁の原因となっている可能性があるということを、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による「不法行為や迷惑行為」という言葉でひとくくりにし、あたかも村田養豚場(村田畜産/村田商店)が水質汚濁の原因を作出しており、それが迷惑行為ひいては不法行為に該当するかのような記述をしている。

確かに、本件記事においては、「下流に著しい水質汚濁をもたらしている可能性」というような表現を用いてはいるが、養豚場の下流だけに汚濁が見られるということや、養豚場下流で写真を撮った人物が発熱したというような記述をし、読み手に対して、明らかに村田養豚場が水質汚濁の原因であり、農作物、人体に実害が出ているという印象を与える記載内容となっている。

2 村田養豚場(村田畜産/村田商店)が赤田川水質汚濁の原因者として記載されていることについて

(1)水質汚濁防止法について
  1. 本件記事の中で、特にFACT.4において頻繁に用いられている「汚濁」という表現であるが、これは、直接的に本件配事中には出てはいないが、水質汚濁防止法にいう「汚濁」を示しているものと考えられる。「汚濁」という言葉は、水質汚濁防止法に特有の表現であり、その原因となっている可能性が高いということをインターネットにおいてことさらに記載されることは、一般人をして、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、法律に反する営業活助をしているのではないかという強烈なインパクトを与えるものであり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の名誉を毀損する程度は大きいといえる。

  2. まず以下では、水質汚濁防止法において、村田養豚場に課される排水基準について論じる。

    村田養豚場は、水質汚濁防止法上の「特定事業場」に該当し、かつ、1日当たりの平均排水量が50㎥未満の施設であることから、水質汚濁防止法上の排水基準としては、甲14の別添2表1記載のものとなる。この項目の中で、村田養豚場のような養豚場施設については、一般的に、「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」という項目が排水検査の対象となる(他の項目に係る物質についてはそもそも取扱いをしていないため)。その排水基準値は一律排水基準は100mg/Lであるが、畜産農業に係る暫定排水基準は500mg/Lである(甲14甲15の4頁)。

    排水量50㎥以上の事業場と、50㎥未満の事業場とで、異なる排水基準が設けられている趣旨は、排水量の多寡により、有害物質の希釈の程度には差異があり、河川等に流入する物質の絶対量にも大きな差があると考えられることから、生活環境への影響の大きさの違いという観点で、排水量の多い事業場と少ない事業場では異なる基準が設けられているものだと考えられる。

    なお、村田商店が経営する村田養豚場は、1日の排水量は8㎥程度である。

(2)村田養豚場の排水検査結果

赤田川において水質汚濁が問題視されたのは、平成28年12月頃であるが(被告第1準備書面49頁23行目〜27行目)、平成28年3月23日に実施された、奈良市による村田養豚場の排水検査によれば、村田養豚場は、「アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物及び硝酸化合物」において、1.4〜6.0mg/Lの値に収まっているものであり(甲16)、畜産農業に適用される暫定排水基準500mg/lを満たしていることはもとより、より厳しい一律排水医準100mg/Lと比較しても、大きく基準値を下回っており、法律上の基準を問題なく満たしている。

水質汚濁防止法上の排水基準を満たしている以上、養豚場からの排水が、赤田川の水質汚濁の原因であると論難されるいわれはないと言わざるを得ない。

したがって、村田養豚場が、赤田川の水質汚濁の原因を作出しているかのような印象を与える本件記事は、虚偽の事実を記載しているものといえる。

(3)村田養豚場に対する行政の対応

当会代表は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、木津川市の赤田川水質汚濁状況調査報告に基づき、奈良県・奈良市から水質の改善を指導されている旨主張する。

しかし、前記のとおり村田養豚場は、法律上の排水規制に違反したことはない。

水質汚濁防止法を所管しているのは奈良市であるが、村田養豚場の排水処理に関し、行政法上の指導を行ったことはない。木津川市からの赤田川の水質汚濁に関する報告を受けて、排水を扱う事業場として、水質の改善に努力するよう要請するレベルでの話をしたことはあるが、それは当然、赤田川の水質汚濁の原因が村田養豚場にあることを前提とするものではない。

そして、奈良県は、水質汚濁防止法ではなく、家畜排せつ物法を所管しており、村田養豚場における排せつ物処理について監督を行っている。村田養豚場は、排せつ物処理における管理基準についても、前記排水基準と同様違反したことはなく、奈良県としては、不定期的に養豚場へ立入り検査を行い、排せつ物の処理の観点から、排水をより良くするための助言を行っているに過ぎず、これも村田養豚場が赤田川の水質汚濁の原因であることを前提とするものではない。

木津川市も、赤田川の上流に汚濁源があるとはしつつも、村田養豚場が原因であると特定しての報告・指導を行ったことはない。

そして、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、奈良県や奈良市からの要請や助言を受け、後述のとおり、豚に与えるエサの改良や、浄化設備の設置といった対策を講じており、努力をしてきた。

3 村田養豚場の不法行為責任について

(1)私権の侵害について
  1. 村田養豚場が、法律上の排水基準を満たしており、汚濁原因として論難される理由のないことは前述のとおりである。しかし、仮に、村田接豚場からの排水が 原因で、地域住民への健康被害や、農作物の栽培不良等私権の侵害が発生しているのだとすれば、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の営業権と地域住民の法的権利利益が衝突し、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に公法上の違法がないとしても、私法上の責任が生じる余地はある。

  2. しかし、村田養豚場(村田畜産/村田商店)訴訟代理人が、令和元年11月1日、木津川市まち美化推進課に聞き取り調査を行ったところ、現状において、地域住民や農作物に対し、実害が 出ているとの報告が、山城広域振興局山城南農業改良普及センターにされたことはなく、具体的な権利利益侵害状況は発生していないものである。

  3. そもそも具体的侵害の発生していない状況において、村田養豚場を名指しで赤田川の水質汚濁の原因であるかのように記載し、その影響で、養豚場下流のしい たけ栽培農家に被害が出ているということや、養豚場下流で写真を撮っていた人物が発熱した等、あたかも村田養豚場が農作物や人の生命身体を侵害していると 読めるような記事をインターネット上に掲載することは、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対する名誉毀損に当たるといわざるを得ない。

(2)因果関係について

村田養豚場(村田畜産/村田商店)に不法行為責任があるかのような記載がされている本件記事において、前述のようにそもそも具体的権利利益侵害が発生していないということに加え、仮に何らかの私権の侵害が発生していたとしても、村田養豚場の排水との因果関係が問題となる。

  1. 本件記事にも若干の指摘があるが、村田養豚場よりもさらに上流には、閉鎖された産業廃棄物処分場が存在している。赤田川には、同処分場から汚水が流れ込むということや、埋め立てられている産業廃棄物が汚染の原因となっているという可能性は大いに考えられる。

  2. そして、村田養豚場下流には、砂防ダムが位置している。同ダムは、平成26年頃までは、地域住民の農業用水を取水するため、開閉が行われていたが、平成 27年以降は、開閉設備の故障等の理由により、開閉されなくなった。

    以降、同ダムに溜まった水が流れる機会がなくなり、ダム内の水が、微生物が分解できない栄養量となり、水が腐るといった状況が発生している。

    このことは、赤田川における有機汚濁成分の増加の原因となっている可能性があるにも関わらず、本件記事においては、このことへの言及はされておらず、前述のとおり、村田養豚場が原因であるとの印象を与える構成となっている。

(3)小括

以上からしても、村田義隊場を経営する村田養豚場(村田畜産/村田商店)に不法行為責任等が成立する余地はないにもかかわらず、本件記事では、村田養豚場が赤田川の水質汚濁の原因であり、そのために、周辺地域の農作物や人体に実害が出ているかのような記載がされているものであり、虚偽の事実を適示するものであるといえる。

4 まとめ

以上のとおり、当会代表がインターネット上に記載した本件記事FACT.4は、村田養豚場下流の水質汚濁が長年問題視されてきたということを、「不法行為や迷惑行為」としてひとくくりにし、村田養豚場の下流に限って臭いが酷いということや、養豚場下流の山林の持ち主のしいたけ栽培に悪影響が出ている、養豚場下流で写真を撮った人は発熱した、夕方は特に臭いが酷く、人が少なくなる時間を見計らって汚水が流されているのではないか等記載し、あたかも、村田商店が経営する村田養豚場が原因となって赤田川の水質汚濁が発生しており、周辺住民や農作物に具体的権利侵害をもたらしているかのような印象を与えるものであって、虚偽の事実の適示により、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の名誉を毀損するものである。

5 村田養豚場(村田畜産/村田商店)の排水に対する取組み

  1. なお、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、排水に関する法的基準を遵守した上で、適正な営業権の行使として養豚場経営をしてきたことはこれまでの主張のとおりであるが、排水を扱う事業場として、村田養豚場(村田畜産/村田商店)もその排水を少しでも良いものにすべく、自身の営業権との関係で調整をしつつ、努力をしてきた。

  2. 家畜のエサの改善

    村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、家畜のエサとして食品残渣等を原料に製造されるエコフィードを採用していたが、その中で、アクや色が出やすく、浮きやすいエサがあるということを認職していた。そこで、平成29年夏か秋頃、最終排水への影響も考慮し、そのようなエサの仕入取引を辞め、より排水への影響の小さいエサを利用するように取り組んできた。

  3. 浄化設備の設置

    村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、排水基準は満たしているという状況の中で、より排水を良いものとするため、養豚場に浄化設備を設置した。令和元年10月の時点で、ほぼ完成形となっており、最終調整の段階である。

    この浄化設備については、村田養豚場(村田畜産/村田商店)代表者〈村田商店代表乙〉が、浄化設備を設置するに当たり、設置費用、維持管理等の観点からどのような浄化設備にすべきか検討していたところ、知人の農家より、「京都に技術を持った人がいる。」という話を聞き、実際にその知人の浄化設備を自身の目で確認した上で、費用や維持管理のことについても話を聞き、村田養豚場としても、その浄化設備を設置しようという考えに至った。

    そして、平成29年9月25日付けで、奈良県を通じて、京都府農林水産技術センター畜産センターに汚水処理技術の指導協力を依頼(甲17)し、派遣された技術者が図面等を作成した上で、現在、ほぼ完成という状況に至った。

  4. このように、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、排水をより良いものとするため、自身の営業権との関係でギリギリの調整をしながら、「弥勒の道プロジェクト」の要求に応じ、排水改良のための努力を行ってきた。

    そのような中で、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の営業権、財産権を一切顧慮することなく、村田養豚場(村田畜産/村田商店)を攻撃し続ける当会代表の対応は、非常に苛烈なものであるといわざるを得ない。

1 「汚濁」と言う言葉は水質汚濁防止法特有の表現ではない

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、「汚濁」という言葉が水質汚濁防止法特有のものであり、本件記事の中で用いられている「汚濁」と言う表現は、水質汚濁防止法上の「汚濁」を示すと主張するが、言うまでもなく、「汚濁」という言葉は水質汚濁防止法特有のものではない。むしろ「汚濁」と言う言葉を用いずに「汚濁」を表現することの方が難しいと言える。

また法令の分野に限っても、「汚濁」と言う言葉は水質汚濁防止法特有のものではない。例えば木津川市は、様々な報告書で「赤田川水質汚濁」と言う表現を用いているが、木津川市が念頭においているのは、水質汚濁防止法ではなく、環境基本法(平成5年法律第91号)第16条による公共用水域の水質汚濁に係る環境上の条件につき人の健康を保護し及び生活環境(同法第2条第3項で規定するものをいう。以下同じ。)を保全するうえで維持することが望ましい基準(以下「環境基準」という。)である。

このことは、木津川市が、平成29(2017)年4月10日、京都府山城南保健所とともに、エヌエス環境株式会社と赤田川の水質汚濁について協議(乙8の1)した際、エヌエス環境株式会社から、赤田川の大腸菌群数について、「し尿レベルの汚染」と指摘されたにも拘わらず、その後木津川市が、赤田川の大腸菌群数について、ほとんど注意を払っていないことからもうかがえる。農業用水とみなして赤田川に適用される河川類型Dの環境基準には、大腸菌群数の基準値が設定されていないため、赤田川の大腸菌群数に関しては、環境基準に照らした評価が行えないためである。

また、公共用水域である赤田川の、その中でも当尾京都府歴史的自然環境保全地域に指定された区間で、環境基準を超える著しい水質汚濁がたびたびみられる(乙9の2)ことは、そのこと自体が地域にとって被害であると言わなければならない。当該地域には、永仁四年の瑠璃不動磨崖仏がある浄瑠璃寺奥之院へのハイキングコースもあり、赤田川の水質汚濁とそれに起因する悪臭は、地域の観光価値をも毀損している。

2 村田養豚場は、下流で問題視されている有機汚濁物質に関して、排水規制を受けていない。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、第3、(1)のイ乃至(2)で、村田養豚場が水質汚濁防止法上の排水規制に違反したことはないと主張するが、赤田川下流で問題視されているのは、生物化学的酸素要求量(BOD)あるいは化学的酸素要求量(COD)として現れる有機汚濁である。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、第3、(1)のイで明らかにしていることは、村田養豚場は、1日当たりの平均排水量が50㎥未満とされているので、甲14の別添2表1記載の有害物質に係る排水基準の適用は受けても、生物化学的酸素要求量(BOD)など、甲14の別添2表2記載の生活環境項目に係る排水基準については、何の規制も受けていないという事実である。

したがって、村田養豚場が水質汚濁防止法上の排水基準を満たしていることは、村田養豚場が下流で問題となっている有機汚濁の原因者ではないことを何ら保証しない。

3 村田養豚場が、下流で問題視されている有機汚濁の原因であると疑われていることは事実である。

(1) 平成28(2016)年6月の本件記事公開時点

当会代表は、本件記事公開前に、木津川市議会において、赤田川の水質汚濁問題が長年議論されており、村田養豚場がその原因と疑われていることを、インターネット上に公開された木津川市議会議事録で確認していた(乙6)。

また、平成28(2016)年までに行われた民間の調査においても、赤田川の化学的酸素要求量(COD)が木津川水系の中で突出していることが指摘されており、その原因として「上流域にある産廃の山と養豚場」が挙げられていた(乙89ー4頁)。

加えて、当会代表は実際に赤田川の奥之院付近などを訪れ、その水質汚濁状況を何度も確認していた。本件記事には、本件記事の内容を根拠づけるものとして、当会代表が撮影した赤田川の写真や動画が複数掲載された。

(2) 平成28(2016)年6月の本件記事公開以降

本件記事公開以降の、赤田川の水質汚濁状況を巡る動きについては、当会代表第1準備書面、第2、9で詳しく述べたので、そちらを参照されたい。

4 私権の侵害について

本件記事に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による水質汚濁防止法違反を指摘する記述はない。また、赤田川下流で具体的な農業被害が発生していると指摘している箇所もない。村田養豚場からすぐ下流の浄瑠璃寺奥之院近辺では、著しい水質汚濁が頻繁に観察されているので、当会代表はそのことを象徴する出来事をいくつか紹介したに過ぎない。

しかし、もし赤田川下流で具体的な農業被害が出た場合は、下流域農業者から原因者に対し、公害訴訟などが提起されることが大いにあり得る。実際、木津川市は、平成29(2017)年春頃には、赤田川の水質汚濁が深刻化したことを受けて、公害調停あるいは公害訴訟についても検討しており、京都府に対して、公害紛争処理を念頭に、農業被害が出た場合の農業者への支援を要請している(乙9の2)。

5 因果関係について

(1) 赤田川上流の松谷処分場が、赤田川の汚濁源である可能性は、木津川市赤田川水質汚濁状況調査報告書によって否定されている。(乙15

ア 平成29(2017)年4月10日の段階で、木津川市から赤田川の水質調査を委託されていたエヌエス環境株式会社は、「降雨量が増えれば河川流量は増加するが、汚濁物質は薄められる傾向」にあることを指摘し、赤田川の水質汚濁源について、「雨に伴って濁水のように流出する発生源ではない」と結論づけている(乙8)。すなわち、産廃処分場などから雨に伴って流出するような汚濁物質が、赤田川水質汚濁の原因となっているとは考えられない。

イ 赤田川水質汚濁状況調査では、村田養豚場のすぐ上流の調査地点「底質⑤」から採取した底質の分析結果と、松谷処分場跡より上流の調査地点「奈良上流」から採取した底質の分析結果に、ほとんど差が認められていない(乙15ー12頁、調査地点は乙15ー6頁)。したがって、松谷処分場跡が赤田川水質汚濁の原因とは考えられない。

調査地点

ウ 連続モニタリング調査によって、夜間、短時間に有機汚濁成分が赤田川に大量に流入していることが確認されたが、これは自然現象としては説明が困難であり、赤田川の水質汚濁は人為的なものであると考えられている(乙15ー22頁)。

(2) 奥之院下流の砂防ダムが、赤田川の二次的な水質悪化の原因となっている可能性が考えられるようになったのは、平成29(2017)年5月30日に行われた木津川市による赤田川水質汚濁状況調査の後である(乙62)。それまで、奥之院下流の砂防ダムは、いわば天然の沈殿槽として、有機汚濁成分が下流に流れるのを、ある程度食い止めていると考えられていた。したがって、平成28(2016)年6月公開の本件記事に、砂防ダムが二次汚濁源となっている可能性について記載がないことは、当然と言える。

なお、砂防ダムの取水設備の開閉が行われなくなったのは、開閉機構が故障したことに加え、開放時に汚濁した底質を含んだ黒い水が下流に流れ込むためである(乙15ー25頁)。

また、砂防ダムが二次的な水質悪化の原因となる理由は、ガスとともにスカム状の物質が噴き上がり、それらが水面を浮遊して、下流に流れ下ることなどによる(乙15ー20頁)。この現象は、赤田川上流から大量の有機汚濁成分が流れ込むことによって生じていると考えられ、それゆえに砂防ダムは、「二次的な」水質悪化の原因とされている。

しかし現在では、砂防ダムにおいて、スカム状物質の噴き上がりは少なくなっており、砂防ダムが二次汚濁源となっているとは考えられていない(乙62ー2頁)。理由は不明であるものの、上流からの有機汚濁成分の流入が減ったことにより、砂防ダムの汚濁状況が改善したことなどが考えられる。

ただし、今後、上流から有機汚濁成分の大量流入が繰り返された場合は、砂防ダムがいよいよ深刻な二次汚濁源となる可能性はある。

なお砂防ダム改修について、京都府山城南土木事務所は、河川法に基づき、有機汚濁成分流入の原因者に現状復旧させること、あるいは、原因者に代わって木津川市が現状復旧を行い、原因者にその費用を請求することが可能であると結論づけている(乙90)。

したがって、今後砂防ダムの改修が不可避となれば、一次汚濁の原因者特定について、それまで以上に踏み込んだ判断がなされ、もし原因者が特定された場合は、その原因者が、砂防ダム改修工事を負担させられる可能性がある。

以上の通り、一時、砂防ダムが水質悪化の原因となっていたことは、上流の汚濁源から大量の有機汚濁成分が赤田川に流れ込んでいたことの結果であって、砂防ダムが単独で赤田川の水質を悪化させていたわけではない。

(3) 木津川市赤田川水質汚濁状況調査報告書は「府県境に位置する養豚場付近が、赤田川の水質汚濁源となっていると考えられる」としている(乙15ー20頁)。以下、赤田川の汚濁原因に関する結論部分を引用する。

「 連続モニタリング調査の結果から、赤田川の水質汚濁については、「奥の院」における水質を著しく悪化させるような、高濃度かつ大量の有機汚濁成分が、人為的に、高い頻度で主に夜間に排出され、河川に流入することによって生じている可能性が高い。

4月17日の水質調査では、「奥の院」で従来見られなかった高濃度の有機汚濁が確認されたが、これは、有機汚濁成分の流入時の水質である可能性が高い。

本年度の赤田川の水質は、【参考資料2】のとおりだが、河川への汚濁成分の流入が短時間に集中していると考えられる今回のようなケースでは、通常の水質検査では、汚濁状況を十分把握することが困難である。

一方、底質は、河川水の影響を蓄積するため、一時的な汚濁成分の流入についても、一定捕捉することができる。汚濁源の確認調査において、底質に大きな差異が認められたのは底質⑤と底質⑥の間であり、底質⑤から下流側で底質の有機物汚濁を示す化学的酸素要求量(COD)が高い状況であった。

また、養豚場周辺の流入水に強い有機物汚濁が認められたことから、府県境に位置する養豚場付近で、高濃度かつ大量の有機汚濁成分が排出されて、赤田川の水質汚濁を引き起こしていると考えられる。

なお、事業所敷地内の状況が不明であることから、付近の事業所の汚水処理等の調査が必要である。」(乙15ー25頁)

当会代表は平成28(2016)年6月に公開した本件記事において、赤田川水質汚濁の原因が村田養豚場であるとは断定していないが、以上の通り、平成29(2017)年11月の木津川市赤田川水質汚濁状況調査報告書では、水質汚濁源が村田養豚場付近であることまでは特定している。

6 まとめ

以上のことから、本件記事における「汚濁」と言う表現が、水質汚濁防止法上の「汚濁」を示すということを前提とした村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は、全て当を得ていない。また、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は、木津川市の水質汚濁状況調査報告をふまえていないため、すでに明らかとなっていることを無視したものである。したがって、本件記事が虚偽の事実の摘示だとする村田養豚場(村田畜産/村田商店)の指摘には根拠がない。少なくとも、当会代表には、摘示事実が真実であると信ずるについて相当の理由があった。

7 村田養豚場(村田畜産/村田商店)の排水に対する取組みについて

(1) 村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、平成29(2017)年夏か秋ごろ家畜の餌を改善したとするが、これは、平成29(2017)年5月30日に行われた、木津川市の赤田川水質汚濁状況調査で、村田養豚場直下の川底に、大量の食品残渣がみられた(乙10乙15ー7頁)ことを、木津川市から指摘されたためと考えられる。

ところで、乙31ー(1)乃至(3)で示したように、木津川市の赤田川水質汚濁状況調査より少し前、平成29(2017)年の冬から春にかけ、村田養豚場は、余剰食品残渣などを、東鳴川町502に大量に投棄している(乙31ー(1)の日付が「2018.2.16」とあるのは、「2017.2.16」の誤りであるので、訂正したい。)。

つまり、木津川市の調査で発見された赤田川川底の食品残渣は、村田養豚場が赤田川の川べりに投棄した余剰食品残渣が、雨などによって赤田川に流れ込んだ結果、川底に堆積したものと考えられる。

また、村田養豚場では、敷地の間にある木津川市道上で、フォークリフトとミニローダーを用いて餌の混ぜ合わせが行われているが、この作業時に、少なくない量の食品残渣が路上にこぼれ落ちている(乙56)。こうしてこぼれ落ちた食品残渣は、ホースの水を使って洗い流され、最終的には赤田川に流れ込んでいると考えられる。

しかし村田養豚場(村田畜産/村田商店)が餌を改善したとする、平成29(2017)年の夏か秋以降にも、食品残渣らしきものが、やはり東鳴川町502の赤田川川べりに、大量に投棄されている(乙31ー(18)乃至(24))。加えてこの間、市道上での餌の混ぜ合わせ作業についても、何かが改善されたようには思われない(乙56)。したがって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が餌を改善した後も、それまで同様、食品残渣は赤田川に流れ込み続けていたと考えられる。

以上のことから、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による餌の改善は、水質改善のための工夫というよりも、食品残渣が流出した際、それが露見することを避けるための工夫であったと解する余地もある。

(2) 村田養豚場(村田畜産/村田商店)が新しい排水設備設置の工事を開始したのは、令和元(2019)年5月ごろである(乙72ー(25))。これは村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、当会代表に対し、本件御通知書(乙1)を内容証明郵便で送付した平成31(2019)年3月1日よりもあとである。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)はこの新しい排水設備が令和元(2019)年10月の時点でほぼ完成したとするが、これは村田養豚場(村田畜産/村田商店)による本訴訟の提起よりあとであることはもちろん、当会代表が当会代表第1準備書面を提出した2019(令和元)年9月10日よりもあとである。

(3) 村田養豚場(村田畜産/村田商店)が村田養豚場の排水設備に関し、何らかの対策を取ってきたのだとしても、それが「弥勒の道プロジェクト」の要求に対応するものだとは到底考えられない。

第一、当会代表は「弥勒の道プロジェクト」として村田養豚場(村田畜産/村田商店)に何かを要求したことはない。一方、赤田川の水質汚濁に関しては、平成29(2017)年初夏ごろ、下流五地区やJA京都やましろが、水質改善を求める要望書を木津川市長に手渡している(乙11乙12)。さらにその後、平成29(2017)年11月には、木津川市による赤田川水質汚濁状況調査報告書(乙15)の内容を受け、木津川市長自ら、奈良県知事及び奈良市長を訪問して、赤田川の水質改善に関し、文書で協力を要請する事態ともなった(乙17の1乙18の1)。

それにも拘わらず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が「弥勒の道プロジェクト」の要求に応じて努力をしてきたと主張することには、問題を、村田養豚場(村田畜産/村田商店)と当会代表の関係のみに矮小化しようという、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の戦略的意図が込められているものと考える。

また村田養豚場(村田畜産/村田商店)が「村田養豚場(村田畜産/村田商店)の排水に対する取組み」として挙げたものは、いずれも本件記事が公開された後に行われたものである。

加えて、当会代表は、本件記事公開後、村田養豚場(村田畜産/村田商店)による訴訟提起を受けた後の、令和元(2019)年9月11日まで、本件記事を一切変更しておらず、また村田養豚場(村田畜産/村田商店)も、平成31(2019)年3月1日の本件御通知書送付まで、本件記事を具体的に指定して、当会代表に何かを要求したことはない。したがって「村田養豚場(村田畜産/村田商店)を攻撃し続ける当会代表の対応は、非常に苛烈なものである」とする村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張は、実態を反映していない。

そもそも、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は木津川市の立ち入り調査を拒んでいる(乙13)上、奈良県や京都府などにも、木津川市に村田養豚場に関する情報を提供しないよう求めている(乙24ー8頁)ので、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の排水に対する取組みは、木津川市にほとんど把握されておらず、当然の帰結として、木津川市による下流地域への説明でも、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の取組みの詳細はほとんど伝えられていない(乙69)。この状況で、当会代表に対し、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の取組みを理解するよう求めることには無理がある。

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、当会代表の理解を得るためではなく、赤田川下流地域の理解を得るため、木津川市による立ち入り調査を、それがいつであっても快く受け入れ、木津川市に対し、すすんで排水設備の詳細を逐一説明するべきであろう。

当会代表としても、立ち入り調査などをふまえた上で、木津川市から赤田川下流地域に対し、地域が納得するような、詳細な説明があった場合には、その説明内容を本件記事に反映させることに吝かではない。

1 名誉毀損事実

(1) 本件記事においては、村田養豚場の下流に限って、赤田川の水質汚濁が見られるということ、また、養豚場下流における住民らからの話として、しいたけ栽培のためのポンプが糞尿やゴミで詰まるといったことや、養豚場下流付近の赤田川の写真を撮影した人物がその後発熟したということ等が記載されている。

さらに、「人が少なくなる時間を見計らって汚水が流されているのかもしれません」等、村田養豚場が赤田川の水質汚濁の原因であることを前提とした記載がされているものであり、これらの内容は、「村田養豚場(村田畜産/村田商店) による不法行為や迷惑行為」(甲2、1頁本文6行目~9行目)という形で括られている。

これらの記載からすれば、本件記事は、「村田養豚場が赤田川の水質汚濁の原因者」であり、それにより、村田養豚場の下流、農業や人体への被害が出ており、 村田養豚場(村田畜産/村田商店)には「違法性がある」との認識を与えるもので、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の社会的評価を著しく低下させるものである。

(2) これに対し、当会代表は、「下流域で農作目全般に被害が及んでいるとは記述していない」、「撮影者が帰宅後熱が出たことの原因が、赤田川の水質汚濁にあるとも断定していない」、「村田養豚場(村田畜産/村田商店)が、汚水を流しているとは断定していない」等主張する。

(3) しかし、名誉毀損の判断に当たっては、当該記事の特定の文言のみよって判断されるべきではなく、記事の趣旨、目的、当該部分の前後の文脈、見出し、体裁等も考慮した上、当該記事全体から、一般読者が受ける印象及び認識に従って判断すべきである。

本件記事は、確かに、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が経営する村田養豚場が赤田川の水質汚濁源であると直接断じている部分はない。しかし、本件記事についてみるに、本件記事が全体として、「村田養豚場による不法行為や迷惑行為」として括られており、養豚場下流での農業被害、人体への害が記載され、「人が少なくなる時間を見計らって汚水が流されているのかもしれない」等記載していることからすれば、一般読者をして、村田養豚場の不法行為ないし迷惑行為によって、赤田川が汚染され、現実的に農業や人体への被害が生じていると認識させるものであることは明白であり、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の社会的評価を著しく毀損するものであるとの評価を免れない。

2 真実性

(1)村田養豚場(村田畜産/村田商店)が赤田川の水質汚濁源であるということについて

ア 当会代表は、平成29年11月の木津川市赤田川水質汚濁状況報告等(乙15)において、赤田川の水質汚濁源が村田養豚場付近であることまでは特定しているとし、本件記事の記載内容は虚偽ではない旨主張している。

イ 当会代表が指摘する木津川市赤田川水質汚濁状況報告書(乙15)は、「養豚場周辺の流入水に強い有機物汚濁が認められたことから、府県境に位置する養豚場付近で、高濃度かつ大量の有機汚濁成分が排出されて、赤田川の水質汚濁を引き起こしていると考えられる。」(25頁)との記載があるが、この記載はあくまでも赤田川の水質汚濁原因を村田養豚場に特定しているものではないことは明らかである。

また、これまで村田養豚場(村田畜産/村田商店)が繰り返し主張しているとおり、村田養豚場は、その排水検査において、水質汚濁防止法に定める排水規制に違反したことはなく、赤田川を所管する奈良市より、排水に関し、行政法上の指導を受けたことは一度もない。

ウ このような状況にあって、「村田養豚場が赤田川の水質汚濁の原因者である」という事実が真実であるとはいえない。

しかし、当会代表は、本件記事の中で、村田養豚場の少し下流における山林の持ち主の被害や、村田養豚場より下流に限って糞尿あるいはどぶ川のような臭いする、人が少なくなる時間帯を見計らって汚水が流されているのかもしれない等記載し、一般的な読み手をして、村田養豚場が赤田川水質汚濁の原因であるとの認識を与えているものであり、かかる記事内容が真実であるとはいえない。

(2)村田養豚場(村田畜産/村田商店)には違法性があるということについて

ア 村田養豚場(村田畜産/村田商店)が従前主張をしてきており、この点については、当会代表としても争いがないと考えられるが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、赤田川を所管する奈良市より、養豚場の排水について検査を受けているが、その検査の結果が、水質汚濁防止法が定める基準に違反したことはなく、行政法上の指導を受けたこともない。

イ したがって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)には、その養豚場経営に関し、公法上の違法性は全く存在していない。

ウ さらに、私法上の違法性が存在しているか否かという点についても、原告第1準備書面において主張のとおり、現状において、地域住民や農作物に対し、実害が出ているとの報告が、山城広域振興局山城南農業改良普及センターにされたことはなく、具体的な権利利益侵害状況は発生していないものである。

この点、当会代表は、「赤田川下流で具体的な農業被害が発生していると指摘している箇所もない」と主張をしており、本件記載の名誉毀損事実該当性について争っているものと考えられるが、当該記事が、「村田養豚場(村田畜産/村田商店)の違法性」を摘示するものであるとの評価がされた場合、その真実性がないということについては争いがないものと思われる。

エ したがって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に違法性があるということについても、その真実性が認められないことは明らかである。

2 相当性

(1)相当性の判断材料

当会代表は、被告第2準備書面において、本件記事内容が真実であると主張する根拠と同様の根拠をもって、「少なくとも、当会代表には、摘示事実が真実であると信ずるについて相当の理由があった」旨主張していると考えられる。

しかし、真実相当性は、当会代表が行為当時に、相当の資料に張づいて本件記事の作成を行ったか否かという点についての判断であり、「かかる相当理由の存在の有無を判断するための資料としての「事実」は、行為当時において存在することを要する」(最判平成14・1・29判時1778号49頁)ものである。

当会代表が本件記事を掲載したのは、平成28年6月であるから、この時点において存在する事実のみが、真実相当性の判断材料となるものである。

(2)本件における相当性

当会代表は、平成29年4月10日の段階で、木津川市から赤田川の水質調査を委託されていたエヌエス環境株式会社による調査結果(乙8の1)及び平成29年11月の木津川市赤田川水質汚濁状況調査報告書(乙15)を中心として、村田養豚場が赤田川の水質汚濁源である可能性についての主張をしているものと考えられるが、これらの事実は、当会代表が本件記事を掲戦した平成28年6月の時点においては、存在していないものであるといわねばならない。

したがって、本件記事掲載時において、当会代表が、「村田養豚場が赤田川下流の水質汚濁の原因者である」ということが真実であると信じるにつき相当の理由があったとは到底いえない。

当会代表が、赤田川の水質汚濁によって現実の被害が生じており、村田養豚場(村田畜産/村田商店)には違法性があると信じたことについても、当然相当性は認められない。

3 小括

以上のことからすれば、「赤田川の水質汚濁(FACT.4)」に記載された内容は、村田機豚場が赤田川の水質汚濁源であり、そのために実際の被害が生じているのであって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)には違法性がある、という虚偽事実を摘示したものであり、当会代表が、それを真実であると信じるにつき正当な理由があったともいえないため、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対する名誉毀損を構成するものである。

2 「第2 被告第2準備書面「第4 赤田川下流の水質汚濁(FACT.4)」に対する反論」に対する反論

(1) 「1 名誉毀損事実」について

本件記事の「赤田川下流の水質汚濁(FACT.4)」の構成は次のようなものである(甲2ー47〜54頁)。

  • 木津川市議会で、村田養豚場の汚水処理が不十分であることが長年強く疑われてきたことを紹介(甲2ー47頁)。

  • 村田養豚場には浄化槽が設置されていないと見られることを指摘(甲2ー47頁)。

  • 赤田川の水質汚濁状況を、写真と動画のほか、エピソードを交えて説明(甲2ー48〜50頁)。

  • 赤田川水質汚濁の原因として村田養豚場が疑われていることを改めて指摘し、上流ではそれほど水質汚濁が見られないことを説明(甲2ー51頁)。

  • 奈良市・木津川市ともに、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の排水に何の問題もないとしていることを指摘(甲2ー52頁)。

  • 村田養豚場の生産するブランド豚「郷ポーク」が、「人間の食べ残しを食べさせるエコな豚、奈良の自然豊かなむらざとで育んだブランド豚」として宣伝されていることを紹介し、「浄化槽も設置せずに、これらのうたい文句にふさわしい環境対策は可能なのでしょうか」と疑問を提起(甲2ー52〜53頁)。

  • インターネット上に公開されている記事「畜産の情報-調査・報告-2003年10月」月報国内編「養豚に切っても切れない汚水処理」(乙114)から、「放流できる処理水を得るためには浄化槽(活性汚泥処理施設)が必要である。養豚ではふんと尿を分離し、ふんはたい肥化、尿は浄化槽がメジャーな方法となっているのである」との記述を引用(甲2ー53〜54頁)。

  • 赤田川が当尾京都府歴史的自然環境保全地域に接しており、砂防ダムで作られた池の一部を含め浄瑠璃寺奥之院瑠璃不動像周辺は文化財環境保全地区に指定されていることを指摘(甲2ー54頁)。

冒頭のイと結論部分のカ・キが、対応していることからも明らかなように、「赤田川下流の水質汚濁(FACT.4)」の中核は、「村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、ブランド豚のうたい文句にふさわしい環境対策として、浄化槽を設置するべきだ」という、意見の表明にある。

確かに当会代表は、上記主張の前提として、赤田川に著しい水質汚濁が見られること、及び、その原因として村田養豚場が疑われていることについて指摘しているが、当会代表は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が赤田川の水質汚濁源であるとは断定しておらず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に違法性があるとも述べていない。

以上をまとめると、「赤田川で著しい水質汚濁が続いている中、その原因として疑われてもいるのだから、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、ブランド豚のうたい文句にふさわしい環境対策として、浄化槽を設置するべきだ」という意見の表明が、「赤田川下流の水質汚濁(FACT.4)」の趣旨である。

したがって、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の指摘はこじつけにすぎず、的外れである。

(2) 「2 真実性」について

ア 「(1)村田養豚場(村田畜産/村田商店)が赤田川の水質汚濁源であるということについて」について

(ア) 「平成29(2017)年11月の木津川市赤田川水質汚濁状況報告等(乙15)において、赤田川の水質汚濁源が村田養豚場付近であることまでは特定している」ことは、赤田川の水質汚濁源が村田養豚場であると疑われていることの妥当性を補強しこそすれ、否定するものではない。

(イ) 村田養豚場が水質汚濁防止法上の排水基準を満たしていることが、村田養豚場が下流で問題となっている有機汚濁の原因者ではないことを何ら保証しないことについては、被告第2準備書面42〜43頁で、すでに述べた。

(ウ) 当会代表は「村田養豚場が赤田川の水質汚濁の原因者である」とは断定していない。

たしかに本件記事には、「人が少なくなる時間を見計らって汚水が流されているのかもしれません」という記述があるが、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、村田養豚場が汚水を流しているとは記述していない。そして、「人が少なくなる時間を見計らって汚水が流されて」いたこと自体は、のちに木津川市が、赤田川の奥之院付近で実施した、EC連続モニタリング調査において、高い頻度で夜間に、人為的な水質汚濁が検知されたことにより、科学的に裏付けられた(乙15ー22頁)。

また、村田養豚場直下の赤田川に、強烈な悪臭を放つ泥が溜まっていることや、村田養豚場を境に赤田川の水質汚濁状況が一変することについても、木津川市が行った赤田川の踏査によって、確かめられている(乙10ー2頁)。

イ 「(2)村田養豚場(村田畜産/村田商店)には違法性があるということについて」について

(ア) 村田養豚場が水質汚濁防止法上の排水基準を満たしていることが、村田養豚場が下流で問題となっている有機汚濁の原因者ではないことを何ら保証しないことについては、被告第2準備書面42〜43頁ですでに述べた。

(イ) 村田養豚場に、水質汚濁防止法上の違法性がないことは認めるが、犬の放し飼いなど、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の養豚場経営には、公法上の違法性が少なからず存在する。

(ウ) 村田養豚場(村田畜産/村田商店)が「ウ」の第2段落で指摘するとおり、当会代表の反論については、被告第2準備書面44頁「4 私権の侵害について」ですでに述べた。

(エ) 当会代表は、本件記事の「赤田川下流の水質汚濁(FACT.4)」では、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に違法性があるとは述べていない。

(3) 「3 相当性」について

当会代表は、村田養豚場(村田畜産/村田商店)が赤田川の水質汚濁源であるとは断定しておらず、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に違法性があるとも指摘していないが、平成28(2016)年6月の時点で、当会代表が、赤田川水質汚濁の原因が、村田養豚場であると疑われていること自体について、これを真実だと信じた根拠については、被告第2準備書面43頁ですでに述べた。

また、当会代表が被告第2準備書面44〜47頁の「5 因果関係について」において、「平成29(2017)年4月10日の段階で、木津川市から赤田川の水質調査を委託されていたエヌエス環境株式会社による調査結果(乙8)及び平成29(2017)年11月の木津川市赤田川水質汚濁状況調査報告書(乙15)を中心として、村田養豚場が赤田川の水質汚濁源である可能性についての主張」をしたのは、原告第1準備書面18頁の「(2)因果関係について」を受けてのことである。

原告第1準備書面18頁の「(2)因果関係について」において、村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、平成27(2015)年以降の出来事に言及し、砂防ダムが赤田川の汚濁源である可能性を指摘している。しかしながら、被告第2準備書面45頁で述べたとおり、砂防ダムが、赤田川の二次的な水質悪化原因となっている可能性が考えられるようになったのは、木津川市による赤田川水質汚濁状況調査の後である。すなわち、少なくともこの論点に関しては、そもそも村田養豚場(村田畜産/村田商店)自身が、平成28(2016)年6月時点における事実のみに基づいて、主張を展開していない。したがって、当会代表が、村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張に反論するために、平成29(2017)年11月の木津川市赤田川水質汚濁状況調査報告書等に触れたことは、当然である。

(4) 「3 小括」について

村田養豚場(村田畜産/村田商店)の主張はいずれも曲解に基づいており、的外れである。したがって、本件記事に、村田養豚場(村田畜産/村田商店)に対する名誉毀損を構成する要素は何も存在しない。

  • 村田養豚場下流の水質汚濁が長年問題視されているという内容を記載した上で,「これら村田養豚場(村田畜産/村田商店)による不法行為や迷惑行為」と記載することが,迷惑行為ひいては不法行為に該当するかのように記述されているものであると解釈することは,至極自然なことである。
  • 少なくとも「不法行為や迷惑行為」と記載していることで,赤田川下流の水質汚濁について,村田養豚場が原因であると特定しているとしか解釈のしようがない。
  • 赤田川の水質検査において,その検査数値に異常が認められるという記載内容について,そもそも原告は争っていない。当会代表による本件記事内容において,当会代表は,村田養豚場下流での水質汚濁が問題視されているという事実の適示を超え,その責任が村田養豚場にあると一般読者をして認識させる内容が記載されている。
  • 全体として村田養豚場に対する糾弾を内容とする本件記事において,村田養豚場下流の水質汚濁,「養豚場の少し下流の山林の持ち主」の証言,「養豚場から400mほど下流」で写真撮影をした人物が,発熱したこと等を記載しているにもかかわらず,村田養豚場が原因であると断定していないとする主張には無理がある。一般の読者からすれば,「村田養豚場が原因で,その下流の河川の水質汚濁が引き起こされており,その周辺住民に実害をもたらしている」というようにしか読めない。
  • 村田養豚場に対しては,奈良市による排水検査が行われてきているが,水質汚濁防止法に定める排水規制に違反したことはない。
  • 村田養豚場は,赤田川を所管する奈良市より,その排水について,行政法上の指導を受けたことは一度もない。
  • 赤田川の水質汚濁の原因としては,村田養豚場よりも上流にある,閉鎖された廃棄物処分場または,村田養豚場下流に位置する,平成27年以降は開閉されていない砂防ダムが原因となっている可能性も十分に考えられる。
  • 本件記事内容からすれば,当会代表が,赤田川の水質汚濁の原因者が原告であり,その影響で被害が生じている,と適示していることは明らかであり,原告の違法性を指摘しているものである。
  • 本件記事内容を読んで,当会代表の主張するような「意見の表明」であると解釈することは不可能である。「外にいる人が少なくなる時間を見計らって汚水が流されている」等の記載によれば,明らかに赤田川水質汚濁における村田養豚場の有責性を適示した記事である。
  • 平成29年11月の木津川市赤田川水質汚濁状況調査報告書等に関し,原告が指摘していることは,本件記事掲載当時,「村田養豚場が赤田川の水質汚濁源である」ということを真実であると当会代表が真実につき正当な理由があったか否かの判断においては,本件記事が掲載された平成28年6月時点において存在している資料のみを根拠とすべきであるということである。
  • 養豚場下流の住民の証言として,しいたけ栽培のためのポンプが詰まるであるとか,付近で写真撮影をした人が後に発熱したというような内容を記載することは,相当程度具体的な被害が生じていることを指摘していることにほかならず,その原因が村田養豚場による水質汚濁であると適示していると解釈することが最も自然である。
  • 「水質汚濁の原因として,木津川市議会で長年議論されている場所のひとつが,奈良ブランド豚「郷Pork」を生産する村田養豚場(村田畜産/村田商店)です。」と記載したのち,「村田養豚場より下流に限って糞尿あるいはどぶ川のような臭いが酷いという現実があります。」,「外にいる人が少なくなる時間を見計らって汚水が流されているのかもしれません」と記載することは,明らかに「村田養豚場が汚水を流している」ということを適示しているものである。そうすると,本件記事において,村田養豚場が原因であると断定はしていないという当会代表の主張は不合理である。
  • 村田養豚場は,モニタリング検査の結果につき,木津川市より指摘されたが,全く心当たりはなかった。夜間には村田養豚場の従業員はすでに帰宅しており,作業は行っていない。

(5) FACT4

村田養豚場(村田畜産/村田商店)は、FACT4の記事は、赤田川の水質汚濁の原因が村田養豚場であると特定はしていないものの、一般読者の注意と読み方を基準として、記事内容を全体的にみると、村田養豚場が水質汚濁の元凶であるとの印象を抱かせるものであるから、当該記事の摘示事項は村田養豚場が赤田川の水質汚濁の原因であることであると主張する。

しかしながら、当該記事において、赤田川の水質汚濁の原因が村田養豚場からの排水であると断定している箇所はなく、むしろ、原因は特定できないこと、奈良市による水質調査の結果では村田養豚場の排水に何の問題もないことを摘示した上で、環境対策としての不十分さを指摘する内容となっているものであり、村田養豚場が水質汚濁の原因である可能性を指摘しているものの、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、その旨断定しているとの印象を抱かせるものとまでは認められない。

そして、証拠(乙68の19の12101315246989)によれば、赤田川の水質悪化は、平成14年頃から地元の区長らによって指摘され、平成16年以降、木津川市が定期的に水質調査を行う中で、村田養豚場又はその上流の産業廃棄物処理場跡地の影響が疑われ、平成19年以降、村田養豚場が水質汚濁の原因である可能性について木津川市議会で繰り返し議論されていること、平成22年以降、京都府と奈良市との間で解決に向けた協議が行われているが、終局的な解決には至らず、未だ村田養豚場が原因事業者であるとの疑いが指摘されていること、民間人が平成23年から平成27年にかけて複数回にわたって実施した水質調査の結果、赤田川流域では、汚染の指標である化学的酸素要求量(COD)の数値が高く、下流より上流の窒素量が多いことから村田養豚場の影響が指摘されたこと、平成28年12月以降、赤田川のCOD及び生物化学的酸素要求量(BOD)の数値が急速に悪化し、有機物汚濁の進行が確認されたため、平成29年5月から同年9月まで木津川市から委託を受けた調査会社が調査をしたところ、水質、底質ともに高濃度の有機汚濁が確認され、同年11月に作成した調査報告書においては、調査地点、検出数値、流水の性質、周辺の観察結果から、村田養豚場が水質汚濁原であるとの考察結果が提示されたこと、奈良県による村田養豚場の調査では調査項目の基準を満たしており、水質汚濁防止法の規制(日排水量が50m2未満の養豚場に対する基準)及び家畜排泄物法の規制に違反した事実は認められなかったが、BOD及びCODは調査項目に含まれていないこと、村田養豚場は、京都府及び木津川市の調査受入れを拒否していたことからすると、本件記事掲載時点において、赤田川の水質汚濁の原因が村田養豚場の排水にあると考えたのは合理的であり、その後の調査によっても、その疑いは払拭されず、むしろ強まっているものと認められる。

そうすると、赤田川の公害というべき事態について、村田養豚場が原因事業者であることが合理的な根拠をもって疑われているとの事実は真実であり、環境対策としての不十分さを指摘する当会代表の意見についても、その前提とする主要事実が真実であると認められ、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評の域を逸脱しているともいえない。

したがって、FACT4における上記事実の摘示について、名誉毀損の不法行為は成立しない。